現場で役立つ知識
2021-01-29
うがい薬販売における注意点は?登録販売者がおさえるポイント【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
感染症予防や風邪を引いたとき、口臭を予防したいときなどに活躍するうがい薬。とても身近な存在ではあるものの、うがい薬の種類によって期待できる効果が違ったり使い方に注意が必要だったりすることは意外と知られていません。 お客さまの状態によっては、安易にうがい薬を販売してはいけない場合もあるので注意しましょう。ここでは、症状に合わせたうがい薬を提案するために登録販売者が知っておきたいこと、販売するときに確認しておきたいことや注意点などをご紹介します。
うがい薬に期待できる効果
入っている成分によって効果が異なるものもありますが、うがい薬には次のような効果が期待できます。
風邪やウイルス感染の予防
口腔内やのどに付着した菌・ウイルスを殺菌してくれるため、風邪やインフルエンザなどの予防効果があります。
ポビドンヨードのような殺菌成分を含んだうがい薬が有効です。
口臭の除去
口臭の原因となる雑菌が繁殖しないよう殺菌する効果もあります。こちらも殺菌成分を含むうがい薬が有効です。
炎症の抑制、のどの痛みや腫れの軽減
アズレンスルホン酸を含むうがい薬には、炎症を抑える効果が期待できます。そのため痛みや腫れなどを抑えることが可能です。
口内炎の症状を軽減
炎症を抑える成分が含まれているうがい薬を使うことで、口内炎の症状を軽減できます。
のどのイガイガや不快感の軽減
うがいによってのどに付着していた異物を取り除いたり、のどの乾燥を防いだりでき、不快な症状を和らげます。
うがい薬の主な種類とは
うがい薬に含まれている成分は、主に次の5つです。それぞれどのような働きがあり、どういった症状に使うのが向いているのかを確認しておきましょう。
ポピドンヨード
うがい薬特有の味やにおいの元となる成分です。「イソジン」を代表とするさまざまな商品に配合されています。
ポビドンヨードはうがい薬だけでなく、傷口の消毒や手術時の殺菌にも使われている成分です。
殺菌効果がメインなので、風邪の予防や口臭の除去によく効果を発揮します。
■期待できる効果
菌やウイルスを殺菌する効果があります。粘膜にも使えて刺激が少ないため、うがい薬の代表的な成分として昔から使用されてきました。
塩化セチルピリジニウム
ポビドンヨードのように独特な味やにおいがないため、「イソジン」などが苦手な子どもでも使いやすくなっています。
うがい後に味やにおいが口の中に残りづらいため、のどをリフレッシュしたいときにも使いやすいでしょう。
■期待できる効果
殺菌効果をもつため、風邪の予防や口臭の除去に効果的です。ただしポビドンヨードと比べると、ウイルスへの効果は劣ります。
インフルエンザウイルスに対する活性があるとも言われていますが、はっきりとした予防効果は明らかになっていません。
アズレンスルホン酸ナトリウム
青っぽい色のうがい薬に配合されているのがアズレンスルホン酸ナトリウムです。この青色は着色料ではなく、アズレンスルホン酸ナトリウム由来となります。
キク科の一種であるカミツレという植物から抽出される成分で、うがい薬以外にのどスプレーやトローチなどにも配合されています。
■期待できる効果
炎症を抑える効果がメインの成分です。
ポビドンヨードや塩化セチルピリジニウムのように殺菌効果はないため、風邪の予防や口臭の除去よりものどの痛みや腫れ、口内炎の症状を軽減させるのに向いています。
