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2022-01-14
PMSを緩和する市販薬はある?悩む方への対処方法についても解説【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
月経前に頭痛や体のだるさなどの不調を感じるPMSをご存知でしょうか。10代から40代女性の2人に1人はPMSに悩まされていることが株式会社ツムラの調査でもわかっています。 PMS治療は医療機関でも行えますが、それを知らなかったり、なかなか受診に踏み切れなかったりする方もいるかもしれません。今回は、PMSの治療方法や受診の前段として有効な市販薬について解説します。
PMSとは?
PMS(premenstrual syndrome)は「月経前症候群」とも呼ばれ、月経が始まるおよそ3日~10日前の期間に続く不調のことです。
なぜPMSが起こるのか、はっきりとした理由はまだわかっていません現状、原因として考えられているのは、プロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲン(卵胞ホルモン)の急低下、「幸せホルモン」と言われる脳内物質セロトニンの欠乏です。
月経前になると、妊娠を助けるために水分を溜め込むプロゲステロンの分泌量が増えて、むくみや頭痛などの症状が出ることもあります。
代表的なPMSの症状は、次の通りです。
自律神経が関わる症状
- 食欲不振
- 過食
- のぼせ
- めまい
- 倦怠感
など
心の症状
- 情緒不安定
- イライラ
- 抑うつ
- 不安
- 強い眠気
- 集中力の低下
- 睡眠障害
など
体の症状
- 腹痛
- 頭痛
- 腰痛
- お腹の張り
- 乳房の張り
- むくみ
など
株式会社ツムラの調査によると、PMSの症状がある女性の3人に1人は天気の変化で症状が悪化しているとの報告がされています。
気圧が大きく下がる日にPMSが重なると、つらい思いをする方が多いようです。
PMSのなかでも精神的な症状が強く出ているものは、PMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれます。
情緒不安定やイライラなどの症状が出るため、人とのコミュニケーションに支障があるような場合には、早急な対処が必要でしょう。
PMSの治療方法
PMSの治療方法は、薬を使う方法とそうでないものとに大きく分けられます。
薬を使わない治療方法
薬を使わない対処方法に、病状の記録とセルフケアがあります。
どのような症状がいつから出ているのかを記録することは、PMSと上手に付き合っていくうえで有効です。
体のリズムを把握し、体調が優れないときは休息を取ったり、気分転換をしたり、意識的にリラックスしたりする時間を取りましょう。
ストレスを溜めないために、仕事など予定を詰めすぎないことも大切です。
また、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6を摂るのも症状の緩和に有効だと言われています。
とくに精神的な症状が出やすい方は、カルシウムやマグネシウムの摂取がおすすめです。
カフェイン、アルコール、喫煙は控えるようにしましょう。
そのほか、女性ホルモンのバランスを整えるイソフラボンが豊富に含まれている大豆製品も良いと言われています。
薬を使う治療方法
■ホルモン剤
PMSには、ホルモンバランスの変動が関係しているといわれています。
低容量ピルなどのホルモン剤は、ホルモンバランスの変動を抑える薬です。
女性ホルモンを補うので、肌荒れやニキビの改善にも期待できます。
経血の量を減らす効果もあり、月経痛を和らげることも可能です。
■漢方薬
PMSの症状を漢方薬で緩和することもできます。
代表的なのは、後述する当帰芍薬散や桂枝茯苓丸、加味逍遙散などです。
■抗うつ薬
抑うつや不安など精神的な症状が強い場合は、抗うつ薬も有効です。
SSRIというセロトニンの働きを増強させる薬がよく使われます。
うつ病の場合はしばらく飲み続けるのが一般的ですが、PMSの治療で使う場合は症状が出ている間だけ、つまり症状が出てから月経が始まるまでの期間にだけ服用することが多いです。
■利尿剤
むくみが出ている場合は、利尿剤を使うこともあります。
足がパンパンになって痛みが出たり、むくみで体重が増加したりする方に向いている薬です。
PMSに効く市販薬はある?
