現場で役立つ知識
2021-11-19
「風邪薬」って結局なに?成分の違いについて薬剤師が解説
・Before
・After
市販の風邪薬には覚えきれないほど多くの種類があります。お客さまから「この症状に合うものを探しているのだけど…」と相談され、どれを選んだらいいのか迷ってしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。 どの成分がどういった役割をしているのかを理解しておくことで、お客さまに適切な風邪薬を提案できるようになるでしょう。そこで今回は、風邪薬に配合されている主な成分や選び方、薬の正しい飲み方などを詳しく紹介します。
風邪薬に配合されている成分は?
風邪の正式名称は「風邪症候群」で、原因の80~90%はウイルスです。
風邪を引き起こすウイルスは200種類以上と言われているため、原因を特定するのは現実的ではありません。
さらに、同じウイルスでも変異を繰り返すため、一度感染したウイルスだからといって、もうかからないとは言えないところもやっかいなポイントです。
そのため風邪そのものを治す薬を作るのは困難であり、現在発売されている風邪薬は、風邪の諸症状をおさえる対症療法となります。
それでは実際にどのような成分が市販薬の風邪薬に使われているのか見ていきましょう。
主な成分名と特徴を解説しているので、お客さまにすすめる際の参考にしてみてください。
解熱鎮痛成分(発熱を鎮めて痛みを和らげる)
・イブプロフェン
・ロキソプロフェン
・アセチルサリチル酸
・エテンザミド
など
解熱鎮痛成分は、熱を下げたり痛みを改善したりする成分です。
上記の成分のうち、どれか一つが配合されていることもあれば、複数の成分が配合されている場合もあります。
乳幼児など比較的低年齢から使える風邪薬の主成分はアセトアミノフェンで、基本的に15歳以上から服用が可能になる成分ではイブプロフェンが主流です。
ロキソプロフェンは総合風邪薬ではなく解熱鎮痛剤として販売されており、もっとも解熱鎮痛効果が高いことが特徴です。
抗ヒスタミン成分、抗コリン成分(くしゃみや鼻水をおさえる)
・dークロルフェニラミンマレイン酸塩
・ジフェンヒドラミン塩酸塩
・クレマスチンフマル酸塩
・ヨウ化イソプロパミド
など
クロルフェニラミンマレイン酸塩やジフェンヒドラミン塩酸塩は抗ヒスタミン薬です。
鼻水やくしゃみをおさえる効果に優れています。
クレマスチンフマル酸塩は第1世代の抗ヒスタミンであるものの、眠気が出にくいと言われています。
ヨウ化イソプロパミドは抗コリン作用をもつ成分です。
アドレナリン作動成分(鼻粘膜の血管収縮や気管・気管支を広げる)
・dl-メチルエフェドリン塩酸塩
・フェニレフリン塩酸塩
など
プソイドエフェドリン塩酸塩は、鼻粘膜の血管を収縮させることで鼻詰まりの原因となる充血や腫れをおさえます。
一方で、前立腺肥大、高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、糖尿病の方は使用できません。
これに限らず、してはいけないこと(禁忌)は必ず確認しておきましょう。
鎮咳成分(咳をおさえる)
・デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物
・チペピジンヒベンズ酸塩
・ノスカピン
など
いずれも咳中枢に作用し辛い咳に効果があります。
成分によっては連用によって薬物依存を生じる場合があるため注意が必要です。
去痰成分(痰の切れを良くする)
・カルボシステイン
・ブロムヘキシン塩酸塩
・グアイフェネシン
など
痰は、気道の粘膜でつくられる炎症性の気道分泌物(粘液)です。
ウイルスや細菌などの異物と絡まり、粘り気のある痰になります。
去痰成分の配合された薬を飲むと、痰の切れを良くするほか、対外に排出しやすくします。
抗炎症成分(炎症による腫れを和らげる)
・アズレンスルホン酸ナトリウム水和物
など
どちらも炎症を抑える働きをもっており、のどの痛みやはれを和らげる目的で使われます。
グリチルリチン酸は口腔内殺菌トローチのほか、鼻炎薬、胃腸薬などに使われる成分です。
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物はうがい薬に配合されていることが多いでしょう。
漢方
・麦門冬湯
・小青竜湯
・桔梗湯
など
葛根湯は頭痛や発熱、寒気など風邪の初期症状に飲まれる漢方薬です。
麦門冬湯は乾いた咳、小青竜湯はサラサラとした鼻水や鼻づまり、桔梗湯はのどの痛みなど、それぞれ働きが異なります。
制酸成分(胃酸を中和する)
・炭酸マグネシウム
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
など
胃酸を中和することで胃痛や胃酸の逆流などによる症状を抑えます。
どの成分も腎臓の悪い方の使用には注意が必要です。
