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2021-03-05
除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒…意味や効果の違いをわかりやすく解説!
・Before
・After
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日頃からこまめな感染対策をする方がたくさんいます。そのようなとき、よく耳にするのが「殺菌」や「滅菌」「除菌」などの言葉です。ハンドソープやアルコール消毒液などのパッケージに書かれているこれらは、どれも同じように見えますが実はそれぞれ違う意味をもっています。 お客さまに「殺菌と滅菌って何が違うの?」などと聞かれても答えられるように、ここではそれぞれの言葉の意味や違いを解説します。
言葉の意味や効果は?大きく分けて2種類!
「除菌」「抗菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」、意識しないで見ていると同じ意味に感じるかもしれません。
しかし、表している意味はすべて異なります。また、「殺菌」と「消毒」は医薬品や医薬部外品にしか記載できない言葉です。
これらの言葉を大きく「菌の減少や増殖を抑制」をするものと「菌を殺す」ものとに分類して、まずはそれぞれの意味を確認していきましょう。
菌の減少や増殖の抑制効果が期待できる
菌を殺すわけではなく、数を減らしたり増殖を抑えたりするはたらきを表すものが「除菌」と「抗菌」です。
■除菌
菌を取り除く、数を減らすといった意味をもつのが「除菌」です。
あるものに付着している菌を物理的に拭き取ったり、化学的にアプローチしたりすることで菌を取り除き、数を減らします。
菌の数を減らすだけなので、完全にゼロにすることはできません。10あった菌を2や3まで減らすというイメージをもっておくとよいでしょう。
主に日用品で使われる言葉です。
■抗菌
今以上に菌が増殖しないように抑える意味をもつのが「抗菌」です。
すでにある菌を減らしたり殺したりすることはできません。10ある菌が11、12、13とこれ以上増えないようにするのが抗菌です。
ただし、抗菌とうたわれていても絶対に菌が繁殖しないわけではないので注意しましょう。あくまでも「増殖しにくい」という意味合いです。
「菌を殺す」 効果が期待できる
「除菌」や「抗菌」とは違い、これから解説する「殺菌」「滅菌」「消毒」は、菌を殺す意味をもちます。
■殺菌
字のとおり、「殺菌」とは菌を殺すという意味です。
殺菌は医薬品や医薬部外品のみでうたうことができます。殺菌することで10あった菌を2や3のように数を減らすことが可能です。
菌を殺すことはできますが、すべての菌を殺すことはできません。
先ほど解説した除菌と意味が似ているように感じますが、除菌は菌を物理的に取り除くことで数を減らすもの、殺菌は殺すことで減らすものなので違いに注意しましょう。
■滅菌
「滅菌」も殺菌と同様に菌を殺すという意味をもち、10ある菌を限りなく0に近い数字まで減らせるのが特徴です。
殺菌ではすべての菌を殺すことはできませんでしたが、滅菌はほぼ0にできるため、菌を殺す効果は滅菌のほうが高いといえます。
ガーゼや手術用具などに施されているケースが多いでしょう。
■消毒
菌の数を減らしたり、感染力を失わせたりするのが「消毒」です。
殺菌と同様に、医薬品や医薬部外品でのみ標榜できます。殺菌と意味が似ていますが、殺菌はある程度の数の菌を殺すもの。
消毒は必ずしも菌を殺すわけではありませんが、病原性がある菌を無害化することが可能です。

ドラッグストアによくある製品はどれに該当するのか
ドラッグストアには様々アイテムが取りそろえられています。よく見かけるものがどれに分類されるのか、代表的な商品を見ていきましょう。
■除菌
■抗菌
■殺菌
■滅菌
■消毒
同じアルコール消毒用の製品でも、除菌できるものと消毒ができるもとがあります。
主に台所に使うような製品は除菌、傷口や手指に使うものは消毒となっている場合がほとんどです。
除菌に使える製品として、近頃では次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水もよく見かけます。この2つは、名前は似ているもののまったくの別物なので注意しましょう。
まず次亜塩素酸ナトリウムは、いわゆる家庭用の漂白剤です。強いアルカリ性をもつため、手指の除菌には向きません。主にドアノブや食器類などの菌やウイルスを取り除くのに用いられます。
一方で次亜塩素酸水は、食品にも使われるケースがあるものです。次亜塩素酸を薄めて作った溶液のことで、ウイルスの除菌にも有効だと言われています。



使用時の注意点
それぞれの製品には、使用するうえでいくつか注意点があります。
正しく使わないと人体に害が出たり効果が十分に出なかったりする可能性もあるので気をつけましょう。
ハンドソープ
殺菌成分を含むハンドソープを使うと、人によっては肌荒れを起こすことがあります。
殺菌成分を含まないハンドソープでも、十分な洗浄で手に付いたウイルスを大幅に減らすことが可能です。
ウイルスの残存量に殺菌成分が入っているかどうかはあまり関係ないとのデータもありますので、手が荒れやすいお客さまには無理に殺菌成分入りのハンドソープを勧める必要はありません。
アルコール
ウイルスの消毒に用いる場合は、アルコール濃度が70%以上のものが推奨されています。
製品によってはアルコール濃度が70%より低いものもあるので、お客さまに説明を求められた際は濃度の確認も大切です。
またアルコールは手指の消毒にも使えますが、繰り返し使用することで肌が乾燥し荒れてしまう可能性もあります。
肌が荒れやすいお客さまへは同時に保湿を行うよう推奨しましょう。
次亜塩素酸ナトリウム
強いアルカリ性をもつため、金属の除菌に使用すると腐食を起こす可能性があります。においも強いため、換気しながらの使用が無難です。
また酸性の洗剤などと混ざると有毒なガスが発生するので併用しないように伝えましょう。
次亜塩素酸水
ウイルスに活性を示すほどの濃度では皮膚や粘膜に刺激があるため、手指の消毒には使わないようにします。
次亜塩素酸水は汚れている場所で使うと除菌効果が減少するため、拭き取る場所の汚れはあらかじめ取り除いてから使うと効果的です。
なお、空間除菌として次亜塩素酸水を使うとよいという話もありますが、空間に次亜塩素酸水を噴霧すると鼻やのどが刺激でダメージを受けてしまうので避けましょう。
正しい意味を知り、適切なご案内を
除菌や抗菌など似ている言葉は多くありますが、どれもそれぞれ違った意味をもちます。
菌の数を減らしたいのか、それともやっつけてしまいたいのか、目的に応じて適切な製品を選ぶことが大切です。
次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水のように手指ではなくドアノブや食器などの除菌に用いられるものもあるので、使用したい部位に合わせて選ぶ必要もあります。
また近頃では、菌やウイルス感染対策に対する需要が高まっていることもあり、効果があるのか不明な除菌方法が広まっていることも少なくありません。
お客さまの健康を守るためにも、正しい知識をつけておくよう心がけましょう。

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