現場で役立つ知識
2023-09-29
抗コリン薬の禁忌とは?副作用や注意点、販売時の対応例も解説<登録販売者向け>
・Before
・After
抗コリン薬は、副交感神経を抑制するはたらきを持ち、さまざまな疾患の治療薬として用いられています。しかし、緑内障の分類のひとつである閉塞隅角緑内障や、前立腺肥大の人には禁忌となっているため、医薬品販売時には注意が必要です。本記事では、抗コリン薬の効果や副作用・注意点、飲み合わせできないもの、お客さまの対応例なども紹介します。
抗コリン薬に禁忌はある?
禁忌 |
---|
・閉塞隅角緑内障 ・前立腺肥大 ・重症筋無力症 |
抗コリン薬が禁忌とされる疾患には、排尿障害を伴う「前立腺肥大」や、身体が思うように動かしづらくなる「重症筋無力症」、眼圧が高くなる「閉塞隅角緑内障」が挙げられます。
注意すべき点は、緑内障の種類です。
緑内障は「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」に分けられますが、抗コリン薬が禁忌にあたるのは、「閉塞隅角緑内障」のみ。
これまで医薬品の添付文書には「緑内障」とのみ記載されていましたが、令和元年より「閉塞隅角緑内障」に改訂されています。
抗コリン薬とは
抗コリン薬とは、副交感神経を作動させるアセチルコリンと拮抗する成分のことです。
アセチルコリンが活発にさせる副交感神経のはたらきを抑える作用があります。
抗コリン作用を持つ医薬品は市販薬としても販売されており、呼吸器、消化器などさまざまな領域の症状に使われます。
くしゃみや咳、胃痛や腹痛、頻尿や尿漏れなどに効果的な医薬品として、ドラッグストアなどでも購入可能です。
しかし、特定の疾患がある場合や飲み合わせによっては禁忌、副作用があるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
抗コリン薬の効果
アセチルコリンの受容体は、身体のさまざまな部分にあります。
抗コリン薬が、アセチルコリンとアセチルコリン受容体の結合を阻害することによって、以下の作用をもたらします。
- 気管支拡張作用
- 腸管平滑筋収縮抑制による痙攣や痛み、炎症の改善
- 心拍数、血圧低下作用
これらの作用を活用する形で、病気の治療が行われます。
抗コリン薬の目的・使われ方
抗コリン薬は、「呼吸器領域」「消化器領域」「泌尿器科領域」「神経内科領域」などさまざまな領域で使用されます。
主な領域 | 主な目的 |
---|---|
呼吸器領域 | COPDの治療など |
消化器領域 | 差し込み痛や異常痙攣、過敏性大腸症の改善 |
泌尿器科領域 | 排尿障害の改善 |
神経内科領域 | 全身の筋肉のはたらきの向上 |
呼吸器領域では、COPDの治療に抗コリン薬が使用されます。
吸入薬の抗コリン薬で、気管支平滑筋を拡張して呼吸を楽にします。
消化器領域では差し込み痛や異常痙攣改善のための鎮痙剤、過敏性大腸症の改善に使用されることが多いです。
泌尿器領域では、膀胱の筋肉のはたらきを高めて排尿障害を改善。
神経内科領域では、全身の筋肉のはたらきを高めて症状の改善につなげます。
市販薬に配合されている抗コリン作用のある成分
- チキジウム臭化物
- ブチルスコポラミン臭化物
- プロピベリン塩酸塩
胃痛、腹痛の改善を目的とする「チキジウム臭化物」と「ブチルスコポラミン臭化物」は鎮痙薬や総合胃腸薬に含まれていることが多い成分です。
「プロピベリン塩酸塩」は尿意切迫感の改善として使用されます。
尿トラブルは、尿が出づらい症状や、畜尿困難、残尿感など、症状は多岐にわたります。
排尿困難の治療薬としても使われる抗コリン薬ですが、前立腺肥大の人には禁忌のため、注意が必要です。
抗コリン薬の副作用・注意点
抗コリン薬はさまざまな疾患の治療薬に使用される一方で、複数の副作用が存在します。
自覚症状でわかるものが多いで、ひとつひとつ把握して接客時の説明に役立ててください。
抗コリン薬の副作用
主な症状 |
---|
・口喝 ・便秘 ・排尿障害 ・せん妄 ・視力障害 ・麻痺性イレウス |
副交感神経は、身体を休めリラックスさせる方向に傾ける役割を持つため、腸運動の活性化、心拍数抑制、排尿をさせるはたらきがあります。
しかし、抗コリン薬はこのはたらきをブロックするもの。
そのため、副作用としては「口喝」や「便秘」が多いです。
QOLを下げる厄介な状態になるため、必要に応じて使用を中止する必要があります。
抗コリン薬の服用の注意点
服用してはいけない方 |
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・次の疾患がある人(閉塞隅角緑内障・前立腺肥大・重症筋無力症) ・抗コリン成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人 ・次のいずれかの医薬品を服用している方(他の胃腸鎮痛鎮痙薬、ロートエキスを含有する他の胃腸薬、乗物酔い薬) ・乗物又は機械類の運転操作をする方 (目のかすみ、異常なまぶしさ等の症状があらわれることがあります。) |
服用前に医師・薬剤師への相談が必要な方 |
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・医師の治療を受けている人 ・妊婦又は妊娠していると思われる人 ・高齢者 ・薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人 ・排尿困難の症状のある人 ・心臓病、緑内障の診断を受けた人 |
