現場で役立つ知識
2021-05-07
一般医薬品のネット販売上のルールと登録販売者の対応について解説
・Before
・After
ネット通販の普及とともに、一般用医薬品もネットでの購入が当たり前になりました。医薬品のネット販売が全面解禁されたのは、2014年6月の改正薬事法(現・薬機法)からであり、販売にあたっては店舗同様のリスク管理ができるよう、様々なルールが定められています。 この記事では、登録販売者が知っておくべき医薬品のネット販売に関するルールや注意点について解説します。担当となった場合に適切に対応できるよう理解しておきましょう。
ネットでの医薬品販売とは
現在、一般用医薬品に関しては、店舗販売同様に適切な対応を行うことで、すべてインターネットでの販売(特定販売)が認められています。
(※特定販売=インターネット販売、電話販売、カタログ販売)
ネットショッピングの普及に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による外出自粛で、市場規模はさらに拡大しています。
医薬品のネット販売の変遷
実はネット販売が現在のような形で認められるようになったのは、2014年の改正薬事法(現・薬機法)施行からです。
2009年の改正薬事法において、一般用医薬品のリスク分類と登録販売者の新設による新しい医薬品販売制度がスタートしました。
しかし、同時に法改正前は実質的に規制のなかった医薬品のネット販売について、リスクの最も少ない第3類医薬品を除いて原則禁止され、大きく制限されることになったのです。
これに対し、一般用医薬品を扱う通信販売会社は、制限の違法性を唱えて提訴。最高裁はネット販売の制限は改正薬事法の逸脱解釈と認め、2014年の改正薬事法より、一定ルールのもと全面解禁されることになりました。
非接触・非対面で医薬品を入手できる時代へ
ネット販売は時間や場所に制限されず薬を購入できるものの、出荷は注文した店舗から行わなければならず、注文から受け取りまでのタイムラグが発生することがデメリットでした。
しかし、2021年2月よりローソンと「Uber Eats」によるOTC医薬品の宅配サービスが一部店舗で開始となり、店舗の営業時間内という制限はありますが、最短30分程度で注文した薬を受け取れるようになりました。
必要なときにすぐ非対面で薬を入手することができるシステムは業界でも話題となり、今後の拡大が期待されています。
また、処方箋医薬品ではビデオ通話などを利用したオンライン服薬指導が予定を前倒しして開始。
さらに、地域内での無人配達システムの実証実験が行われるなど、医薬品全般について非対面・非接触による受け取りの流れが加速しています。
医薬品のネット販売ルールとは
医薬品のネット販売では、消費者が適切・安全に薬を服用できるよう、店頭販売と同様に細かいルールが定められています。
販売できる薬の種類や販売時のルールについて確認しておきましょう。
ネット販売可能な医薬品の種類
ネット上では、第1類~第3類まで、一般用医薬品すべてが販売可能です。
ただし第1類医薬品については、書面にもとづく説明が必要なため薬剤師の対応が必須となります。ゆえに、ネット販売であっても、薬剤師が不在の場合は第1類医薬品の販売はできません。
第1類医薬品の注文を受けたら、薬剤師が注文者とメールや電話などでコンタクトのうえ、販売対応を行います。
なお、薬剤師が対面および書面で情報提供を行わなければならない要指導医薬品や、処方箋医薬品については、ネット販売は認められていません。
販売時のルール
ネット販売を行うには、以下のようなルールを守らなければなりません。
・一般用医薬品の販売は、薬局・薬店の許可を取得した有形の店舗が行う。
インターネットでの一般用医薬品販売は、薬局・薬店の許可を取得した実店舗が行うことが条件です。
週30時間を目安に実店舗を開店し、実店舗およびインターネットなどで消費者の相談応需ができる体制を整えておかなければなりません。
販売サイトでは、実店舗の名称や写真、勤務する専門家の氏名・販売許可証の記載内容・連絡先などの表記が必要です。
なお、ネット販売店舗の名称・URLは管轄の都道府県に届出が必要です。厚生労働省のホームページでは、消費者が正しくインターネットで薬品が購入できるよう、「一般用医薬品の販売サイト一覧」から薬局・薬店の実店舗名称や販売サイト・実店舗住所などを掲載しています。
・一般用医薬品の販売は、注文を受けた薬局・薬店で、必要な資質・知識を持った専門家が行う。
インターネット販売においても、医薬品は専門家(薬剤師・登録販売者)が販売業務や店舗の実地管理を行う必要があります。
営業時間中は専門家が常駐し、販売サイトには専門家の勤務シフトや営業時間外も含む連絡先を掲示しなければなりません。
ネットで販売できる医薬品は、実店舗でも販売されているものに限ります。実際の販売の流れは、注文受付後、専門家が確認事項の確認および情報提供を行ったあと検品・梱包して記名捺印し、配送を手配するのが一般的です。
フードデリバリーを利用した宅配についても、医薬品の注文受付は専門家の勤務時間内でしか対応ができないようになっています。
▼参考記事
OTC医薬品の宅配サービス、今後の広がりは?登録販売者が知っておくべき基礎知識

販売時の確認事項や注意点
一般用医薬品をインターネットで販売する場合には、対面販売と同じようにお客さまに対して確認しなければならないことがあります。
また、医薬品特有の販売における注意点もあるので確認しておきましょう。
確認事項
・同商品の服用経験
・ほかに服用中の医薬品の有無
・アレルギー・既往症の有無
・妊娠・授乳の有無
・追加説明の要・不要
・乱用のおそれのある医薬品の場合の販売制限 など
これらの確認方法は店舗によって異なり、申込時にお客さまに項目を選択いただくという形が多いようです。
受注時には、専門家が申告の内容が適正か確認し、服用に際し問題が想定される場合や、追加説明を希望されている場合には、定められた方法でお客さまと連絡を取ったあと販売を行います。
なお、第1類医薬品は、薬剤師の説明義務がありますので、薬剤師がメールや電話で問診を行い、使用上の注意や服用方法を説明した上で販売しなければなりません。
店舗販売同様、登録販売者が対応することはできませんので注意しましょう。
注意点
・レコメンドの禁止
・オークション形式の販売禁止
・使用期限切れ医薬品の販売禁止
2014年の改正薬事法により、販売サイトに購入者のレビューや口コミを掲載することは禁止されました。
これは、個人の状態に応じて使用されるべき医薬品が、レビューにより不適切に選択・使用されるのを防止するためです。
また、購入履歴のあるお客さまに対してレコメンドを行うことも、不適切な使用を誘発する可能性があるため禁止です。オークション形式の販売もできません。
使用期限切れ医薬品の販売禁止は実店舗と同様です。店舗により、十分な使用期限が残っている状態でお客さまに販売できるよう、販売期限の規定が設けられています。出荷時には必ず再確認を行いましょう。

販売ルールに則り正しい運用を
一般用医薬品のネット販売は、利便性や時代背景から今後も成長すると予想されており、ネット販売に関わる機会は増えていくでしょう。
医薬品はネット販売であっても、実店舗と同様の運用が求められます。担当者になった場合に備えて、正しく運用できるようにしておきましょう。
ネット販売の市場拡大により、登録販売者の働き方も多様化しています。
店舗での販売のほか、ネット販売を手がける会社の対応業務に従事するといった選択肢も増えました。現在の働き方に限界を感じているなら、転職もひとつの方法です。
転職を考えているものの、自分の強みがわからない、どのようにアピールしたらよいかわからないなどの悩みがあるなら、まずは転職コンサルタントへ相談をおすすめします。

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