現場で役立つ知識
2022-09-09
<登録販売者向け>ドラッグストアで健康食品をお求めのお客さまへの対応
・Before
・After
「おすすめの健康食品は?と聞かれてどれをすすめたら良いのか困ることがある」「医薬品ではなく健康食品をすすめて良いのか迷ってしまう」など、ドラッグストアで働くなかでこのような悩みを抱えている登録販売者の方は多いのではないでしょうか。健康食品にも複数種類があるため、どれを選ぶのがお客さまにとって最適なのか判断が難しいケースも多いでしょう。そこで今回は、健康食品の定義から選び方、医薬品との違いや販売時の注意点などについて詳しく解説します。
健康食品とは
健康食品と聞くと、一般的に「体力の回復やなんらかの悩みを解決するのに気軽に使えるもの」という印象をもっている方が多いのではないでしょうか。
しかし、健康食品は「食品」と名前につくことからわかるように、食品の一種に過ぎません。
健康食品の定義
健康食品とは、健康の維持や増進に役立つものとして販売・利用されている商品のことです。
法律上の定義がないため、現状は食品と同じ扱いになっています。
医薬品のように治療や予防への効果は認められていません。
健康食品の種類
健康食品の種類は、大きく次の2つに分けられます。
- 保健機能食品
- その他の健康食品
保健機能食品はさらに細かく分類され、「機能性表示食品」と「栄養機能食品」、「特定保健用食品(特保)」の3種類があります。
医薬品ほどの効果はありませんが、一般的な健康食品よりも特定の目的を果たすことが期待できる点が大きな違いです。
保健機能食品の種類 | 特徴 | 届出先 | 表示例 |
---|---|---|---|
機能性表示食品 | 科学的根拠に基づく機能性を事業者の責任により表示した食品で、販売前にその有効性や安全性を届け出た成分が入っているもの | 消費者庁 | ・血圧が高めの方に ・内臓脂肪が気になる方に |
栄養機能食品 | 特定の栄養成分を補給するために使われる食品で、食品表示基準に基づいて栄養成分の機能を表示するもの。対象は容器包装に入れられた一般用加工食品および一般用生鮮食品 | 届出は不要 | ・ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用をもつ栄養素です ・ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です |
特定保健用食品(特保) | 生理学的機能などへの影響をおよぼす保健機能成分を含んだ食品で、有効性や安全性について消費者庁長官より許可を得た成分が入ったもの | 消費者庁 | ・お腹の調子を整える ・血糖値を正常に保つのを助ける |
機能性表示食品は許可申請不要の自己認証制度です。
一方で栄養機能食品と特定保健用食品は有効性や安全性を消費者庁が許可しなければ標榜できません。
▼参考サイトはコチラ
消費者庁『「機能性表示食品」って何?』
消費者庁『栄養機能食品とは』
厚生労働省 e-ヘルスネット『特保(特定保健用食品)とは?』
健康食品市場の動向
健康食品の市場は、年々増加傾向にあります。
健康食品市場は2016年で約8兆2,000億円でしたが、2020年には約8兆6,600億円に伸長。
続くコロナ禍で国民の健康意識が高まっていることもあり、2022年には市場規模が9兆円を超えると予測されています。
また近頃では、強いストレスを感じている方や、運動不足などにより肥満になる方が増え、こうした悩み解消が期待できる健康食品の売れ行きがとくに伸びています。
▼参考サイトはコチラ
矢野経済研究所『健康食品市場に関する調査を実施(2022年)』
健康食品と医薬品の違い
健康食品とは、日々の食事で不足しがちな栄養素や健康維持に役立つ成分を補うものです。
一方で医薬品は、病気の治療や予防、診断に用いることを目的としています。
保健機能食品のパッケージを見ると「これを飲めば血圧が下がる」「病気を治せる」など誤解してしまいがちですが、予防や治療への効果は認められていません。
それだけでなく、次のような注意点もあるので押さえておきましょう。
- 健康食品は「食品」の仲間ですが、必ずしも安全なものとは限らない
- 過剰摂取により健康被害が出ることがある
- 健康食品と医薬品の違いを理解せずに使用すると、適切な治療が遅れることがある
- 成分量が表記通りでないこともある
上記の通り、健康食品の影響で健康被害が出てしまう例もあるので注意が必要です。
たとえば、二日酔い対策として知られるウコンは、長期摂取や過剰摂取によって消化管障害を起こす可能性があることがわかっています。
さらには、ウコンが健康に有益な働きをもっているかどうかはいまだにわかっていません。
また、表記より成分が多く入っていたため健康被害が出た例も報告されています。
健康食品を医薬品と同等に扱わないように注意しましょう。
▼参考サイトはコチラ
東京都保健福祉局『医薬品的な効能効果について』
食品安全委員会『「健康食品」に関する情報』
厚生労働省eJIM『ウコン』
健康食品の選び方
健康食品による健康被害がこれまでにいくつか報告されているのは事実です。
しかし、だからといって過剰に恐れる必要はありません。
登録販売者は、お客さまが正しく選んで正しく使えるように次のフォローを行いましょう。
- 成分の含有量をチェックする
- 過剰摂取の心配はないかを確認する
