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2025-08-29
秋の花粉症に効く市販薬|登録販売者が知っておきたい花粉症の種類と接客のポイント【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
花粉症といえば春のスギやヒノキを連想しがちですが、実は秋にも多くの方がくしゃみや鼻水などの症状に悩まされています。ブタクサやヨモギなどを原因とする「秋の花粉症」の時期は、8月から11月頃。「秋の風邪」と症状が似ているため、勘違いして適切な対処ができていないケースも少なくありません。今回は登録販売者向けに、秋の花粉症に効果的な市販薬の種類や特徴を解説します。
秋にも花粉症はある!その種類と症状
一般的には、花粉症=「2月から5月頃にかけて症状が出るもの」と思われています。
たしかに花粉症患者のなかには、スギやヒノキを原因とする方が多く見られます。
しかし、花粉症は春の時期だけに症状が出るものではありません。
夏の終わりから秋にかけて見られる「秋の花粉症」に悩まされている方も一定数います。
ここでは、秋の花粉症の原因となる花粉の種類や、春の花粉症との違いを解説します。
花粉症患者の人数
花粉症患者の正確な数は不明ですが、環境省の資料によると、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査で、花粉症の患者の割合は以下のように推移しています。
2019年のデータでは約4人に1人がスギ以外の花粉症を有している状況です。
スギ花粉症 | その他の花粉症 | |
1998年 | 16.2% | 10.9% |
2008年 | 26.5% | 15.4% |
2019年 | 38.8% | 25.1% |
※「スギ花粉症」と「その他の花粉症」の患者の割合は重複あり
秋に多い花粉症の種類
では、秋の花粉症はどのような種類があるのでしょうか。
秋の花粉症の原因として知られている植物には、以下のものがあります。
植物 | 花粉の飛散時期 |
ブタクサ | 8月中旬~10月 |
カナムグラ | 8月中旬~10月 |
ヨモギ | 8月下旬~10月 |
イラクサ | 8月~10月上旬 |
セイタカアワダチソウ | 10月~11月 |
オオヨモギ | 8月下旬~10月 |
※飛散時期は地域によって異なる
秋の花粉症の主な原因となる植物として、キク科のブタクサやヨモギ、アサ科のカナムグラなどが代表的です。
以下で、それぞれ詳しく説明します。
●ブタクサ
日本で最初に報告された花粉症がスギによるものではないのをご存知でしょうか。
1961年に初めて国内で報告された花粉症は、ブタクサによるものです。
ブタクサは主に8月中旬から10月にかけて花粉を飛散させ、午前中に飛散量が増加しやすいのが特徴です。
一見目立たない植物ですが、道路脇や河川敷、更地などあらゆる場所に繁茂しています。
●ヨモギ
ヨモギは多年草であり、古くから食用や薬用として親しまれてきました。
しかし、抗原性がブタクサよりも強く、飛散量も増加傾向にあります。
数km先まで飛散するスギと比べ、ヨモギは数10mほどしか飛びません。
しかし、身近な雑草であることから接触する機会は多くあります。
●カナムグラ
カナムグラはいわゆる「緑のカーテン」として利用されることもあるアサ科のつる性植物で、8月中旬から10月にかけて花粉を飛散させます。
飛散距離は短いものの、緑地帯や公園などに広く自生しており、近くを通るだけでも多量の花粉を浴びる可能性があるので注意が必要です。
また秋は花粉のほか、ハウスダストが増える時期でもあります。
夏に繁殖したダニが秋になると大量に死ぬため、ハウスダストによるアレルギー症状が出やすくなり、花粉症と混同されるケースもあるのです。
春の花粉症との違い
秋の花粉症は、春のスギやヒノキの花粉症と比較していくつか違いがあります。
最も特徴的なのは、症状の出方です。
スギ花粉は直径約30~39μm、ヒノキ花粉は直径約26~31μmあります。
花粉の粒子径が大きく、これらの花粉は鼻粘膜にとどまり下気道へはあまり影響を及ぼしません。
そのため、鼻水やくしゃみなど鼻の症状が起こりやすいのが、春の花粉症の特徴です。
一方で、秋の花粉症の原因となるブタクサの花粉は、直径が約18~20μmしかありません。
スギやヒノキと比べると粒子径が小さく、気管支にまで花粉が到達しやすいため、秋の花粉症では咳や喘息様症状を引き起こすことがあります。
症状が風邪とも似ていることから、花粉症と気づかず「風邪を引いた」と勘違いする方もよく見られます。
また、秋の花粉症は口腔アレルギー症候群との関連性が高いのも特徴です。
花粉症がある方が特定の果物や野菜を食べると口や喉などにアレルギー反応が起こる状態を口腔アレルギー症候群といいます。
たとえば、カモガヤにアレルギーがある方がメロンやスイカ、ブタクサやヨモギにアレルギーがある方がセリ科の野菜を食べると、交差反応によりアレルギー反応が生じる可能性があります。
▼参考サイトはコチラ
環境省『花粉症環境保健マニュアル2022』
一般社団法人日本アレルギー学会『口腔アレルギー症候群』
秋の花粉症で使える市販薬とは?
