著名人コラム
2025-12-19
内服薬と外用薬の併用は大丈夫?登録販売者が押さえておきたい注意点<薬剤師・村松早織先生が解説>
・Before
・After

ドラッグストアなどで市販薬を販売していると、お客さまから「内服薬」と湿布などの「外用薬」の併用について質問を受けることもあるでしょう。ベテランの登録販売者でも、判断に迷うケースが多いテーマです。適切に対応するためには、添付文書の読み方や成分の重複リスクを理解し、状況に応じた販売判断が求められます。本記事では、薬剤師・村松早織先生が明日から使える「併用確認のポイント」や「接客時の対応例」を解説します。
内服薬と外用薬は併用できる?

まずは、内服薬と外用薬の違いと併用の可否について見ていきましょう。
内服薬と外用薬の違い
「内服薬」とは、口から飲み込み消化管から吸収される薬であり、「外用薬」とは、皮膚や鼻・口腔の粘膜、目などに直接適用される薬です。
外用薬の種類としては、塗り薬や湿布、点鼻薬や点眼薬などがあり、多くは適用部位への局所的な効果を目的としています。
そのため、多くの内服薬と異なり、外用薬は全身性の副作用が現れにくいという特徴があります。
内服薬と外用薬の併用は可能?
登録販売者の方から「市販薬の併用」についてご質問いただく機会は非常に多くあります。
たとえば、副作用のリスクから「内服薬同士の併用」が難しいと判断した場合、「内服薬と外用薬の併用」であればどうなのか?と多くの方が疑問に思いますよね。
「内服の解熱鎮痛薬」と「外用の鎮痛消炎薬(湿布など)」などの組み合わせも、その一例です。
結論からお伝えしますと、基本的に内服薬と外用薬の併用は、添付文書上、問題ないことがほとんどです。
しかし100%ではないので、自分の目で添付文書を確認する必要があります。
添付文書の「使用上の注意」の欄(「してはいけないこと」と「相談すること」)に、併用薬についての記載があるかどうかを確認しましょう。

登録販売者が必ず押さえたい添付文書の使い方

登録販売者が併用可否の判断を行う際には、添付文書の活用が必須となります。
こちらでは、意外と知らない「添付文書の入手方法」と「使い方」について説明します。
添付文書の入手方法
添付文書の入手方法には大きくわけて次の2通りあり、まずはそれについて解説します。
● インターネット検索
● PMDA添付文書検索ページ
1つめは、PMDAの「添付文書検索ページ」です。
以下がそのリンクなので、必要なときにすぐ出せるよう、ブックマークしておくとよいでしょう。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構『一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索』
こちらのページには、商品名以外にもさまざまな絞り込みの形式があり、使い方を知っておくと便利です。
次の項目で、その使い方について簡単に解説します。
● インターネット検索
2つめは、GoogleやYahoo!などのトップページの検索窓に「〇〇(商品名) 添付文書」と入力し、ダイレクトにメーカーの公式ページに飛ぶ方法です。
この方法は手軽ですが、該当のページにさまざまな情報が記載され、一体どこに添付文書のファイルがあるのかわからないことがあります。
そのため、筆者は専らPMDAの添付文書検索ページを利用しています。
PMDAの添付文書検索ページの使い方
PMDAの添付文書検索ページの具体的な使い方について説明します。
たとえば、解熱鎮痛薬の「イブスリーショットプレミアム」という商品の添付文書を検索する際の流れは、以下の通りです。

▲画像提供:株式会社東京マキア
(1)商品名を入力する
「販売名(医薬品の名称)」に商品名を入力し、検索ボタンを押します。
「イブ」など途中までの入力でも検索できますが、商品名を誤るとヒットしないので注意してください。
(2)検索結果から該当の商品を探す
検索結果が多すぎる場合、(1)の時点でより詳細な情報(成分名や薬効分類など)を入力し、絞り込みをかけてください。
(3)「HTML」と「PDF」のどちらかを選択する
添付文書のファイル形式には「HTML」「PDF」の2種類があります。
「HTML」の場合、情報の掲載が不十分なメーカーもあるため、市販薬の箱に封入されている添付文書と同じ形式の「PDF」を選ぶと確実です。
いざというときに困らないよう、添付文書の検索方法は事前に必ず身につけておきましょう。

