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2022-01-21
薬のプラセボ効果とは?正しく理解してお客さまへの説明に役立てよう
・Before
・After
有効成分が含まれていない偽薬にもかかわらず、服用により何らかの効果が発現することを「プラセボ(プラシーボ)効果」と呼びます。 偽薬の服用により症状が改善する場合もあれば、副作用が出る場合もあるのです。 今回は薬のプラセボ効果について、そのメカニズムや活用例、注意点などを解説します。 正しく理解してお客さまへの説明に役立てましょう。
プラセボとは?
プラセボとは、臨床試験などで用いられる「偽薬」を示す言葉です。
見た目は医薬品と同じですが有効成分を含まないため、治療効果はありません。
プラセボという言葉は、ラテン語の「I shall please(私は喜ばせるでしょう/満足するでしょう)」に由来しています。
そのため、もともとは気休めや機嫌を取るためのものなどを意味していました。それが転じて医学・薬学で用いる偽薬を指すようになります。
現在のように、有効成分が入っていない偽薬でも症状の改善効果が得られるというプラセボ効果の概念が広まったのは、アメリカの麻酔科医ヘンリー・ビーチャーによる論文がきっかけです。
第二次世界大戦下で不足する手術用麻酔の代わりに食塩水を用いたところ、麻酔薬の使用時と同様にショックを避けられたことを受け、プラセボに関する研究が始まりました。
プラセボ(プラシーボ)効果とは?
プラセボ(プラシーボ)効果とは、実際には有効成分が入っていない薬を、患者さまが本物の薬だと認識して服用した際に、薬理作用以外による症状の改善や副作用などの効果が発現することを言います。
つまり、「薬を飲んだ」という事実だけで体に変化が起こるというわけです。
プラセボ効果は、年齢や性別などにかかわらず、一定の割合で発現すると考えられています。
数値などで変化を測定できるケースもあれば、症状に変化はなく気分の改善のみに留まる(効果は確認できない)ケースもあるようです。
このようにプラセボ効果は必ず発現するものではないため、治療の代替にはなりません。
しかし、プラセボ効果によって高い治療効果が得られたり、薬の量を減らしたりできる可能性があるなど、うまく活用することで様々なメリットが期待できます。
現在では、薬を飲まないと不安という方へ向けた食用偽薬も販売されているのでチェックしておきましょう。
プラセボ効果は「病は気から」のことわざと同じ概念をもつものとも言え、これまでも医薬分野で用いられてきました。
近年では「思い込みにより得られる効果」をあらわすものとして、そのほかの分野にも広く活用されるようになっています。
プラセボ効果のメカニズム
プラセボ効果のメカニズムは、まだ完全には解明されていません。
しかし、その根底にあるのは体にもともと備わっている自然治癒力だと言われています。
それに加え、薬を服用したことによる安心感や効果への期待感、信頼感などの要因が影響し、プラセボ効果が発現すると考えられています。
そのため、日常で服用している薬の効果にも、一定の割合でプラセボ効果が含まれていることもあるのです。
プラセボ効果はどのような状態でも発現するわけではありません。
一般的に、心理的な影響の大きい疼痛や慢性疾患などに対して用いた際に発現しやすいと言われています。
医薬品開発でも活用されている
プラセボは、医薬品開発における臨床試験(治験)で、薬の有効性を明らかにするために活用されています。
新薬と全く同じ剤型のプラセボを用意して被験者に服用してもらい、医薬品とプラセボによる結果を比較して効果や安全性の確認を行うのです。
新薬はプラセボよりも明確な優位性がなければ認可は下りません。
すでに認可されている医薬品であっても、再評価で優位性が認められなければ認可は取り消しになります。
臨床試験では、被験者の思い込みによって薬理作用がなくとも症状の改善が見られるプラセボ効果が働くことが想定されます。
そのため、被験者にも医師側にも使用する薬が本物かプラセボであるかを知らせず、「二重盲検比較試験」で先入観や恣意性を排除した実験を行うのです。
現在の臨床試験は、「患者は最良の治療を受けられるべき」という倫理上の問題からプラセボではなく類似薬で行われることが増えています。
一方、類似薬のない新しい作用機序の医薬品についてはプラセボを用いて実施される場合もあるようです。
薬物治療における注意点
プラセボ効果は、症状の改善という良い結果をもたらすこともありますが、薬物治療においては十分に注意を払わなければなりません。
それは、効果が良い方向に発現しない場合もあるからです。たとえば「本当にこの薬は効くのだろうか」と疑念を抱いたまま服用すると、十分な効果が得られないケースも出てくるでしょう。
これもプラセボ効果の一種で、とくにマイナスに働くものはノセボ(ノシーボ)効果と呼ばれます。
プラセボ効果がマイナスに働くケースとして知られているのが、ジェネリック医薬品です。ジェネリック医薬品が安価であることなどを理由として、「ジェネリック医薬品は効果が薄い」と思い込んでいる方もいます。
その思い込みによって実際に薬を服用しても十分な効果を得られなかったり、思いもしない有害事象や副作用が出現したりする場合もあるのです。
OTC医薬品を扱うドラッグストアなどで接客していた際、お客さまから「安い薬やPB商品は効かなかった」「CMの商品の方が良く効いた」などと言われた方もいるのではないでしょうか。
これも、「高い薬を飲んだから治るはず」「安い薬は効かない」という一種のプラセボ効果が関係している可能性があります。
一方で、お客さまにしっかりと情報提供して信頼してもらったうえで医薬品を販売できれば、薬理作用とプラセボ効果の両方が期待できます。
ただし、プラセボ効果は不確実なものです。定められた以上の効果があるように伝えると薬機法違反になりますので、くれぐれも注意しましょう。
まずはお客さまとの信頼関係構築が重要
プラセボ効果は心理的な影響が強いため、必ず発現するわけではありません。
しかし、プラセボ効果をうまく使えば、薬理作用に加えて良い効果を得ることも期待できます。
お客さまから商品の選び方や違いを尋ねられたときは、適切な医薬品情報を提供し、お客さまの薬に対する不信感を取り除くことを意識して接客してみましょう。

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