現場で役立つ知識
2021-07-02
<登録販売者向け>夏バテ対策で医薬品をお求めのお客様への対応【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
気温が高い日が続くと増えてくるのが「夏バテ」に関する相談です。 たとえば「体がだるくて食欲がわかない」「寝てもなかなか疲れが取れない」など、暑くなってきた時期にお客様からこのような相談をされたら、夏バテを疑ってみましょう。 また、夏バテは症状によって選ぶべき市販薬が異なります。 ここでは夏バテの原因や症状、効果的な市販薬などをご紹介します。記事を参考に、お客さまに適した提案ができるようにしておきましょう。
夏バテはなぜ起きる?よくある症状とは
夏バテは気温が高いせいで起こるものと思っている方もいるかもしれません。しかし実は、気温だけが夏バテの原因ではないのです。
以下で、夏バテの原因とよくある症状について解説していきます。
夏バテの原因
夏バテの原因として、主に次の5つがあげられます。
1.外と室内の気温差
外気温と室内との温度差が激しいと体温調節がうまくできなくなり、自律神経のはたらきが乱れてしまいます。
自律神経は消化器や睡眠のはたらきを制御しているため、自律神経の乱れは食欲不振や疲労感などをもたらします。
2.睡眠不足
夜になっても気温が下がらないと、なかなか寝付けなかったり途中で目が覚めてしまったりすることもあるでしょう。
熟睡できない日が続くと疲労を回復できないため、疲れがたまってしまいます。
3.冷たい飲食物の摂りすぎ
胃腸の冷えは、消化不良や下痢などの原因です。
暑いからといってアイスやジュースなど冷たいものばかり摂っていると、胃腸のはたらきが弱ってしまいます。
4.水分や塩分不足
脱水は倦怠感やふらつき、頭痛などの原因です。
夏はじっとしていても体の水分が蒸発しやすいため、知らず知らずのうちに水分や塩分が不足している場合も多いでしょう。
5.発汗異常
日本特有の高温多湿な気候で汗がなかなか蒸発しないことも夏バテの原因です。
汗が蒸発しにくい状態が続くと体温がなかなか下がらず、様々な体調不良をもたらします。
夏バテによる主な症状
夏バテの症状は人それぞれで、いくつかの症状がまとめて出る方もいれば1つしか出ない方もいます。症状としては次のものが代表的です。
・食欲不振
・胃のむかつきや吐き気
・下痢
・便秘
・頭痛
・立ちくらみ
・めまい
・微熱
・むくみ
・やる気が出ない
・イライラしやすい
など
とくに倦怠感や食欲不振、胃のむかつきの症状を訴える方が多いでしょう。
これらの症状はドラッグストアでもよく相談されるので、適切なアドバイスができるようにしておくことが大切です。
症状別!夏バテ対策に効果的な市販薬
夏バテの症状は、人によってどの症状がつらいのかが異なります。咳なら咳止め、熱なら解熱剤を選ぶように夏バテも症状に合わせて薬を選ぶことが基本です。
倦怠感
「ぐったりしていて動く気にならない」「疲れが取れない」といった症状は、ビタミンB1が不足することで起こりやすくなります。
ビタミンB1は糖質からエネルギーを作り出すために必要な栄養素です。そのため倦怠感がある方にはビタミンB1が配合されたものを選びましょう。
サプリメントでも構いませんが、サプリメントはあくまで「不足している栄養素を補う製品」であり「治療ができる製品」ではありません。
どれだけ体に吸収されるかもわからないため、できれば医薬品のビタミン剤を選びましょう。
食欲不振や胃のむかつき、吐き気
夏バテによる胃の不調には、胃のはたらきをよくするケイヒやチョウジなどの生薬が入った漢方系の胃薬がよいでしょう。
食後に胃もたれが出やすい方には、タカヂアスターゼやリパーゼなどの消化酵素が入ったものも有効です。
頭痛
頭痛がある方には鎮痛剤をすすめるのが一般的ですが、夏場の頭痛は脱水や熱中症が原因で起きている可能性もあるため注意が必要です。
脱水や熱中症が疑われる場合、まずは水分と塩分をバランスよくしっかりと摂ってもらいます。
また、むやみに解熱剤を使うと腎臓に負担がかかり腎虚血を招くおそれがあるため、解熱剤の使用は推奨されていません。
夏バテしやすい体質
毎年のように夏バテで困っている方には、補中益気湯や六君子湯、人参養栄湯や清暑益気湯などをすすめてみましょう。
補中益気湯は胃腸の調子が悪く疲れやすい方に、六君子湯は食欲不振や消化不良が気になる方に使われます。
