現場で役立つ知識
2023-03-31
ノロウイルスの症状とは?対処法や予防法 、効果的な医薬品、感染が疑われるお客さまの対応 <登録販売者向け>
・Before
・After
ノロウイルスの症状や適切な予防法を正しく理解していますか?対症療法がメインの感染症ですが、どうしても辛い場合には市販薬の使用も可能です。今回は、ノロウイルスの主な症状や、治療・対処法、感染が疑われるお客さまが来店した際の対応例をご紹介します。お客さまに正しいご案内ができるよう、登録販売者の方はぜひ参考にしてください。
ノロウイルスの主な症状とは?
☑ 嘔吐
☑ 下痢
☑ 腹痛
☑ 軽度の発熱
ノロウイルスの主な症状は、吐き気や嘔吐、下痢などです。
主な感染経路は経口感染であり、汚染された二枚貝の摂取や患者の便や嘔吐物から手を介して感染を起こすことが多いといわれています。
ノロウイルスの潜伏期間は24時間~48時間程度で、症状がある期間は1〜2日です。
後遺症はなく、健康な人は自宅療養で回復しますが、子どもや高齢者では重症化する可能性もあります。
とくに嚥下機能が低下している高齢者では、嘔吐物が気管に入ることで誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が。
嘔吐物を詰まらせて死に至ることもあるため、家庭内感染には注意が必要です。
ノロウイルスの治療・対処法
ノロウイルスを治療するための医薬品はなく、特別な治療法はありません。
もし感染したお客さまから相談された場合は、対症療法をメインに行うよう促しましょう。
ここでは、自宅療養でもっとも大切な水分補給と、医療機関受診の目安について説明していきます。
水分補給をする
ノロウイルスに感染すると、嘔吐と下痢により体から大量の水分が出てしまいます。
「脱水症状」にならないように、水分補給をすることがもっとも大切です。
症状がピークのときは、飲み物を少し口にしただけでもすぐに吐いてしまうことがあります。
嘔吐症状が落ち着いたときでよいので、少しずつスポーツドリンクや経口補水液を摂取するようにしてください。
とくに乳幼児や高齢者は脱水症状になりやすいため注意が必要です。
基本的には安静にしますが、症状がひどい場合は病院で輸液による治療をする場合もあります。
受診する
受診の目安 |
|
すぐに病院に行くべき(または救急車を呼ぶべき)状態 |
|
ノロウイルスによる嘔吐や下痢の症状は、発症から3〜6時間ほど続きます。
しかし、嘔吐が半日から1日以上続くと、脱水に陥る可能性が高くなるため受診の目安としましょう。
脱水による主な症状は、次のような兆候が見られます。
・とくに半日以上尿が出ない
・尿の色が濃い
・唇の乾燥がひどい
もし、このような状態で薬局やドラッグストアに来店されたお客さまがいた場合は、登録販売者として、救急車もしくは救急外来への受診勧奨を行いましょう。
そもそもノロウイルス感染症とは?
ノロウイルスとは、ウイルス感染によって嘔吐や下痢症状などを引き起こす感染性胃腸炎を指します。
一度かかっても感染する機会があれば何度もかかってしまう厄介なウイルスです。
もちろん有効なワクチンもありません。
ノロウイルスは非常に感染力が高く、熱や乾燥に強くアルコール消毒も効かないため、感染を防ぐためには十分な手洗いが必須です。
ノロウイルスの特徴
・感染力が非常に強い
・一度かかっても何度も感染する
ノロウイルスは1年を通して発生していますが、とくに冬に流行することが多いです。
感染力が非常に強くアルコール消毒も無効なため、トイレの後や調理・食事の前に石けんで十分に手洗いをすることが一番の予防策といえます。
食中毒になりやすい二枚貝である牡蠣は、中まで十分に火を通してから食べましょう。
ウイルスにはたくさんの型があり、一度感染してその型に対する免疫が確立したとしても、異なる型には意味がありません。
よって、同じシーズンでも何度も感染する可能性があります。
ノロウイルスの潜伏期間
ノロウイルスに感染してから発症までの期間(潜伏期間)は、約24〜48時間です。
発症すると嘔吐や下痢、腹痛の症状が見られますが、大抵の場合1〜2日で治癒します。
中には感染していても発症しない「不顕性感染」である場合も。
発熱症状は比較的軽度です。
ノロウイルスの感染経路
・家族や同居者などから飛沫感染
・製造する人・調理する人が感染していた食品を食べて感染
