著名人コラム
2025-04-18
【登録販売者2年目向け】医療用医薬品をお使いのお客さまへの接客のコツ<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
・After
ドラッグストアでは、お客さまから「医療用医薬品とOTC医薬品との併用」や「医療用医薬品の代替品」に関する質問を受けることがあります。薬剤師が在籍していないドラッグストアでは、医療用医薬品に関する問い合わせについて薬剤師に相談ができず、とまどってしまう登録販売者もいるのではないでしょうか? 本コラムでは、医療用医薬品に関する質問を受けたときのお客さまへの対応や、薬剤師との連携など詳しく解説していきます。スムーズに対応できるよう、ぜひ知識を習得してください。
登録販売者も医療用医薬品について知っておくべき?
登録販売者試験において、医療用医薬品の知識は試験範囲外となっています。
登録販売者はあくまで「OTC医薬品のスペシャリスト」であるからです。
そのため、登録販売者は医療用医薬品の深い知識まで知っておく必要はありません。
ただし、「喘息に対しては(病院でもらう)ステロイド吸入薬が基本となっている」など、一般的な治療薬を大まかにでも知っていると、お客さまへの受診勧奨がしやすくなります。
なんとなく「医療機関に行ってください」と伝えるよりも、自信をもってご案内ができるようになりますよ。
医療用医薬品に関する対応では薬剤師との連携が基本
ここでは、医療用医薬品を服用中の方に対応する際、登録販売者が前提として知っておいた方が良い考え方について解説します。
医療用医薬品に関する対応は無理せず薬剤師に相談する
前項で、登録販売者はあくまで「OTC医薬品のスペシャリスト」であると書きましたが、それでは一体誰が医療用医薬品に関する相談を受けるのが良いのでしょうか?
最も適切な対応は、「処方元の医師・歯科医師」や「処方箋に基づいて調剤した薬局」にご相談いただくことです。
店舗に薬剤師が在籍している場合は、処方元などへの相談の必要性について判断してもらうのも良いでしょう。
この根拠として、登録販売者の行動マニュアルとも呼べる『登録販売者試験の手引き』の第1章には、次のような記述があります。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和6年4月)』
薬剤師や登録販売者には、それぞれ得意分野があります。
そのことを念頭に置き、自分の知識の範囲で対応が難しいと判断すれば、迷わず薬剤師に引き継いでください。
次の項目では、「医療用医薬品を服用中のお客さまへの対応」を薬剤師にお願いした方が良い理由について、具体的に解説します。
「医療用医薬品を服用中のお客さまへの対応」を薬剤師に依頼した方が良い理由
医療用医薬品に関する対応について、登録販売者が自ら対応せずに薬剤師に連携したほうが良い理由を、ここで改めて理解しておきましょう。
(1)高度な薬学知識が必要なケースもあるから
服用中の医療用医薬品を把握するときは、基本的にお薬手帳を活用します。
お薬手帳には、「過去に使用した医薬品」や「現在使用中の医薬品」が記載されているため、薬の飲み合わせなどを確認する際に便利です。
登録販売者から「お薬手帳の内容は理解できた方が良いですか?」と質問を受けることもありますが、理解できなくても問題ありません。
お薬手帳の内容を把握するには、高度な薬学知識が必要になる場合もあるからです。
(2)持病の重症度なども判断材料になるから
例えば高血圧の薬を服用中のお客さまが、OTC医薬品の購入を希望しているとしましょう。
その場合、「薬で血圧をきちんとコントロールできているか?」「血圧の数値は具体的にどの程度か?」といった情報も判断材料になります。
持病のあるお客さまへの対応ではこういった病態知識も必要になるため、薬剤師であればより適切に対応できる可能性が高まります。
医療用医薬品を服用中のお客さまから相談を受けたときの対応の流れ
それでは、前項までの内容を踏まえて、実際のお客さまへの対応の流れについて確認していきましょう。
まずは「お薬手帳」を持参しているかどうか、お客さまに確認してください。
ここでは、お薬手帳の有無を確認した後の対応について、「お薬手帳がある場合」と「お薬手帳がない場合」に分けて解説します。
1.お薬手帳がある場合
(1)薬剤師が在籍している店舗
薬剤師がいる店舗では、お薬手帳をお預かりして薬剤師に渡し、併用可否について判断してもらいます。
その際、登録販売者は候補のOTC医薬品を2、3個ほどピックアップし、薬剤師に見てもらうのが良いでしょう。
この理由として、次の2つがあげられます。
- OTC医薬品に詳しくない薬剤師では、商品を選ぶのに時間がかかってしまう
- 具体例があると、薬剤師から「この成分はNG」「この商品はOK」といった指示が出しやすい
