現場で役立つ知識
2021-08-13
豊富な種類がある医薬品の剤形。それぞれの特徴を解説!
・Before
・After
市販されている医薬品は、大きく内服薬と外用薬にわけられます。内服薬はさらに錠剤やカプセル、外用薬は軟膏剤や貼付剤などに細かく分類されることが特徴です。 医薬品は、同じ効果をもつものでも剤形の違いによって使い勝手が大きく異なります。剤形が違うだけでお客さまの服薬がスムーズにいくかどうかが左右され、治療効果に影響が出ることもあるものです。今回は、それぞれの剤形にどのような特徴があるのかをご紹介します。
OTC医薬品の剤形①【内服薬】
内服薬とは、口から摂取する飲み薬のことです。内用薬と言うこともあります。
錠剤やカプセル剤などが代表的で、水やぬるま湯で服用するものが一般的ですが、水なしで飲めるものも近頃ではよく見られます。
錠剤
錠剤の原料となる薬効成分のほかに、滑沢剤や賦形剤などを少量入れて固めることで作られるものです。
錠剤の表面をコーティングしたフィルムコーティング錠や糖衣錠などは薬の味を感じにくく、薬の味が苦手な方でも服用しやすいでしょう。
近頃では口腔内崩壊錠(OD錠)といって、口に入れるだけで溶ける水なしで飲めるタイプの錠剤も増えてきました。ラムネのように噛んで服用するチュアブル錠もあります。
口腔内崩壊錠やチュアブル錠は、錠剤を水で飲み込むのが苦手な方やいつでも気軽に服用できる薬を探している方に向いている剤形です。
カプセル剤
薬効成分などをカプセルに入れることで作られます。粉薬や顆粒を詰めたものから、液体を詰めたものまで種類は様々です。
液体カプセルのものは粉や顆粒、錠剤などと比べると体内で溶けるのが早いため、即効性を求める方に向いているでしょう。
カプセルで薬が覆われていることから、薬の味が苦手な方にも適しています。
ただしカプセルはゼラチンで作られているため、アレルギーがある方には注意しなければいけません。
散剤・顆粒剤
いわゆる粉薬と言われるものが散剤や顆粒剤です。
細かいサラサラの粉状になっているものは散剤、1つひとつの粒が大きく粒子と粒子の間に空気を含んだような形状のものは顆粒剤と呼ばれています。
散剤はむせやすいため、飲むのが苦手な方もいるかもしれません。
顆粒剤は散剤より比較的むせにくく、製品によっては粒がコーティングされているものもあるのでこちらのほうが飲みやすい方が多いでしょう。
内服液剤・シロップ剤
液体状の飲み薬です。主に小さな子ども向けの薬に採用されています。
甘みが強いため、薬を飲むこと自体を嫌がる子どもに向いているでしょう。年齢によって1回量が異なるため、保護者などが計量して服用させる必要があります。
また子ども向けの薬のほかに、大人でも飲める咳止めで液剤が採用されている場合も多くあります。
乾いた咳をしている方には液剤のほうが喉を潤せるため、症状が落ち着きやすいでしょう。



OTC医薬品の剤形②【外用薬】
外用薬とは、主に皮膚に塗ったり貼ったりして使う薬を指しています。塗り薬や湿布薬、目薬などが代表的な外用薬です。
何の症状に困っているのか、使う部位はどこなのか、どのような使い心地のものを探しているのかなど、お客さまの要望に合わせて適切なものを勧める必要があります。
軟膏剤・クリーム剤・外用液剤
いわゆる塗り薬と呼ばれるものです。軟膏剤は油分が多く、ベトベトする使用感のものも少なくありません。
一方で保湿力が高いため、乾燥している患部への使用はクリーム剤より軟膏剤のほうが向いています。
クリーム剤は油分と水分の両方が含まれているもので、軟膏剤と比べるとベタつきがなく伸びの良さが特徴です。
患部を保湿し保護しながら使いたいのなら軟膏剤、ベタベタしないものが良いならクリーム剤を選ぶとよいでしょう。
外用液剤は水虫や頭皮湿疹の薬に使われているもので、ノズルの先端から出る薬液を患部に直接塗って使います。
皮膚に塗る薬は種類に関係なく「軟膏」と言われるお客さまも多いので、言葉通り軟膏を出さずによくヒアリングしてから製品を紹介するように注意しましょう。
点眼剤
目の症状に使う薬です。点眼剤よりも目薬と呼ばれるほうが多いでしょう。
疲れ目やアレルギーによるかゆみ、ドライアイなどの症状への使用が一般的です。
ボトルに入っているものが主流ですが、1回使い切りタイプのものもあります。
抗菌目薬や保湿用の目薬は使い切りタイプのものもあるので、要望に合わせてこちらも勧めてみましょう。
ボトルタイプのものは開封後2~3ヶ月を目安に使い切るよう推奨されているため、頻繁には使わないという方には使い切りタイプのほうが便利な場合もあります。
点鼻剤
鼻づまりや鼻水に使う薬です。直接鼻に入れて使うため、使用後は先端をきれいに拭く必要があります。
一定量の薬液を噴霧できるタイプが主流ですが、なかには容器を押して自分で薬液の量を調節しながら使うものもあります。
坐剤
坐剤とは、肛門に挿入して使う薬のことです。坐薬と呼ばれることもあります。
解熱剤や便秘薬、痔の薬が坐剤として製品化されていることが多いでしょう。軟膏を押し出して肛門に挿入する注入軟膏もあります。
お客さまは「坐薬(坐剤)をください」のみで、とくに症状を言われないことも多いため、坐剤を求められた場合は使用目的をしっかり確認することが大切です。
貼付剤
貼付剤とは市販の場合、主に湿布薬のことを指しています。
昔ながらのパップ剤と、伸縮性に富んでいるテープ剤とに大きくわけられます。
パップ剤は粘着部分が白色をしており水分を多く含んだ貼付剤のことです。
テープ剤は伸縮性のある基部に有効成分が塗布されています。
比較的年齢の高い方のほうがパップ剤を好む傾向にあるようです。