市販薬にも、PMSの治療に使えるものがいくつかあります。
精神的な症状を抑える「心のケア」がメインのものから、身体的な症状を抑える「体のケア」がメインのものまで様々です。
症状を詳しくヒアリングして、患者さまに合う薬を提案するようにしましょう。
心のケアに使える市販薬
■プレフェミン
チェストベリーというハーブを主成分として使ったPMS専用の治療薬です。
ゼリア新薬工業株式会社が発表した海外臨床試験の結果では、月経が始まった直後から飲み始めて早い方では約1ヶ月効果があらわれたと報告されています。
さらに3ヶ月(3周期)ほど服用を続けた場合に90%以上の方が効果を実感できたというデータもあり、継続した服用が求められます。
イライラや抑うつ気分など心の症状だけでなく、頭痛や乳房の張りなど体のケアにも使えます。
▼詳しくはコチラ
プレフェミン添付文書
■命の母ホワイト
婦人科系の疾患によく使われているトウキやシャクヤクなどの11種類の生薬漢が配合されています。
ヒステリー、精神不安、腰痛、頭痛、貧血、冷え性など、心と身体の両方を広くケアできます。
さらに、月経痛や月経不順の改善にも効果が期待できるでしょう。
▼詳しくはコチラ
命の母ホワイト添付文書
■加味逍遙散(かみしょうようさん)
精神不安など心の症状が出やすい方の選択肢にあがりやすい漢方薬です。
PMSにおける症状のほか、月経痛や月経不順の改善が期待できます。
体のケアに使える市販薬
■桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は、PMSのほか、肩こりや下腹部痛などの症状がある場合によく使われています。
血の巡りを良くする働きがあるため、婦人科系の疾患に使われやすい漢方薬です。
体力が中等度以上あり、のぼせや手足の冷えが出やすい方に向いています。
■補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
体のだるさがあるときは、漢方薬の補中益気湯を選ぶのも良いでしょう。
手術後の体力回復のために処方されることもある薬で、いわゆる虚弱体質の方に向いています。
胃腸の調子が優れず、食欲が湧かないという方にもおすすめです。
■当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
虚弱で冷え性、疲れやすい方に向いています。
血行を良くすることで体を温める効果が期待できる漢方薬です。
婦人科系の疾患によく使われるもので、PMSによるむくみや月経痛、更年期障害など幅広く対応できます。



別の病気の可能性も…対応は慎重に
月経前のイライラや腹痛、倦怠感などPMSと似た症状が、ほかの疾患によるものである可能性も。
次では、PMSと混同しやすい疾患について解説します。
PMDD(月経前気分不快障害)
月経前にイライラや抑うつなど心の症状が強く出る場合は、PMDDの可能性も考えなければなりません。
治療方法はPMSと同様にホルモン剤や漢方薬などが使われます。
また、カウンセリングも症状の緩和に有効です。
PMDDの場合は、婦人科ではなく精神科が適しているケースもあるので、お客さまの話をしっかり聞いて受診勧奨の可否を判断しましょう。
月経困難症
月経困難症とは、月経の周期に伴って下腹部痛や頭痛、吐き気や下痢などの症状が出る疾患のことです。
子宮の強い収縮や、子宮や卵巣の疾患が原因で発症します。
月経困難症が疑われる場合は、婦人科で原因をしっかり調べてもらうことが大切です。
更年期障害
閉経の前後であらわれる様々な症状は、更年期障害の可能性も。
更年期になると、PMSと同じようにほてりやのぼせ、発汗などの症状が出ます。
倦怠感や冷え、イライラなどを訴える方もいるでしょう。
症状はPMSと似ているものの、根本的な原因が違うため、生活習慣の改善や心理療法、薬物療法などから適した治療を行う必要があります。
市販薬を活用して症状の緩和を
PMSは月経前にあらわれるイライラや腹痛などの症状のことで、女性の3人に1人はその症状に悩んでいると言われています。
プレフェミンや命の母ホワイト、漢方薬などの市販薬もあるので、お客さまの症状に合わせて選んでいきましょう。
ただし、人によっては市販薬をしばらく服用しても症状が改善しない場合もあります。
長期的に服用すると効果が出てくる薬もあるため判断は難しいですが、なかなか改善が見られない場合は婦人科を受診してもらいましょう。
ホルモン剤や利尿剤などは医療機関でしか処方してもらえません。
心の症状が強い方には精神科の受診も勧めてみてください。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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