現場で役立つ知識
2023-09-08
<登録販売者向け>寒暖差アレルギー対策の市販薬をお求めのお客さまへの対応【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
ドラッグストアで働いていると、寒暖差アレルギーについての相談を受けることがあります。そのため登録販売者は、寒暖差アレルギーの対処法について知っておく必要があるでしょう。しかし、「そもそも寒暖差アレルギーって何?」「どのような市販薬をおすすめしたら良いの?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、寒暖差アレルギーとはどのようなものなのか、どういった市販薬を使って対処するよう伝えたらよいのかなど詳しく解説します。
寒暖差アレルギーとは?効く市販薬はある?
寒暖差アレルギーは血管運動性鼻炎とも呼ばれており、約7℃以上の気温差によって生じるアレルギーのことです。
花粉症やアレルギー性鼻炎とは違い、厳密にはアレルギーではありません。
しかし、鼻水やくしゃみなどアレルギーと似たような症状が出るため、アレルギーという名前が使われています。
▼参考サイトはコチラ
長谷川真也「血管運動性鼻炎の病態に関する研究」57〜67ページ 1999年出版『千葉医学雑誌75巻』
寒暖差アレルギーの症状
寒暖差アレルギーの症状としては、次のものがよく見られます。
- 鼻水
- 鼻詰まり
- くしゃみ
一般的なアレルギーと同じような症状が見られることが特徴と言えます。
人によっては咳や肌のかゆみ、蕁麻疹などの症状が出現するケースもあるようです。
目のかゆみや充血はないため、こうした症状があるかどうかで花粉症やアレルギー性鼻炎と見分けられます。
寒暖差アレルギーに市販薬でも対処できる
寒暖差アレルギーが起こる原因については明らかになっていません。
現時点では、気温差によって自律神経が乱れることで症状があらわれると考えられています。
注意したいのは、寒暖差アレルギーであることに気が付かず、風邪だと思いこんでドラッグストアに来店されるお客さまがいる点です。
誤った薬を販売しないよう、風邪と寒暖差アレルギー、さらに似た症状の出る花粉症の違いを理解しておきましょう。
症状 | 寒暖差 アレルギー | 風邪 | 花粉症 |
---|---|---|---|
鼻水 | あり | あり(黄色っぽい色でドロドロしている) | あり |
鼻詰まり | あり | 出る場合がある | あり |
くしゃみ | あり | あり(長くは続かない) | あり |
咳 | 出る場合がある | あり | 出る場合がある |
肌のかゆみ ・蕁麻疹 | 出る場合がある | あり | 出る場合がある |
熱 | なし | あり | ほとんど出ない |
目のかゆみ・充血 | なし | なし | あり |
寒暖差アレルギーは通常のアレルギーとは違うものの、抗ヒスタミン薬や漢方薬などで対処できます。
漢方薬を使う場合は、次のようなものが有効です。
- 透明でサラサラとした鼻水が出る方…小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
- 鼻詰まりがひどい方…葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
- 体の冷えがある方…当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
▼参考サイトはコチラ
ゆたクリニック湯田厚司 2011年『血管運動性鼻炎』
厚生労働省委託事業AMR臨床リファレンスセンター『感冒(かぜ)』

寒暖差アレルギーで出現する症状別の治し方や対策とは?