人参養栄湯は胃腸の調子やめまいが気になる方、清暑益気湯は食欲不振や下痢、倦怠感などに使われる漢方薬です。
お客さまの体質や症状に合った漢方薬を提案しましょう。
販売前に登録販売者が確認すべきこと
お客さまが「夏バテで…」と言っていたとしても、実は違う疾患が原因のこともあります。出ている症状や、どれくらい症状が続いているのかなどもあわせて確認することが大切です。
また夏バテは症状によって提案すべき薬が変わるので、どのような症状に悩んでいるのかをしっかりヒアリングする必要があります。
以下で、登録販売者がお客さまに確認すべきことをおさえておきましょう。
夏バテによって起きている症状
たとえばビタミン剤は夏バテに有効ですが、胃腸症状が強く出ている方には胃薬のほうが適切です。
ビタミン剤ではかえって胃のムカムカを誘発することがあります。必ず「どういう症状が出ていますか?」と具体的な症状を聞き、適した薬をおすすめしましょう。
誰が使うのか
夏バテは小学生から高齢者まで幅広い年齢の方で起こります。
また、ドラッグストアには本人ではなく代理の方が買いに来られることも多いため、「誰が使用するのか」の確認が大切です。
せっかく購入したのに服用できる年齢の対象外だった、ということを避けるようにしましょう。
どのくらい続いているのか
倦怠感や胃腸の症状は夏バテの代表的な症状ですが、まれに違う疾患が原因となっていることもあります。
2週間以上、夏バテのような症状が続いているようなら医療機関を受診するように伝えましょう。
倦怠感や胃腸の症状は貧血や胃炎などでも起こります。お客さまの状況をよく見て、適切な治療を受けられるように促すことも登録販売者の大切な役割です。
<対応例>夏バテ対策で来店されたお客さまの対応
・20代 男性 建築業
・症状: 倦怠感 頭痛
お客さま:すみません、夏バテにいい薬はありますか?
登録販売者:夏バテですね。どのような症状にお困りですか?
お客さま:体の疲れがなかなか取れなくて。数日前から頭痛も気になるようになりました。
登録販売者:疲れと頭痛ですね。疲れならビタミンB1が入った製品がおすすめですよ。エネルギーを作る手助けをしてくれるので、疲れや倦怠感に効果があります。頭痛もあるとのことですが、水分は摂れていますか?
お客さま:ここ数日、なかなか仕事で休憩が取れなくてあんまり飲めていなかったかもなあ。外で働いているので、普段はしっかり飲んでいるんですけど。
登録販売者:そうなんですね。頭痛は水分不足でも起こるので、しっかり水分を摂るように意識してくださいね。
お客さま:そうですか。頭痛はそこまでひどくないから、しばらく水分を多めに摂って様子を見てみます。ありがとうございました。
登録販売者:バランスよく食べると疲れが取りやすくなりますよ。もし頭痛がしばらく気になるようでしたら、また相談されてください。
接客のポイント
倦怠感と頭痛に悩んでいるお客様への対応で、今回はビタミン剤と頭痛薬が候補となります。
倦怠感の改善には、エネルギーを効率よく作るために必要なビタミンB1が入った製品をおすすめしました。
しかし、いくらビタミン剤を飲んでも、エネルギー源となる糖質やたんぱく質などが不足していると効果は望めません。そのためバランスのよい食事を摂るようにもアドバイスしています。
頭痛については、夏場であれば脱水や熱中症の影響も考えられるでしょう。念のため、水分を摂れていたかどうかも確認しています。
外で働いていること、数日はあまり水分を摂れていなかったことから今回のお客さまは脱水や熱中症の可能性も否定できません。
そのため、安易に頭痛薬をすすめずにまずは水分をしっかり摂ってみるようにアドバイスをしました。
夏バテの症状に合わせてきめ細やかな接客を
夏バテは外との気温差や睡眠不足、水分や塩分不足などが原因で起き、倦怠感や食欲不振、頭痛などがよく見られます。
倦怠感が出ている方にはビタミン剤がおすすめです。吸収性や効果の問題から、サプリメントではなくできるだけ医薬品すすめましょう。
食欲不振には生薬を使った胃腸薬なども候補となります。
また、夏バテのように見えてもほかの疾患が隠れている可能性も考えられるため、症状をしっかりヒアリングして適切なアドバイスができるようにしましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。
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