現場で役立つ知識
2026-07-17
【登録販売者向け】濫用等のおそれのある医薬品を販売する際のポイントや接客例<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
・After

正しく医薬品を購入・服用し、健康的に生活するためには、登録販売者が最後の砦となり、お客さまの安全を守る必要があります。この記事では、薬剤師の村松先生が登録販売者に向けて、濫用等の恐れのある医薬品の扱い方のポイントや接客フレーズ例を紹介します。薬機法改正後の売り場づくりのポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
「濫用等のおそれのある医薬品」とは?

「濫用等のおそれのある医薬品」は、2025年の法改正で「指定濫用防止医薬品」へと名称が変わりました。
乱用により中枢神経系の興奮や抑制、幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品のことを指します。
「濫用等のおそれのある医薬品」の指定成分一覧
薬機法改正により、新たにデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンが指定濫用防止医薬品に指定されました。
背景にあるのは、厚生労働省を中心に行われた実態調査です。
これらの成分による中毒情報の報告や、乱用に伴う健康被害を確認できる文献が数多くあることから、速やかに指定対象とすべきとの見解が示されました。
なお、今回の法改正で「外用剤」が一律で除外されたことも大きな変化です。
▼指定成分一覧
- エフェドリン
- コデイン
- ジヒドロコデイン
- ブロモバレリル尿素
- プソイドエフェドリン
- メチルエフェドリン
- デキストロメトルファン
- ジフェンヒドラミン
出典:厚生労働省「指定濫用防止医薬品の指定について」
薬機法改正による「濫用等のおそれのある医薬品」の変更点
薬機法改正による変更点は、主に以下の3つです。
| 変更点 | 概要 |
|---|---|
| 若者への規制強化 | 18歳未満の若者へは「小容量かつ1個」のみの販売となった |
| 情報提供の義務化 | 書面やタブレットを用いて、不適正な使用による健康リスクなどについて情報提供を行うこととされた |
| 陳列規制の新設 | お客さまの手の届かない場所への陳列もしくは、薬剤師・登録販売者の継続的な配置を条件に、情報提供設備から7m以内の範囲に陳列することとなった |
2026年に「濫用等のおそれのある医薬品」が規制強化される背景

濫用等のおそれのある医薬品については、近年、不適切使用の増加や健康被害への懸念が高まっています。
ここでは、販売時の確認体制や管理の厳格化が求められる背景について、解説します。
若年者の市販薬乱用(オーバードーズ)の増加
指定濫用防止医薬品の規制強化は、若者のオーバードーズ問題が大きなきっかけです。
オーバードーズに至る背景には、「楽しみたいから」ではなく、「生きづらさ」や「心の苦痛」から一瞬でも逃れたいという切実な思いがあります。
孤独感からSNSなどに救いを求めた結果、有害な情報に触れ、そのまま引き込まれてしまうこともあります。
この問題は規制強化のみで解決できるものではなく、該当者への心の支援も必要です。
登録販売者や薬剤師は、若者を守るゲートキーパーの役割が求められていることも覚えておきましょう。
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インターネットにおける医薬品の不適切販売
インターネット通販は市販薬購入の心理的ハードルが低く、また、実店舗に比べて安易な方法で市販薬が販売されていることもあります。
インターネットで軽く検索をかけただけでも、リスクの高い薬が10個まとめ売りされているケースも散見されます。
ただし、今回の薬機法改正により、通販サイトでの指定濫用防止医薬品の販売は、基本的にビデオ通話などによる確認・情報提供が必須となりました(一部例外あり)。
不適切な医薬品販売の抑制に向け、今後の動向に注目したいですね。
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登録販売者が「濫用等のおそれのある医薬品」を販売する際の確認ポイント

