業界情報
2022-06-09
ドラッグストアにDXが必要な理由とは?登録販売者が知っておきたい最新の導入事例や課題をわかりやすく解説
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国をあげてDXの推進が叫ばれるなか、ドラッグストア業界もDX化が進みつつあります。とくに、コロナ禍で変化した顧客ニーズに対応し、競合との差別化を図るためにDX化は不可欠です。そこで本記事では、ドラッグストアや併設薬局におけるDXの重要性や最新のDX導入事例、今後の課題について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、2018年12月に経済産業省より出された『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』において、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
引用:経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0』
つまりDXとは、デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革し、ビジネスを有利な状態にすることです。
経済産業省は、DX化が実現されないと2025年以降に複雑化・ブラックボックス化・老朽化した既存のシステムによって国際競争への遅れや多大な経済損失を被る『2025年の崖』が生じ得ることと予測しており、あらゆる産業でDX化が求められています。
ドラッグストアも例外ではなく、顧客のデータ活用やEC展開、オンライン服薬指導などの分野でDX化が進められてきました。
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DX化とIT化の違い
DX化というと、IT化と混同されることがあります。
しかし、IT化は現にある業務に対してデジタル技術を使うことで業務効率化を図るものであり、ビジネスそのものを変革するというDX化の定義とは異なります。
この違いをしっかりと認識しておきましょう。
ドラッグストアや併設の調剤薬局にDXが求められる理由
ドラッグストアや調剤薬局でDXが求められる理由には、大きく3つあります。
理由1:ドラッグストア業界の競争が激化
ドラッグストア業界自体は好調であるものの、店舗数の増加によって競争は激化しています。
とくに上位チェーンは堅調に店舗を増やす一方で、増収減益が目立つ状況です。
そのようななかで、他店との差別化を図り、競争優位性を獲得するためにはDXの活用が必須となるでしょう。
理由2:人材不足を補うための業務効率化
ドラッグストアや調剤薬局が増加したことで、薬剤師が不足しています。
薬剤師の数自体は増加傾向にありますが、医師や薬剤師の有効求人倍率は依然として高く、地方ほど人材確保が難しくなる構図は変わっていません。
また、2022年の調剤報酬改定において、薬剤師は対物業務を効率化して対人業務に重きをおくように求められています。
しかし、2025年には戦後の第一次ベビーブームに生まれた団塊世代の約806万人が後期高齢者になる「2025年問題」も目前に迫った今、現状の人材獲得が難しい状況を鑑みると、業務の効率化を実現させるDX化は急務といえるでしょう。
理由3:変化する消費ニーズへの対応
コロナ禍で自宅にいる時間が増えたことで、消費者ニーズが生活必需品にシフトしたり、ECサイトが好調となったりするなどの大きな変化が生まれました。
このような消費者ニーズの変化を的確に捉えた対策を行うには、DXを活用した顧客行動分析が有効です。
また、業界では「2分の1ルール」の撤廃などOTC医薬品販売における規制緩和が進められています。
こうした動きは今後も続いていくと考えられるため、店舗がメインの営業拠点であったドラッグストアでもITを活用したさまざまな販売手法を検討していくことが必要です。
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ドラッグストアにおけるDXの活用例
セルフメディケーションの推進が進み、顧客の身近にあるドラッグストアの役割はますます重要視されています。
より良い顧客体験や業務の効率化を図るために、積極的にDXを活用する店舗も増加中です。
この章では、ドラッグストアのDX活用シーンおよびDX化でどのようなことが実現できるのか、実証実験中のものも含めて紹介します。
1.顧客データの活用
