著名人コラム
2025-01-10
風邪薬や解熱鎮痛剤はほかの医薬品と併用できる?販売時の注意点もチェック<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
・After
多くの登録販売者の方が、「薬の飲み合わせ」に関する疑問を抱えています。市販薬を複数個レジにもってきたお客さまに対し、何をどう確認したら良いかがとっさに判断できず、パニックになってしまう方もいるようです。本コラムでは、薬剤師・村松早織先生が、そういった登録販売者の方々へ向け、とくに販売する機会の多い「風邪薬や解熱鎮痛剤」と「他の医薬品」との飲み合わせで注意すべき成分や、接客時のポイントについて解説します。
風邪薬や解熱鎮痛剤は医薬品と併用可能?
市販薬は複数の成分が配合されていることが多く、とくに風邪薬では10種類以上含まれているものもあります。
解熱鎮痛剤の場合にも、解熱鎮痛成分だけでなく、鎮静成分やカフェインなどが一緒に配合されていることがほとんどです。
そのため、市販薬はほかの薬と成分が重複しやすく、併用によって副作用のリスクが高くなるおそれがあります。
薬の飲み合わせについて適切に判断できるよう、知識をつけていきましょう。
さて、複数の薬が併用可能かどうか考える際、重要な役割を果たすのが添付文書です。
添付文書に記載のある「禁忌事項(してはいけないこと)」を確認しましょう。
たとえば、「ルルアタックEX」という風邪薬の添付文書には、次のように記載があります。
本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も使用しないで下さい。
他のかぜ薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等(鼻炎用内服薬、乗物酔い薬、アレルギー用薬等)、トラネキサム酸を含有する内服薬
ここに記載されているものは、具体的な成分名よりも、「解熱鎮痛薬」などの薬効分類名の方が多いことがわかりますね。
そのため、併用可否を判断するときは、具体的な成分だけでなく、「薬効分類」ごとのまとまりで考える必要があります。
風邪薬や解熱鎮痛剤で注意が必要な飲み合わせ
風邪薬や解熱鎮痛剤と別の薬との飲み合わせについて、情報提供する機会の多い注意点を解説します。
1.風邪薬は「薬効分類」の重複に注意
風邪薬は、多くの場合、「解熱鎮痛薬」「鎮咳去痰薬」「鼻炎用内服薬」の3つの薬効分類の成分を組み合わせて配合されています。
風邪薬の主な成分を3つの薬効分類で振り分けると、次のようになります。
【風邪薬の主な成分】
薬効分類 | 成分グループ | 成分例 |
---|---|---|
解熱鎮痛薬 | 解熱鎮痛成分 | アセトアミノフェン、イブプロフェン |
鎮咳去痰薬 | 鎮咳成分 | ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物 |
気管支拡張成分 | dl−メチルエフェドリン塩酸塩 | |
去痰成分 | グアイフェネシン、カルボシステイン | |
鼻炎用内服薬 | アドレナリン作動成分 | プソイドエフェドリン塩酸塩 |
抗ヒスタミン成分 | クロルフェニラミンマレイン酸塩 | |
抗コリン成分 | ベラドンナ総アルカロイド |
ここからわかる通り、「風邪薬」と一緒に「解熱鎮痛薬」「鎮咳去痰薬」「鼻炎用内服薬」を服用すると、薬効が強く出すぎて副作用を起こすリスクが高まるため、併用が禁止されています。
【接客例】
お客さま:のどの痛みが強いのですが、こちらの風邪薬と痛み止めは、一緒に使っても良いですか?
登録販売者:風邪薬にも解熱鎮痛成分が含まれるので、これらのお薬は併用できません。もしよろしければ、風邪薬と一緒に使える「のど用スプレー」や「のど飴」などをご案内しましょうか?
2.風邪薬は胃腸鎮痛鎮痙薬と併用できないことも
風邪薬では、前項1の表の「成分グループ」の重複にも配慮が必要です。
たとえば、「抗コリン成分」を含む風邪薬では、胃腸鎮痛鎮痙薬との併用が禁止されています。
これは、胃腸鎮痛鎮痙薬が抗コリン成分(ブチルスコポラミン臭化物など)を主体とする薬であることが理由です。
このように、まったく異なる症状に使用する薬であっても併用が禁止されていることがあります。
【接客例】
登録販売者:(レジにて)こちらの風邪薬と胃腸鎮痛鎮痙薬は、お客さまが服用されますか?
お客さま:はい、そのつもりです。
登録販売者:これらの商品は併用が禁止されておりまして…。
お客さま:え、風邪薬と胃腸薬なのに?
登録販売者:そうなんです。具体的には、風邪薬に配合された、鼻水・鼻詰まりを改善する「抗コリン成分」という成分が、胃腸鎮痛鎮痙薬と同じグループの成分になりまして…。もしよろしければ、風邪薬と併用可能な胃腸薬をご案内しましょうか?