濫用等の恐れのある医薬品を販売する際は、購入者の使用目的や状況を適切に確認することが重要です。
確認不足は不適切使用やトラブルにつながる可能性もあります。
ここでは、登録販売者が押さえておきたい確認ポイントを解説します。
若年者への販売時に必要な年齢・身分確認
指定濫用防止医薬品は「18歳」が販売制限の境界となっています。
そのため購入を希望されているお客さまに対し、まずは年齢を伺いましょう。
18歳未満の場合、年齢だけでなく氏名を確認する必要もあります。
学生証などの提示をお願いすると確実ですが、身分証の提示は義務ではありません。
会社によっては必須になっている可能性もあるため、勤務先のルールに従いましょう。
他店舗購入状況の確認と購入目的の聴取
他店舗で同じような薬を買っていないか確認し、該当する場合は販売謝絶(お断り)を検討します。
また、18歳以上の方が「大容量」または「複数個」の購入を希望している場合、購入理由が正当であると認められた場合のみ販売することができます。
お客さまが購入を希望されている薬に「小容量」のものがある場合、そちらへの切り替えも視野に入れて対応します。
販売数量制限と「1人1包装ルール」

以前は「複数個」の場合のみ制限がありましたが、法改正で「大容量」についても販売ルールが厳しくなりました。
小容量の定義は基本的に「5日分以下の1包装」ですが、風邪薬・鼻炎用内服薬・解熱鎮痛薬については「7日分以下の1包装」となっています。
薬効分類によって日数が異なるので注意してください。
これを超えるものはすべて「大容量」になります。
さらに、包装表示のルールも変更されます。
小容量は「要確認」、大容量は「囲み付きの要確認」の文字が記載されます。
パッケージ表記は、数年かけて徐々に変更がかかる予定です。
表記変更後、お客さまに正しくご案内できるように、情報にアンテナを張っておきましょう。
【接客フレーズ】「濫用等のおそれのある医薬品」購入者への声かけ例
実際に現場で対応するにあたり役に立つ声かけフレーズを、3つのポイントに絞って解説します。
購入者・使用者の確認に関する声かけ
登録販売者「法律で定められた確認事項がいくつかございまして……。大変恐れ入りますが、まずは年齢を教えていただけますでしょうか?」
お客さま「わかりました、20歳です。」
指定濫用防止医薬品の対応では、お客さまから「説明はいらない」「早くして」と言われるケースもあります。
しかし法改正により、以前よりももっとお客さま対応に時間がかかるようになってしまいました。
そのため、確認業務を始める前に「法令により説明義務があること」をお伝えしましょう。
この一言でスムーズに聴き取りができます。
今回の法改正で、「適切に情報提供ができない場合には、薬剤師や登録販売者は指定濫用防止医薬品を販売してはならない」という強い条文が法律に盛り込まれました。このこともぜひ覚えておきましょう。
継続使用を確認する声かけ
登録販売者「当店の記録によりますと、先週、先々週と同じ風邪薬を買われているようですが、まだ症状が続いておりますでしょうか…?」
お客さま「そうなんだよね、まだ熱があるし、咳がひどくて。」
登録販売者「それはおつらいですね……。通常の風邪であれば、数日から1週間程度で自然に回復します。お客さまのお身体が心配ですので、一度受診していただくことをおすすめします。」
頻繁に来店している場合、症状や使用目的をもう一度確認したうえで、必要に応じて受診勧奨します。
市販薬は基本的に小容量1個で様子を見て、それでも症状が続く場合には受診勧奨という流れが原則です。
肺炎を続発しているようなケースもあるので注意しましょう。
受診勧奨は断られてしまうケースもあります。しかし、「受診勧奨のメリットを説明する」とともに「お客さまの身体が心配である旨を伝える」ことで、心に届きやすくなります。
他店舗購入・複数購入を確認する声かけ
登録販売者「最近、ほかのお店などで同じようなお薬を買われたことはありますか?」
お客さま「実はさっき同じ風邪薬をほかの店舗で買ったんだけど、3日分じゃ足りない気がしてここに来たんだよね。」
このケースでは、お客さまに次のことを伝えます。
- 多くの場合、3日程度で風邪の症状が軽快すること
- 回復しない場合、ただの風邪ではない可能性があり、安易な市販薬の使用は避けた方がよいこと
- その際は医療機関を受診、またはお店に再度相談に来てほしい旨
この説明でご納得いただけない場合、他店での購入実績があると販売できないルールがあることをお伝えしましょう。
とくに高齢者の場合、風邪の重症化リスクがあるだけでなく、市販薬の副作用(眠気や抗コリン作用)による転倒リスクにも注意を払う必要があります。安易な市販薬の使用は禁物です。
ドラッグストアにおける売場づくりのポイント