内服薬と外用薬の併用を見極めるポイント

ここでは、添付文書を利用した「内服薬と外用薬の併用可否を判断する方法」について解説します。
具体的には、添付文書の「使用上の注意(『してはいけないこと』と『相談すること』)」の記載を確認します。
例として、以下の3パターンの組み合わせについて見ていきましょう。
【例2】内服薬「イブスリーショットプレミアム」と外用薬「ボルタレンACαテープ」
【例3】内服薬「アレグラFX」と外用薬「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」
・イブスリーショットプレミアム:イブプロフェン、アセトアミノフェン、酸化マグネシウム、無水カフェイン
・ロキソニンSテープ:ロキソプロフェンナトリウム水和物
・ボルタレンACαテープ:ジクロフェナクナトリウム
・アレグラFX:フェキソフェナジン塩酸塩
・フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>:フルチカゾンプロピオン酸エステル
【例1】「イブスリーショットプレミアム」と「ロキソニンSテープ」
【添付文書の併用に関する記載】
| イブスリーショットプレミアム | ロキソニンSテープ | |
| 薬効グループ | 解熱鎮痛薬(内服) | 外用鎮痛消炎薬 |
| してはいけないこと | 2. 本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も服用しないでください 他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬 | 3. 本剤を使用している間は、 他の外用鎮痛消炎薬を使用しないでください。 |
| 相談すること | ― | ― |
「イブスリーショットプレミアム」も「ロキソニンSテープ」もNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を含みます。
しかし、添付文書の「してはいけないこと」において、互いの薬効分類の記載はなく、特に併用は禁止されていないことがわかります。
たとえば、併用するケースとしては、生理痛と筋肉痛が同時にある場合など、使用目的が2つある場合が考えられます。
一方、捻挫に対してこれらの薬を併用したいなど、使用目的が1つの場合、添付文書上は併用が可能だとしても、痛みがかなり強いと判断し受診勧奨が適切なケースもあります。
【例2】「イブスリーショットプレミアム」と「ボルタレンACαテープ」
【添付文書の併用に関する記載】
| イブスリーショットプレミアム | ボルタレンACαテープ | |
| 薬効グループ | 解熱鎮痛薬(内服) | 外用鎮痛消炎薬 |
| してはいけないこと | 2.本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も服用しないでください 他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬 | 3.本剤を使用している間は、他の外用鎮痛消炎剤を使用しないでください。 |
| 相談すること | ― | (6) 次の医薬品の投与を受けている人 ニューキノロン系抗菌剤、トリアムテレン、リチウム、メトトレキサート、非ステロイド性消炎鎮痛剤(アスピリン等)、ステロイド剤、利尿剤、シクロスポリン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤 |
「ボルタレンACαテープ」の「相談すること」には、さまざまな併用注意薬の記載がありますが、「非ステロイド性消炎鎮痛剤(アスピリン等)」もその1つです。
そのため、これら2剤の併用は禁忌ではないものの、慎重に対応する必要があります。
判断に迷った場合は、「ボルタレンACαテープ」を、【例1】で取り上げた「ロキソニンSテープ」に切り替えるのもよい方法です。
【例3】「アレグラFX」と「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」
【添付文書の併用に関する記載】
| アレグラFX | フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用> | |
| 薬効グループ | 鼻炎用内服薬 | 鼻炎用点鼻薬 |
| してはいけないこと | 2. 本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も使用しないでください。 他のアレルギー用薬(皮ふ疾患用薬、鼻炎用内服薬を含む)、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等(かぜ薬、鎮咳去痰薬、乗物酔い薬、催眠鎮静薬等)、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤(制酸剤)、エリスロマイシン(抗生物質)、アパルタミド(前立腺がん治療剤) | 3. 本剤と他のステロイド点鼻薬は併用しないでください。ただし、医師から処方された場合は、その指示に従ってください |
| 相談すること | ― | ― |
「アレグラFX」の「してはいけないこと」には多数の薬について記載がありますが、鼻炎用点鼻薬に関する記載はありません。
一方の「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」も、ほかのステロイド点鼻薬との併用が禁止されているのみです。
そのため、これらの併用は問題ないと判断できます。
なお、鼻炎用点鼻薬の中には、抗ヒスタミン成分を含むものもあり(商品例:ナザール「スプレー」など)、アレグラFXとの併用に迷うかもしれません。
添付文書上、これらの併用についても禁止されていませんが、お客さまには「抗ヒスタミン成分が重複するため、眠気が強く出る可能性がある」ことをお伝えするとよいでしょう。
▼参考サイトはコチラ
独立行政法人医薬品医療機器総合機構『イブスリーショットプレミアム 添付文書』
第一三共ヘルスケア『ロキソニンSテープ 添付文書』
独立行政法人医薬品医療機器総合機構『ボルタレンACαテープ 添付文書』
独立行政法人医薬品医療機器総合機構『アレグラFX 添付文書』
独立行政法人医薬品医療機器総合機構『フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用> 添付文書』