グリチルリチン酸
生薬の1種として知られている甘草から抽出される成分です。
「甘い草」と書くことからも分かるとおり、甘草を口に含むと独特の甘みが広がります。
■期待できる効果
炎症を抑える効果が期待できます。グリチルリチン酸同様、のどの腫れや痛み、口内炎の症状を軽減させるのに向いている成分です。
メントール
うがいをした後に口の中がスーッとするのは、このメントールのおかげです。
メントールはハッカやミントに含まれている成分で、爽快感を出すためにのどスプレーやトローチなどにもよく配合されています。
■期待できる効果
清涼感をもたらすことが期待できます。殺菌効果や炎症を抑える効果はとくにありません。
登録販売者が販売前に確認すべきこと
うがい薬を求めてお客さまが来店されたとき、お客さまが指定された商品をそのまま渡すのではなく「どういった症状でお困りですか?」と、一歩踏み込むように意識しましょう。
そうすることで、お客さまの症状や要望にマッチしたうがい薬を提案できるようになります。具体的には次のことを確認してみましょう。
どういった用途で使うのか
うがい薬とひとくちで言っても、入っている成分によってどのような効果が期待できるのかが変わります。
すでに症状が出ているのか、それとも予防で使いたいのかによって選ぶべきうがい薬が変わるため、ここは必ず確認しておきたいところです。
■風邪やウイルス感染の予防、口臭の除去の場合
ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウムが含まれたうがい薬
■のどの痛みや腫れ、口内炎の症状を軽減の場合
アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸が含まれたうがい薬
うがい薬を使うのは誰なのか
基本的にうがい薬はお客さまの用途に合わせておすすめしましょう。しかし使う人によっては、すすめるべき商品が変わることもあります。
■子どもが使う場合
とくにポビドンヨードが入っているうがい薬は、独特の味とにおいがあるため小さな子どもは受けつけない可能性も少なくありません。
普段からうがい薬を使って慣れている場合は問題ありませんが、初めて使う場合にはポビドンヨードではなく塩化セチルピリジニウムやアズレンスルホン酸などが入っているものを用途に合わせてすすめてみましょう。
■妊娠中の方が使う場合
妊娠中にポビドンヨード配合のうがい薬を使うのは控えたほうがよいでしょう。
妊婦さんがポビドンヨード配合のうがい薬を連用すると、ヨウ素過剰症を引き起こす可能性が高くなり、最悪の場合流産につながる危険性があります。
また、胎児の甲状腺機能低下の恐れも否めません。そのため妊娠中の方には、ポビドンヨードの入っていないうがい薬をすすめるのが基本です。
もし胎児への感染症の影響を気にしてうがい薬を購入するのであれば、水でのうがいでも効果に大きな違いはないこと、どうしても気になる場合は医師に相談すべきであることを伝えましょう。
どのような状況で使うのか
うがい薬を家で使うのならあまり気にする必要はありませんが、出先で使おうと考えている方には、薄めずにそのまま使えるものをすすめてあげると親切です。
のどの乾燥やイガイガ対策でうがい薬を使いたいと考えている方には、スプレータイプも適しています。
<対応例>のどの痛みで来店されたお客さまへの対応
・症状: のどの痛み
お客さま:
すみません、イソジンのうがい薬をください。
登録販売者:
イソジンのうがい薬ですね。風邪がはやっていますからね、予防で使われるのですか?
