著名人コラム
2025-03-14
漢方で体力回復も期待できる?疲れに効く漢方薬の選び方【クラシエ薬品が解説!登録販売者向け漢方講座】
・Before
・After
登録販売者が抱える市販の漢方薬への疑問・お悩みに、漢方薬メーカー「クラシエ薬品」の担当者が回答!連載第6回となる今回のテーマは、疲れ、疲労にアプローチし、体力回復が期待できる漢方薬についてです。漢方における疲労の捉え方から市販の漢方薬の選び方、販売時の注意点まで解説します。
疲れの原因とは?
「疲労」は3大生体アラートの1つともいわれ、心身の休息の必要性を知らせる大切なサインです。
疲労の蓄積は、心身へ影響を与え、作業パフォーマンスの低下につながります。
疲労の原因はさまざまであり、労働や運動などによる肉体の酷使、心理的ストレスによる自律神経の失調、感冒を始めとした細菌・ウイルスの感染などがあげられます。
たとえば肉体疲労を改善するためにOTC医薬品を使う場合、西洋薬と漢方薬のいずれにおいても「エネルギーを補うこと」が対処法の1つとなります。
西洋薬では、たとえばビタミンB1を用いてエネルギーの源であるATP(アデノシン三リン酸)の産生を促し、疲労を回復させます。
また、漢方薬も同様に「気」と呼ばれるエネルギーの状態を整えることで疲労回復へと導きます。
▼関連記事はコチラ
漢方薬と西洋薬の違い!お客さまに合うのはどちら?【クラシエ薬品が解説!登録販売者向け漢方講座】
【原因別】疲れを緩和する代表的な漢方薬と選び方
では、疲れの緩和や体力回復が期待できる漢方薬をどのような基準で選べば良いのでしょうか。
考えるにあたって、まずは漢方における疲労の捉え方をご紹介します。
漢方では人体を構成する成分として、エネルギーである「気」、栄養物質である「血」「津液」「精」があります。
中でも疲労は「気」の異常によって現れる病気と捉えています。
「気」の異常には、大きく次の2種類があります。
(2)「気」の停滞(=エネルギーの循環不良)
以下で詳しく説明します。
(1)「気」の不足
気の不足を補う漢方薬には、たとえば次のようなものがあります。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
気の不足を招く原因には、過度の労働・激しい運動などによるエネルギーの消耗や、虚弱体質・加齢などによるエネルギーの生成機能の低下があげられます。
とくに後者は継続的な気の不足に陥りやすく、慢性的な疲労で悩むことも少なくありません。
漢方では、気を「全身の機能を支えるエネルギー源」として捉えており、気の不足は全身の機能低下につながると考えています。
また、気の生成には胃腸の働きが重要です。
胃腸が元気であれば飲食物をしっかりと体内に取り込み、たくさんの気を生成できると捉えています。
このため、虚弱体質や加齢などによって胃腸の働きが弱ってしまうと、食欲が落ちてしまうだけでなく、気の生成がうまくできずに、エネルギー不足が起こり、疲労倦怠感が現れます。
漢方薬は胃腸を元気にすることで、エネルギーの源となる飲食物の取り込みからエネルギー生成までの働きを幅広く活性化し、食欲不振や疲労倦怠といった症状を改善します。
このような作用をもつ代表的な漢方薬が、「補中益気湯」です。
このほか、漢方では「気」と「血」はお互いを支え合う関係にあるため、気の不足が血にも影響し、血の不足も一緒に現れることがあります。
血が不足すると、肌荒れや髪のパサつきが気になったり、貧血、痩せなどが目立つこともあります。
このような、気だけでなく血まで不足した場合に用いる漢方薬が、「十全大補湯」や「人参養栄湯」です。
(2)「気」の停滞
気の停滞を改善する漢方薬には、たとえば次のようなものがあります。
- 小柴胡湯(しょうさいことう)
- 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
エネルギーである気は、適度に身体を動かし、ストレスをため込まず心の健康を保つことで、全身に隅々まで巡らせられると考えています。
このため、普段から運動不足であったり、日々デスクワークなどで活動量が低下していたり、また仕事や人間関係などでストレスを抱え込んだりしてしまうと、途端に気の巡りが悪くなり、疲れを感じるようになってしまいます。
とくに心理的ストレスによる疲労感の増加は特徴的で、緊張・苛立ち・気分の落ち込みなどにより、突然、身体がだるくなるといった症状がみられます。
このほか、気の停滞により、精神面では気分の変調、身体面では膨満感や張ったような痛み(肩こり・頭痛)などが現れることもあります。
このような疲労感に対して漢方では、エネルギーの不足ではなく、「エネルギーはあるが巡っていないだけ」と捉え、気の巡りを整えて、精神面より現れる疲労を改善します。
気の巡りを整える漢方薬には、前述の通り、小柴胡湯や柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遙散などがあります。
柴胡桂枝乾姜湯や加味逍遙散は更年期障害にも用いられる漢方薬で、更年期世代の精神疲労にも有効です。
▼関連記事はコチラ
十全大補湯の効果とは?副作用や服用の注意点、販売時の対応例も解説<登録販売者向け>
自律神経を整える漢方薬「柴胡桂枝湯」。注意が必要な飲み合わせや禁忌とは?【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
疲れを緩和する漢方薬を販売する際の注意点
体力回復が期待できる薬を求めて来店したお客さまへ漢方薬を販売する際には、どのくらいの期間疲れで悩んでいるのか、どんな時に疲れを感じやすいか、その他の随伴症状はないかなども合わせてご確認ください。
また、気の不足タイプでは休息をしっかりと取ること、食養生としては胃腸の働きを高める甘味の食材を積極的に取ることをお勧めすると良いでしょう。
気の停滞タイプでは、リラックスをしたり、体を動かしたりすることで疲労感が和らぐことがあります。
気分転換も兼ねて散歩やストレッチをしてみるのもおすすめです。
また、酸味や辛味の食べ物は気の巡りを整えるのに役立つため、普段の食事に取り入れてみることもお勧めください。
▼関連記事はコチラ
【登録販売者×クラシエ薬品】漢方薬のぶっちゃけ座談会!販売での失敗エピソードや接客に活かす勉強のコツは?
【執筆者プロフィール】
執筆者:矢嶋 浩平(やじま・こうへい)さん
クラシエ薬品株式会社 ヘルスケア事業部 学術部
クラシエ薬品株式会社では、OTC医薬品販売員の皆さまへ、病気の分析や漢方薬の選定など、中医学を基にした接客に活かせる情報の提供を行っています。中医学にご興味のある登録販売者の方向けにeラーニングのご用意もございますので、ぜひクラシエ薬品の営業担当までお声がけください。

合わせて読まれている記事
登録販売者のための役立つ情報がいっぱい!
最新のドラッグストア業界動向のポイント、転職成功のためのノウハウなど、登録販売者のキャリアに役立つ多様な情報をお届けしています。チアジョブ登販は求人のご紹介や転職サポートのほかにも、登録販売者の方に嬉しい最新情報も提供。毎月更新しているコンテンツも多数です。ぜひ定期的にチェックしてみてください!