- お客さまが困っている症状が具体的にどのようなものなのかを確認する
- 成分の安全性に関する情報を日頃からチェックしておく
健康食品の種類によっては、パッケージに成分の含有量が記載されていないものもあります。
この場合、体内で機能するだけの量が配合されているのか、安全性が認められているのかなどが不明なため、お客さまにおすすめする商品としての優先度は低くなるでしょう。
お客さまのなかには、1日の推奨量を超えて飲んでしまう方もいます。
「たくさん飲んだ方が健康に良い」と思われている方は、残念ながらゼロではないのです。
カルシウムやビタミンDのサプリメントを過剰摂取したことで腎臓の働きに影響が出た例も報告されています。
頻繁に同じ健康食品を買いに来られる方や、会話のなかで多めに飲んでいることがうかがえる方への販売には注意しましょう。
また、健康食品を疾病の治療を目的として使おうとするお客さまもいます。
悩みをヒアリングして治療が必要だと判断できた場合は、健康食品ではなく医薬品をすすめたり、場合によっては受診勧奨を行ったりしてください。
お客さまの健康を守るためには、登録販売者が健康食品の安全性に関する情報を日頃からチェックしておくことも大切です。
国立健康・栄養研究所が運営する『「健康食品」の安全性・有効性情報』のサイトを活用すれば、健康食品の被害や各成分の研究報告についての情報が簡単に確認できます。
▼参考サイトはコチラ
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所『健康食品をお使いの方へ ~過剰摂取の危険性~ (Ver.210609)』
<対応例>健康食品を求めて来店されたお客さまの対応例
◆人物データ
50代男性
職業 :高校教師
既往症 :高血圧
服用中の薬:降圧剤(高血圧の薬)
アレルギー:なし
悩み : 血糖値がやや高めだと言われて気になっているが、仕事が忙しくそれ以降は病院に行けていない。
◆対応例
お客さま:
血糖値が気になるのですが、何かおすすめの健康食品はありますか?
登録販売者:
血糖値ですね。それでしたら、難消化性デキストリンが配合されたこちらの商品はいかがでしょうか。
お客さま:
食後の血糖値を抑えてくれるんですね。これって食後しか効かないんですか?
登録販売者:
そうですね、難消化性デキストリンは食後にしか効果は認められていません。
お客さま:
この前、病院で空腹時と食後の血糖値が両方とも高いと言われてしまって。それからまだ病院には行ってないので治療はとくにしていないんですけど…。
登録販売者:
そうだったんですね。健康食品は医薬品ではないので血糖値を完全にコントロールするものではありませんが、病院に行くまでのつなぎとして試しに使用してみるのは良いかもしれませんね。
お客さま:
そうしてみます。
登録販売者:
あとは、食事の調整だけでなく、運動などを行うのも重要ですよ。
お客さま:
そうですね。これを機に始めてみたいと思います。
登録販売者:
ちなみに、今ほかに治療中のご病気はありますか?
お客さま:
高血圧の治療をしています。
登録販売者:
でしたら、運動はぜひ続けてみてください。1日に1万歩を目安に歩くことで、血圧も血糖値も改善されると言われているんです。
お客さま:
わかりました。がんばってみます。
接客のポイント
今回は、血糖値についてのお悩みということで、食後の血糖値の上昇をゆるやかにする働きのある難消化性デキストリンが配合された健康食品をすすめました。
ただし、会話をしていくなかで、お客さまは空腹時の血糖値も指摘されていることがわかりました。
現段階で治療は始めていないようですが、健康食品は医薬品のように血糖値をコントロールできるものではないとお伝えし、病院に行くまでのつなぎとして利用するようにアドバイスをしています。
また、高血圧も治療中とのことなので、運動による効果についても説明しました。
健康食品を販売する際の注意点
ドラッグストアでPOPを作成する機会がある方は、景品表示法違反となる恐れがあるため健康食品について次のような文言は使わないように注意してください。
- ○○を予防する
- ○○の病気に効く
- これで○○が治った
最近では新型コロナウイルス感染症に効果があると思わせるような表記をしているケースも見られます。
健康食品はあくまで「食品」の一つであり、医薬品ではありません。
病気の予防や治療ができるような表現をすると、お客さまに間違った情報を与えてしまうため気をつけてください。
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健康食品は正しく使ってもらうことが大切
健康食品で「病気が治る」と思っているお客さまは意外と多いものです。
目安量を超えて飲んだり、病気の治療をせずに健康食品を使用し続けたりすると、健康被害が出る可能性があります。
しかし、健康食品の使用がお客さまの生活習慣や食生活を見直すきっかけとなることも多いものです。
やみくもに健康食品をすすめるのではなく、成分の含有量の記載をチェックしたり、お客さまの悩みをしっかりヒアリングしておすすめしたりすることで、適切な健康食品の販売を心がけましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。
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