現場で役立つ知識
2020-11-06
家庭用常備薬の売り場はこうしてつくる【ドラッグストアの売り場づくり】
・Before
・After
セルフメディケーションが推奨されるなか、早めの自己対応が可能な常備薬に注目が集まっています。常備薬は急な体調不良やケガなどへの対処のみならず、災害時の備えとしても重要なので、ニーズに応じて売り場展開を考えている店舗もあるでしょう。そこで今回は、家庭用常備薬の売り場づくりの考え方や販促方法について解説します。
家庭用常備薬の売り場をつくる前に確認しておくこと
まずは、家庭用常備薬としてのニーズが高いカテゴリーを整理しておきましょう。常備薬として備えておきたい薬には、以下のような種類があります。
・胃腸薬
・整腸薬
・外用消炎剤
・外傷薬
・消毒薬
このほか、ケガの手当に必要な絆創膏類や包帯、感染対策のためのマスク、体温計なども備えておきたいものです。
また、健康維持のために普段から服用している薬についても、緊急性はありませんが常備薬として準備しておくと良いでしょう。
家庭用の常備薬は、一般的に家族全員が使えるものが適しています。しかし家族構成や年代、持病の有無や環境によって必要な薬も変わります。
たとえば子ども用の風邪薬や高齢者向けの湿布など、自店の客層にあわせた常備薬の種類をとらえ、売り場づくりに反映させましょう。
常備薬の必要性が高まるタイミング
家庭用常備薬の売り場展開は年間を通して行えますが、より効果的に訴求するためには、とくに常備薬に関心が高まるタイミングを選ぶと良いでしょう。
台風や豪雨など自然災害が起こりやすい夏から秋にかけては、防災の日(毎年9月1日)も近いこともあり常備薬を含めた備えを見直す人が多くなります。
また、生活環境が変わりやすい春の新生活シーズンや、医療機関が休みになる年末年始のタイミング、出張や旅行に出る際も常備薬の意識が高まるため、効果的に訴求しやすいでしょう。

