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2020-12-25
ステロイド外用薬の正しい使用方法は?登録販売者がもつべき知識と注意点【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
皮膚のトラブルに対して優れた効果をもたらすステロイド外用薬は、年間を通してよく用いられる外用塗り薬の代表的な存在です。今回はステロイド外用薬とはどのような薬なのか、適切な使用法、ステロイド外用薬で気になる副作用や注意点についてくわしく説明していきます。
「ステロイド」という名前は耳にする機会も多いはず。ここでは、ステロイド外用薬とはどのような薬なのか、どのような成分なのかを今一度おさらいしておきましょう。
ステロイドとは?
ステロイドとは正確には「副腎皮質ステロイド」といい、もともと体内にある「副腎皮質ホルモン」という成分に似せてつくられました。
体内の副腎という臓器でつくられる副腎皮質ホルモンには、炎症を鎮める作用があり、この作用を薬に応用したものが「副腎皮質ステロイド」です。
ステロイド外用薬の作用
ステロイド外用薬は、塗った部分の炎症を鎮める作用(抗炎症作用)に優れています。炎症はかゆみ、赤み、腫れのもととなる反応であり、湿疹やかぶれ、皮膚炎などの皮膚トラブルの主な原因となります。
ステロイド外用薬には次のような作用があります。
・免疫抑制作用
・細胞増殖抑制作用
・血管収縮作用
これらの作用が組み合わさることで、ステロイド外用薬は速やかに皮膚の炎症を鎮める薬効を発揮します。
ステロイド外用薬の事前に確認すべきことと、適切な薬の選択方法
ステロイド外用薬には種類が豊富にあり、ランクによる使い分けに注意するだけでなく、適切な使用方法のアドバイスを行うことも重要です。店頭で販売する際におさえておきたい、使い方のポイントをご紹介します。
使用目的を確認する
ステロイド外用薬の市販薬が適応となる症状としては、湿疹・皮膚炎、かゆみ、虫刺され、手湿疹、かぶれ、日焼けによる炎症などの幅広い症状があります。まずはそれらの詳細な使用目的を確認しましょう。
また、できれば症状が出ている箇所をみせてもらうことも薬を選択する際のひとつの判断材料になります。
すでに化膿していたり、感染が疑われる症状の場合は、ステロイド外用薬の使用で悪化する可能性が高いため使用は推奨できません。
判断が難しい場合には、医療機関への受診を促す対応も必要です。
<ステロイド外用薬 効果のランク>
弱い(weak) | プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル など |
---|---|
普通(medium) | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、トリアムシノロンアセトニドなど |
強い(strong) | ベタメタゾン吉草酸エステルなど |
とても強い(very strong) | モメタゾンフランカルボン酸エステルなど |
最も強い(strongest) | クロベタゾールプロピオン酸エステルなど |
市販薬としては弱い方から3つの「弱い(weak)」「普通(medium)」「強い(strong)」に分類される成分のみ販売が認められています。
来店されるお客さまのなかには、「病院と同じ薬が欲しい」とおっしゃられるケースもあります。しかし、「とても強い(very strong)」「最も強い(strongest)」に分類される成分は、医師の診断による処方箋に基づき処方される医療用医薬品に分類されています。
また、皮膚の部位や年齢によっても吸収率に違いがあるため、ステロイド外用薬は状況に応じて適切に使い分ける必要があります。そのためヒアリングを行う際は、お客様の症状だけではなく使用部位や使用者の年齢も確認し、適切な種類を選択することが大切です。
とくに吸収されやすい頬などの顔面や陰部については「弱い(weak)」を選択することが原則です。また、高齢者やドライスキンの場合、乳幼児などは吸収率が高いため、通常よりも1ランク下げるなど注意しましょう。
適切な剤形を選ぶ
ステロイド外用薬にも、「軟膏」「クリーム」「ローション」の3つの剤形があります。