3.鎮咳成分を配合するのど飴にも配慮を
のど飴の種類は、お菓子から医薬品まで多岐に渡ります。
このうち、医薬品ののど飴では、「口腔咽喉薬」と「鎮咳去痰薬」の薬効分類のものが存在します。
商品例は以下の通りです。
- 口腔咽喉薬:浅田飴アズレンCPCドロップ
- 鎮咳去痰薬:トキワ南天喉飴、固形浅田飴ニッキS、ペラックスイート パインS
鎮咳去痰薬に分類されるのど飴には、鎮咳成分のデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物や気管支拡張成分のdl−メチルエフェドリン塩酸塩が含まれていることがあり、風邪薬との併用が禁止されています。
見落としがちな併用禁忌なので、注意が必要です。
なお、「口腔咽喉薬に分類されるのど飴」や「医薬部外品ののど飴」は、風邪薬と併用できることも多いため、添付文書の内容を確認しましょう。
【接客例】
お客さま:これをください。
登録販売者:こちらの咳止めのお薬とのど飴は、どちらも鎮咳去痰薬に分類されるお薬でして、一緒に使うことができないんです。もしよろしければ、咳止めのお薬と併用可能な「のど飴」や「トローチ」などをご案内しましょうか?
4.眠くなる成分に注意
風邪薬には抗ヒスタミン成分などの眠くなる副作用のある成分が含まれることが多く、解熱鎮痛剤にも鎮静成分が含まれるものがあります。
そのため、抗ヒスタミン成分が配合された睡眠導入剤や酔い止めの薬、鎮静成分が含まれるほかの薬との併用が禁止されています。
【接客例】
お客さま:この解熱鎮痛剤と酔い止めって、一緒に使えますか?
登録販売者:これらのお薬は一緒に使うと眠気が強く出る可能性があり、併用が禁止されています。解熱鎮痛剤は、何の症状に使う予定ですか?
お客さま:頭痛です。
登録販売者:かしこまりました。これら2つのお薬の服用間隔についてご説明しますね(次項「接客のポイント3」を参照)。
5.カフェイン入りの栄養ドリンク剤にも注意
風邪薬や解熱鎮痛剤には、無水カフェインが配合されているものもあります。
カフェインの過剰摂取により動悸や不眠などの症状が現れることがあるため、栄養ドリンク剤を一緒に薦めるときは、「ユンケル黄帝DCF」のようなカフェイン非配合の商品を検討しましょう。
【接客例】
お客さま:風邪薬を飲むときに栄養ドリンク剤も一緒に使いたいのですが、何かおすすめの商品はありますか?
登録販売者:こちらの風邪薬にはカフェインが含まれていますので、カフェインが含まれない栄養ドリンク剤を選びますね。たとえば、こちらの「ユンケル黄帝DCF」などはいかがでしょうか?
風邪薬や解熱鎮痛剤を医薬品と併用したいお客さまへの対応
併用に注意が必要な薬の購入を希望しているお客さまには、どのように対応すべきでしょうか。
ここでは接客のポイントを3つご紹介します。
接客のポイント1.服用中の薬があるかどうかを確認しよう
まずは、お客さまに服用中の薬があるかどうかを確認します。
医療用医薬品を服用中の場合、店舗の薬剤師に飲み合わせの確認を依頼しましょう。
店舗に薬剤師がいない場合、かかりつけの医師・薬剤師に相談するよう促すか、近隣の薬剤師のいる店舗を案内します。
次に、市販薬同士の服用可否であれば、登録販売者も判断することが可能です。
詳しくは、次の「接客のポイント2」で解説します。
接客のポイント2.薬の用途を確認しよう
たとえばお客さまが、「風邪薬」と「鼻炎用内服薬」の併用を希望しているとします。
このような場合、まずは「2つの薬をどういった症状に使うのか」を確認してください。
「両方とも風邪に使う」場合、薬効や成分が重複しており、同時に服用できないことを伝え、必要であれば併用可能な別の商品への切り替えを提案します。
一方、「風邪薬は風邪に使い、鼻炎用内服薬は花粉症に使う」など、別の用途で使用するという場合、風邪薬にも鼻症状に効果のある成分が含まれることを説明し、風邪薬を飲んでいる間は鼻炎用内服薬を飲まないよう指示します。
接客のポイント3.適切な服用間隔を伝えよう
たとえば、イブスリーショットプレミアム(解熱鎮痛剤)を頭痛に、トラベルミン(酔い止め)を車酔いに使いたいというお客さまがいたとします。
この2剤は併用が禁止されているため、適切な服用間隔を伝えるのが良いでしょう。
一般的な服用間隔の目安は次の通りですが、詳細は添付文書を確認してください。
- 1日3回タイプの薬…4時間以上空ける
- 1日2回タイプの薬…6時間~8時間以上空ける
- 1日1回タイプの薬…12時間以上空ける
イブスリーショットプレミアムの服用間隔は「6時間以上」、トラベルミンの服用間隔は「4時間以上」なので、次のように説明するのが良いでしょう。
- イブスリーショットプレミアム服用 → 6時間後にトラベルミン服用
- トラベルミン服用 → 4時間後にイブスリーショットプレミアム服用
薬の併用可否確認では添付文書を味方につけよう
併用不可の組み合わせをすべて暗記することは困難です。
薬の飲み合わせの判断は添付文書を利用して行えば問題ありませんので、あわてずに対応してください。
何度か繰り返しているうちに、どの組み合わせがNGなのかがつかめてきます。
少しずつ知識を増やしていきましょう。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部を卒業後、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験者向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在14,600人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬関連の情報発信を行う。また、2024年に「OTC医薬品を正しく選ぶ教室」を開講し、180名の会員に市販薬の選び方や接客方法を教えている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1 年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」』(金芳堂)、『村松早織の登録販売者 合格のオキテ100』(KADOKAWA)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。
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