業界情報
2020-11-13
「医薬品登録販売者」への名称変更は実現するの?理由や背景についても解説
・Before
・After
登録販売者は名札に「登録販売者」であることを明記しなければなりませんが、資格名について「医薬品登録販売者」という表記を用いてもよいという見解が厚生労働省から示されました。現時点では「登録販売者」の名称が正式に変更されたわけではありませんが、今後は「医薬品登録販売者」という呼び方が用いられる機会が増えていくでしょう。そこでこの記事では、なぜ「医薬品登録販売者」という呼び方を用いる動きがあるのか、その背景と登録販売者を取り巻く今後の期待や展望について解説します。
登録販売者の正式名称と歴史
登録販売者は、2009年6月施行の改正薬事法(現・薬機法)によって新設された、一般用医薬品販売に関する国家資格です。現在では「医薬品登録販売者」という表記が使われることもありますが、「登録販売者」が正式な名称です。
改正前の薬事法では、医薬品を販売できるのは薬剤師もしくは薬種商販売業のみでした。そのため、これらの資格者が不在時には販売できないという制約があり、販売場所も薬局や薬店(ドラッグストア)に限定されていました。
一方で、店舗における薬剤師の人材不足などの問題が表面化しており、薬剤師以外で専門的な知識を持った人材を広く確保する目的で登録販売者制度が創設されたのです。
そして2009年6月施行の改正薬事法によって、一般用医薬品(OTC医薬品)の安全を確保しながら、消費者が購入しやすくなる販売制度が実現しました。「登録販売者」という新資格者が一部のリスクの高い医薬品(第一類医薬品)以外の薬を販売できるようになり、薬局や薬店(ドラッグストア)のほかスーパーやディスカウントストア、コンビニエンスストアなどの異業種参入が進むことになります。
「登録販売者」から「医薬品登録販売者」へ名称が変わる可能性も……?
登録販売者は、消費者から専門家であることを明確に判別できるよう、名札に「登録販売者」と表示しなければなりません。
しかし、登録販売者制度は広く消費者に認知されているわけではなく、資格名に「薬」という文言がないことから、専門家であることが理解されにくいという背景がありました。そこで用いられるようになった呼び名が「医薬品登録販売者」です。
「医薬品登録販売者」は正式名称ではないものの、平成26年8月19日の厚生労働省通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」において、
という見解が示されています。



「医薬品登録販売者」への名称変更により得られるメリット
では、登録販売者を「医薬品登録販売者」とすることによって、消費者や登録販売者自身にどのようなメリットがあるのでしょうか。
まずひとつめのメリットとして、「薬の専門家」であることがより明確になります。登録販売者の存在については浸透しつつあるものの、名称を見ただけでは医薬品販売の専門家であることが消費者に伝わりにくいことが指摘されています。
そのため、消費者に情報提供を行うにあたり、まずは販売資格があることから説明しなければならないことも実際に起きていたのです。
しかし、資格名称に「医薬品」がつけば、登録販売者が薬の専門家であることが一目で認知されやすくなります。その結果、消費者は誰に相談すべきかが明確になります。ひいては、医薬品の適正使用にもつながっていくでしょう。
また、消費者から見て「薬の専門家」だとの認知が高まることは、登録販売者自身にとっても大きなメリットがあります。専門知識を有する国家資格者ときちんと認識されることによって、医薬品を扱う専門家としての自覚や誇りが高まるのです。
「医薬品登録販売者」という名称に込められた登録販売者への期待
登録販売者制度がはじまってから10年以上。ここで名称記載に「医薬品登録販売者」が認められるようになったのは、登録販売者という専門家の存在を消費者へ浸透させる目的だけではありません。
登録販売者は「薬の専門家」としての様々な役割が期待されているということでもあるのです。 ここでは、「医薬品登録販売者」という名称記載を認めることによって、登録販売者にどのような期待が寄せられているのかを具体的に見ていきましょう。
地域の人たちにもっとも近い「薬の専門家」としての役割
かつては薬について相談するとなると主治医や薬剤師を頼ることがほとんど。そのため主に相談機会は受診時や処方時で、気軽にいつでも相談できるとは言いがたい環境でした。
しかし、日常的に利用するドラッグストアやスーパーの売場などであれば、お買い物の際に気になったことを気軽に相談できます。身近に相談できる薬の専門家という役割が、登録販売者に期待されているのです。
セルフメディケーションの推進
セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」という考え方です。病気になったら必ず医療機関を受診するのではなく、日常から病気の予防に努め、軽い不調であれば自身で対処して改善をはかります。
セルフメディケーションは健康寿命を延ばすほか、過剰な医療費の削減につながることからも注目・推進されており、一般用医薬品を対象とした「セルフメディケーション税制」のような税制優遇施策もはじまっています。
このセルフメディケーションに欠かせないのが一般用医薬品です。消費者が一般用医薬品を購入するにあたり適切な製品を選択するためには、専門家による相談応需や適切な情報提供が必要になります。
一般用医薬品の大部分を占める第二類・第三類医薬品を扱える登録販売者は、セルフメディケーション推進の中心的な担い手といっても過言ではありません。
ポリファーマシーや残薬などの問題を防ぐ
複数の医療機関から薬の処方を受けていると、必要以上の医薬品を併用することで健康被害が起こる「ポリファーマシー」や、医薬品が正しく服用されずに余ってしまう「残薬問題」などが発生することも……。
とくに複数の医療機関を受診している方や高齢者の間で起こりやすく、問題視されているのです。 一般医薬品の販売店舗においても、複数の薬を処方されている方が新たに一般用医薬品を購入しようとすることが少なくありません。
登録販売者は、医薬品販売時に使用中の医薬品の確認や受診状況を確認できる立場にあります。そのため、薬剤師とともにポリファーマシーや残薬の問題を防ぐ役割も期待されているのです。
必要な受診を促す
一般用医薬品を購入しようとする消費者のなかには、医療機関での診断・治療が必要な方も少なくありません。日々の接客で長期にわたり症状が改善していない方や、早期の治療が必要なケースに遭遇した経験もあるのではないでしょうか。
このとき、状況を確認したうえで専門家として必要な受診を促すことも登録販売者の重要な役割です。

登録販売者への期待や需要はさらに高まっている
登録販売者に「医薬品登録販売者」という名称を用いようという動きには、登録販売者の認知向上にあわせて、今後登録販売者に様々な期待がなされていることが背景にあります。
セルフメディケーションが進むなか、登録販売者の役割は、単に大部分の一般用医薬品を販売できるだけにとどまりません。いつでも相談できる身近な薬の専門家として、地域の方々の健康に大きな貢献をもたらす存在でもあるのです。
「医薬品登録販売者」という表記は、その役割を明確にするもので、登録販売者にさらなる活躍のステージをもたらしてくれるでしょう。
現時点では「医薬品登録販売者」という表記が認められているだけに過ぎませんが、今後正式名称になる可能性もゼロではないはずです。

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