こんなときどうする?お客さまへのおすすめ方法
剤形が違うだけでお客さまが薬を使いやすいと感じるか使いにくいと感じるかが大きく変わります。
使い勝手が悪いと感じてしまえば、薬を正しい用法用量で使えず治療効果に影響が出てしまうこともあるでしょう。
そのため、お客さまに適した剤形の薬を提案するように心がける必要があります。
薬が苦手な子ども
薬を飲みこむのが苦手だったり、薬そのものを嫌がったりする子どもは少なくありません。
とくに錠剤や散剤などは嫌がって飲まないことも多くあります。液体であれば喉に引っかからないため、内服液剤やシロップ剤を選ぶのが無難です。
どうしても錠剤や散剤などを飲ませる必要があるときは、服薬補助用のゼリーを使うのも良いでしょう。
いちご味やぶどう味などよりもチョコ味のほうが苦い味をマスキングするのに向いています。
練乳やアイスに混ぜると飲んでくれる子どももいるようです。
嚥下障害のある方や子ども
錠剤やカプセルをゴックンと飲み込むのが苦手な方にはチュアブル錠や口腔内崩壊錠が向いています。
チュアブル錠は噛んで服用するもの、口腔内崩壊錠は水なしで口の中で溶かして服用するものです。
チュアブル錠や口腔内崩壊錠は子どもにはもちろん、嚥下機能が衰えたり咳き込んだりしやすい高齢者にも向いています。
関節部位など、患部がよく動く場所にある方
膝や肘など関節に貼付剤を使うときは、テープ剤のほうが使い勝手が良いでしょう。
患部にしっかりと密着して剥がれにくいため、よく体を動かす方にも向いています。
関節部位でなくても一般的にパップ剤よりテープ剤のほうが剥がれにくい特徴があるため、湿布薬の剥がれやすさを気にしている方にはテープ剤を勧めてみてください。
捻挫などにより患部に熱をもっている方
パップ剤とテープ剤は使う方の好みで選んでもらって問題ありません。
しかし、貼付部位が熱をもっているときはパップ剤のほうが適しています。
パップ剤は水分を多く含んでいるため、患部の痛みを取りながら冷やす効果も期待できるためです。
皮膚が弱い方
皮膚への負担が少ない塗り薬を探している方には、クリーム剤よりも軟膏剤が適しています。
クリーム剤は軟膏剤と比べるとやや刺激が強いため、皮膚へ刺激を感じる方もいるようです。
また貼付剤の場合は、テープ剤よりもパップ剤のほうが皮膚への負担は少なく済みます。
テープ剤は剥がれにくいという特徴があるものの、剥がれにくいがゆえに皮膚へ負担をかけてしまうことがあるのです。
剤形の知識を蓄え、お客さまへより良い提案を
医薬品は剤形によって特徴が大きく異なります。
粉薬だとむせてしまう方には錠剤やカプセル、嚥下機能が落ちている方にはチュアブル錠や口腔内崩壊錠など、お客さまの状況に合わせて選ぶと良いでしょう。
また、同じ粉薬という分類でも散剤と顆粒剤とでは飲みやすさが変わるため、パッケージをよく見て確認することが大切です。
「使いづらい」「飲みづらい」と感じた薬を最後まで使うのは簡単ではありません。
お客さまの症状に適した成分を選ぶのと同じくらい、適切な剤形を選ぶことも重要です。
剤形ひとつで治療効果が左右されることもあるため、お客さまの年齢やライフスタイル、要望に合わせた剤形を選べるようになりましょう。

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