現場で役立つ知識
2022-10-14
カフェイン錠剤など市販の眠気防止薬をお求めのお客さまへの対応【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
登録販売者の方のなかには、「眠気防止薬として売っているカフェインの錠剤の販売で気をつけるべきことはある?」「カフェインを含む市販薬にはどのようなものがあるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。カフェインの錠剤は幅広い年齢層の方が使用している市販薬の一つです。誰でも購入できますが、服用には注意が必要なケースも少なくありません。今回は、カフェインの錠剤を販売するときの注意点や商品の種類、実際の接客例などを紹介します。
カフェインを主成分とする眠気防止薬の効果と種類
カフェインが含まれている眠気防止薬の主な効果は眠気を防止することです。
一方で、それ以外の効果があるものもあります。
また、商品によって配合されているカフェインの量や、服用方法、剤形が異なるため、お客さまに合ったものを選ぶのが大切です。
カフェインを含む薬の効果
カフェインを主成分とする薬の効果としては、主に次のものがあります。
- 眠気防止
- 倦怠感の除去
多くの商品は眠気防止と倦怠感の除去の両方に効果がありますが、商品によっては眠気防止のみしか効能効果に記載がないものもあるので要注意です。
記載がないからといって効果がないとは言い切れませんが、トラブルの原因となることもあるため販売の際はしっかりチェックするようにしましょう。
カフェイン含有商品の種類
カフェインを含む商品には、大きく分けると眠気防止薬として販売されているものと、エナジードリンクや栄養ドリンクのように体をシャキっとさせることを目的として販売されているものがあります。
眠気防止薬の主成分は、無水カフェインです。
無水カフェインとは名前のとおり水分を含まないカフェインのことで、中枢神経を刺激して眠気や疲労感をとります。
●製剤
眠気防止や倦怠感の除去を目的としたカフェイン製剤には、主に次のようなものがあります。
商品名 | 剤形 | 1回量 | 服用1回あたりの カフェイン量 | 1日に服用できる 回数 | 効能効果 |
---|---|---|---|---|---|
エスタロンモカ12 | 錠剤 | 2錠 | 200mg | 2回 | 眠気、倦怠感の除去 |
エスタロンモカ錠 | 錠剤 | 1錠 | 100mg | 3回 | 眠気、倦怠感の除去 |
カーフェソフト錠 | 錠剤 | 1~2錠 | 93~186mg | 1日5錠まで | 眠気の除去 |
カフェロップ | 錠剤(ドロップ) | 4粒 | 約167mg | 3回 | 眠気、倦怠感の除去 |
トメルミン | 錠剤(チュアブル錠) | 1錠 | 約167mg | 3回 | 眠気、倦怠感の除去 |
ポンツシン内服液 | 液剤 | 1瓶 | 200mg | 1回 | 眠気、倦怠感の除去 |
商品によって1回あたりに摂取できるカフェイン量や1日に服用できる回数、剤形が違うため、お客さまのニーズに合ったものを選べるようにしておきましょう。
●ドリンク
カフェインを含有する清涼飲料水には、次のようなものがあります。
なお、清涼飲料水には医薬品のように眠気や倦怠感の除去への効果は認められていないので注意してください。
商品名 | 内容量 | 1本あたりに含まれるカフェイン量 |
---|---|---|
レッドブル エナジードリンク | 250ml | 80mg |
モンスターエナジー | 355ml | 142mg |
メガシャキ | 100ml | 100mg |
オロナミンCドリンク | 120ml | 18mg |
サバイバー エナジードリンク | 250ml | 120mg |
清涼飲料水はジュースと同じ扱いのため、効能効果は認められていません。
医薬品とは違って1日に何本までという決まりもないのが、眠気防止薬との大きな違いです。
眠気や倦怠感をしっかり取りたい方には、清涼飲料水ではなく医薬品タイプの眠気防止薬をすすめましょう。
カフェイン含有量が多い食品
カフェインは、眠気防止薬やエナジードリンク以外に食品にも含まれています。
食品名 | 100mlあたりのカフェイン量 |
---|---|
コーヒー | 60mg |
インスタントコーヒー | 57mg |
玉露 | 160mg |
紅茶 | 30mg |
せん茶 | 20mg |
ウーロン茶 | 20mg |
コーヒーは眠気防止薬と比べるとカフェインの含有量が少ないため、眠気や倦怠感を除去したいのなら眠気防止薬を使った方が効率的です。
また、眠気防止薬を服用しながらエナジードリンクやこれらの食品を摂取するとカフェインの量が過剰になる可能性があります。
カフェインは心拍数を増加させたり下痢や吐き気などの副作用を起こしたりすることがあるため、摂り過ぎには注意が必要な成分です。
厳密な摂取量については定められていないため、カナダ保健省が公表している1日あたり400mgまで(健康な成人の場合)を一つの目安にすると良いでしょう。
また、妊婦や授乳中、妊娠を予定している女性は300mgまでと示されています。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~』
カフェインを使った眠気防止薬を飲むタイミング
眠気防止薬を使うタイミングは、人それぞれです。眠気を止めたいと思ったタイミングで服用してください。
個人差はあるものの、服用してから15~30ほどで徐々に効いてくるため、逆算してちょうど良いタイミングに服用するのが良いでしょう。
ただし、服用するタイミングによっては夜の睡眠に影響が出る場合もあるので注意してください。
摂取したカフェインが体内で半分に減るまでには約2~8時間かかります。
夕方や夜に服用するとカフェインの覚醒作用によって眠れなくなることもあるため、夕方以降の摂取はできるだけ控えていただくのがおすすめです。
カフェインを使った市販薬の注意点
カフェインは購入しやすい市販薬ですが、だからといって誰でも安全に使えるわけではありません。
カフェインには耐性や依存性がある
カフェインには耐性があるため、使い続けることで効果を実感しづらくなる場合があります。
また、依存性があることでも知られており、普段からカフェインを多く摂る方が摂取を止めると、不安感や頭痛などが起こるケースも少なくありません。
海外では、カフェインの過剰摂取によって躁状態となり医療機関での治療が必要になったケースも報告されています。
国内でもカフェイン中毒による死亡が確認されているため、頻繁に眠気防止薬を買いに来られるお客さまには声かけが必要です。
連用は避け、一時的な使用に止めるよう注意喚起を行いましょう。
とくに過剰摂取に注意が必要な方とは?
