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2022-08-18
ニキビに効くおすすめの市販薬や種類について解説【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
ニキビ用の市販薬は、一年を通して需要があります。とくに暑い時期は、紫外線によるダメージやマスクによる蒸れなどの影響もあり、ニキビに悩む方が増えてくる季節です。市販には多くのニキビ治療薬があるため、どれをお客さまにおすすめしたら良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ニキビ用の市販薬に含まれている成分を見ながら、適切な治療薬の選び方を解説します。
公開日:2022年8月18日
更新日:2025年2月14日
ニキビの種類とそれぞれの原因とは?
ニキビには大きく分けて4つの種類があります。なかには市販薬での対処が難しい場合もあるので注意が必要です。
また、ニキビの種類が違えば対処方法も変わってきます。まずは次でそれぞれの特徴について押さえておきましょう。
白ニキビ
白ニキビは、最も初期の段階にできるニキビです。
毛穴に皮脂が詰まった状態で、炎症は起きてないので赤みもなく、肌が少しポツンと盛り上がっています。
白ニキビの原因は、ターンオーバーが乱れて角質がたまり、毛穴が塞がれて皮脂がたまること。
メイクを十分に落とし切れていなかったり、スキンケアが不十分だったりするとできやすくなります。
黒ニキビ
黒ニキビは、白ニキビの毛穴が開き、たまった皮脂が酸化してできたものです。
メラニン色素や皮膚の表面に出てきて空気に触れて酸化した皮脂によって、黒く見える状態になります。
皮脂の量が増え過ぎたり、紫外線対策が不十分だったりすることが原因です。
赤ニキビ
赤ニキビは、白ニキビや黒ニキビが炎症を起こしたものです。
この状態になると、アクネ菌※の働きがかなり活発になっています。
皮脂をエサにアクネ菌が繁殖し、炎症を起こす物質を作り出すため、ニキビが赤くなってしまうのです。
ホルモンバランスの乱れやストレスなどによって皮脂が過剰に分泌される状態が続くと、赤ニキビができやすくなります。
※アクネ菌…ニキビの原因の一つとされるが、健康な肌に存在する常在菌でもある
黄ニキビ
黄ニキビは、赤ニキビの症状がさらに進行し、膿ができている状態です。
アクネ菌の働きによる炎症がニキビの周りにも広がっています。
ひどくなるとニキビ跡になったり、色素沈着を起こしたりすることがあるため、早めの対処が必要です。
ニキビの治し方・治療方法
ニキビは毛穴に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌が繁殖することで起こります。
つまりニキビを治すには、毛穴の詰まり(コメド・面ぽう)を取り除き、炎症を抑えることが重要です。
日常生活で毛穴の詰まりを防ぐ方法
日常のなかで毛穴詰まりを防ぐには、次の方法が有効だと言われています。
- 洗顔をするときにゴシゴシこすらない
- 保湿をしっかり行う
- メイクをしたら必ず落とす
- 紫外線対策を行う
意外かもしれませんが、肌の保湿も大切です。
保湿が足りないと、不足したうるおいを補充するために肌が皮脂の分泌量を増やそうとしてしまいます。
また、食生活が偏っている場合は改善を心がけることも必要です。
薬を使ってニキビを治療する方法
日本皮膚科学会から発行されている『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023』では、アダパレンや過酸化ベンゾイル、外用抗菌薬(クリンダマイシンやナジフロキサシンなど)を使った治療が推奨されています。
- アダパレン…毛穴の詰まりを改善し、面皰をできにくくするもの
- 過酸化ベンゾイル…毛穴の詰まりを改善し、アクネ菌の繁殖を抑えるもの
- 外用抗菌薬…ニキビの原因菌を殺菌するもの
これらの薬は市販では扱いがないため、市販薬でニキビ治療を行う場合には「似たような成分」で治療していくことになります。
▼参考サイトはコチラ
日本皮膚科学会『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023』
ニキビに効く成分が配合された市販薬とは?
