現場で役立つ知識
2023-01-20
風邪に効く漢方、葛根湯と麻黄湯の使い分けは?<登録販売者向け>
・Before
・After
風邪が流行する時期になると売れ行きがよくなるのが葛根湯と麻黄湯です。どちらも風邪に使われる漢方薬ですが、厳密には使い分けなければなりません。お客さまから「葛根湯と麻黄湯どちらを選ぶべき?」と聞かれることも多いので、この2つの違いについてはしっかり知っておきましょう。今回はお客さまに最適な漢方薬を提案できるようになるために、葛根湯と麻黄湯の違いについて詳しく解説します。葛根湯を選ぶか麻黄湯を選ぶかで効果が大きく変わるので、自信をもって選択できるようになりましょう。
基本をおさらい!葛根湯と麻黄湯
葛根湯と麻黄湯のパッケージを見ると、どちらも「風邪の引き始めに」と書かれていることが多いので、葛根湯と麻黄湯の違いがよくわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、両者の基本的な特徴について確認しておきましょう。
葛根湯とは
葛根湯には、次の生薬が配合されています。
- 葛根(カッコン)
- 麻黄(マオウ)
- 大棗(タイソウ)
- 甘草(カンゾウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 生姜(ショウキョウ)
葛根湯は、風邪の引き始めによく用いられる漢方薬です。
風邪といえば葛根湯というイメージが強いかもしれませんが、初期の段階にしか効果はありません。
鼻風邪や頭痛、肩こり、筋肉痛があり、発汗がない方に適しており、比較的体力がある方向けです。
基本的には、体を温めて発汗を促すことで風邪の症状をやわらげる漢方薬として使われます。
麻黄湯とは
麻黄湯には、次の生薬が含まれています。
- 麻黄(マオウ)
- 甘草(カンゾウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 杏仁(キョウニン)
葛根湯には7種類の生薬が含まれていますが、麻黄湯には4種類しか含まれていません。
このことから麻黄湯は、葛根湯に比べてとてもシンプルな構成の漢方薬だといえます。
基本的に寒気が強く出て発汗がなく、症状が強めに出ている方に適した漢方薬です。
葛根湯と同様に風邪の引き始めに用いられますが、節々に痛みがあるかどうかが使い分けのポイントとなります。
葛根湯と麻黄湯の違い
では、ざっくりと葛根湯と麻黄湯の違いについて見ていきましょう。
似ているようで違いますので、しっかり違いを理解しておいてください。
両方とも風邪の引き始めに使う
葛根湯と麻黄湯は、両方とも風邪の引き始めに使います。
風邪を引いて何日か経っている場合は効果を発揮しづらいので注意しましょう。
「少し体がゾクゾクする」「鼻水が出てきた」など、初期の症状への効果が期待できます。
風邪の引き始めで汗をかいていなければ、葛根湯や麻黄湯が合います。
どちらも発汗を促す働きがあるためです。
自然に汗をかいている場合は、葛根湯や麻黄湯ではなく、軽い発汗作用のある桂枝湯や体を温める真武湯が使われます。
葛根湯のほうが使える症状が多い
葛根湯は、麻黄や桂皮で体を温め、体表にこもっている熱を葛根で冷やすことで風邪の症状を抑える漢方薬です。
主に次のような症状に効果があります。
- 初期の風邪
- 鼻炎・鼻風邪
- 頭痛
- 肩こり・筋肉痛
- 手、肩の痛み
葛根湯には水分の代謝を調節する働きがあるため、鼻風邪や鼻炎など鼻の症状にも効果的です。
また、「気」が流れている経路を整えることで、頭痛や筋肉痛などの症状も抑えられます。
一方で、麻黄湯は次の症状に用いられることが一般的です。
- 初期の風邪
- 鼻風邪
- 気管支炎
- 鼻詰まり
見てもらうと分かるとおり、効果がある症状の種類は葛根湯のほうが多くあります。
葛根湯のほうが守備範囲が広いため、使いやすいと言えるでしょう。
体を温める作用は麻黄湯が強い
葛根湯にも麻黄湯にも体を温めて発汗を促す働きがあります。
体を温める働きや発汗を促す効果がより高いのは、麻黄湯のほうです。
そのため、熱が高いときは葛根湯より麻黄湯が向いています。
悪寒の症状が強い方や高い熱が出ている方には、麻黄湯を勧めましょう。
葛根湯と麻黄湯の使い分けは?
