燃え尽き症候群？

『燃え尽き症候群？』

1社で長く続けた方が転職を一度経験することで、「あれ、なんだ、気軽に転職ができるじゃないか」と考える方がおられる。

ノリが非常に軽いような求職者の方に対しては、キャリアアドバイザーから「内定をもらったからといって、すぐに決めるのではなく、しっかり考えてくださいね」と逆に提案することも、実は珍しくない。

Ａさんと出会ったのは3年前。大手スーパーマーケットにて25年勤務し、エリアマネージャー兼登録販売者として、エリート街道を歩いてきたＡさん。

少しだけ訛りのある関西弁で、何でもオープンにお話しされる豪快な男性だった。「いやほんまに、今の会社めちゃくちゃですわ。休みも月3日あったらええ方なんや」

話を聞いてみると、本当に過酷な環境で（かつ業務量の割にささやかな給与で）働いておられる様子だった。休みの日には呼び出されることも多く、旅行にも行けない、家族サービスも満足にできない、かつ年収もそこまで高くない…、ということだったので、転職のサポートをさせて頂くことにした。

Ａさんはコミュニケーション力も高く、経験も豊富なので（忙しい中で面接日程を調整すること以外は）順調に転職活動は進み、すぐに大手ドラッグストアより内定を獲得し、高い評価を頂いて理想の条件で入社されることになった。

Ａさんから再度お問い合わせを頂いたのはちょうど2年後。

「実はもう辞めてしもうたんですわ…。またサポートお願いしてもよろしいんですかね？」

話を聞くと、半年後に店長に昇進したところ、（ご本人曰く）目指していた店長という立場にあっという間に到達してしまい、突然むなしくなり衝動的に辞めてしまったとのこと。

（そうなる前に声かけをしてくれれば、アドバイスや提案ができたのに…）と思う私を尻目に、「まさに『燃え尽きました』。完全燃焼というやつですわな」とあっけらかんと笑うＡさん。

残念ながらご紹介できる求人が無く、「ほな、別業種にチャレンジしてみますわ」ということで、転職活動を陰ながら応援させて頂いた。

Ａさんから3度目の電話を頂いたのはその半年後。

「やっぱり別業種はあかんな！わしは登録販売者として生きていくのが向いてるみたいや」

話をまた伺ってみると、年収に惹かれ運送業で勤務してみたものの、思った以上の重労働に加え、労働条件が悪く、碌に睡眠も取れないとのことで、再度登録販売者として勤務したい…とのことだった。

ちょうどそのタイミングで、地域密着の大手グループのドラッグストアの担当の方から「店長経験者、マネジメント経験者が欲しいんですよね」とのお話しを頂いていたので、Ａさんんに紹介したところ、「おお！ええやん。ここの店はよく妻が使ってますわ」とのことですぐに応募をし、とんとん拍子に内定となった。

そこで、内定をお伝えする際にドラッグストアの担当の方と何度も話し合いを重ね、「具体的に入社した後はどんな業務をするのか」「今後Ａさんにはどうなってほしいのか」「会社が現在抱えている課題と、Ａさんに期待すること」を根ほり葉ほり聞いて、Ａさんに伝えた。

すぐに「ほな、入社させてもらいます！」と言うＡさんに、「1週間時間を置きましょう。しっかりイメージして、ご家族とも話し合って、問題無ければご承諾ください」と真面目に伝え、1週間後に丁寧な御礼メールとともに内定の御承諾の連絡を頂いた。

約3年のお付き合いをすると、もはや何でも言える間柄となっている私とＡさん。
入社前に「もう『燃え尽きたわ～（笑）』とか言わないでくださいね」と発破をかけたところ、「さすがに家族がおるし、めちゃくちゃ心配かけたからなあ。これからは地に足を付けて燃え続けますわ」と苦笑されておられた。

1社で長く続けている方は、転職を初めて経験することで「なんだ、簡単に転職ってできるんだ」と感じてしまう方がおられる。中には別業種へ行くことで、登録販売者の業務がいかに自分に向いているか…と身に染みる方も多い様子だ。

そんな迷っている・不安に感じている方へ、過剰に夢を見せるのではなく、リアルに働くイメージをしてミスマッチを無くす…それも我々転職エージェントの大きな仕事の一つであるのだ。