業界情報
2021-04-23
OTC医薬品の宅配サービス、今後の広がりは?登録販売者が知っておくべき基礎知識
・Before
・After
2021年2月に、コンビニエンスストア大手のローソンがフードデリバリーサービス「Uber Eats」を利用したOTC医薬品の宅配サービスを開始しました。ネット通販とは異なり、店舗に出向かずとも必要なときに必要な医薬品が手に入る宅配サービスは、今後の成長が期待される分野です。OTC医薬品の販売方法に大きな変革をもたらすかもしれません。 今回は、OTC医薬品を含む医薬品の宅配サービスについて、その仕組みやメリットなどを解説していきます。
OTC医薬品の宅配サービスとは
2021年2月、ローソンと「Uber Eats」によるOTC医薬品の宅配サービスが一部店舗で開始されました。
OTC医薬品の宅配自体は2014年の改正薬機法で認められている範囲であり、ネット通販を中心に行われていました。
しかし、今回のフードデリバリーを使用した宅配サービスは、注文したものをすぐに受け取ることができる点が従来のネット通販と異なります。急に薬が必要になったものの、買いに出るのが難しい際に大変便利なサービスです。
対面販売が必要なOTC医薬品を「Uber Eats」を通じて購入する場合の販売の流れは以下の通りです。
2.注意事項の確認と質問への回答を行って注文完了
3.注文を受けた店舗は、商品を医薬品専用の袋に入れ、登録販売者が確認の上配達員に渡す
4.「Uber Eats」の配達員がお客様のもとへ届ける
宅配サービスが利用できるのは店舗の営業時間内(資格保有者在籍時間)に限られます。また、薬についての質問や相談がある場合には、販売店舗の電話対応が必要です。
これまでもOTC医薬品の宅配は、ネット通販のほかにも店舗独自の配送サービスやネットスーパーによる宅配などの手段はありました。
しかし、フードデリバリーサービスによる宅配は、注文後30分ほどで配達される点が大きなベネフィットでしょう。
宅配対応店舗が増えれば、医薬品の購入方法の一つとして普及していくと考えられます。

医薬品の宅配サービス、今後の動向は
宅配サービスで医薬品を受け取れるのは、OTC医薬品に限りません。オンラインでの服薬指導が解禁となり、処方箋医薬品も宅配での受け取りが一般化していくでしょう。
ここでは今後の動向の参考に、現状の処方箋医薬品における宅配サービスについて説明していきます。
オンライン服薬指導の広がり
医療機関ではすでに再診において、テレビ電話などを利用した遠隔診療(オンライン診療)が始まっていましたが、服薬指導は対面で行う必要がありました。
そのため、院内処方では薬の宅配まで可能でしたが、院外処方の場合は指定した薬局に処方箋が送信されたあと、薬局へ出向き対面で服薬指導を受けなければなりませんでした。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、初診からのオンライン診療の特例認可とともに、オンラインでの服薬指導が予定より前倒しで解禁されました。
これにより、院外処方であっても、処方箋を持って薬局に出向く必要なく、自宅に届けてもらうことが可能になったのです。
オンライン服薬指導の流れは以下の通りです。
2.薬局がインターネットや電話を通じて患者様に服薬指導を行う
3.指導後、宅配もしくは薬局へ出向いて薬を受け取る
直接の服薬指導が必要になる吸入薬や向精神薬などの一部の薬を除き、自宅で服薬指導が受けられます。
診療はオンラインに限らず、対面診療による薬の処方であってもオンラインでの服薬指導を希望することができます。
オンライン服薬指導は新型コロナウイルスへの感染拡大防止の効果も期待できますが、患者様にとっては薬局での待ち時間や手間を削減できるメリットも。
宅配サービスは手段によって受け取りまでに時間を要することが難点でしたが、配送でも当日中に薬の受け取りを実現するサービスも登場しており、利便性が向上しています。
無人ロッカーでの処方箋医薬品受け取り
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、様々な場面で非接触が求められるようになりました。
処方箋医薬品では薬の受け取りまで自宅で可能になりましたが、宅配サービスを利用する場合には医療費に加えて送料の負担が必要です。
持病があり定期的に薬を服用しなければならない方にとっては、負担は小さくありません。
その負担を軽減するため、医薬品受け取り用の無人ロッカーを導入する動きも見られます。
従来の宅配受け取りロッカーのように個人専用に発行されるQRコードなどを利用して開錠する方式により、好きな時間に薬の受け取りが可能です。
取りに出向く必要はありますが、人と接触せずに受け取ることができます。
ロボットを活用した処方箋医薬品配達
パナソニックによる、自動走行ロボットによる処方箋医薬品配達の実証実験も行われています。
オンライン服薬指導後、ロボットが医薬品を自宅まで届けてくれるサービスで、支払いはクレジットカードを利用し完全非対面で薬の処方を受けられます。
配達可能エリアは薬局店舗から一定の範囲に限られますが、服薬指導後すぐに薬を受け取ることが可能です。
今後の道路交通法の改正によりロボットの公道走行が解禁されれば、様々な新しいサービスが登場するでしょう。
薬のほか、食料品、日用品などをまとめて家まで配達できる地域の生活インフラとしての役割も期待されています。



これからの登録販売者にできること
新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、医薬品の購入や受け取りが非対面でできる仕組みが次々に登場しています。
そのなかで、登録販売者はどのような対応を行っていけばよいのでしょうか。
また、登録販売者のニーズに変化はあるのでしょうか。今後の登録販売者のあり方について考えていきましょう。
オンラインで医薬品を購入するお客様のサポート
不要不急の外出を控えるため、OTC医薬品もネット通販で購入するお客様が増えました。
その影響から、登録販売者も店舗販売だけでなく、コールセンターや医薬品ネット販売事業などでの活躍も可能になってきています。
店舗以外の仕事であっても、お客様と直接対面しないだけであり、お客様の状況に応じた適切な情報を届けるという本来の役割は変わりません。
一方で、対面でないがゆえに、より高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。
対面ではよりお客様一人ひとりに合った対応が求められる
OTC医薬品購入においてネット通販の利用が進んでも、身近な実店舗での販売需要がなくなってしまうわけではありません。
むしろ、ネットでの購入判断が難しいお客様が、専門家を頼って来店されるケースが増えるでしょう。
そのため、医薬品の添付文書にある記載事項を説明するだけではお客様のニーズを満たすことはできません。
一人ひとりに応じたきめ細かく、適切な対応が求められます。ときには、医薬品のみならずサプリメントの提案や生活上のアドバイスなどもあわせて行う必要もあるでしょう。
進化するサービス形態を逐次確認
OTC医薬品の宅配サービスは以前からニーズがありましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い外出が控えられたことをきっかけに、その需要が改めて浮き彫りになりました。
急に薬が必要になった際にすぐに自宅に届けてくれる宅配サービスは、その利便性から今後大きく普及していくでしょう。
店舗の需要がなくなることはありませんが、登録販売者が活躍できる場所はこれまでよりも多様化していくことは確実です。
現在店舗で働く登録販売者も、今後宅配サービスに関連する業務が発生してくるかもしれません。
関連法規や業界の動きに追いつけるよう、最新の情報をチェックしておきましょう。
【情報元】
▼株式会社ローソン ニュースリリース
Uber Eatsでは国内初となる医薬品のお届けを開始
▼Uber Japan株式会社 ニュースリリース
Uber Eats、ローソンから医薬品のデリバリーを開始
▼パナソニック株式会社 ニュースリリース
小型低速ロボットによる住宅街向け配送サービスの実証実験をFujisawaサスティナブル・スマートタウンで実施

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