・ウイルスに汚染されていた二枚貝を十分に加熱調理しないで食べて感染
・ノロウイルスに汚染された水を消毒不十分で摂取して感染
ノロウイルスの感染経路は、ほとんどの場合が経口感染です。
ウイルスに感染した二枚貝を十分に加熱調理しないで食べることや、ウイルス感染者からの飛沫感染、便や嘔吐物からウイルスが舞い上がって感染につながるケースもあります。
ノロウイルスによる食中毒数
厚生労働省の調査(ノロウイルスによる食中毒発生状況 )によると、過去13年でもっともノロウイルス事件数が多かったのは、平成27年の481件、患者数は14,876人でした。
令和3年の事件数は72件で患者数は4,733人、すべての食中毒の約10%にあたります。
ノロウイルスの予防接種
ノロウイルスに有効なワクチンはありません。
感染性胃腸炎を引き起こすウイルスとしては、ノロウイルスの他にロタウイルスがあります。
ロタウイルスについては、乳幼児期に任意でワクチン接種を受けることも可能です。
ノロウイルスの後遺症
ノロウイルスによる後遺症はありません。
症状のピークを越えれば、通常の生活に戻れます。
ただし、乳幼児や高齢者はとくに脱水症状を起こしやすいため、嘔吐が治まった後でも水分補給を行ってください。
ノロウイルスに家族や同居者が感染した場合の対応
・よく触れる場所の消毒を行う
お客さまから家族や同居者がノロウイルスに感染したと相談された場合は、二次感染の予防方法を伝えましょう。
ここでは、感染の防ぐためのポイントを3つ紹介します。
嘔吐物などを適切に処理する
汚物(便や嘔吐物)には大量のノロウイルスが含まれています。
乾燥するとウイルスが空気中に舞って感染のリスクが高まってしまうため、マスク、手袋、ガウンを装備したうえで、素早く処理を行いましょう。
処理をする人以外は、汚物に近づかないようにすることもポイントです。
汚物が触れてしまった部分だけでなく、ウイルスが飛び散っている可能性を踏まえて広範囲を適切に消毒しましょう。
処理が終わったら手洗いとうがいを十分に行い、換気をするよう促してください。
よく触れる場所の消毒を行う
ノロウイルス対策として第一に消毒すべき場所はトイレです。
感染者はウイルスの飛散を防ぐためにもフタをして水を流しましょう。
便座、フタ、ドアノブ、ウォシュレットのボタン、ペーパーホルダー、レバーなど隅々まで入念に消毒を行うことが大切です。
トイレ以外でも、よく触れる場所としてドアノブやカーテン、衣類、日用品などがあります。
消毒には次亜塩素酸ナトリウムなどが有効ですので、適切な濃度に薄めて使うよう促しましょう。
調理器具や食器類を殺菌・消毒する
ノロウイルスに感染した食材の調理に使った器具や食器類は、使用後すぐに洗浄しましょう。
加熱できるものの場合、85℃以上の熱湯で1分間以上加熱してください。
ノロウイルスに感染した食材を調理した場合、調理に使用した調理器具にもウイルスが付着している可能性が。
加熱が難しい素材の場合は、次亜塩素酸ナトリウムを希釈して布やスポンジにつけ、浸すように拭くことでウイルスの失活化が期待できます。
また、ノロウイルスに感染した疑いがある人は、食品を直接取り扱わないことが二次感染を防ぐポイントです。
ノロウイルスの予防方法
ノロウイルスは感染力が強いウイルスですが、手洗いや調理方法の工夫によって予防できます。
ここでご紹介する予防方法は、どちらも日常生活で簡単に行えるため、お客さまへのご案内に活かしてください。
手洗いを行う
☑ 食事前
☑ トイレの後
☑ おむつ交換の後
ノロウイルスは経口や手を介して感染するため、調理や食事前、汚物処理後は、泡立てた石けんで十分手洗いを行いましょう。
爪は短く切り、指輪を外して洗うこともポイントです。
石けんそのものにノロウイルスを失活化する効果はありませんが、手に付着した汚れを落とすことでウイルスが剥がれやすくなる効果が期待できます。
なお、消毒用のエタノールによる手指消毒は、手洗いができないときの補助と捉えることが一般的です。
食品を加熱調理する
ノロウイルスの感染源となる二枚貝などの食材を食べるときは、中心部までよく加熱しましょう。
加熱温度と時間は、中心部が85℃~90℃で90秒以上が望ましいとされています。
ノロウイルスに感染している二枚貝であっても、このような加熱処理を行っていれば食べても問題はありません。
