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2021-09-03
OTC医薬品の「2分の1ルール」撤廃!登録販売者の活躍の場は広がる?
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・After
2021年8月1日から、OTC医薬品販売における「2分の1ルール」が撤廃されました。これにより24時間営業のコンビニエンスストアの医薬品販売参入の激化をはじめ、様々な動きが見られると予想されます。登録販売者の働く環境はどう変化していくのでしょうか。 今回は、「2分の1ルール」撤廃の背景や、撤廃に伴う登録販売者への影響などについて解説します。さらに今後進んでいく可能性のある、規制緩和の流れも追っていきましょう。
OTC医薬品の「2分の1ルール」とは?
OTC医薬品販売における「2分の1ルール」とは、店舗の営業時間のうち半分以上はOTC医薬品の販売を行える薬剤師や登録販売者が常駐しなければならない規定です。
1964年に厚生労働省が示した「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」により定められました。
「2分の1ルール」は、一般消費者が医薬品を安全に使用するため、専門家がOTC医薬品に関する相談対応ができる時間の十分な確保ができるよう規定されたものです。
現在、薬局やドラッグストアでは、基本的に店舗の営業時間は資格者が常駐し、医薬品を販売しています。
しかし、コンビニエンスストアをはじめ、24時間など営業時間が長時間にわたる店舗では、「2分の1ルール」を満たすことが難しく、医薬品の取り扱いがなかなか進まない状況でした。
「2分の1ルール」の改正で何が変わる?
「2分の1ルール」の撤廃に至ったのは、24時間営業のコンビニエンスストアが加盟する日本フランチャイズチェーン協会による要望です。
「2分の1ルール」のもとでは、24時間営業の店舗が医薬品を販売するために、12時間薬剤師や登録販売者が常駐しなければなりません。
規模の小さな店舗でも3~5人ほどの資格者の確保が必要になり、人材確保やコストの観点から大きな参入障壁となっていました。
そこで、日本フランチャイズチェーン協会が規制の緩和を求めていたのです。
「2分の1ルール」が撤廃されれば、店舗の営業時間にかかわらず医薬品の販売が可能になります。
たとえば、以下のようなニーズに合わせた販売形態を行う店舗もあらわれるでしょう。
・医療機関が休みの土日のみの販売
・オフィス街での昼休み時間帯のみの販売
ルール撤廃によりこれまで必要だった営業時間の縛りがなくなるため、24時間営業の業態を中心に医薬品を販売する店舗はさらに増えると予想されます。
一方、日本医薬品登録販売者協会は当初より「登録販売者が働く場面が確実に縮小する」と懸念を示していました。
また、ルールの本来の目的である「相談対応ができる時間の確保」が困難になるリスクも指摘されています。
「2分の1ルール」撤廃による登録販売者への影響
「2分の1ルール」の撤廃によって、登録販売者への影響も少なからずあると言われています。どのような変化が考えられるのか見ていきましょう。
①登録販売者不要論の加速
2014年のネット販売の解禁に伴い、ささやかれるようになった登録販売者不要論。
営業時間が「2分の1ルール」に縛られなくなれば、前述したような短時間だけの医薬品販売も可能になります。
つまり、これまで一定時間必要だった資格者の配置が減らされ、不要論が加速するというのです。
医薬品がメインの商品ではない量販店やホームセンターのなかには、コストの問題から医薬品販売の時間を短縮して必要最小限の資格者を配置しておけばよいと考える企業も出てくるでしょう。
ドラッグストアにおいても、そのリスクがまったくないとはいえません。
そうなると、資格者の雇用数が減少する可能性は否定できません。さらに、営業時間帯は資格者が1人のみとなって、個人にかかる負担が増えてしまうことも考えられます。
このような背景から、現役の薬剤師や登録販売者のほか、日本医薬品登録販売者協会などを中心に2分の1ルールに対して反対の声もあがっていましたが、結果的には今回の撤廃に至りました。
②働く場所や働き方の選択肢が増加
ルール撤廃により、コンビニエンスストアをはじめとした24時間営業店舗の医薬品販売の参入はいっそう進む見込みです。
すでに大手コンビニエンスストアチェーンのローソンは、2023年度までに医薬品取扱店舗を倍増させる方針を表明しており、大手2社も追随する意向を示しています。
コンビニエンスストア業界に限らず、24時間営業のスーパーやディスカウントストアの新規参入も期待できるでしょう。
ただし、管理者要件を満たす人材の確保は容易ではないため、現在活躍中の登録販売者へのニーズ向上が十分に期待できます。
今後は既存の業種に限らず、様々な業種や働き方に対応できる登録販売者が求められるようになるでしょう。
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「登録販売者不要論」とは?議論の背景と広がる活躍の場について

医薬品販売規制の今後にも注目
医薬品販売については、今後さらなる規制緩和が進む可能性があります。現在注目されている2項目について確認しておきましょう。
①資格保有者による遠隔管理販売
現状は、医薬品の販売と情報提供は、店舗で薬剤師や登録販売者が直接行う必要がありました。
この規制緩和を求めたのが「2分の1ルール」と同じく日本フランチャイズチェーン協会です。
日本フランチャイズチェーン協会が要望を出す遠隔管理販売は、医薬品に関する説明はテレビ電話やオンラインチャットなどを通じて資格者が行い、商品は店舗で受け取れるようにする仕組みです。
これが実現すれば、店舗に薬剤師や登録販売者が在籍していなくても医薬品の販売が可能になるため、ドラッグストアをはじめとした医薬品取扱店での採用に大きな影響を与えると考えられます。
また、併せて現在実店舗が必須となっている、医薬品のインターネット販売についても緩和されるでしょう。
ただし、遠隔管理販売の実現には薬機法の改正を伴うなど簡単ではありません。すぐに緩和とはならない可能性が高いですが、今後の動きは注視しましょう。
②要指導医薬品のオンライン服薬指導
要指導医薬品のオンライン服薬指導についても規制緩和の要望が高まっています。
医療用医薬品のオンライン服薬指導が認可されたにもかかわらず、要指導医薬品は対面販売が求められており、インターネット販売は認められていないためです。
2021年3月、要指導医薬品の販売規制は最高裁で合憲と判断されましたが、医療のオンライン化が進むなかで動向に変化があるかもしれません。
規制緩和が進むと医薬品を購入する手段が増え、将来的にはドラッグストアの在り方も大きく変わると予想されます。
手軽に購入できるコンビニやインターネット販売と比較した強みが求められるようになるでしょう。
登録販売者の活躍の場は多様化する
「2分の1ルール」撤廃の登録販売者への影響や今後の規制緩和の流れについて見てきました。
ルールの撤廃により、登録販売者の雇用減少が懸念されてはいますが、コンビニエンスストアをはじめ、医薬品を販売する店舗はさらに増えると考えられています。
販売の主な担い手となる登録販売者のニーズは、ドラッグストアに限らずさらに多様化していくでしょう。
活躍の場や働き方の変化に対応できるよう、登録販売者としての知識やスキルを磨いておく必要があります。
また、今後さらなる規制緩和が行われる可能性も否定できません。常に情報をキャッチアップしておきましょう。

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