ドラッグストアの売り場を工夫することも、濫用等の恐れのある医薬品を扱ううえで重要です。
ここで紹介するポイントを、ぜひ実務に活かしてみてください。
お客さまが直接手に取れない場所へ配置する
直接手に取れない場所への陳列としては、レジ背後や鍵付きケースへの陳列、バックヤードへの保管などが考えられます。
この場合、実物の代わりに空箱などを売り場に出すことが多いので、在庫が0になった時点で空箱もどこかにしまう必要があります。
なお、お客さまが直接手に取れない場所への陳列が難しい場合、情報提供設備から7メートル以内の場所に陳列し、専門家を継続的に配置する方法も可能です。
陳列についても2026年5月から新ルールが適用されたところですが、「お客さまが直接手に取れない場所への陳列に切り替えたことで、売上が大幅に下がってしまった」という事例もあるようです。
その場合は適切な人員数を確保したうえで、専門家を継続配置させる方法を検討するのがよいでしょう。
空箱陳列の難点は、実物の並び順も記憶する必要があるところです。とくに、新人スタッフには負担が大きい部分になるので、商品に記号を振って探しやすくする、空箱と実物の並び順を完全に一致させるなど、何か工夫があるとよいですね。
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販売制限に関するポスターを掲示する
ポスターなどを使った、販売制限に関するお客さまへの周知は非常に重要です。
ポスター作成の参考になる資料として、日本薬剤師会作成の「指定濫用防止医薬品販売等手順書モデル」があります。
そのほかにも啓発資料があるので、厚生労働省の「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について (薬剤師、登録販売者の方へ)」も参考にしてください。
規制強化によりお客さまにお手間を取らせる機会が増え、クレームに繋がりやすくなります。先手を打って情報を周知しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
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販売記録をつける
注意すべきお客さまが来店した場合はとくに、申し送り(ほかのスタッフへの引き継ぎ)が強く推奨されます。
申し送りが必要な場面としては、次のようなものが挙げられます。
- 濫用リスクがあると判断して販売を謝絶した場合
- 濫用リスクがあると判断したが、購入者から合理的な理由の説明がなされたために販売した場合
- 18歳未満であることが疑われたが、身分証明書などでは年齢を確認できず、口頭で確認後に大容量または複数個の販売を行った場合
このようなケースでは帳簿に記録を残して社内・店舗内で共有し、不適正な販売を未然に防ぐようにしましょう。
もう1点、販売記録に残す利点として重要なのは、保健所や行政の監査が入ったときに、適正販売に努めていることをエビデンスとして提示できることです。自分の身や店舗を守る意味でも、取り組むのがよいでしょう。
まとめ
販売ルールが以前に比べて複雑になり、登録販売者の皆さんも大変な想いをしていることと思います。
とくに、大容量・複数個販売における「正当な理由」の判断は、最も悩ましい部分の1つでしょう。
しかし、判断に迷ったときは、今回の法改正の真の目的が「オーバードーズの防止」であることを思い出してください。
それを忘れてしまうと、せっかくの確認業務が無意味なものになってしまいます。
登録販売者という市販薬の専門家として、「目の前のお客さまは適正使用が可能なのか?」という視点を持ち、「正当な理由」についても適切に判断していきましょう。
【執筆者プロフィール】

執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部を卒業後、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験者向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在16,800人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬関連の情報発信を行う。また、2024年に「OTC医薬品を正しく選ぶ教室」を開講し、200名超の会員に市販薬の選び方や接客方法を教えている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1 年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」』(金芳堂)、『村松早織の登録販売者 合格のオキテ100』(KADOKAWA)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2026年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。

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