著名人コラム
2025-10-03
【登録販売者2年目向け】市販薬の服用期間・間隔・期限・リスク区分とは?悩みやすい使用方法の疑問に<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
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以前に好評だった、村松先生が登録販売者の疑問に答えるシリーズ第2弾!前回は「市販薬の選び方」をメインに説明しましたが、今回は登録販売者が現場でよく聞かれる「市販薬の使い方」に焦点を当てます。「何時間あけて飲む?」「いつまで続ける?」など、実際の接客で迷いがちな質問にどう対応するか――。薬剤師・村松先生の監修のもと、実務に役立つ判断基準やすぐ使えるトーク例を、症状別にわかりやすく解説します。
【疑問1】市販薬、いつまで飲めばいい?服用期間の判断と説明方法
市販薬の中には「長期連用しないこと」とされている商品があります。
多くの場合、その具体的な日数までは示されていません。
一般の方は、長期連用を「1年くらい」と捉えているケースもありますが、市販薬でいう「長期連用」は、長くても1か月程度です。
市販薬をいつまで飲んでよいのか、具体的な日数を伝えたいときは、添付文書の「相談すること」の最後の方を確認してください。
多くの商品では「〇回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談して下さい」と記載があるので、この日数を目安にするとよいでしょう。
ここでは、薬効別に服用日数の上限例を紹介します。
(1)風邪薬
風邪は一般的に4日~1週間で自然によくなるので、5~6日間を「長期連用」の目安とします。
中には「ルルアタックEXプレミアム」のように、添付文書の「してはいけないこと」に「5日間を超えて服用しないで下さい」と具体的な数字が明記されている商品もあります。
▼参考サイトはコチラ
佐藤製薬『かぜについて』
PMDA『ルルアタックEXプレミアム 添付文書』
(2)胃薬
胃薬の「長期連用」の目安は2週間です。
とくにスクラルファートなどのアルミニウムを含む商品では、長期連用により、アルミニウム脳症やアルミニウム骨症を生じるおそれがあります。
また、市販薬で症状をごまかしているうちに重大な消化器疾患を見過ごす可能性もあるので、連用には注意が必要です。
▼参考サイトはコチラ
第一三共ヘルスケア『第一三共胃腸薬細粒s/錠剤sに関するQ&A』
エスエス製薬『胃腸薬(胃薬)のガストール 細粒・錠 よくある質問 Q&A』
(3)便秘薬
便秘薬には基本的に「長期連用」に関する注意書きがありません。
しかし、大腸刺激性瀉下成分が配合された商品を長期間使用すると、体が慣れてしまい、効果が薄れることもあります。
便秘の第一選択薬としては、非刺激性の酸化マグネシウムがよく使われます。
大腸刺激性瀉下成分は、基本的にそういった「非刺激性の薬」で効果が出ない場合に、頓服(単回)で使うのがよいでしょう。
▼参考サイトはコチラ
大正製薬『コーラック よくあるご質問(Q&A)』
【疑問2】服用間隔は何時間あけるべき?市販薬併用の基本
市販薬では、成分や薬効分類によって、併用自体が禁止されていることもあります。
その場合、適切な服用間隔をあけて違う薬を服用するよう、指示できるといいですよね。
一般的な服用間隔の目安は次の通りですが、添付文書の「用法・用量」に「服用間隔は〇時間以上おいてください」などと具体的に記載がある商品は、その指示を優先してください。
- 1日3回タイプの薬…4時間以上空ける
- 1日2回タイプの薬…6時間~8時間以上空ける
- 1日1回タイプの薬…12時間以上空ける
市販薬の併用に関する接客トーク例は、以下の記事に詳しく記載があります。
ぜひ参考にしてくださいね。
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風邪薬や解熱鎮痛剤はほかの医薬品と併用できる?販売時の注意点もチェック<薬剤師・村松早織先生が解説>
【疑問3】市販薬の期限切れ、どこまでOK?使用期限と保管方法
市販薬の使用期限は、以下の画像のように、パッケージの側面のどこかに記載されています※。
▲画像提供:株式会社東京マキア
※法律上、適切な保存条件のもとで、3年以上、性状・品質が安定な医薬品については、使用期限の記載義務がありません。そのため、使用期限の記載のない市販薬も、ごく一部ですが存在しています。
記載された使用期限は、未開封状態で適切に保管された場合に品質が保持される期限です。
一度開封してしまうと、どんなに注意しても雑菌などの混入が避けられず、具体的な使用期限を示すことができなくなります。
そのため、開封後の使用期限について聞かれたら、「できるだけ早く使い切ってください」とお伝えします。
また、開封後の薬について、「見た目は大丈夫そうだけどまだ飲める?」などと聞かれた場合には、お客さまの保管状況によるため、「判断が難しい」旨をお伝えしてください。
なお、期限切れの薬が使用できるかどうかお客さまに聞かれたら、服用せずに廃棄するよう指示しましょう。
【疑問4】市販薬のリスク区分の違いとは?
