正社員になりたい!
『沈黙は金なり?』
Aさんは、35歳でドラッグストア1社のみ、ご経験も10年と豊富であり、現在は副店長として真面目に業務に取り組む経歴の方だった。
問い合わせを頂いた際に、「このご経歴の方であればどこも引く手あまただろうな」とウキウキしながらお会いしたところ、不器用な方ながらも実直で真面目な印象の方だった。
一点、想定外の質問が来ると黙ってしまう、という点を除いては。
始めにお会いした際には(もちろん、エージェントと話をするときには緊張をする必要は全くないのだが)「少し緊張しておられるのかな?」と思う程度だった。
何度お話を重ねても変わらず、考えていないことにはフリーズをしてしまう…というのがAさんの癖だと気付いたのは4回目のお電話での際だった。
「○○というドラッグストアが募集を出しておりますが、いかがでしょうか?」
「ああ、拝見しました。いいですね、ぜひ応募してみたいです」
「それでは、ご希望に近いエリア職でよろしいでしょうか?」
「そうですねえ、うーん、全国も有りかなあ」
「全国職ですと、このような年収で福利厚生も~~となりますが、いかがでしょうか?」
「うーん………」(5分沈黙)
と頷いたあと、ずっと黙ってしまうのだ。
Aさんは恐らく、「軽々しく言葉を出してはならない」と、硬派な一面もあったのだろう。
それは転職エージェント相手なら問題ないのだが、しかし、実際には面接で裏目に出てしまった。
「ご苦労されたことはございますか?」
「そうですね、新店舗の立ち上げの際には、色々と苦労することが多かったです」
「どのようにそれを乗り切りましたか?」
「うーん………」(5分沈黙)
後日Aさんに聞いたところ、想像していた通り「軽々しく口に出せないと思って」とお話しをされておられたが、残念ながらお見送りとなってしまった。
なかなか人生の中で培った癖は抜けないものだ。そこで、ある提案をAさんにしてみた。
「会話の際には、『はい』で始めて『以上です』で終わるようにしましょう。その間に考えて、もし考え込むようでしたら簡潔にお答えしましょう」
Aさんも考えこむことによる不穏な空気感を避けたい…と感じていたようで、後日中堅ドラッグストアより正式に内定を頂くことができたのだが、「これからは黙らずに少しでも言葉にしていきます」と笑うAさんの言葉が印象的だった。
古くは「沈黙は金なり」ということわざがあり、ペラペラと話すことは軽薄だと受け取られることもあったが、面接では全く逆になることが多い。
1時間程度しかない面接で黙ってしまうことで、「あれ、何も考えていない人なのかな?」と捉えられてしまうのはあまりにもったいない。
面接では、「言葉こそ金」であり、その伝え方のサポートこそエージェントの仕事であることを実感した出会いであった。

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