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2022-08-05
ドラッグストアで客単価を上げるには?知っておきたい9つの方法<登録販売者向け>
・Before
・After
ドラッグストアは、医薬品販売を通じてお客さまの健康を支える役割を担う一方で、小売業として売上を出し続けなければなりません。その売上を伸ばす方法としては、「客数を増やす」「単価を上げる」「買上点数を増やす」などいくつかあります。今回は、そのうちの一つである客単価を上げる方法について見ていきましょう。客単価は登録販売者をはじめとするスタッフの工夫次第で上げられます。この記事を参考にして、日々の業務に取り組んでみてください。
客単価とは?
まずは、客単価の言葉の意味や用いるメリット、計算方法について解説します。
客単価の意味
客単価とは、1人のお客さまが1回の会計で支払った購入金額の平均値を指します。
平均客単価や顧客単価、売上単価などと呼ばれることもあります。
客単価を用いるメリット
客単価を上げることで、客数を増やすのが難しい店舗でも売上を伸ばせます。前提として、1日の売上金額は下記の計算式で求められます。
こちらでいう客数とは、ただ単に来店したお客さまの数ではなくレジを通して購入に至った数です。1日あたりの客数が500人、客単価が1,500円の場合、売上金額は下記になります。
客単価を500円上げて2,000円にすることができれば、客数が同じ500人でも以下のように1日の売上を250,000円増やせるわけです。
客数は、店舗の立地や競合店の数、天候などの影響を大きく受けます。しかし、客単価は比較的影響を受けにくく、工夫次第で改善しやすいと言えるでしょう。
客単価の計算方法
客単価は、下記の計算式で求められます。
たとえば、とある店舗でAさんが2,000円、Bさんが500円、Cさんが1,300円分の買い物をした場合、客単価は約1,267円になります。
客単価が下がる原因とは
また、客単価が下がる主な理由としては下記のようなケースがあげられます。
- セールの開始に伴い商品価格を下げた
- 競合店対策のために値下げを行った
- 陳列が整っていない
- 欲しいものが売り切れている
とくに注意したいのが、競合店対策のための値下げです。
近隣に同業他社の店舗がある場合、MR(マーケットリサーチ/競合店調査)を行うことがあるでしょう。
そこで同じ商品の値段が他店よりも高かった場合、下げることで他店にお客さまが流れないようにする施策が考えられます。
しかし、計画性のない値下げによって、客数が増加せず、ただ客単価が減っただけという事態が起こる恐れもあるので注意が必要です。
客単価を上げるための9つの方法
客単価を上げるには、次の2つが大切です。
- 1人あたりの買上点数を増やすこと
- 商品単価を上げること
このためには、下記に紹介するようないくつかの方法があります。
敷地面積や通路の幅、商品の陳列方法、人員に余裕があるかなどを見て、自店に合った方法を選びましょう。
無理にすべてを実践しようとせず、店舗のオペレーションに影響が出ない範囲で取り組めそうなものから始めてみてください。
買物かごを用意する
基本的な施策として、買物かごを店内の数か所に分けて置いておきましょう。
買物かごがなければ、必然的に手に持てる量しか購入できなくなり、客単価の低下につながります。
「あれも欲しいけど、もう手に持てない」とお客さまが感じたタイミングで買物かごが視界に入れば、より多くの商品を購入してくれる可能性が高まるでしょう。
重い商品や大きい商品の近くに置いておくと、かごを手に取ってもらいやすくなります。
店舗にスペースがある場合は、買物かごと同様にカートを数か所に分けて置いておくのもおすすめです。
まとめ買いを提案
以下のようなキャンペーンを行い、まとめ買いを促すのも有効です。
- 「2点購入すると10%オフ」
- 「500円以上お買い上げで試供品をプレゼント」
お客さまが「買わないと損するかも」と感じれば、予定より多くの商品を購入する確率が高まるでしょう。
ただし、割引によって粗利率が低下する可能性もあります。
割引額の設定は、利益とのバランスを考慮しましょう。
また、価格は変えずにラッピングをしてセット販売をするだけでも効果が見込めます。
とくに海外から来日したお客さまは、セットになっている商品を好んで購入する傾向があると言われているので、インバウンドを狙う店舗で働く登録販売者は知っておくと良いでしょう。
高額商品を提案する<アップセル>
