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2021-07-09
偽アルドステロン症とは?登録販売者が医薬品販売の際に注意すべきこと
・Before
・After
市販薬で起こりうる副作用で、注意しなければならないもののひとつに「偽アルドステロン症」があります。登録販売者試験で出題されることもありますが、何が原因でどのような症状が出るのかをご存知でしょうか。 登録販売者の声かけや確認で防げる可能性があるので、この記事を参考に偽アルドステロン症についてしっかり知っておきましょう。
偽アルドステロン症とは?主な原因も解説
まずは、偽アルドステロン症の概要と原因について解説します。
偽アルドステロン症とは
偽アルドステロン症とは、グリチルリチン酸が配合された医薬品によって起きる副作用です。
グリチルリチン酸は甘草の主成分で、多くの漢方薬をはじめ、かぜ薬、胃腸薬など様々な医薬品に含まれています。
アルドステロンは血圧を上げるはたらきをもつホルモンの1つで、分泌が増加して高血圧やむくみなどの症状が出ることをアルドステロン症といいます。
偽アルドステロン症は、アルドステロンの値は増えていないにもかかわらず、アルドステロン症と同じような症状が出ることが特徴です。
なお、日本では女性のほうが発症しやすく、50~80代で見られやすいことがわかっています。
また利尿薬やインスリンを服用している方は発症リスクが高くなるため注意が必要です。
原因は?
主な原因は、甘草やその主成分であるグリチルリチン酸を含む医薬品の摂りすぎです。
グリチルリチン酸はアルドステロンと似たはたらきをもっています。
そのため、摂りすぎると血圧上昇やカリウム減少など、アルドステロンが増加したときと同じような症状が出てしまうのです。
偽アルドステロン症の症状は?
偽アルドステロン症は甘草やその主成分のグリチルリチン酸が原因で起きると説明しました。続いてここでは、偽アルドステロン症の症状について説明します。
偽アルドステロン症の主な症状
主な症状は次の通りです。
・体のだるさ
・手足の脱力感
・血圧上昇
・筋肉痛
・こむら返り
・頭痛
・食欲低下
・動悸
・吐き気
・嘔吐
など
このうち初期段階では「手足のだるさ」や「しびれ」などが見られます。
その後、しだいに体に力が入りづらくなったり筋肉痛やこむら返りが起きたりします。
重症化するとどうなる?
さらに症状が進むと意識がなくなったり息苦しさを感じたりします。歩行困難をきたし、立ち上がれなくなるのも重症化のサインです。
糖尿病を患っている方では、インスリンの分泌不全が起き症状が悪化することも知られています。
とくにインスリンを投与している方は重症化しやすいため注意しなければいけません。

偽アルドステロン症の治療法
偽アルドステロン症が疑われたら、主に次の対応を行います。
・カリウム製剤を投与する
・スピロノラクトンを投与する
まずは、原因と考えられる薬の服用を中止します。
また、偽アルドステロン症はカリウム値の低下で起きるためカリウム製剤を服用する場合もありますが、尿中へのカリウム排泄が増すのみであまり効果がないとも言われ、必ずしも投与されるわけではありません。
治療にはアルドステロンのはたらきを抑えるスピロノラクトンが有効とされています。
カリウム製剤やスピロノラクトンは市販薬での扱いがないため、基本的にはお客さまへの適切な受診勧奨が登録販売者の役目と言えるでしょう。
偽アルドステロン症の防止や早期発見のために登録販売者ができること
現在服用している医薬品やサプリメントを聞く
偽アルドステロン症の症状は、ドラッグストアでもよく相談を受ける内容です。
これらの相談を受けたら念のため現在服用している医薬品やサプリメントなどを聞くと、偽アルドステロン症の疑いがあるかどうかを判断しやすくなるでしょう。
ただし偽アルドステロン症は、甘草やグリチルリチン酸を配合している医薬品を服用してすぐに症状が出るとは限りません。
約4割の方は3ヶ月以内に症状が出ると言われますが、早い方だと服用開始から10日ほど、一方で、数年以上服用したあとに副作用が起きる場合もあります。
まずは原因になりそうな薬の服用をどれくらい続けているのか確認しましょう。
また甘草やグリチルリチン酸を含む医薬品の販売時は、ほかに服用している薬がないか聞き、過剰摂取が起きる状況になっていないかもチェックすると安心です。
注意が必要な医薬品を確認しておく
甘草は数多くの漢方薬に含まれています。
またグリチルリチン酸は、抗炎症作用をもつため風邪薬やトローチなどにもよく配合される成分です。
具体的には、以下のような製品に含まれています。
・甘草湯
・桔梗湯
・加味逍遙散
・五苓散
・小青竜湯
・ルルアタックTR
・コルゲンコーワトローチ
・パブロントローチAZ
・明治Gトローチ
・ロートアルガード鼻炎内服薬ZⅡ
など
そのほかサプリメントや食品などに含まれている場合も多いため、お客さまに販売する際は成分表をよく確認するよう意識しましょう。
初期症状を見逃さない
偽アルドステロン症の症状は、原因となっている薬の服用を止めて適切な治療をすれば数週間ほどでおさまると言われています。
一方で悪化すると歩行困難や呼吸困難など重篤な症状が出る場合もあるため、できるだけ早い段階で治療を始めることが大切です。
実際に、偽アルドステロン症により血圧が上がっていると気がつかず、降圧剤を増量して服用していた例もあります。
「手足の脱力感やしびれが少しずつひどくなっている」「筋肉痛がなかなか治らない」などの相談を受けたら、偽アルドステロン症を疑いましょう。
疑わしい症状がある場合は医療機関への受診をすすめる
偽アルドステロン症の判断や原因となる医薬品の中止は、登録販売者の一存ではできません。
お客さまにヒアリングしたうえで偽アルドステロン症が疑われる場合は、必要に応じて受診勧奨することが重要です。
そのためには前述のとおりお客さまの症状をしっかりと見て聞いて、初期症状を見逃さないよう注意しましょう。



偽アルドステロン症の特徴を見逃さない接客が大切
偽アルドステロン症は、グリチルリチン酸のはたらきによりアルドステロンが増加したときと同じような症状が出てしまう副作用として知られています。
手足のしびれや脱力感、高血圧や筋肉痛などの症状が徐々に悪化している場合は、偽アルドステロン症の初期症状を疑いましょう。
悪化すると日常生活に支障が出るような症状も見られるため、早めの対処が大切です。
甘草やグリチルリチン酸を含む医薬品は市販薬にも多くあります。
お客さまが普段から飲んでいる薬を確認して、甘草やグリチルリチン酸を摂りすぎていないかチェックしましょう。
もし偽アルドステロン症の症状が疑われる方が来店したら、必要に応じて医療機関を受診するように伝えてください。

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