ニキビ治療では、次のような作用のある市販薬を使用するのが一般的です。
毛穴の詰まりを取る成分が含まれている薬
- イオウ
- サリチル酸
ニキビは皮脂の詰まりが原因でできるため、それを取り除くことが重要になります。
イオウは独特のにおいが少しありますが、角質をやわらかくしてアクネ菌を殺菌し、皮脂分泌を抑えてくれる成分です。
サリチル酸も角質をやわらかくする効果(角質軟化作用)があります。
また、そこまで強くはありませんが、アクネ菌を殺菌する働きもあることが特徴です。
白ニキビや黒ニキビが気になっている方には、これらの成分が配合されているものを選びましょう。
市販薬には、「メンソレータムアクネス ニキビ治療薬」「クレアラシル ニキビ治療薬クリーム」「クレアラシル 薬用 パウダーローション」などがあります。
殺菌作用がある薬
- イソプロピルメチルフェノール
- レゾルシン
- クロルヘキシジン
アクネ菌が繁殖している赤ニキビや黄ニキビには、殺菌作用がある成分が含まれているものを選びましょう。
ただし、赤ニキビや黄ニキビは市販薬での対処が難しい場合もあるので、できれば皮膚科を受診するように伝えてください。
市販薬には「イハダ アクネキュアクリーム」や「ペアアクネクリームW」などがあります。
抗炎症成分が含まれている薬
- グリチルリチン酸2K(グリチルリチン酸ニカリウム)
- イブプロフェンピコノール
炎症が起きて赤みを帯びているニキビに有効な成分です。
炎症が強くなるとニキビ跡や色素沈着が出やすくなるため、早い段階で炎症を抑える必要があります。
赤ニキビや黄ニキビに有効ですが、症状がひどかったり長く続いたりしている場合は皮膚科での治療を勧めてください。
市販薬には「イハダ アクネキュアクリーム」や「クレアラシル ニキビ治療クリーム」などがあります。
なお、ステロイドにも炎症を抑える効果がありますが、ニキビ治療には向いていないので注意してください。
SNSを中心に「ニキビにステロイドを使ったら治った」というような話が出回っていますが、『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023』ではステロイド外用薬の使用はニキビを悪化させる可能性があるため推奨されていません。
患者さまがステロイドを希望されている場合には、正しい情報提供を行い、適切な商品を勧めるように心がけましょう。
▼関連記事はコチラ
ステロイド外用薬の正しい使用方法は?登録販売者がもつべき知識と注意点【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
漢方薬
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
…体にたまっている膿を取り除く
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
…慢性期に炎症を起こしているニキビに有効
ただし、漢方薬をニキビ治療の第一選択薬として使うことはありません。
塗り薬が効かなかったときの次の手段として選ぶようにしましょう。
ビタミン剤
肌の健康を維持するのに役立つ、ビタミンB2やビタミンB6が配合されたビタミン剤もあります。
ただし、市販のビタミン剤がどれだけニキビ治療に役立つかははっきりしておらず、『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023』にも「推奨はしない」と書かれているため、登録販売者が積極的に勧める必要性はないでしょう。
ニキビに効く薬の選び方
ニキビに効く市販薬は、大きく塗り薬と飲み薬とにわけられます。
軟膏やクリームなどの外用薬
市販薬でニキビ治療を行う場合は、基本的に外用薬の使用を優先してください。
白ニキビや黒ニキビには毛穴の詰まりを取るイオウやサリチル酸が含まれたもの、赤ニキビや黄ニキビなど炎症が見られるものには殺菌作用のあるイソプロピルメチルフェノールや、抗炎症作用のあるグリチルリチン酸2Kなどが含まれたものを選びます。
飲み薬
皮膚科で治療を行う場合は漢方薬やビタミン剤のほかに、抗生物質の飲み薬が出されることもあるでしょう。
しかし、市販には抗生物質の飲み薬はないため漢方薬やビタミン剤が飲み薬の候補となります。
前述の通り、飲み薬を希望されるお客さまにはまず漢方薬を勧めるのが無難です。
<対応例>ニキビに効く薬を求めて来店されたお客さまの対応
では、ニキビの市販薬を求めてお客さまが来店された場合の対応例を見ていきましょう。
◆人物データ
20代女性
職業:学生
既往症:なし
服用中の薬:市販のビタミン剤
症状:ニキビが気になるので市販のビタミン剤を飲んでいるが、よくならない。メイクでも隠せないので気になっている。
◆対応例
お客さま:
すみません、ニキビ用の塗り薬ってありますか?
登録販売者:
はい、こちらにいくつかございます。お決まりの商品はありますか?
お客さま:
いいえ、とくに決まってはいないんですけど、市販のビタミン剤を飲んでもニキビが治らなくて…。
登録販売者:
ビタミン剤を飲まれているのですね。市販のビタミン剤だけだとなかなか治りづらいかもしれません。お肌を見る感じ、少しだけ赤みがあるようにも見えるので、殺菌成分と抗炎症成分の入ったこちらの塗り薬がおすすめです。
お客さま:
では、そちらを買います。どれくらいで治りますか?
登録販売者:
1週間程度で改善されてくるかと思います。もしそれ以上使っても治らないときは皮膚科を受診してください。ニキビ治療でメジャーに使われている成分は病院でしか取り扱いがないので、受診したほうが早く治るケースもあります。
お客さま:
わかりました。ありがとうございます。
接客のポイント(注意点など含め)
赤みはそこまで強くなく、軽く炎症を起こしている程度のニキビだったので、今回は受診勧奨をせずに殺菌成分や抗炎症成分が入っている塗り薬を勧めました。
市販のビタミン剤だけでニキビを治すことは難しいのですが、飲んでいることを否定するとお客さまを嫌な気分にさせてしまう恐れがあるため、「市販のビタミン剤だけだとなかなか治りづらいかもしれません」とお伝えしています。
また、市販薬には皮膚科でニキビ治療に用いられているメジャーな成分の取り扱いがありません。
そのため、治りが良くない場合は皮膚科を受診したほうが良いとお伝えしました。
受診勧奨が必要な場合とは
市販のニキビ治療薬で対処できるのは、白ニキビと黒ニキビです。
少し炎症が起きている程度の赤ニキビなら治る可能性もありますが、悪化するとニキビ跡や色素沈着の原因となるため、できるだけ皮膚科を受診するように伝えましょう。
また、『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023』で推奨されている成分のほとんどは、市販では扱いがありません。
白ニキビや黒ニキビであっても、確実に早く治すことを希望されている場合は、受診勧奨をしたほうが良いでしょう。
ニキビの治療では原因に合わせた薬選びが大切
前述の通り、ニキビには4種類あります。
白ニキビや黒ニキビは、皮脂の詰まりを取るイオウやサリチル酸などが入った市販薬で対処が可能です。
赤ニキビはまだ症状が軽ければ、殺菌成分や抗炎症成分が入った塗り薬で治療できるでしょう。
見るからに赤みが強かったり膿があるニキビが見られたりするようなら、皮膚科の受診をおすすめしてください。
また、市販薬を1週間程度使っても改善が見られない場合も皮膚科を受診するように伝えましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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