軟膏は最も患部に付着しやすく刺激が少ないですが、ベタつきやすいことがデメリットです。
クリームはサラッとして伸びがよく、ローションは頭部などに適していますが、軟膏よりも刺激となりやすい点がデメリットです。
使用部位や患部の状態により使い分けるようにしましょう。



ステロイド外用薬の適切な使用方法
ステロイド外用薬は、塗り方や使用量も注意する必要があります。お客さまに説明できるよう、次の3つのポイントを確認しておきましょう。
1.すり込まずに適量を優しく塗る
ステロイド外用薬は擦り込まずに、優しく塗り広げることがポイントです。擦り込むと余計に薬剤の吸収を高めてしまう恐れがあり、適切な効果を得られない可能性があります。
皮膚のシワや溝に沿って横方向に伸ばすようアドバイスしましょう。
2. 使用量を守る
ステロイド外用薬は、「FTU(フィンガーチップユニット)」を目安に適切な使用量を守ることも大切です。
人差し指の第一関節まで薬を押し出した量(約0.5g)が 1FTUで、手のひら2枚分が塗れる量になることを覚えておきましょう。
3.1日あたりの使用回数を守る
ステロイド外用薬の種類により、1日の使用回数が定められています。通常は1日1~2回程度と定められており、これ以上塗っても効果が強くなるわけではありません。
増やさないと効果が出ない状態であれば、効果のランクを上げる対応もできますが、何らかの原因が隠れているケースもあります。
また、症状が落ち着いてきたら、使用回数を減らしたり、ノンステロイドタイプに切り替えることを勧めましょう。
ステロイド外用薬の主な副作用とは
ステロイドというと、副作用を心配される声は意外と多いもの。基本的には正しく使用すれば安全に使える薬ですが、使用方法を間違えると思わぬ副作用が起きる可能性はあります。
次のような副作用の可能性については、店頭で十分に説明を行いお客さまの理解を促すことが大切です。
局所性副作用
・毛細血管の拡張(とくに顔に起こりやすい)
・感染症の誘発、悪化
・酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎、紅潮(赤くなる)
・乾皮症(肌の乾燥)
・緑内障
塗った部分にだけ現れる副作用のことを、「局所性副作用」といいます。
適量を短期間に限って使用する場合は心配する必要はありませんが、一部分に大量に使用したり、長期間にわたり漫然と使用したりなど、間違った使い方により起きる可能性があります。
全身副作用
・成人におけるクッシング症候群
・小児における成長障害
・糖尿病の誘発、悪化
・骨がもろくなる
など
全身性の副作用は主にステロイドを内服した場合に注意が必要で、外用薬の場合は基本的にほとんど心配ありません。
ただし、長期間にわたり大量に使用し続けた場合や、全身に大量使用した場合などは全身性の副作用が起きる場合もあります。
外用薬とはいえ、皮膚から吸収されて全身に作用する可能性があることは留意しておきましょう。

<対応例>ドライスキンによる掻き壊しの症状で来店されたお客様の対応
では、実際にステロイド外用薬を販売する状況を想定して、会話形式でのやり取りから接客方法を学んでいきましょう。
・40代男性、基礎疾患なし
・症状: ドライスキンによる掻き壊し
お客さま:すみません、痒み止めが欲しいのですが。
登録販売者:痒み止めですね。どのような症状で、どの部分に使用されますか?
お客さま:からだ全体が痒くて、とくに背中や足がかゆいんです。ついつい掻いてしまって。
登録販売者:虫刺されや、蕁麻疹のような症状ですか?
お客さま:とくにそういったブツブツはないんだけど、冬になってから悪化してるみたいで。乾燥してるからだと思うんですけど……。
登録販売者:確かに皮膚が乾燥されて痒みが起きることは多いですね。何かお薬や保湿剤は使っていますか?
お客さま:手元にあった〇〇(抗ヒスタミン剤)を使ったけど、全然効かないんだ。夜になって布団に入ると、余計にかゆくなって寝られなくて。気づかないうちに掻いているみたいで、結構赤くなってしまったよ。(※症状のある部位を見せていただく)
登録販売者:掻き壊してしまったようですね。では、効果の高いステロイド配合の痒み止めがよいと思いますよ。
お客さま:ステロイドってどうなの?ちょっと心配なんですけど、この程度で使って大丈夫ですか?
