現場で役立つ知識
2021-11-26
【登録販売者の悩みに回答!】推奨販売への向き合い方がわかりません<教えて村松先生:第2回>
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セミナーや動画配信を中心に、登録販売者や資格受験者向けの学習支援を行っている株式会社東京マキア代表の村松早織先生には、日々、登録販売者からの悩み相談が送られてきます。 連載第2回は、推奨販売への向き合い方がわからない方へ、推奨販売に対する考え方や、気持ちを楽にする具体的なアドバイスを解説していただきました。
公開日:2020年10月26日
更新日:2021年11月26日
多くのドラッグストアでは、推奨販売品が定められています。
それに苦手意識のある登録販売者は多く、うまくお客様に説明できない、おすすめしたいと思えない商品でも販売せざるを得ない……など、様々な悩みがつきものです。
このような登録販売者ならではの悩みについて、村松先生にうかがいます。
セミナーや動画配信を中心に、登録販売者や資格受験者向けの学習支援を行っている株式会社東京マキア代表の村松早織先生には、日々、登録販売者からの悩み相談が送られてきます。
連載第2回は、推奨販売への向き合い方がわからない方へ、推奨販売に対する考え方や、気持ちを楽にする具体的なアドバイスを解説していただきました。
そもそも推奨販売とは?
推奨販売は、お客さまから直接お話をうかがい、ご要望や必要性に応じて適した商品を積極的におすすめする販売方法です。「推売」「推販」などと略されることもあります。
お客さまにとっては今まで知らなかった良い商品を知るきっかけになりますし、たくさんの商品から目的のものを選ぶ手間を省けるメリットも。また小売店側にとっても、利益率の高い商品を選んでおすすめできます。
このように推奨販売は、お客さまのみならず双方にとってメリットのある販売方法です。
現在、多くのドラッグストアでは推奨販売の手法が取り入れられています。私は2社のドラッグストアで勤務を経験しましたが、1社は推奨販売の制度がなく、もう1社は推奨販売に力を入れていました。各会社によってその品目も品目数も異なり、月によって品目が追加されることもありました。
推奨販売に力を入れているかどうかは、会社の方針によって大きな違いがあります。また、店長の方針によるところも大きいため、人事異動でお店の雰囲気がガラッと変わる場合もあるのです。
推奨販売はフェアでありたい
推奨販売はお客さまにメリットがあることが大前提であり、もしも小売店の都合ばかりを押しつければ、それは「押し売り」になります。
押し売りは顧客満足度を著しく下げる要因です。また、医薬品は使い方を一歩間違えれば健康に関わる可能性があるので、医薬品を推奨販売する場合、一般の食品や雑貨などよりさらに慎重に行う必要があります。
医薬品の情報提供は本来かたよりがあってはならず、「販売するうえで都合の悪い情報はわざと伝えない」など、お客さまにとって不利益になる行動をしてはいけません。
お客さまはその商品についてプラスの面もマイナスの面も知る権利があると理解して、推奨販売を行いましょう。
良くない販売方法の例として、以下があります。
・推奨販売品のメリットばかりを伝え、デメリットをあえて伝えない
・根拠もなく「そちらの商品よりもずっと効き目が良いです。」などと誇張した表現で伝える
・お客さまにとって不要もしくはより良い商品があるのにも関わらず、推奨販売品をすすめる
・不必要な量の商品を購入させる
推奨販売で悩んだときは
登録販売者の方から、推奨販売で悩んでいるというご相談をいただくことがよくあります。
推奨販売品をお客さまに上手に販売できなかったり、人と成績を比べてしまったり、上司に注意されてしまったりして、気持ちが追い詰められてしまう人もいるようです。
このような気持ちにならないように、また、なってしまったときにどのように対処すれば良いのか、ヒントを書いていきます。
1.お客さまと会社・自分の利益を考える「バランス感覚」が大切
最初にお話しした通り、医薬品の情報提供は、正確に、そしてかたよりなく行うことが基本です。
一方で推奨販売は会社や自分に利益をもたらすものなので、お客さまの利益を最優先にしながら、会社や自分のことを考える必要があります。
推奨販売による自分への利益には様々な形があり、会社によってはボーナスや昇給など給料として反映されるケースや、自分自身の出世や仲間からの信頼など、目に見えない形で得られるものもあります。
このバランス感覚はとても大切なので、いつも意識できると良いでしょう。
それでは、どのようにバランスを取っていけば良いのかを探っていきましょう。
2.推奨販売品を分析する
ひとくちに推奨販売品といってもいろいろな種類のものがあります。
商品を分析すると、自分がいったい何で悩んでいるのか、また、自分が推奨販売に対して「どこまでなら取り組めるのか」と線引きを探ることも可能です。
たとえば推奨販売品を以下のようにわけてみましょう。
①おすすめしても良いと思える推奨販売品
有効性、安全性、価格などの面から見て、お客さまにおすすめするのに申し分ないと思える商品。
このような商品については、積極的に情報提供ができると考えられます。
②教えたいと思える推奨販売品
「おすすめ」とまではいかないものの、その存在を教えたいもの。