では、葛根湯と麻黄湯の使い分けについて見ていきましょう。
基本的には、出ている症状や体型で選びます。
「筋肉」の症状があるとき
筋肉痛のような症状や肩こりがある場合は、葛根湯がおすすめです。
風邪を引いているときは、寒さで体の表面が冷えて経路の流れが悪くなっています。
その結果として気の流れが悪くなり、筋肉痛や肩こりなど痛みが引き起こされるのです。
葛根湯には体表面を温めて経路の流れを整える働きがあるため、痛みの症状緩和にも使用できます。
以下のような場合は葛根湯を選ぶと良いでしょう。
- 風邪の引き始め
- 汗をかいていない
- 筋肉痛や肩こりがある
なお、葛根湯は体力が比較的ある方向けの漢方薬であり、体力が低下している方には向かないので注意してください。
「寒気」が強いとき
寒気が強く、体がゾクゾクするようなときには麻黄湯がおすすめです。
麻黄湯には、体を温める働きのある麻黄が葛根湯よりも多く配合されているため、温める力に優れています。
体を温めて発汗させ、熱を下げるため高い熱が出ている方にも適しています。
たとえば、麻黄湯は以下のような方に向いています。
- 風邪の引き始め
- 汗をかいていない
- 寒気が強い
つまり、「筋肉痛や肩こりがあるか」と「寒気が強いか」を見極めることで、葛根湯と麻黄湯の使い分けが可能になるのです。
とはいえ、寒気の強さに関しては明確な基準がないため、強いか弱いかを判断するのは簡単ではありません。
少しの寒気でも「寒気が強い」と感じるお客さまもいるでしょう。
寒気だけでなく、体質や体型にも注目してみましょう。
体型ががっちりしている方
体力があり、体型ががっちりしている方には麻黄湯が向いています。
体力には個人差があり、本来は麻黄湯が向いている方でも風邪を引いているために「体力がない」と言われるかもしれません。
そのようなときは、お客さまの体型を見ましょう。
がっちりしたタイプの体型であれば、麻黄湯が向いていると言えます。
インフルエンザにかかったとき
ただの風邪ではなく、インフルエンザにかかったときは麻黄湯が向いています。
前提として、登録販売者はお客さまがインフルエンザかどうかを判断できず、確定のためには医療機関に行ってもらうしかありません。
一般的に、38度以上の熱があり関節痛が見られ、症状が急速に出始めた場合はインフルエンザの可能性があると考えられます。
麻黄湯には、タミフルと同等の抗ウイルス効果があると言われているため、インフルエンザウイルスへの感染が疑われる方への選択肢の一つとなるでしょう。
ただし、万が一のことを考えて、38度以上の熱が出ている場合には医療機関を受診するように勧めるのが無難です。
葛根湯と麻黄湯の使い分けは難しくない
葛根湯と麻黄湯はどちらも風邪の引き始めに用いられる漢方薬です。
「一体どちらを選んだら良いの?」と悩むかもしれませんが、選び方はそれほど難しくはありません。
筋肉痛や肩こりがある方には葛根湯、寒気が強い方には麻黄湯が向いています。
判断が難しい場合には、体型や体力も参考にしましょう。
体力が比較的ある方は葛根湯、体力があり体型ががっちりしている方には麻黄湯が適しています。
麻黄湯はインフルエンザに罹患している場合にも使用できます。
どちらも似ている漢方薬のため、お客さまの症状をよくヒアリングして適切なほうを勧められるようにしておきましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。
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