次のような方が眠気防止薬などのカフェイン含有商品を使うと、症状が悪化する可能性があります。
- 胃潰瘍
- 心疾患
- 緑内障
胃潰瘍とまではいかなくても、胃のムカムカや食欲不振などがある方も悪化の可能性があるため注意です。
そのほか、カフェインの影響で心臓の負担が増えることもあるため、心疾患がある方も同様に過剰摂取は控えましょう。
緑内障にもカフェインが影響している可能性があるため、摂取量には気をつけてください。
ただし、これらに該当する方でも1日の摂取量が300mg以下なら問題ないと言われています。
飲み合わせに気をつけたい薬
気管支拡張剤であるテオフィリンと併用すると、過度に中枢神経が刺激されて動悸や頭痛などが起こりやすくなります。
販売時は念のため、ほかに服用している薬がないかを確認するようにしてください。
カフェインを使った眠気防止薬の選び方
眠気防止薬を選ぶ際は、次のポイントを押さえておくことでお客さまに合ったものを提案しやすくなります。
- 効果が高いものが欲しい方…1回あたりのカフェイン含有量が多いものを選ぶ
- 眠気が気になるときにさっと服用したい方…ドロップやチュアブル錠など水なしで服用できるものを選ぶ
基本的には、カフェインの含有量や服用のしやすさで選んでもらえれば問題ありません。
<対応例>カフェイン薬を求めて来店されたお客さまへの対応
◆人物データ
20代男性
職業 :学生
既往症 :なし
服用中の薬:鼻炎薬
アレルギー:なし
悩み : 試験勉強のために眠気防止薬が欲しいと思い来店。花粉症のため市販の鼻炎薬も飲んでいる。
お客さま:
すみません、眠気に効く薬はありますか?
登録販売者:
はい、こちらにございます。カフェイン量が多いものや水なしで飲めるものなどがありますが、ご希望はありますか?
お客さま:
では、水なしで飲めるものをお願いします。
登録販売者:
かしこまりました。念のため皆さまにお聞きしているのですが、ほかに使っている薬はありませんか?
お客さま:
市販で買った○○という鼻炎薬を飲んでいます。
登録販売者:
鼻炎薬も飲まれているのですね。こちらはカフェインが含まれていないのでとくに問題ありません。カフェインの摂取量は1日あたり400mg程度までとされているので、コーヒーや紅茶なども含めて摂りすぎないように注意されてください。
お客さま:
わかりました。ありがとうございます。
登録販売者:
それからカフェインには依存性や耐性があるので、使うのは短期間にとどめてくださいね。
お客さま:
そうなんですね。試験中だけ使うようにします。ありがとうございました。
接客のポイント
眠気防止薬には種類によってカフェインの含有量や剤形が異なります。
値段が安いものを好まれるお客さまも多いのですが、できるだけニーズに合った商品を紹介できるよう、簡単に特徴の説明をしました。
また、カフェインはほかの薬に配合されていることも多いため、併用薬がないかどうかも確認しています。
コーヒーや紅茶を普段から飲まれる方は無意識のうちにカフェインの摂取量が多くなってしまうため、こちらも注意喚起を行いました。
依存性や耐性がある点にも触れ、正しく使用してもらえるよう促しています。
眠気防止薬の販売には登録販売者の適切な介入が必要
眠気防止薬に配合されているカフェインには、眠気や倦怠感を取る効果があります。
どちらかといえば若い方が購入されることが多い商品です。
商品によってカフェインの含有量や剤形が異なるので、お客さまに合ったものを選びましょう。
カフェインは胃や心臓に負担をかける可能性があるため、胃潰瘍や心疾患がある方に販売する際は注意が必要です。
総合風邪薬や鼻炎薬、コーヒーや紅茶などカフェインが含まれているものは身の回りにたくさんあふれています。
1日の摂取量について厳密な制限はありませんが、400mg程度が目安とされているのでこちらを目安にお客さまへアドバイスを行っていくと良いでしょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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