弱い子どもや高齢者、体力が落ちて抵抗力が弱い人の場合は、症状が重くなることがあります。
お客さまには、とくに注意しながら調理を行うよう伝えましょう。
ノロウイルスの症状に使用する医薬品
インフルエンザの場合はタミフルなどの抗ウイルス薬がありますが、ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬はありません。
風邪で処方される抗菌薬は、細菌をターゲットとしているため使うことは不可能です。
基本的には対症療法がメインですが、どうしても症状が重くて辛いときには整腸剤、吐き気止め、解熱鎮痛剤を服用します。
ただし、ノロウイルスは下痢によって排出されるため、下痢止めは使用しないことが望ましいです。
お客さまにご案内する際は、あわせて伝えるとよいでしょう。
整腸剤
感染性胃腸炎になると、腸内にある常在菌のバランスが崩れて下痢や軟便の症状が出てしまいます。
整腸剤は、このように乱れた腸内環境を整えて症状を改善する働きがある医薬品です。
市販薬の中には、乳酸菌や木(モク)クレオソートが含まれたものも。
乳酸菌は、腸内環境を整えながら、免疫機能を高める働きを持つ成分です。
木(モク)クレオソートは、腸の動きを正常に戻して水分バランスを調節します。
下痢止めと整腸剤の違い
整腸剤:感染症が原因の下痢にも使用可能。善玉菌を増やす。
下痢止めは、腸のぜん動運動を止めることで下痢を抑える働きがあります。
感染性胃腸炎の場合は、ウイルスを体外へ排出させることが重要なため、選択すべきではないでしょう。
一方整腸剤は、善玉菌を増やして腸内の環境を整えることで下痢の症状を改善します。
ウイルス感染が原因の下痢にも使用可能です。
吐き気止め
吐き気止めには、体の水分バランスを整え、胃腸を元気にすることで吐き気を抑える効果が期待できます。
中には、脳の嘔吐中枢に作用して吐き気を抑える働きをする医薬品も。
しかし、眠気屋倦怠感、口渇、動悸、発疹といった副作用が出る可能性があるため注意が必要です。
吐き気に効果のある薬には、漢方薬も。
構成生薬の種類はさまざまです。
漢方薬の成分は副作用が少なく、安全に服用できることがメリットといえます。
痛み止め
痛み止めは、体温調節中枢に働きかけて、熱を体の外に出す効果を高める医薬品です。
発熱や炎症物質であるプロスタグランジンの合成を阻害する働きで体温を下げ、痛みを和らげる作用があります。
痛み止めに含まれていることが多いアセトアミノフェンは副作用が少なく、解熱鎮痛効果が期待できる成分です。
一般的な総合かぜ薬には、解熱鎮痛薬以外に咳や鼻炎症状を鎮める成分が配合されているものがあります。
便利な反面副作用のリスクもあるため、熱を下げるだけの目的であれば、単一の成分のものを選ぶようにしましょう。

ノロウイルスが疑われるお客さまが薬を求めて来店されたときの対応
接客のポイント
ノロウイルスの症状を和らげるため市販薬を求めに来るお客さまに対しては、使える薬と使えない薬があることを伝えましょう。
そのうえで、自宅療養では水分補給が大事である旨をご案内することが大切です。
水分補給に使える商品をおすすめするのもよいでしょう。
また、お客さまの家族構成を確認し、小さな子どもやお年寄りがいる家庭ではとくに二次感染に注意するよう促してください。
感染者とトイレを分けることや消毒のコツなど、二次感染を防ぐポイントを伝えることが重要です。
接客のシミュレーション
年齢:22歳
職業:アパレル関係
既往症:なし
服用中の薬:なし
アレルギー:なし
症状 :昨日の夜に職場の同僚とオイスターバーで生牡蠣を食べた。夜間から胸焼けがして、明け方より激しい嘔吐と下痢症状あり。下痢症状を抑えるための市販薬を求めて来店。
◆対応例
お客さま:
「昨日生牡蠣を食べてノロウイルスにかかってしまったかもしれません。おすすめの下痢止めはありますか?」
登録販売者:
「ノロウイルスのような感染性胃腸炎では、嘔吐や下痢はウイルスを吐き出す意味もあるため基本的には下痢止めは使いません。その代わりに、腸内細菌のバランスを整える整腸剤が使えますよ。」
お客さま:
「では、おすすめの整腸剤をお願いします。」
登録販売者:
「かしこましました。A社の〇〇は、胃酸で壊れづらい乳酸菌が入っているため、胃にも腸にもはたらきかけるのでおすすめですよ。」
お客さま:
「ありがとうございます。ちなみに、うちは両親とおばあちゃんの3世代家族なのですが、家族に移さないようにするには何に気をつけたらよいですか?一応、家にあるアルコール消毒はこまめに使っているんですけれど…。」
登録販売者:
「感染対策も大切ですよね。ご高齢の方は重症化しやすいので、とくに気をつけてください。ノロウイルスにアルコールは効かないので、消毒するなら次亜塩素酸ナトリウムを使うのがベストです。下痢がひどい場合、トイレは便器だけでなくドアノブや床、ペーパーホルダーなども感染源になるので注意してくださいね。全部を毎回消毒するのも結構大変だと思うので、もしご自宅にトイレが2個ある場合は、症状が落ち着くまではご家族と分けることもよいと思います。あとは、お客さまはこまめに手洗いをすることを忘れないでくださいね。」
お客さま:
「うちに次亜塩素酸ナトリウムはなかったと思うので、それもあわせて買おうと思います。今までトイレも共用にしていたので、今日から分けることにしますね。」
登録販売者:
「ノロウイルスはピークを過ぎれば症状も落ち着くので、水分補給をしっかり行ってお大事にしてくださいね。」
ノロウイルス感染対策の売り場を作るコツ
☑ 衛生関連商品や健康食品などの関連商品を選定・展開する
☑ 効果的なレイアウト・陳列とする
ノロウイルス感染症と予防方法を理解する
適切な売り場作りをするためには、まずノロウイルスの感染経路を正しく理解することが大切です。
ノロウイルスは経口感染が主流で、食べ物からの感染以外では感染者の便や嘔吐物からの二次感染が考えられます。
二次感染を効果的に防ぐためには、汚物処理を適切に行い、トイレを中心にウイルスが付着している箇所を徹底的に消毒することが有効的です。
インフルエンザや新型コロナウイルスのように飛沫感染がメインではないことを把握して、お客さまにも適切なご案内ができるように準備しておきましょう。
衛生関連商品や健康食品などの関連商品を選定・展開する
ノロウイルスの感染経路を理解したら、衛生関連用品や健康食品の選定を行いましょう。
感染予防の基本である手洗い用石けんやハンドソープ、除菌用の次亜塩素酸ナトリウムは必須商品です。
ノロウイルスの除菌にはアルコール消毒は無効ですので、誤解を招く商品提案をしないよう注意してください。
また、「汚物処理セット」は持っておくと非常に便利です。
ガウンや手袋、マスクだけでなくヘッドカバーやシューズカバーなどもセットになっており、家庭内で感染した場合に使いやすいことが特徴。
さらに、自宅で療養する場合は水分補給が重要なため、経口補水液もそろえるようにしましょう。
効果的なレイアウト・陳列とする
お店の規模やスペースに合わせてハンドソープや次亜塩素酸ナトリウム、汚物処理セットなどを陳列しましょう。
とくに売り出したい商品に関しては、高さ85〜150cmの商品を手に取りやすい位置とされる「ゴールデンゾーン」に配置するのがおすすめです。
これよりも上の部分は「シーゾーン」とされ、話題性や価値をアピールする部分とされています。
また、足元の位置にあたる「ディスカウントゾーン」は、大型の商品を置くことが多いです。
経口補水液やスポーツドリンクなどがわかりやすいでしょう。
商品のベネフィットをPOPで表示するのも販売促進に効果的です。
ノロウイルスの感染経路、予防対策などの解説もあると多くの人に情報を伝えられます。
感染対策の売り場づくりに必要な工夫とレイアウトについて詳細はこちら
ノロウイルスの症状が見られるお客さまには、登録販売者として適切なご案内を
ノロウイルスはとくに冬に流行する感染性胃腸炎です。
対症療法がメインですが、どうしても体調が辛いお客さまがいらっしゃった場合は、症状をヒアリングして適切な市販薬をおすすめしましょう。
ノロウイルスは、手洗いや十分な加熱処理による感染予防が可能です。
しかし万が一、ノロウイルス感染者が出てしまった場合にお店ができることは、二次感染の予防対策を伝え、適切な衛生用品を紹介することです。
また、店頭でPOPやチラシを活用して、ノロウイルスに関心がない人にも情報が自然と入るようなお店作りができるとよりよいでしょう。
ノロウイルスの症状や予防方法を覚えて、お客さまに適切なご案内ができるようにしてください。
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