市販薬で使用されることが多い鎮痙剤を例に記載しています。
アレルギー歴の確認はもちろんですが、他の胃薬と併用しないように注意することも大切です。
高齢者で男性の場合は、前立腺肥大を患っている可能性があるため、接客時には泌尿器系の疾患の有無を確認するとよいでしょう。
緑内障の人は、閉塞隅角緑内障に該当するか正しく把握する必要もあります。
曖昧な場合は、主治医に確認するように促してください。
抗コリン薬と飲み合わせできないもの
- ドネペジル塩酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、リバスチグミン
- ジスチグミン臭化物(排尿困難、重症筋無力症治療薬)
- セビメリン塩酸塩水和物
上記は、全て医療用医薬品で取り扱う薬剤の成分です。
これらの成分は、副交感神経を興奮させることによって、疾患の症状を改善することを目的としています。
つまり、抗コリン薬とは作用が拮抗するため、併用することで期待する薬の効果が得られない可能性があります。
医薬品の適正使用を推進するためには、接客時に常用薬の確認を行うことが大切です。
<対応例>抗コリン薬についてお客さまから質問されたときは
抗コリン薬について質問されたときの対応例を紹介します。
接客時の参考にしてくださいね。
◆人物データ
・年齢:72歳
・職業:無職
・既往症:前立腺肥大
・服用中の薬:デュタステリドが成分として含まれている薬
・アレルギー:なし
・悩み:胃痛症状を改善する薬が欲しい
お客さま:
最近、胃がキリキリ痛むことが多いので、常備薬として「○○(ブチルスコポラミン臭化物がとして含まれている薬)」を買おうと思っているんだ。なんだか効きそうな気がしてね。
登録販売者:
こちらは、痙攣を抑えるはたらきがありますが、副作用として目が見えづらくなることや尿が出づらくなる症状があります。お客さまは眼科や泌尿器科など、医師から薬を処方してもらっていませんか?
お客さま:
私は、長らく前立腺肥大の治療をしていて、尿の出を良くする「○○(デュタステリドが成分として含まれている薬)」を毎日飲んでいるんだ。それなら他のお薬の方がよさそうだな。他に何かおすすめは?
登録販売者:
胃がキリキリ痛むと伺ったので、胃の粘膜を保護する作用がある薬や、胃酸を抑える薬が良いかと思いますが、いかがでしょうか?
お客さま:
いいね。ただ、できるだけ効果が優しい薬の方がいいな。あまり薬は使ったことがないからね。
登録販売者:
かしこまりました。では、胃粘膜保護のお薬を紹介させていただきます。
接客のポイント
- 代表的な副作用を説明する
- 眼科、泌尿器科にかかっているかを確認する
- 提案できる代替薬をピックアップしておく
抗コリン薬の禁忌は、主に眼科領域と泌尿器科領域に注意する必要があります。
疾患名を直接確認しても良いですが、具体的な疾患名を出されるのを嫌がるお客さまもいらっしゃるため、上記の接客例のように配慮のある聞き方をしましょう。
消化器症状でお困りのお客さまであれば、詳しく症状のヒアリングを行い、代わりに使えそうな市販薬を提案できると、登録販売者として重宝されます。
抗コリン薬に関するQ&A
抗コリン薬についてよくある質問をまとめました。
参考にしてください。
Q.抗コリン薬の代表的な薬は?
抗コリン薬は、さまざまな疾患の治療薬として使用されています。
健常者が身体の不調を訴えて使用する市販薬としては、胃痛や腹痛症状の改善を目的とするものの場合が多いです。
Q. 抗コリン薬が緑内障に禁忌なのはなぜ?
抗コリン薬は、瞳孔の括約筋を緩めることによって散瞳作用がありますが、それにより眼圧を上昇させてしまうリスクがあります。
急性緑内障発作では、激しい眼痛や頭痛、吐き気症状が起こり、緊急で手術が必要になる場合もあります。
Q. 抗コリン薬で排尿障害が起こるのはなぜ?
通常、排尿時は膀胱平滑筋が収縮し、外尿道括約筋を弛緩しています。
しかし、抗コリン薬によって膀胱が弛緩してしまうと、尿を出したいのに出ない状態(排出困難)や、尿が途中で切れる(尿線途絶)などの症状を引き起こしてしまいます。
Q. 抗コリン薬が前立腺肥大に禁忌なのはなぜ?
前立腺肥大の患者さまは、前立腺が大きくなることで尿道が常に圧迫された状態になっています。
抗コリン薬で膀胱の収縮作用が妨げられることにより、膀胱に尿が溜まった状態が続き、尿閉(尿が全くでない)につながることがあります。
尿閉の場合はカテーテル留置などの医療行為が必要になるため、泌尿器科を受診する必要があります。
抗コリン薬の禁忌を正しく把握しよう
抗コリン薬の禁忌は、「閉塞隅角緑内障」「前立腺肥大」「重症筋無力症」等です。
抗コリン薬を販売するときには、視覚障害や排尿困難の副作用があることに留意し、お客さまが禁忌に該当しないか確認することが大切です。
また、処方薬のアルツハイマー治療薬や口腔乾燥症状改善薬などの作用は、抗コリン薬と拮抗します。
お客さまに常用薬があるか、ある場合はこれらの薬が含まれないかのチェックが必要です。
万が一、抗コリン薬が使えないお客さまがいらっしゃる場合は、代替薬を提案しましょう。
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