ドラッグストアでは、調剤の服薬情報のほか、化粧品やOTCの購入履歴、健康状態などさまざまな顧客データを取得できます。
これらの情報を活用して、悩みに応じた商品や自身に合う商品の提案などを行うことが可能です。
2.アプリの活用
ドラッグストアではアプリの導入も増えており、さまざまなサービスと連携することでリアルとオンラインが融合したサービスの提供が可能になっています。
たとえば、店舗の管理栄養士によるオンラインでの食事指導サービスやライフログ機能を活用した予防医療プログラムなどの活用などです。
こうしたDX化により、さらに顧客との関係性を深めることができるでしょう。
3.発注・在庫管理の自動化
顧客の購入傾向をAIに分析させることで、客数や売れ行き予測による在庫管理・自動発注などが可能になり、顧客のニーズを満たす品揃えを保てます。
店舗オペレーションの効率化に加え、売上の最大化にも効果的です。
某通信会社が実施した人流データと気象データのビックデータを解析して需要予測を行う実証実験において、ドラッグストアの来店者数の予測誤差は平均7%でした。
予測を活用した自動発注で、在庫不足による販売機会ロスを15%、廃棄ロスを3%減少させる効果が得られています。
4.デジタルサイネージの活用
ディスプレイに動画などを流して情報発信を行う「デジタルサイネージ」を活用すれば、顧客に対して効果的なアプローチができます。
売場管理では、POPの変更に関する手間の軽減も期待できるでしょう。
さらに、什器型のものでは顧客の動線を計測する実験も行われており、将来的にはさらに優れた顧客体験を提供できるようになるでしょう。
5.オンライン服薬指導・オンライン資格確認
調剤分野ではすでにオンラインによる処方せん送信のほか、オンライン服薬指導が始まっています。
さらに、マイナンバーカードの健康保険証利用では、顔認証付きカードの利用により、保険証の資格情報の確認が窓口で完了できるようになりました。
それにより、資格情報の入力や保険証の切り替えなどの業務負担の軽減に成功しています。
また、利用者の同意があれば過去の薬剤情報を取得して、服薬指導やアフターフォローに活用することも可能になっています。
6.自動販売機での医薬品販売
店舗外の自動販売機によるOTC医薬品販売の実証実験も始まっています。
利用者は販売機で商品もしくは症状を選択し、注意事項を確認したら店舗の薬剤師や登録販売者が販売を承認し、その場で決済を行う仕組みです。
場所や時間の制約なしに医薬品の購入が可能になることが期待されています。
▼参考サイトはコチラ
大正製薬『「駅改札内におけるOTC販売機を用いた一般用医薬品販売の実証」を開始』
DX導入における課題とは
実はドラッグストア業界は、ほかの業界と比較するとDXの導入が進んでいないと言われています。
DX導入に関連する、ドラッグストア特有の課題について見ていきましょう。
地域の特性を考慮したシステム化が難しい
ドラッグストアは、顧客の地域性が高いため、売れる商品は店舗ごとにさまざまです。
従来のような商品軸分析では、DX導入の効果が得られません。
そのためドラッグストアがDXを導入する場合には、CRM(顧客管理システム)の活用が前提となるでしょう。
現状の個人情報をほとんど使用しないアプリやポイントカードよりも踏み込んだ個人情報の取得や管理が必要になります。
EC(電子商取引)での購買で利益率が下がる可能性がある
コロナ禍の影響で、インターネット上で物やサービスの購買を行うEC(電子商取引)市場自体は拡大しました。
しかし、ドラッグストアはECで利益を出しにくい業界だと考えられています。
ドラッグストアで扱う日用品や飲食料品は利益率が低いものが多く、配送によるコストがかさみ、利益を圧迫してしまう可能性があるためです。
多くの業界ではECでのWEB接客の導入により、購入率や購入単価のアップに成功しています。
今後はECのニーズにも応えつつ、ドラッグストアの特性をふまえた戦略を展開していく必要があるでしょう。
DX化で登録販売者も対人スキルが求められる
今回は、ドラッグストアにおけるDX化について解説してきました。
ドラッグストアのDX導入はまだ始まったばかりの段階であり、今後さまざまな新しいシステムが登場してくるでしょう。
これからの登録販売者には、こうしたシステム化を積極的受け入れて変化に適応していくことが求められます。
将来は登録販売者もDX化によって対人業務の重要性が高まっていくと予想されます。
テクノロジーを活用しながら顧客に新たな価値を提供できるよう、積極的に取り組んでいきましょう。
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