外用薬と内服薬の併用によるリスクはある?

内服薬と外用薬との併用では、内服薬同士の併用に比べて、副作用のリスクが少ない傾向にあります。
しかし、成分や成分グループが重複する場合には注意が必要です。
たとえば、抗ヒスタミン成分の重複により眠気が出やすくなったり、アドレナリン作動成分の重複で不眠や心臓血管系への副作用が出やすくなったりすることが考えられます。
そのため、添付文書上は併用可と判断できる場合にも、成分や成分グループの重複は極力避けた方が安心です。

現場で役立つ!併用を聞かれたときの声かけと判断方法

ここまでの内容をふまえて、実際にお客さまから併用に関する質問を受けた際の対応方法について見ていきましょう。
「これらの薬は一緒に使っても大丈夫ですか?」と聞かれたときの対応
お客さまから内服薬と外用薬の併用について聞かれたときは、「添付文書を確認しますので、少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」とお伝えしてください。
併用の確認は、対応者がたとえ薬剤師であったとしても、一定の時間が必要な業務です。
あわてずに対応しましょう。
お客さまの同意が得られたら、本コラムの前半で解説した通り、2剤の添付文書を入手して「使用上の注意」を確認します。
「併用不可」と判断して理由を説明する際は、添付文書の記載を見せながら行うとスムーズです。
あわせて、別の商品への切り替えや、1剤のみの販売などをおすすめしてください。
お会計時にヒアリングが必要なときの対応
お客さまがカゴに薬を複数種類入れており、レジで併用を確認する必要がありそうなケースでは、「これらのお薬は一緒に使われますか?併用が禁止されている可能性があるので、こちらで確認させていただいてもよろしいでしょうか?」とお聞きします。
併用を確認するときは、落ち着いて対応するために、レジ業務をほかのスタッフに代わってもらうとよいでしょう。

併用確認の流れを日常業務に落とし込むために
薬の併用可否を判断するときは、添付文書の入手や「使用上の注意」の確認、ほかの商品への切り替えの判断など、複数の手順を踏む必要があります。
そのため、普段から添付文書を読むクセを付けて、添付文書のどこに何が書かれているのかを把握しておくと、いざというときにあわてずに済みます。
併用の確認に挑戦するのは勇気がいるかもしれませんが、登録販売者として働く限り、必ずどこかのタイミングで対応することになります。
お客さまにご協力いただきながら、ぜひ一歩を踏み出してみてくださいね。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:村松早織(むらまつ・さおり)先生

名城大学薬学部を卒業後、大小のドラッグストアでの勤務を経て、2016年に株式会社東京マキアを立ち上げる。現在は登録販売者や受験者向けの講義を中心に事業を展開中。YouTubeの『やっけんちゃんねる』では、現在15,900人を超えるチャンネル登録者に向けて、市販薬関連の情報発信を行う。また、2024年に「OTC医薬品を正しく選ぶ教室」を開講し、200名超の会員に市販薬の選び方や接客方法を教えている。
メディア出演実績として『NHKあさイチ「今こそ気をつけたい!身近な薬とのつきあい方」』、著書に『やさしくわかる! 登録販売者1年目の教科書』(ナツメ社)、『医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略』(金芳堂)、『薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」』(金芳堂)、『村松早織の登録販売者 合格のオキテ100』(KADOKAWA)、『これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版』(共著)(KADOKAWA)がある。
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