カフェイン類
・カフェイン水和物
・無水カフェイン
中枢神経を刺激することで頭痛をやわらげる効果が期待できます。
総合感冒薬をはじめ鎮咳薬、解熱鎮痛薬など様々な薬に配合されていますが、胃酸の分泌を促進する働きがあるため、胃の調子が悪い方には向いていません。
その他:ビタミン成分など
・ビタミンC
・ビタミンB2(リボフラビン)
風邪のときはビタミンを消耗しやすくなるため、ビタミンCやビタミンB2が配合されている薬もあります。
なお、ビタミンCを摂取すると風邪が早く治ると言われることがありますが、風邪に対する明確な効果は明らかにされていません。
市販の風邪薬の選び方
総合感冒薬は熱や喉の痛み、咳や鼻水など症状がいくつも出ている方には便利な製品です。
しかし、熱だけ、咳だけのように限られた症状しかない方にとっては必要のない成分が多く含まれているため向いていません。
そのため基本的には総合風邪薬ではなく、症状に合わせた成分を選ぶようにします。
そのほか、お客さまの生活スタイルにも注目しましょう。
学校や仕事がある方、朝食を食べない方などは、1日3回ではなく2回で済む薬が向いています。
眠気が出ると困る方には、抗ヒスタミン薬のなかでも眠気が出にくい成分が良いでしょう。
食前や食後、食間っていつ?正しい服用方法
服用するタイミングも薬によって様々です。
お客さまへ薬を勧める際は、症状に適しているかだけでなく、生活スタイルも聞き取り、それぞれに合ったタイミングで飲める薬を選ぶようにしましょう。
正しい服薬タイミング目安は以下の通りです。
・食間…食事と食事の間(食事を終えてから約2時間後)
・食後…食事の30分後
間違いやすいのは食間です。
食事を食べている途中で飲むという意味ではなく、食事と食事の間のことをあらわしています。
副作用と服用中の注意点
風邪薬にはいくつか注意点があります。
場合によっては薬の服用が不適切とされる場合もあるので、最低限の副作用や注意点は把握しておきましょう。
アレルギー反応
アレルギー反応は誰にでも起こる可能性があるものです。
蕁麻疹や息苦しさなどがあらわれたらアレルギーを起こしている可能性が高いと考えられます。
お客さまにはアレルギー歴がないか聞き取り、ある場合はどの成分に注意が必要かしっかり確認することが大切です。
眠気が出る
ほとんどの総合感冒薬に配合されている抗ヒスタミン薬は、脳を覚醒させる作用をもつヒスタミンの働きを抑制するため、ぼーっとしたり眠気が出やすくなったりする副作用があります。
成分や配合量によって眠気の度合いは異なるものの、服用後は乗り物の運転や高いところでの作業は避けるように伝えましょう。
どうしても乗り物を運転する必要があるお客さまの場合は、眠気が出にくい成分の風邪薬をすすめます。
胃腸の具合が悪くなる
たとえばイブプロフェンは、痛みのもととなる物質をつくらないようにする作用があります。
一方で痛みのもととなる物質には胃粘膜を整える働きをもつため、薬を飲むことで胃粘膜を守る作用が薄れてしまい、胃酸によって胃粘膜があれてしまうケースがあるのです。
また、カフェインによって胃腸の具合が悪くなるケースもあります。
もともと胃が弱い方や風邪で胃が不調の方には、これらが配合されていないものを選びましょう。
排尿障害や眼圧上昇
抗コリン薬は、尿を出づらくしたり眼圧を上げたりする恐れがあります。
そのため、前立腺肥大症がある方や緑内障の方には抗コリン成分が入っていない風邪薬をすすめるようにしましょう。
なお緑内障には「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」の2種類があり、前者であれば抗コリン薬を使っても問題ないとされています。
便秘
抗ヒスタミン薬や鎮咳薬の成分で便秘になる可能性があります。
便秘になりやすい方や痔がある方にはこれらの成分が入っていないものを選ぶか、多めに水を飲んで対策するように伝えましょう。
症状に合った成分の薬をすすめよう
風邪薬は、ウイルスをやっつけて風邪そのものを治すのではなく、風邪の症状をおさえるものです。
お客さまは総合風邪薬を選びがちですが、必要のない成分まで服用してしまう恐れがあるため、症状に応じて解熱鎮痛剤や鎮咳剤などをすすめると良いでしょう。
眠気や便秘などの副作用が出ることもあるので、お客さまの体質や生活スタイルに合わせた風邪薬の提案が大切です。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

合わせて読まれている記事
登録販売者のための役立つ情報がいっぱい!
最新のドラッグストア業界動向のポイント、転職成功のためのノウハウなど、登録販売者のキャリアに役立つ多様な情報をお届けしています。チアジョブ登販は求人のご紹介や転職サポートのほかにも、登録販売者の方に嬉しい最新情報も提供。毎月更新しているコンテンツも多数です。ぜひ定期的にチェックしてみてください!