お客さまが気になる症状によって、勧めるべき市販薬は変わります。
ここでは、主な症状別に市販薬の選び方と接客時の対応を見ていきましょう。
鼻水・鼻詰まり
寒暖差アレルギーでよく見られるのが、鼻水や鼻詰まりなどの症状です。
温度差が刺激となって鼻の粘膜の血管が広がるため、このような症状が出現します。
鼻水や鼻詰まりに有効なのが抗ヒスタミン薬です。
抗ヒスタミン薬には鼻水や鼻詰まりを引き起こすヒスタミンの働きをブロックする効果があるため、症状を抑えられるとされています。
即効性を期待されている方には第1世代、眠気が出にくいものがよいという方には第2世代の抗ヒスタミンを勧めましょう。
前述の通り、小青竜湯や葛根湯加川芎辛夷、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などの漢方薬も候補となります。
このほか、点鼻薬を使うのもよいでしょう。
ただし、ステロイドが配合された市販の点鼻薬は花粉症による症状にしか使用できません。
お客さまにお勧めする場合はナファゾリン塩酸塩などの血管収縮剤が配合されたものを選んでください。
▼関連記事はコチラ
【薬剤師監修】抗ヒスタミン薬とは?種類や特徴、副作用など徹底解説
くしゃみ・咳
くしゃみが出るのも、鼻水や鼻詰まりと同じで鼻の粘膜の血管が広がるのが原因です。
気温差によって自律神経のバランスが乱れると血管がうまく収縮しなくなり、くしゃみの症状が出現します。
咳は自律神経の乱れによる影響が大きいと考えられていますが、寒暖差アレルギーの原因そのものがまだ明確になっていないため、はっきりしたことは言えません。
風邪と混同されやすいのですが、寒暖差アレルギーの場合の症状は一時的なものが多いです。
くしゃみや咳の症状だけで風邪かどうか鑑別するのは難しいので、見分けたい場合は鼻水に着目しましょう。
寒暖差アレルギーの場合は水っぽくてサラサラした鼻水が出ますが、風邪の場合は黄色っぽくてドロドロしています。
くしゃみや咳の症状にも抗ヒスタミン薬が有効です。
ただし、市販の抗ヒスタミン薬は鼻水や鼻詰まり、くしゃみや肌のかゆみなどにしか使用できません。
そのため、咳が気になる場合は医療機関を受診しましょう。
肌のかゆみ・蕁麻疹
寒暖差アレルギーでは、人によって肌のかゆみや蕁麻疹が起こる場合があります。
寒冷蕁麻疹とも呼ばれており、現時点で明確な原因はわかっていません。
一説では、寒冷刺激によってヒスタミンが大量に分泌されるのが原因だと考えられています。
ヒスタミンが原因だと考えられているため、市販薬で対処する場合は抗ヒスタミン薬が有効です。
ただし、肌のかゆみや蕁麻疹に使える抗ヒスタミン薬は限られているため、パッケージに記載されている効能効果をよく確かめてから販売してください。
肌のかゆみや蕁麻疹に使用できる抗ヒスタミン薬は眠気が出やすいものがほとんどのため、気になる方には薬を使わない対処法をお伝えするのもよいでしょう。
体を冷やさないようにしたり、ストレッチやウォーキングなどの軽い運動をして体を温めたりすることで対策できます。
<対応例>寒暖差アレルギー対策の市販薬を求めて来店されたお客さまへの対応
◆人物データ
- 20代女性
- 職業 :学生
- 既往症 :なし
- 使用中の薬:点鼻薬
- アレルギー:なし
- 症状 :鼻水・鼻詰まり・蕁麻疹
◆対応例
お客さま:
鼻水や鼻詰まりに効く飲み薬はありますか?
登録販売者:
フェキソフェナジン塩酸塩配合のこちらの薬は眠気が出にくく、鼻水や鼻詰まりに効きますよ。ほかにお困りの症状はありませんか?
お客さま:
実は蕁麻疹も出ていて。気温差が激しいと症状が出ることが多いんです。
登録販売者:
そうなんですね。フェキソフェナジンは蕁麻疹には使えないので、こちらのジフェンヒドラミン塩酸塩が配合された飲み薬がおすすめです。今ほかに何か使っているお薬はありますか?
お客さま:
市販で購入した点鼻薬を使っています。
登録販売者:
点鼻薬なら一緒に使っても問題ありません。ジフェンヒドラミン塩酸塩は眠気が出やすいので車の運転などはされないようにしてください。
お客さま:
わかりました。
登録販売者:
症状が長引くようでしたら医療機関を受診してくださいね。寒暖差アレルギーも考えられますので、体を冷やさないように気をつけてください。
お客さまへの対応の注意点
鼻水や鼻詰まりに加えて蕁麻疹の症状も出ているため、すべての症状に対応できるジフェンヒドラミン塩酸塩をお勧めしました。
フェキソフェナジンは医療用であれば蕁麻疹にも使えますが、市販薬は鼻の症状にしか使えないので販売しないように注意してください。
「気温差が激しいと症状が出る」とのことで寒暖差アレルギーが原因として考えられますが、登録販売者は病名の確定はできません。
断定した言い方をしないように気をつけましょう。
ジフェンヒドラミン塩酸塩は眠気が出やすいので、その点もお伝えする必要があります。
また、寒暖差アレルギーの場合は体を冷やすと症状が悪化することがあるので、冷やさないようにとのアドバイスも重要です。
寒暖差アレルギーは抗ヒスタミン薬での治療が基本
寒暖差アレルギーの原因は現時点では明確になっていません。
寒暖差アレルギーと思われるお客さまが来店されたら、症状に応じて適切な抗ヒスタミン薬を提案しましょう。
自律神経の乱れも関係していると言われているため、ストレスを溜め込まないようにしたり体をゆっくり休めたりすることで、寒暖差アレルギーの症状を改善できます。
体を冷やすと症状が悪化しやすいので、上着やストールなどで体温調節を行うことも、対策として伝えるとよいでしょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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