家庭用常備薬をもつことによるメリット
家庭用常備薬を用意しておくメリットは、大きくわけて2つあります。
トラブルにすぐ対処できる
1つ目は、体に不調が起きたとき、すぐに対処できることです。ドラッグストアは身近に数多くあるため、必要になったときに買えば良いという考え方もあります。
しかし、実際には体調がすぐれないときに買いに出かけるのは難しく、薬が必要なときにお店が開いていない場合もあるでしょう。
このようなとき、常備薬でのすばやい初期対応が可能です。また、ひどくならないうちに常備薬を服用することで、症状を長引かせずに済むこともできます。
もちろん、常備薬で治まらないほどの不調であれば、すぐに病院の受診を促しましょう。
手元にあることで安心できる
2つ目は、常備薬が非常時の安心につながることです。災害など思わぬトラブルが発生した際には体調を崩すリスクが高まります。
しかし、そのような状況下では必要な薬が必ず手に入るとは限りません。コロナ禍においても一部の医薬品が一時的に品薄になり、入手が難しくなったことは記憶に新しいのではないでしょうか。
あらかじめ常備薬を準備しておけば、薬が手に入りにくい状況でも慌てずに済み、辛い症状を我慢する必要もなくなります。
家庭用常備薬の売り場づくり
家庭用常備薬の売り場をつくる場合、具体的な商品の提案と同時に常備薬を準備することの意義やメリットを伝えていくことが必要です。実際にどのような売り場づくりが適しているか、3つのステップで解説します。
家庭用常備薬の売り場に効果的な商品の選出
売り場を作るには、まず常備薬として揃えておきたいカテゴリーを把握し、常備薬として適切な商品の選定を行う必要があります。
ここで注意しなければならないのが、常備薬はトラブルや不調が起きる前に準備しなければならない点です。つまり、現在の症状への対処を目的とするのではなく、想定される状態に幅広く対応できる商品のほうが、常備薬としては適しています。
そのため効果の高い薬よりも、副作用のリスクが少なく幅広い目的に使える汎用性の高い商品を中心に展開していくことが、売り場づくりの重要なポイントになります。
たとえば、胃腸薬であればピンポイントに胃酸を抑える商品よりも、効果はおだやかなものの消化不良や胃もたれ、痛みなどさまざまな症状に対応する総合胃腸薬を選択するとよいでしょう。
このとき、どこの家庭でも見かけるような、長年愛されている定番の商品が参考になります。これらは幅広い効能を持っており、常備薬に適していることが多いのでチェックしてみましょう。
また、テレビCMでよく見る商品も手にとられやすい傾向にあります。お客さまが安心して常備薬を選択できるよう意識しましょう。
効果的な陳列・レイアウト
常備薬売り場は様々なカテゴリーの商品を扱います。雑多な印象にならないよう商品を厳選し、パッケージをきれいに並べて陳列しましょう。
常備薬のなかでも、特にニーズの高い「解熱鎮痛薬」「風邪薬」「胃腸薬」は手にとりやすいゴールデンゾーンに配置するのが基本です。
ボリュームゾーンについては、比較的かさばるものを陳列するとバランスをとりやすくなります。外用薬や関連する衛生用品のほか、経口補水液や健康維持に役立つ保健薬、薬用酒などを展開しても良いでしょう。
販売促進につなげるPOPの活用
お客さまのなかには、「常備薬を準備しておきたい」と考えていても、具体的にどのような薬を揃えておけば良いのかよくわからないという方も少なくありません。
そのため、「風邪薬」「鎮痛剤」「胃腸薬」「外傷薬」など、常備薬としてどのような薬を揃えておけば良いのかを一覧できるPOPを用意しておくと良いでしょう。必要な薬のチェックリストがあるとさらにわかりやすく訴求できます。
必要とする方の多い風邪薬や胃腸薬については、服用可能年齢や、家族で使えるイメージの単品POPを作成するのもおすすめです。
また、いざというときのための揃えていた常備薬が使用しないまま期限切れとなってしまうこともあります。そこで、使用した分の在庫の補充も含めて、常備薬の定期的な見直し訴求も効果的な販促方法のひとつです。
家庭用常備薬の売場づくりにおける注意点
通常の売り場づくりはその時点でのトレンドや売れ数を参考に行いますが、常備薬については必ずしも売れ筋の商品が常備薬として適しているとは限りません。
そのため、話題性の高い新商品や効果の高い商品を提案するよりも、常備薬として長年使われてきた商品を効果的に活用して、安心感を演出しましょう。
また、常備薬の売り場で展開する商品はある程度決まっていますが、季節的なトレンドの変化はあります。たとえば、夏は虫刺さされやあせも用の薬なども備えとして必要になり、冬はうがい薬や風邪薬の需要が高まります。
感染症の流行時には、マスクなどの予防アイテムを備えることも重要です。このようなニーズの変化を踏まえながら、売り場づくりを行いましょう。



「家庭用常備薬の売場づくり」現役登録販売者たちの声
現在ドラッグストアに勤務する登録販売者に、家庭用常備薬の売り場づくりについて現場の声を聞きました。
売り場づくりで気をつけていること
売れている商品を見つけやすく配置
売れている商品=お客さまがほしい商品が見つけやすく、買い物しやすい売り場をつくり、そこから店舗が売りたい商品にどうつなげていくかが重要ですね。(Aさん)
セットで売れやすい商品を近くに配置
また、冬場であれば風邪薬と葛根湯を近場に配置して、セットで購入していただけるようにします。(Bさん)
売れ筋商品は在庫管理を入念に
また欠品を起こさないよう在庫数を十分に揃えることも考えています。 (Cさん)
「こうしたら売れた!」実際の売り場づくり事例
有名商品とPB商品を並べて陳列に工夫を
さらにPOPも活用して、売上アップを狙いました。(Aさん)
まず目につくところを目立たせる
お客さまの目線の高さに売れる商品を置き、自然と手にとるように意識しています。(Bさん)
家庭用常備薬の売り場づくりに生かそう
今回は家庭用常備薬について、重要性や売り場づくりのポイントなどを解説しました。
多発する自然災害やコロナ禍などの影響により非日常への備えに対する意識が広く浸透しつつある今こそ、常備薬の効果的な訴求ができる絶好のタイミングです。
常備薬として適した商品の提案とあわせ、販促物を効果的に活用して情報提供を行いながら売り場を展開していきましょう。
また、常備薬を準備しておくことは、軽い不調は自分で手当てをする「セルフメディケーション」を推進し、ひいては地域の健康を守ることにもつながります。
常備薬を揃えようというお客様のみならず、現在不調で薬をお求めに来られたお客様にも常備薬の重要性を訴求していきたいものです。

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