秋の花粉症も春の花粉症と同様に、市販薬でも対応できる場合が多くあります。
登録販売者としては、お客さまの症状やライフスタイルに合わせて適切な市販薬を提案することが重要です。
では、秋の花粉症に使われる市販薬の成分や特徴を見ていきましょう。
よく使われる市販薬の成分と特徴
秋の花粉症には、春の花粉症と同じく抗ヒスタミン薬がよく使用されます。
抗ヒスタミン薬とは、肥満細胞から放出されたヒスタミンが受容体に結合するのを阻害し、アレルギー症状を抑える薬のことです。
開発された年代に応じて、以下のように「第一世代抗ヒスタミン薬」と「第二世代抗ヒスタミン薬」の2種類があります。
分類 | 主な成分 | 特徴 |
第一世代抗ヒスタミン薬 |
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第二世代抗ヒスタミン薬 |
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抗ヒスタミン薬は、内服薬のほかに、点眼薬や点鼻薬を使うこともあります。
内服薬だけで目のかゆみを抑えたり鼻詰まりを改善したりするのは難しいため、目の症状には点眼薬、鼻の症状には点鼻薬を使うことも検討しましょう。
点眼薬は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が配合されたもの、点鼻薬は血管収縮剤やステロイド成分を含むものが主に販売されています。
眠くなりにくい第二世代抗ヒスタミン薬のメリットと注意点
第二世代抗ヒスタミン薬は、現代の花粉症治療の主流となっています。
なぜなら、眠気の副作用が少なく日常生活に支障をきたしにくいからです。
第二世代抗ヒスタミン薬のなかでも、フェキソフェナジン塩酸塩やロラタジンはとくに眠気が出にくいことで知られています。
これらの成分は血液脳関門を通過しにくく脳内のヒスタミン受容体へ結合しづらいため、中枢神経系への影響が最小限に抑えられているのです。
しかし、第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代抗ヒスタミン薬と比べて効果の発現がやや遅い傾向があります。
抗ヒスタミン作用は比較的速やかに効果が出ますが、抗アレルギー作用が十分に発揮されるまでには2週間ほどかかることが一般的です。
そのため、第二世代抗ヒスタミン薬を服用する場合は、症状が軽いうちから使用することで十分な効果が出やすくなります。
抗ヒスタミン薬の内服薬を販売する場合は、即効性を重視するのか眠気などの副作用の出づらさを重視するのかについてヒアリングし、適した成分が配合された市販薬を勧めましょう。
▼参考サイトはコチラ
J-STAGE『薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療』
▼関連記事はコチラ
【薬剤師監修】抗ヒスタミン薬とは?種類や特徴、副作用など徹底解説
<対応例>秋の花粉症で来店されたお客さまへの対応
ここからは、秋の花粉症で来店されたお客さまへの対応例を紹介します。
◆人物データ
50代男性
職業:タクシー運転手
既往歴:前立腺肥大症
服用中の薬:アボルブ(前立腺肥大症の治療薬)
症状:鼻水やくしゃみが2週間ほど続いている。
◆対応例
お客さま:
すみません、風邪薬が欲しいのですが。
登録販売者:
風邪薬ですね。どのような症状がありますか?
お客さま:
鼻水とくしゃみが2週間ほど続いていて。熱はありません。
登録販売者:
熱はないのですね。鼻水はサラサラしていますか?それともドロドロしていますか?
お客さま:
サラサラしています。
登録販売者:
毎年同じ時期になると、鼻水やくしゃみが出るといったことはありませんか?
お客さま:
そういえば、去年も同じくらいの時期に鼻水やくしゃみが続いていました。
登録販売者:
それでしたら、秋の花粉症が原因かもしれません。花粉症は春だけでなく秋にも症状が出る方がいます。アレルギー用のお薬を飲まれた方が良いでしょう。
お客さま:
秋でも花粉症になるんですね。前立腺肥大症があるのですが、アレルギー用のお薬の飲み合わせは大丈夫ですか?
登録販売者:
フェキソフェナジン塩酸塩配合のこちらのお薬でしたら、前立腺肥大症の方でも服用できます。ただし、人によっては副作用で排尿困難が現れることがあるので、その際はすぐに服用を中止してください。
お客さま:
わかりました。ありがとうございます。
接客のポイント
今回、お客さまは風邪薬を求めて来店されました。
しかし、サラサラした鼻水が出ること、前年も同じくらいの時期に症状が出ていたことなどを考えると、風邪ではなく花粉症の可能性が高いと考えられるため、抗ヒスタミン薬をお勧めしています。
花粉症は春にしか症状が出ないと思われているお客さまには、秋の花粉症があることを伝えてあげると親切です。
また、この男性は前立腺肥大症があると言われており、抗コリン作用が強い第一世代抗ヒスタミン薬は使用できません。
そのため、ここでは前立腺肥大症でも使用できる第二世代抗ヒスタミン薬のフェキソフェナジン塩酸塩配合のお薬を勧めました。
秋の花粉症を見過ごさないように注意しよう
花粉症は春だけではなく、秋に症状が出る方もいます。
お客さまのなかには風邪だと思い込み、風邪薬を購入しようとされる方も多くいるので、接客時には症状をしっかりとヒアリングすることが大切です。
しかし花粉症のお薬を勧めても、「花粉症ではないので…」と断られることもよくあります。
このようなときは、秋にも花粉症があることを伝え、症状が長引くようなら医療機関を受診するよう勧めましょう。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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