著名人コラム
2022-05-20
妊婦の方への対応が難しく悩んでいます。薬の注意点などについてわかりやすく説明する方法を教えてください。【鈴木伸悟先生のお悩み相談室!第5回】
・Before
・After
薬の成分や飲み合わせ、接客、同僚との人間関係など、たくさんの悩みや不安を抱えながらも、お客さまに最適な提案ができるよう奮闘する登録販売者。 そんな登録販売者のお悩みに、SNSや講演会、業界紙などを中心にOTC医薬品の情報発信を行う薬剤師の鈴木伸悟先生が答えます!第5回は、妊娠中の方への対応に関する相談です。 妊婦の方の薬の服用は、胎児への悪影響を避けるため、種類や量の制限、禁忌などもあり注意が必要です。受診勧奨をする前に登録販売者が考えるべきことを、鈴木先生に教えていただきました。
妊婦の方が薬を服用することによる影響とは?
医薬品登録販売者として働いていると、妊娠中のお客さまから薬の相談を受けることがあると思います。
妊娠中と授乳中でも対応が異なるため、お悩みの方は多いのではないでしょうか。
一方、話をよく聞かないまま「病院で相談してください」と伝えると、お客さまから不親切だと感じられてしまうかもしれません。
今回は、私が考える妊娠中の方への対応について解説していきます。
まず、妊娠中の医薬品の使用における注意点は、医薬品の種類や量、妊娠期間(初期〜後期)などによっても違いがあります。
その期間中に不適切な服用をすると、奇形や発達障害になるリスクなど胎児に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。
妊娠中のOTC医薬品の使用も同様です。
OTC医薬品の使用上の注意で「してはいけないこと」に妊娠中の服用が記されている場合は、販売せずに受診勧奨をするか、ほかの商品を提案しましょう。
妊婦の服用が「相談すること」として示されている場合
一方、妊婦の方の服用が「相談すること」として示されている場合には、判断が難しいと思います。
医療用医薬品の添付文書では、妊婦の服用に関して「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与」と表現されていることがあります。
OTC医薬品で「相談すること」とされている場合に、まず本当に薬の服用が必要かを検討することが大切です。
症状が軽度であればOTC医薬品ではなく、養生法を提案し、症状がひどい場合には受診を促します。
使用の可否に関する判断が難しかったり、お客さまが少しでも不安を抱いていたりするケースでも主治医への受診を優先すると良いでしょう。
お客さまから強い購入希望があった場合の対応は?
それでもお客さまから強い購入希望がある場合に、文献などで妊娠中でも比較的安全性が高いとされている成分を配合した商品を紹介するようにしています。
妊娠中に相談される症状として、「頭痛」「便秘」「腰痛」などがありますが、使用を検討できる商品としては、以下のようなものを私は候補としています。
- 発熱や痛み…アセトアミノフェンの単味製剤
- 便秘…酸化マグネシウムの単味製剤
- 肩や腰の痛み…サリチル酸グリコール配合の湿布薬
- 花粉などによる鼻のアレルギー症状…ロラタジンの単味製剤
しかし、漢方薬なども含めて「これなら安全」といったものはなく、慎重な使用を指導すると良いでしょう。
授乳中の対応方法についても、次の機会にお話したいと思います。
【回答者プロフィール】
回答者:鈴木 伸悟(すずき・しんご)さん
有限会社ウインファーマ セルフメディケーション推進室室長。
薬剤師および登録販売者へ適切なOTC医薬品のすすめ方や売り場作りなどの教育に携わる。
SNSでは、大手ドラッグストアおよび調剤薬局での自身の勤務経験をもとにOTC医薬品の役立つ情報発信を行い、全国各地での講演会やコラムの連載など多方面に活躍している。
著書「薬局OTC販売マニュアル〜臨床知識から商品選びまで分かる〜 日経BP社」

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