お客さま:
いえ、のどが痛いのでうがい薬を使おうかなと思って……。
登録販売者:
すでにのどの痛みが出ているのですね。イソジンは症状を抑えるよりも予防に向いているうがい薬なので、のどの痛みを緩和したいなら炎症を抑える成分が入っているうがい薬のほうが向いていますよ。
お客さま:
そうなのですね、ではそちらをください。
登録販売者:
もし痛みがとてもツライなら、のどスプレーやトローチのほうが小まめに使えるので便利かもしれません。
お客さま:
うーん、そこまで酷くはないから今回はうがい薬で大丈夫です。
登録販売者:
かしこまりました。もし症状が1~2週間続くようでしたら念のため医療機関を受診してくださいね。
接客のポイント
うがい薬を買われる方の多くは、「イソジン」のようにポビドンヨードが入っている商品を指定されます。
今回のお客さまも「イソジン」を指定されましたが、そのまま商品を渡してしまっては接客として不十分です。
ポビドンヨードのうがい薬の使用が向いているのは風邪の予防や口臭の除去をしたい方ですので、まずは用途がこれらに当てはまるかを確認しましょう。
今回のケースは、お客さまが「のどの痛み」に使いたいと言っているのでポビドンヨードのような殺菌系のうがい薬は不向きです。
すでにのどの痛みが出ている場合は炎症を抑えることで症状も軽減できると考えられるので、アズレンスルホン酸やグリチルリチン酸のような成分が入っているものをおすすめしました。
のどの痛みが気になるとのことなので、携帯しやすく痛みが気になるときにサッと使いやすいのどスプレーやトローチのご紹介もしています。
お客さまの症状に対応できる別剤形の商品も提示するとより親切です。
うがい薬を販売する際の注意点
たかがうがい薬と侮ってはいけません。正しく使わないと十分な効果が出ないどころか、健康に害を及ぼす可能性もあります。
時にはうがい薬の販売はせずに受診勧奨すべき場面もあるため、次に紹介する注意点をしっかりと押さえておきましょう。
使用方法は必ず守るよう促す
うがい薬はその都度うすめて使うものが多くあります。濃いほうがよく効きそうだからと規定量より多めに使ってしまわないよう注意しましょう。
かえってのどに刺激を与えてしまったり、吐き気や口中の不快感をもよおしたりする可能性があります。
かといって薄すぎると効果を十分に発揮できなくなるため、添付文書にある使用量を守って使うことが大切です。
妊娠中ではないか、持病がないかどうかを確認する
妊娠中の方がポビドンヨード配合のうがい薬を連用すると、ヨウ素過剰症を引き起こし最悪の場合流産してしまう可能性があるほか、胎児の甲状腺機能が低下してしまう恐れがあります。
数日程度の使用であれば問題ないといわれていますが、念のためポビドンヨードが含まれていない商品を推奨するのがベターです。
また、甲状腺機能が低下していたり亢進していたりする方もポビドンヨードが症状に影響を与える可能性があるので、避けたほうがよいでしょう。
うがい薬で起こりうる副作用を把握しておく
うがい薬の使用によって、以下のような副作用が報告されています。
・灼熱感
・口中の荒れ
・吐き気
うがい薬を使うことでかえって症状が悪化したり気になる症状が出たりした場合は、すぐに使用を中止してもらいましょう。
うがい薬で対応できない症状が出ていないかを確認する
次のような症状がある場合は、医療機関を受診してもらうようすすめる必要があります。
・息苦しさがある
・口の中だけでなく眼や鼻などにも炎症が起きている
口の中に膿がたまっている場合は扁桃周囲膿瘍、息苦しさがある場合は喉頭蓋炎などを起こしている可能性があります。
どちらも重症化すると呼吸困難を起こす恐れがあります。
また炎症が口内だけでなく眼や鼻など全身に出ている場合は、スティーブンスジョンソン症候群の可能性も否定できません。
これらの症状がある方が来店されたら必ず受診勧奨しましょう。
正しい知識を習得し、お客さまの症状にマッチしたうがい薬の提案を
うがい薬の正しい選び方は、意外と一般の方には知られていません。
そのため、痛みや腫れを抑えたいのに炎症を抑える成分が入っていないものを購入されている方も多いものです。
登録販売者は、一般医薬品販売のプロとしてどの成分がどういった症状に向いているかを把握し、お客さまの症状にマッチしたうがい薬を提案できるようにしましょう。
症状だけでなく、誰が使うのか、いつ使うのかに合わせた提案もできるとさらによいでしょう。
扁桃周囲膿瘍や喉頭蓋炎、スティーブンスジョンソン症候群のように市販薬では対応できないケースもありますので、うがい薬を買いに来られた方のなかから受診すべきお客さまを見逃さないことも大切です。
【執筆者プロフィール】
執筆者:木村妃香里さん
文:薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。
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