なお、候補のOTC医薬品は、最終的に薬剤師に選ばれなくても問題ありません。
ここで重要なのは、商品選定まで登録販売者が行い、薬剤師に「協力したい気持ち」を伝えることです。
とくに調剤が忙しい時間帯など、薬剤師への相談を躊躇してしまう場面では、「自分の方でできることはやっておく」という心構えが大切です。
(2)薬剤師が在籍していない店舗
薬剤師がいない店舗では、かかりつけの医師・薬剤師にお客さまから相談していただくのが良いでしょう。
その場合、お薬手帳に記載のある薬局に電話で問い合わせるなどの方法でも問題ありません。
また、近隣に薬剤師が常駐する薬局やドラッグストアがあれば、そちらに相談してもらうのも良いでしょう。
2.お薬手帳がない場合
(1)薬剤師が在籍している店舗
一般的な対応のパターンとしては、かかりつけの医師・薬剤師にお客さまから相談していただく(自店の薬剤師に「問い合わせの必要性」について判断してもらうのもOK)か、お薬手帳を持参のうえ、再度来店してもらう方法があります。
注意点になりますが、お薬手帳がない場合、薬剤師によっては「服用中のすべての薬を正確に把握できない」「薬の名前があやふやだと後々トラブルになるケースがある」といった理由で、相談を受けない方針の方もいます。
あらかじめ自店の薬剤師に「お薬手帳がないお客さまからの相談」について、どのように対応するのか確認しておくとスムーズですよ。
(2)薬剤師が在籍していない店舗
薬剤師がいない店舗では、かかりつけの医師・薬剤師にお客さまから相談していただくか、お薬手帳を持参のうえ、薬剤師常駐の薬局やドラッグストアで相談してもらうのが良いでしょう。
▲画像提供:株式会社東京マキア
薬剤師へ接客を引き継ぐときのポイント
OTC医薬品に関する薬剤師への相談においては、「調剤業務が忙しそうで相談しにくい」といった声もよく聞きます。
前項で解説したものもありますが、次のポイントに気を付けながら薬剤師とコミュニケーションを図ってください。
1.登録販売者にできることはしっかりと行う
医療用医薬品を服用中とわかった時点で薬剤師に丸投げせず、登録販売者にできることをしっかりと行ってから薬剤師に引き継ぎます。
例として、次の業務は登録販売者側で対応できます。
- お客さまの年齢や症状など、基本情報の聞き取り
- お薬手帳の有無の確認と、お薬手帳のお預かり
- 候補となるOTC医薬品の選定
簡単に言うと、「併用可否などの最終判断のみ」を薬剤師に行ってもらうイメージです。
2.状況を把握しやすい伝え方を心がける
例えば、次のような順で伝えると薬剤師は状況が把握しやすくなります。
その際の声かけ例とあわせてご紹介します。
(1)要件を伝える
▼声かけ例
高血圧の薬を服用しているお客さまのことで、ご相談があります。
(2)お客さまの基本情報を伝える
▼声かけ例
70歳男性です。今朝から発熱、鼻水、咳の症状があり、症状はいずれも軽度で、風邪薬を希望されています。
(3)お薬手帳があれば渡して候補の商品を確認してもらう
▼声かけ例
こちらがお薬手帳です。ストナファミリーやパブロン50錠は併用可能でしょうか?
医療用医薬品の対応では薬剤師との協力体制が必須
医療用医薬品を服用中のお客さまへの対応は、登録販売者がとまどう業務の一つです。
しかし、この問題に一人で悩む必要はなく、薬剤師と協力体制を構築することが重要だと知っておきましょう。
なお、薬剤師が在籍している店舗では、普段から薬剤師とコミュニケーションを図り、いざというときにスムーズに引き継ぎできるようにしておくのがおすすめです。
「おはようございます」などと挨拶を交わす程度でも問題ありません。
お互いに「顔を知っている」というだけでも、コミュニケーションが円滑になりますよ。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生
名城大学薬学部を卒業後、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験者向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在15,100人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬関連の情報発信を行う。また、2024年に「OTC医薬品を正しく選ぶ教室」を開講し、200名の会員に市販薬の選び方や接客方法を教えている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」』(金芳堂)、『村松早織の登録販売者 合格のオキテ100』(KADOKAWA)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。

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