お客さまが購入しようとしている商品よりも高額なものを提案する、「アップセル」という方法も有効です。
以下のように、納得できる理由を添えておすすめすると購入してもらいやすくなります。
- 「お値段はやや高いですが、1錠あたりで考えると割安なので、よく飲むならこちらの商品のほうがお得ですよ」
- 「○○という成分が含まれているので、お客さまの悩みにはこちらのほうが合いますよ」
関連商品(セット販売)を提案する<クロスセル>
関連商品を近くに陳列してあわせ買いを促す「クロルセル」という方法もあります。
- 水虫薬の近くに靴の消臭スプレーを置く
- 汗拭きシートの近くに冷感タオルを置く
- 肝斑の治療薬の近くにビタミンC製剤を置く など
松竹梅の価格設定を用意する<松竹梅の法則>
人は同じような商品でも、価格帯などの異なる商品が複数あるとき、無意識に中間のものを選ぶ傾向があります。
2,000円(松)・1,500円(竹)・1,000円(梅)の3段階の商品
→1,500円の商品(竹)を手に取る傾向がある
この心理を利用して、あえて3段階の商品を並べて陳列するのです。
お客さまが竹や梅の商品を選んだ場合には、松や竹の商品をおすすめすることでアップセルにつなげられるケースもあるでしょう。
新商品の販売を強化する
新商品はできる限り入荷して、発売日のなるべく早い時間帯までに陳列を完了しておきます。
その際、発売日や店舗に配荷される数は、事前にチェックしておきましょう。
新商品を並べることで店全体の商品鮮度が高まり、お客さまに飽きを感じさせない店舗作りができます。
ディスプレイ(陳列)を工夫する
ディスプレイに下記のような工夫をすることで、売上向上が期待できます。
- 柔軟剤には香りの見本をつける
- サポーターはサイズ感がわかるように見本を置いておく など
「この商品が気になっているけど、失敗したら嫌だな」というお客さまの不安をうまく解消できるような陳列を心がけましょう。
POPで強く訴求する
「売れ筋」や「人気商品」など簡単なPOPを貼り付けておくだけでも、お客さまの視界に商品が入りやすくなり、手に取ってもらえる可能性が高まります。
最近ではTwitterやInstagramの投稿をきっかけに購入する方も多いため、「SNSでバズった○○(商品名)!」などのアプローチ方法も効果的です。
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接客力を向上させる
お客さまに多くの商品を手に取ってもらえる環境作りも大事ですが、登録販売者の接客も客単価の向上には欠かせません。
お客さまが商品を手に取っている様子をただ眺めるのではなく、積極的に声がけを行いましょう。
【例】
■手荒れに効く市販薬を見ているお客さま
→「日々のケアも大事ですよ」とハンドクリームをおすすめしてみる
■二日酔い対策でウコン含有の商品を手に取っているお客さま
→「肝臓水解物が入った医薬品のほうが効果的ですよ」とお伝えする
このように、ちょっとした声がけで客単価を上げることができます。
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客単価を上げる以外の売上アップの方法
客単価を上げるほか、新規顧客を獲得する、リピーターを増やすなどの売上アップの方法もあります。
具体的には、以下のような施策です。
- レジで次回使用できるクーポンの配布
- 店外での呼び込み
- 店頭で話題の商品の販促を行う
近年では、スマートフォンアプリで「友だち追加」やメンバー登録をしてもらい、定期的にお得情報やクーポンを配信する方法が主流になってきています。
クーポン配布時は、他店にお客さまが流れてしまわないよう、自店のみで使える仕様にしておくことが大切です。
客単価は工夫次第で改善できる
客単価を上げるためには、買物かごの設置やより高い商品の提案、まとめ買いを促すなどの施策が有効です。
お客さまが自然と多くの商品を買いたくなる売り場作りを行いつつ、登録販売者の接客力を磨くことで、客単価のアップにつなげられます。
とくにお客さまへのお声がけは重要です。
最初は接客が難しいと感じるかもしれませんが、慣れるまで意識的に声がけを続けてみましょう。
客単価や売上の向上は、高い評価につながるはずです。
今回紹介した9つのポイントを意識して、業務で実践してみてください。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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