現場で役立つ知識
2021-12-10
【登録販売者向け】知っておきたいサプリメントと薬の飲み合わせを解説
・Before
・After
健康維持や栄養補給を目的として日常的に利用する人も少なくないサプリメント。健康食品に分類されるため安心・安全と思われがちですが、医薬品と併用することで健康被害が生じる恐れがあります。そのため、販売時には適切な注意喚起が必要です。 そこで今回は、登録販売者が知っておきたいサプリメントと薬の飲み合わせについて解説します。
そもそもサプリメントとは何か?
サプリメントとは、健康維持や栄養補給を目的として利用される「健康食品」の一つです。
法律上の明確な定義はありませんが、ビタミン、ミネラルなど特定の成分を濃縮した錠剤やカプセルなどの剤型をしているものと考えられています。
なお、米国ではDietary Supplementを以下のように定義しています。
従来の食品・医薬品とは異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等の成分を含み、通常の食品と紛らわしくない形状(錠剤やカプセルなど)のもの
サプリメントは、医薬品や医薬部外品のように身体機能や身体構造への影響については標榜できません。
ただし、ビタミン、ミネラルなどの成分含有量が国の基準を満たしている場合は、栄養機能食品と表示することができます。
注意が必要なサプリメントと薬の飲み合わせ
サプリメントを医薬品と併用した場合に、医薬品の作用が増強・減弱したり思わぬ副作用が生じたりすることがあります。
そのため、医薬品との併用が禁止されているものや、併用する場合には服用のタイミングに気をつけなければならないものがあり注意が必要です。
ここでは、ドラッグストアでも多く取り扱いのあるサプリメントと医薬品との相互作用について例をあげています。
ただし、これらはほんの一部です。医薬品を服用しているお客さまがサプリメントを希望されている場合は、まず主治医への相談を促しましょう。
ビタミン類
ビタミンK(クロレラ、納豆菌など)は血液が固まるために必要な栄養素です。
そのため、血液凝固防止薬のワーファリンと併用するとワーファリンの作用を減退させてしまう恐れがあります。
ビタミンKは、単独のサプリメントのほか人気の高い青汁の素材にも使われることがあるため注意しましょう。
一方で、ビタミンA・Eとワーファリンを併用すると、ワーファリンの血液凝固を防止する作用を増強させる可能性があるため注意が必要です。
ビタミンCは、利尿剤を服用中の方が大量摂取すると腎・尿路結石が生じたり、卵胞ホルモン剤の代謝を阻害したりする恐れがあることが知られています。
葉酸は、抗てんかん薬と併用するとどちらの作用も減弱させる可能性があります。
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は「ハッピーハーブ」「サンシャインハーブ」などとも呼ばれ、ストレスやイライラを軽減させ、気持ちを安定させるとされています。
一方で、これらは気管支拡張剤や抗てんかん薬・強心薬など、様々な医薬品の代謝に影響を及ぼすため注意しなければなりません。
とくに、セロトニンにかかわる抗うつ剤や片頭痛治療薬との併用は、作用増強による重大な副作用の恐れがあります。
ミネラル系サプリメント
鉄・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル系サプリメントは、一部の抗生物質や骨粗鬆症薬などの吸収を阻害する可能性があります。
鉄はそのほかにも、下痢止めに配合されているタンニン酸アルブミンと相互に作用が減耗する恐れがあり、併用はできません。
甲状腺ホルモン薬や抗パーキンソン剤を服用している場合も注意が必要です。
カルシウムとの併用に注意したいのは、強心薬(ジギタリス製剤)です。
薬の作用が増強され、嘔吐や不整脈などの副作用が生じる恐れがあります。
コエンザイムQ10
抗酸化作用やエネルギー産生などの働きで注目されるコエンザイムQ10は、ビタミンKのような働きをするため、ワーファリンの効果を減弱させる可能性があります。
また、降圧剤や経口糖尿病治療薬との併用では、薬の効果が増強される恐れがあるため服用には注意が必要です。
特定保健用食品
血圧や血糖・コレステロールが気になる方向けなどの特定保健用食品は、あくまでも健康な方が保健目的で使用するものです。
治療中で当該治療薬の処方を受けている方が使用すると、作用の増強や吸収の阻害などが生じる場合があります。
治療中の方が早く治したいからと特定保健用食品を併用することは少なくありません。
しかし、リスクが生じるばかりか、治療コントロールを難しくする可能性もあります。
主治医と相談のもと使用の検討が必要です。
安心して薬を服用してもらうために登録販売者ができること
登録販売者は医薬品の販売に限らず、お客さまがセルフメディケーションに取り組めるように必要な情報提供を行ってサポートしていくのも重要な仕事です。
注意が必要な薬とサプリメントの飲み合わせに気づくために、接客時には次のようなことを実践しましょう。
医薬品だけでなくサプリメントの知識をつける
健康意識への高まりからサプリメントの利用はますます身近なものとなり、その種類も多岐にわたります。
医薬品のみならずサプリメントについての知識も広く身に付け、取り扱っている商品の成分内容や含有量、どのような悩みに対応できるものであるか、併用注意な医薬品・健康食品などを把握しておきましょう。
医薬品を販売する際は飲んでいるサプリメントについても聞く
医薬品を提案する際には、ほかに服用している医薬品の有無を確認することは必須ですが、加えてサプリメントについても尋ねましょう。
お客さまのなかには、サプリメントが薬に影響することを認識していない方も少なくありません。
医薬品を販売する際は、常用しているサプリメントや健康食品の有無を具体的にヒアリングしましょう。
反対に、サプリメントや健康食品をお求めのお客さまに服用薬の有無を尋ねることも大切です。
たとえば血圧や血糖に関する特定保健用食品を購入しようとしているお客さまが、すでに治療薬を処方されているという例はよく見られるので、細やかな声かけが必要でしょう。
本当にサプリメントが必要か見極める
不規則な食生活や体の不調からサプリメントを求めるお客さまは多数いらっしゃいます。
しかし、現状の日本では、通常の食事から栄養素が不足するリスクはそれほど高くありません。
食事が取りにくいためにサプリメントが必要な場合や低栄養が懸念される場合には、医師や栄養士などの専門家へ繋ぐ必要があります。
保健所では個別の栄養相談を受け付けているので促しましょう。
お客様が具体的な症状にお困りの場合には、サプリメントに頼る段階ではなく治療が必要です。
サプリメントは医薬品とは異なり、服用目的はあくまでも健康維持・増進の範囲にとどまります。
サプリメントについて相談された場合には、サプリメントが適切な対処であるのかをよく見極めたうえでアドバイスが必要です。
具体的な症状の改善を求めるお客さまには、医薬品での対処や受診勧奨を行いましょう。
サプリメントと医薬品の相互作用に注意しましょう
サプリメントは健康食品に分類されるため気軽に利用される傾向にありますが、医薬品と併用する場合には問題が生じることもあります。
医薬品を販売する際には、ほかの服用薬に併せてサプリメントの利用有無についても注意を払いましょう。
お客さまのなかには、サプリメントと医薬品の併用でどのような相互作用があるのかよく認識していない方や、サプリメントに過大な期待を求めている方も見られます。
登録販売者として必要かつ適切なアドバイスを行い、セルフメディケーションを支えていきましょう。
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