登録販売者:心配される方がとても多いのですが、正しい使い方を守ればとても効果も高く安全なお薬です。むしろ症状がひどい時には、火事の火を消すのと同じで短期的に効果の高いステロイドを使った方が早くよくなりますよ。
お客さま:なるほどね。確かに治らないと困るからなあ。
登録販売者:はい。お客さまの場合は掻き壊しがあるので、ステロイドに抗生物質を配合したタイプがよさそうですね。しみにくい軟膏タイプがおすすめですよ。こちらを1週間程度塗っても改善しなければ、使用を中止してご相談ください。
お客さま:わかりました。じゃあ、それをください。
登録販売者:ありがとうございます。また、今回はお肌の乾燥が原因とのことなので、保湿剤も合わせて使用してください。とくにかゆい部分はステロイド外用薬を使用して、乾燥だけの場合には保湿剤で十分です。両方塗るならば、先に保湿剤を塗って、症状が強い部分にだけステロイドを塗るようにするとよいですよ。
お客さま:くわしく説明してくれてありがとう!助かりました。
接客のポイント
今回のお客さまは、「痒み止め」が欲しいという漠然としたニーズだったため、目的と症状をもっと詳しく掘り下げる必要がありました。痒みの原因は何なのか、使用部位がどこかによって、選ぶべき薬の種類も変わってきます。
原因は時期と主訴から乾燥(ドライスキン)であると判断しました。また、同時に掻き壊しがあること、抗ヒスタミン剤は無効であったという背景から、短期的に軟膏タイプのステロイド剤の使用が望ましいと判断しました。副作用を心配している様子であったため、適切に安心して使っていただけるような説明を行ったこともポイントです。
また、ステロイド外用薬だけでなく、ドライスキンそのものを改善する必要もあるため、保湿剤の併用を推奨しました。もし保湿剤がお客さまの手元にない場合には、刺激の少ない保湿剤を一緒に提案するとよいでしょう。
ステロイド外用薬を販売する際の注意点
ステロイド外用薬では、ほかの外用薬とは異なる注意点に留意する必要があります。次の注意点を理解したうえで、適切なタイミングで受診勧奨を行うことも大事なポイントです。
使用頻度
正しい効果を得るために、決められた使用回数を守ることは基本です。複数回塗っても効果が高まるものではなく、最大の効果を発揮するのには十分な回数として用法用量が定められています。
1日数回と記載されている場合は、多くても3~4回が目安です。必ず回数を守るように指導を行いましょう。
期間
基本的に薬には、使用してよい期間が定められています。通常は「5〜6日使用しても症状がよくならない場合は使用を中止」と記載されているため、1週間以上使用する場合には専門の医師などに相談するよう促しましょう。
また、使用してから症状が悪化する、全く効果を感じないという場合にも、使用を中止し医師の受診勧奨が望ましいといえます。
漫然と長期間使わないように、接客の際に一言添えることが大切です。
使用量
決められた使用量は、多すぎても少なすぎても効果が正しく得られなくなるため、前述したFTUを指標に使用量をアドバイスしましょう。
また、ステロイド外用薬は症状のある部位にのみ使用するのが原則です。
予防的に使用する意味はないため、症状がない部分には使用するべきではないこともおさえておきましょう。
年齢や属性、基礎疾患
使用者の年齢によってステロイドの強さを使い分ける必要があります。
使用上の注意を確認したうえで、乳幼児や小児、高齢者、妊婦、治療中の方などに使用する場合は、弱いタイプのステロイドかノンステロイドも検討するようにしましょう。
医薬品知識を深め、お客さまのから頼りにされる存在になろう
ステロイド外用薬の店頭での販売方法について解説しましたが、理解は深まりましたか?
副作用の情報などがひとり歩きして、一般的に「強い」「怖い」といったイメージが根付いているステロイド外用薬。
しかし、基本的には正しく用いれば決して怖い薬ではありません。皮膚の炎症を速やかに抑えることで、かゆみなどの不快な症状を取り除き、生活の質を高めてくれる非常に頼りになる薬です。
市販の外用薬は種類も豊富であるため、正しくステロイド外用薬を提案できるようスキルを高めていくことが登録販売者に求められます。ステロイド外用薬の特性を正しく理解したうえで、お客さまのニーズに的確に対応できる力を身につけていきましょう
【執筆者プロフィール】
氏名:笹尾真波
薬剤師兼フリーライター。大学院卒業後は、製薬会社、調剤薬局、ドラッグストア併設店舗などに勤務し、日本チェーンドラッグストア協会主催登録販売者継続研修の教材テキスト作成にも携わる。現在はライターおよびアドバイザーとして、健康関連、美容医療、サプリメント、漢方、アロマなど、幅広く執筆活動、監修等を行っている。

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