現場で役立つ知識
2021-04-09
【薬剤師監修】ヘパリン類似物質とは?期待できる効果や処方箋との違い
・Before
・After
ヘパリン類似物質は、高い保湿効果があることから乾燥肌の治療や保湿剤として使われています。近頃ではさまざまなメーカーから販売されているため、ドラッグストアに行けば簡単に手に入るようになりました。今回はヘパリン類似物質について、期待できる効果や副作用、注意点や病院でもらえるヘパリン類似物質との違いなどをご紹介します。
ヘパリン類似物質とは? 期待できる効果について
ヘパリン類似物質は、ヘパリンと似ている構造をもっています。ヘパリンはもともと人の肝臓で作られている物質で、医療現場では主に血液の凝固を防ぐ目的で使われているものです。
一方でヘパリン類似物質は、親水性と保水性が高いため、主に保湿を目的として使われています。
ヘパリン類似物質に期待できる効果
■保湿
ヘパリン類似物質には水分を引き寄せて保つはたらきがあります。
また、角質層だけでなくさらに皮膚の奥にある基底層にまで保湿効果が届くため、セラミドやコラーゲンなどほかの成分よりも保湿効果が高いことが特徴です。
■血行促進
血液の流れをよくするはたらきもあります。
皮膚の新陳代謝を促進することから、やけどの跡や傷跡を治しやすくする成分としても有名です。
■抗炎症
皮膚の荒れを鎮める効果があるため、乾燥によるヒビ割れや肌荒れの治療としても使われます。
そのため、医療現場では乾燥で症状が悪化しやすく、肌が荒れやすいアトピーの治療薬としても使われていることが特徴です。
ヘパリン類似物質配合の製品が増えた背景
ここ数年でヘパリン類似物質の製品が増えた背景には、ヘパリン類似物質を含む薬として病院で処方されているヒルドイドを、美容目的で手に入れようとする方が増えてしまった問題があります。
「ヘパリン類似物質は究極のアンチエイジングクリームだ」という言葉がまたたく間に広まり、保険を使ってヒルドイドを処方してもらう方が急増したのです。
保険はもともと疾病の治療に対して使えるもので、美容目的の場合は適用外となります。
にもかかわらず、抜け穴をくぐり処方してもらうケースがあとを絶ちませんでした。なかには一度に50本以上も処方された方がいるほどです。
その影響で、医療目的でヒルドイドを必要としている患者さまに行き渡らなくなったり、処方できる本数に制限ができたりして困る方が大勢現れました。
このような状態を少しでも改善するために、ヘパリン類似物質を含んだ市販薬が多く販売されるようになったのです。
処方薬と一般医薬品の違い
処方薬としてもらえるヘパリン類似物質の薬で、もっともよく知られているヒルドイド。
ヒルドイドには1g中に3.0mgのヘパリン類似物質が含まれています。同様に市販薬も1g中に配合されているヘパリン類似物質の量は3.0mgです。
そのため、成分量だけ見た場合は、処方薬と市販薬とに違いはありません。
ただし、医薬品としてではなく医薬部外品や化粧品として販売されているものは、配合量が少ないものもあります。
なかにはヘパリン類似物質がどれくらい配合されているのかまったく不明な製品もあるので、処方薬と同じ効果のものを使用したいなら医薬品として販売されているものを選びましょう。

市販されているヘパリン類似物質配合商品の種類
ヘパリン類似物質を含む市販薬には、いくつか種類があります。
主成分はどれも同じですが、種類によって使い心地や保湿効果が異なるので、お客さまの要望に合うものをおすすめすることが大切です。
油性クリーム
もっとも高い保湿効果が期待できるのが、油性クリームのタイプです。基剤に油分が含まれているので、塗り心地がしっとりとしています。
とくに乾燥が気になる部分へ使用しましょう。
水性クリーム
水分ベースのクリームなので、塗った後のベタつきが少なくよく伸びます。
油性クリームと比べるとやや保湿効果は劣りますが、うるおいと使い心地のよさが両立されています。
ローション
スーっとお肌に馴染むような使い心地のため、化粧水のように使えます。
ベタつきが苦手な方や化粧水代わりに使いたい方におすすめです。
乳液
油分がクリームタイプよりも少なく、ローションよりも多いのが乳液です。
水性クリームとも似ていますが、より伸びが良くお肌に馴染みやすくなっています。