市販薬のリスク区分は、2009年に施行されたルールですが、今でも時々お客さまから質問されることがあります。
端的に説明するのであれば、以下のようにお伝えするのがよいでしょう。
市販薬は、健康上のリスク(副作用が発生するリスク)によって分類されています。
要指導医薬品はリスクが確定しておらず、第1類医薬品はとくにリスクが高いお薬です。
これらのお薬については、薬剤師が対応する必要がございます。
また、第2類医薬品はリスクが比較的高く、第3類医薬品はリスクが比較的低いお薬です。
これらについては、私たち登録販売者も情報提供を行うことができます。
なお、登録販売者向けの表現で表にまとめると、以下のようになります。
リスク区分 | 保健衛生上のリスク | 対応する専門家 | 購入者側から質問等がなくても行う積極的な情報提供 |
要指導医薬品 | 確定していない | 薬剤師 | 対面により、書面を用いた情報提供及び薬学的知見に基づく指導を義務づけ |
第一類医薬品 | とくに高い | 薬剤師 | 書面を用いた情報提供を義務づけ |
第二類医薬品 | 比較的高い | 薬剤師、登録販売者 | 努力義務 |
第三類医薬品 | 比較的低い | 薬剤師、登録販売者 | (法上の規定はとくになし) |
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【疑問5】飲みにくいと言われたら?剤形の選び方と変更のタイミング
市販薬にはさまざまな剤形があります。
とくに高齢者では、モノを飲み込む力が落ちている方もおり、剤形選びには注意が必要です。
高齢者が使いにくいとされる剤形には、散剤やカプセル剤があります。
一方、おすすめの剤形としては「OD錠(口腔内崩壊錠)」があります。
OD錠は、ラムネ菓子のように唾液で速やかに溶ける工夫がなされており、水なしで服用することができます。
ただし、市販薬はOD錠が少ないので、剤形選びに苦労することもあります。
そんなときにおすすめの商品は、高齢者や小児の服薬をサポートする「ゼリー状のオブラート(商品例:らくらく服薬ゼリー、おくすり飲めたね)」です。
「薬が飲みにくい」という訴えがあった場合には、こういった商品も視野に入れてくださいね。
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豊富な種類がある医薬品の剤形。それぞれの特徴を解説!
よくある“困った相談”への対応例
次は、登録販売者として判断に迷ってしまうような、よくある「困った相談」への対応方法をご紹介します。
ケース1:効能にない症状に使いたいと言われたら?
市販薬は、決められた効能効果通りに使う必要があります。
効能効果に記載のない症状に使用した場合、「不適正な使用」とみなされて、お客さまが副作用被害救済制度を利用できなくなってしまいます。
たとえば、お客さまから「アレグラFXを蕁麻疹に使いたい」と言われることがありますが、アレグラFXの効能効果に蕁麻疹は含まれていません。
処方薬では蕁麻疹に対して適応がありますが、市販薬では蕁麻疹に対する効能効果が承認されていないのです。
そのため、実際の対応としては、蕁麻疹に適応のあるほかの薬(商品例:ジンマート)をご紹介するのがよいでしょう。
久光製薬の公式ページにも、「アレグラFXは皮膚疾患の効能効果が認められていないので、お使いいただけません」と記載があります。注意してください。
▼参考サイトはコチラ
久光製薬『商品(一般用医薬品)についてのよくある質問』
ケース2:処方薬が切れたから市販薬で代用したいと言われたら?
処方薬が切れた場合、かかりつけ医・薬剤師に相談するのがもっとも適切な対応となります。
しかし、病院や薬局がお休みで、そうはいかないときもありますよね。
この場合、薬剤師が在籍している店舗では、薬剤師に引き継ぎます。
薬剤師が在籍していない店舗では、近隣に薬剤師がいる薬局などがあれば、そちらを紹介してください。
どうしても薬剤師への引継ぎが難しい場合には、まずは必要な薬の名前を確認し、同じ成分が配合された商品があればご案内します。
ただし、市販薬と処方薬では、服用量が異なる(市販薬は服用量が少ない)場合が多いです。
しかし、市販薬で代用する場合においても、市販薬のパッケージに記載のある用法用量に従わなくてはならず、お客さまにその旨をご理解いただく必要があります。
一方で、同じ成分の商品がない場合には、登録販売者による判断が困難であることも多く、代替品のご案内は控えた方がよいでしょう。
処方薬関連の業務については、基本的に薬剤師の仕事の領域であることを理解したうえで、慎重に行動してくださいね。
2年目の登録販売者は少しずつ難しい質問にも答えられるようになろう
本コラムでは、市販薬の「使い方」に関するよくある質問にお答えしました。
2年目の登録販売者は、少し返答に困ってしまうような難しい質問を受ける機会も増えていきます。
1年目の新人登録販売者をサポートできるよう、少しずつ知識を身につけていきましょう。
とくに市販薬の「長期連用」の期間については、自分が考えていたよりも短かったという登録販売者の方もいるかもしれません。
「長期連用」は市販薬の乱用にもつながる問題ですので、本コラムの内容をきちんと把握したうえで、お客さまに適正使用を推進してくださいね。
【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部を卒業後、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験者向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在15,800人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬関連の情報発信を行う。また、2024年に「OTC医薬品を正しく選ぶ教室」を開講し、200名超の会員に市販薬の選び方や接客方法を教えている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」』(金芳堂)、『村松早織の登録販売者 合格のオキテ100』(KADOKAWA)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。
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