たとえば「お客さまが指名した商品と似た成分配合で、より低価格のもの」などがそれに当たります。
簡単にいうと、売れ筋商品の類似品でありながら、よりすぐれた特徴のある推奨販売品です。
このような商品についての情報提供は、お客さまにとって「お得な情報」になる可能性が高く、場合によってはそこを突破口にして①の「おすすめしても良いと思える推奨販売品」をご案内する流れを作ることもできます。
お客さまがあなたのことを「自分に利益をもたらしてくれる存在」だと認識してくだされば、信頼関係が生まれ、よりスムーズにいろいろな情報提供をできるようになるでしょう。
③おすすめしたいと思えない推奨販売品
有効性、安全性、価格などから見てあまりメリットがなく、お客さまにおすすめしにくい商品。
①の「おすすめしても良いと思える推奨販売品」と逆の商品です。
④おすすめする機会のない推奨販売品
効能・効果がピンポイントすぎる、その商品がターゲットとする客層が狭すぎるなど、対象となるお客さまがほとんどいない商品。
そもそも推奨販売品として指定すること自体に無理があるのでは……と思えるようなものを含みます。
販売機会が少なければ、販売成績が伸びないことはごく自然なことです。
ただしこのような商品は情報提供を行うチャンスが極端に少ないだけで、おすすめする可能性はゼロではありません。
あらかじめどのような症状の方にすすめられるかを具体的に考えておくと、いざという時にスムーズに対応できます。
まずは、①~④までの商品の仕訳がスムーズにできたかどうかを確認しましょう。
もしできなかった場合、推奨販売がうまくいかない理由は「商品の知識不足」である可能性があります。商品について深く知ることで、もっと自信をもって対応ができるようになりますよ。
また、仕訳がスムーズにできた場合、このなかで、①②④に関してはケースバイケースで、推奨販売が可能であると考えられます。
残るは③の「おすすめしたいと思えない推奨販売品」との向き合い方ですが、次の項にてもう少し詳しく説明します。
3.自分の心にポリシーをもとう
問題となるのは「おすすめしたいと思えない推奨販売品」ですが、まずは自分がなぜそう思うのかを分析してみてください。
成分の有効性や安全性、価格など様々な理由が考えられますが、いずれにしても自分なりの答えを出すのはとても大切です。
なぜならそれが、お客さまのことを一番に考えたうえで自分がゆずれない一線や「専門家としてのポリシー」になり得るから。
ポリシーを心にもっておくと、専門家として「ここまではやるけれど、ここからはやらない」という仕事の線引きができます。
この線引きがあると、もし上司から「もっと売ってください」と注意されることがあっても、自分の意見を述べたり逆に自分とは異なる相手の考え方を受け止めたり、場合によっては受け流したりと、冷静に対応することができます。
つまり、ポリシーによって自分を守ることができるのです。
ここをあいまいにしたままでいると、上司に注意されたことが単なる「恐怖心」として心に残ってしまい、注意されたくない→だからすすめたくもないものを売る→お客さまに対して罪悪感を覚える→上手に売ることができない……という負のスパイラルにはまってしまいます。
今一度、専門家としての自分と真摯に向き合ってみてください。
4.ライバル商品を知ると推奨販売力が高まる
推奨販売品は、商品自体に訴求力がないことが多く(無名ブランドや地味なデザインなど)、お客さまに推奨販売品だけを見せながら説明しても響かない場合がほとんどです。
推奨販売品に説得力をもたせるには、「ほかの売れ筋商品や類似品との違い」をしっかり説明する必要があります。
推奨販売品とともにライバル商品の特性に関する知識を身につけておくと、推奨販売力が自然と高まりますよ。
5.推奨販売がつらいという方へ
日々、真剣に仕事へ向き合っていること、すばらしいと思います。
ぜひ誰かにそのつらい気持ちを打ち明けてみてください。職場の同僚でも良いですし、話しにくければSNSなどの友人相手でも構いません。
大切なのは、今所属している職場の価値観や「当たり前」が世間のそれではないと知ることです。
ひとところで働いているとだんだん感覚がマヒしてしまい、客観的になれなくなってしまう場合もありますよ。
ほかの人と話すことで少し冷静に自分を見つめ直せるので、決して一人で抱え込まないようにしてくださいね。
【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部卒業後、医療用医薬品総合卸において企業内薬剤師として勤務。主に医薬品管理や医療機関への情報提供、セールスたちへの研修を行う。
その後、空港内ドラッグストアにて勤務。接客の傍ら、新入社員・登録販売者教育や、インバウンド対策の一環として英語の教育も行う。
2016年に㈱東京マキアを立ち上げ、登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開している。
YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在4,000人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬についての情報発信を行っている。
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