ジェル
もっとも使い心地がサラっとしているのが、ジェルのタイプです。
汗をかきやすい夏場や、ベタつきが苦手な方はジェルを選ぶとよいでしょう。
主な副作用と使用上の注意点
ヘパリン類似物質で大きな副作用が出たという報告は今のところありません。処方薬のヒルドイドでも副作用が報告されたのはごくわずかです。
ヒルドイドクリームでは使用した患者2,471例中、副作用が認められたのは23例(0.93%)でした。具体的には次のとおりです。
・そう痒:8件(0.32%)
・発赤:5件(0.20%)
・発疹:4件(0.16%)
・潮紅:3件(0.12%)
副作用が起きるのはまれですが、お肌に合わないようであればすぐに使用を中止し、症状に応じて医療機関を受診しましょう。
また、ヘパリン類似物質の使用により血液の固まりやすさに影響が出る可能性もあるので、血友病や紫斑病などの出血性血液疾患をおもちの方は医師の指示に従って使用する必要があります。



<対応例>全身の乾燥で来店されたお客さまの対応
◆人物データ
・20代女性 学生
・症状:全身の乾燥に悩んでいる。かきすぎて肌荒れを起こしている状態。
お客さま:
すみません、保湿クリームを探しているんですけど、おすすめってありますか?
登録販売者:
保湿クリームですと、○○クリームが人気ですよ。
お客さま:
ありがとうございます。乾燥しすぎて体中が肌荒れしちゃって…困っていたんです。
登録販売者:
肌荒れするほど乾燥されているんですね。それでしたら○○クリームではなく、医薬品タイプのヘパリン類似物質を配合した保湿剤のほうがお客さまの症状に合っていると思いますよ。
お客さま:
そうなんですね。ちなみに、○○クリームとはどう違うんですか?
登録販売者:
ヘパリン類似物質はとくに保水力が高い成分で、医療用としても使われているんですよ。炎症を抑える効果もあるので、保湿しながら肌荒れも治療できます。○○クリームは単に保湿するだけなので、肌荒れには効果がないんです。
お客さま:
それならヘパリン類似物質の保湿剤をお願いします。
登録販売者:
クリームと乳液とローションがありますけど、希望はありますか?
お客さま:
ん~、保湿効果が一番高いのがいいんですけど…。
登録販売者:
それならクリームがおすすめですよ。
お客さま:
わかりました、ではクリームにします!ありがとうございました!
接客のポイント
今回のお客さまは、乾燥だけでなく肌荒れにも悩んでいることがポイントです。
乾燥だけなら普通の保湿クリームでも問題ないのですが、肌荒れもしているとなると保湿クリームは候補として挙げにくくなります。
ここでは、肌荒れを起こすほどお肌が乾燥していることから、保湿効果が高く抗炎症効果のあるヘパリン類似物質をおすすめしました。
保湿効果の高いものを求めていたので、もっとも保湿力の高いクリームタイプが今回のお客さまには適していると考えられます。
また、ヘパリン類似物質ではほとんど副作用が起こらないため、あえて副作用に関する注意喚起は行っていません。
「もしお肌に合わなかったら~……」と伝えることで、お客さまを「ヘパリン類似物質って危ないのかな?」「もっと肌荒れがひどくなることがあるのかな?」と不安にさせてしまう可能性があるためです。
正しい医薬品知識を身につけ、お客さまへの適切な説明を
アンチエイジングによいと言われたことがきっかけで、ヘパリン類似物質はあっという間に知名度を上げました。
その影響で本当に薬を必要とする方に供給が間に合わなくなった背景もあり、現在はドラッグストアでも手軽に購入できるようになりました。
ヘパリン類似物質は高い保湿効果と血行促進効果、抗炎症効果をもつことから、乾燥や肌荒れなどに使用されます。
油性クリームやローション、ジェルなどさまざまなタイプがあるので、使用部位や使い心地の好み、保湿力の高さなどによって使い分けましょう。
また、ヘパリン類似物質の保湿剤は小さなお子さまや赤ちゃんでも使用できます。
大人から子どもまで使えるので、ご家族での使用に適した保湿剤をお探しの方にもおすすめです。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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