現場で役立つ知識
2023-02-24
ドラッグストアで目薬をお求めのお客さまへの対応【薬剤師に学ぶ医薬品知識】
・Before
・After
ドラッグストアで働く登録販売者にとって、目薬はよくお客さまから聞かれる商品カテゴリの一つだと思います。「目薬の種類が多すぎて、どれをおすすめしたらいいかわからない」といった悩みをおもちの方も多いのではないでしょうか?お客さまの悩みに適した商品を紹介するためにも、しっかりと知識をつけておくことが大切です。今回は、目薬の成分や選び方、販売時の注意点などについて解説します。
目に起こりやすい症状とそれぞれの原因とは?
まずは、目に起こりやすい症状とその原因について見ていきましょう。
目の疲れ・かすみ
視界がぼやけてよく見えない、目がショボショボするなどの症状が見られます。
疲れやかすみが起こる原因は、以下のようにさまざまです。
- ドライアイ
- パソコンやスマートフォンなどの使用
- メガネやコンタクトレンズの度が合っていない
- 薬の副作用
- 老眼
- 甲状腺機能亢進症
ほかにもいくつか原因になるものはありますが、現代人ではドライアイによる疲れ目やかすみ目の方が増加傾向にあります。
目の充血
目が充血する原因も、下記のようにさまざまです。
- アレルギー性結膜炎
- 感染性結膜炎
- 目の疲れ
- ドライアイ
- ゴミや紫外線など外部からの刺激
まれにですが、「結膜下出血」で白目の部分が赤くなった方が相談に来られることもあります。
結膜下出血は、結膜下の血管が破れて出血した状態です。
軽度であれば時間の経過とともに自然と改善しますので、とくに治療は必要ありません。
ただし、次のような場合は眼科の受診を促しましょう。
- 目に外傷がある
- 痛みやかゆみを伴う
- 目やにが出る
- 何度もぶり返す
- 発熱している
- 原因がわからない
目のかゆみ
目のかゆみが起こる原因は、主に次の2つです。
- アレルギー性結膜炎(花粉・ハウスダストなど)
- 感染性結膜炎
目のかゆみは、花粉やダニなどへの接触、細菌やウイルスの感染により起こります。
日常生活を送れないほど強いかゆみが出ることも少なくありません。
目の乾き
目の乾きは、次のような原因で起こります。
- 空気の乾燥
- 長時間にわたるパソコンやスマートフォンなどの使用
- コンタクトレンズの使用
- 涙の量の不足や質の低下
目がかすんだり、コンタクトレンズをつけているときに目を開けるのがつらいと感じたりする場合は、乾燥によるものでないかを疑ってみましょう。

目薬における処方薬と市販薬の違い
市販の目薬のなかには、処方薬と同じ成分が含まれているものもあります。
しかし、市販薬のみですべての症状に対処することは残念ながらできません。
次では、処方薬と市販薬の違いや、受診勧奨が必要なケースについて見ていきましょう。
目薬の処方薬と市販薬の違い
処方薬と市販薬には、次のような違いがあります。
- 配合されている成分の濃度
- 適応をもつ症状
- 使われている防腐剤の量
- 成分の種類
ざっくりいうと、市販薬は処方薬と比べて濃度が低いものが多くなっています。
また、同じ成分を使用していても使い方が処方薬とは異なる場合もあります。
たとえば、処方薬のヒアレイン点眼液はドライアイに使えますが、同じ成分が主成分である市販のヒアレインSは、ドライアイに対する効能効果がありません。
市販薬は処方薬より防腐剤の量が多い傾向にあるため、人によっては角膜障害を引き起こすことがあります。
また、市販で扱われている成分はごく一部のもののみです。
ただし、市販薬の目薬で対処できるケースも多くあります。
軽いかゆみや疲れ目、乾きなどであれば、市販薬で十分な場合もあるでしょう。
受診が必要なケースと市販薬で対応できるケース
目薬について相談を受けた際、次のような場合は眼科の受診を促してください。
- 市販の目薬を1週間以上使っても改善が見られない
- 気になる症状が1か月以上続いている
- 目に痛みがある
- 黒目に濁りがある
市販の目薬を使っても効果が不十分なようであれば、市販の成分では対処できない可能性が高いと考えられます。
症状が長く続く場合は、原因を究明して適切な治療を受けることが大切です。
目に痛みがあったり黒目に濁りがあったりする場合は、治療が遅れると視力の低下につながることもあるため、早めに受診するように伝えましょう。
目薬の選び方
目薬を選ぶときは、まずお客さまが困っている症状をよくヒアリングし、症状に合う成分が入った商品を提案することが大切です。
症状別の選び方
まずは、よくある症状別に目薬の選び方を見ていきましょう。
●目の疲れ・かすみ
シアノコバラミンは目の神経の働きを良くし、ネオスチグミンメチル硫酸塩はピント調節を行う筋肉の働きを調節します。
主な成分名 | 効果 |
---|---|
シアノコバラミン(ビタミンB12の一種) | 目のピント調節機能を改善し、酸素消費量を増やす |
ネオスチグミンメチル硫酸塩 | 毛様体筋の収縮をサポートし、目のピント調節機能を改善する |
●目のかゆみ
かゆみがある場合は、以下の成分を含むものを選ぶと良いでしょう。
アレルギーやウイルスによる結膜炎が疑われる場合は、さらに抗菌成分が入っているものを選びます。
主な成分名 | 効果 |
---|---|
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | ヒスタミンの働きを抑えてかゆみを緩和する |
ケトチフェンフマル酸塩 | 抗ヒスタミン作用と、アレルギーを起こす物質の放出を抑える働きによりかゆみを緩和する |
クロモグリク酸ナトリウム | アレルギーを起こす物質の放出を抑えてかゆみを緩和する |
●目の充血
目の充血は血管収縮剤を使うことで症状をやわらげることが可能です。
ただし、血管収縮剤のみで充血の根本的な解決はできません。
炎症が原因の場合は、抗炎症作用のあるプラノプロフェンが入っているものを選ぶのもよいですが、こちらが配合された目薬はあまり市販されていないため、候補とはなりにくいでしょう。
また、プラノプロフェンは妊娠中の方には禁忌となっているので注意してください。
感染症やアレルギーなどほかの原因が考えられる場合は、下記に加えて抗菌成分のスルファメトキサゾールやアレルギー症状を抑えるクロルフェニラミンマレイン酸塩などが配合されたものを選びましょう。
主な成分名 | 効果 |
---|---|
ナファゾリン塩酸塩 | 血管を収縮させて充血を取る |
塩酸テトラヒドロゾリン | |
フェニレフリン塩酸塩 | 血管を収縮させて充血を取る |
プラノプロフェン | 目の炎症を抑えて充血やかゆみを抑える |
●目の乾き
目が乾く場合は、次のような成分が入っている目薬がおすすめです。
ヒアルロン酸ナトリウムが主成分の目薬は要指導医薬品のため、薬剤師しか販売ができないことに注意しましょう。
主な成分名 | 効果 |
---|---|
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム | 目にうるおいを与える |
ヒプロメロース | |
ヒアルロン酸ナトリウム |
コンタクト・裸眼別の選び方
目薬のなかには、コンタクトに適応していないものもあります。
そうした点に気をつける必要がある場合の選び方についても、理解しておきましょう。
●コンタクト
コンタクトレンズをしている方は、使用できる目薬が限られます。
とくにソフトコンタクトレンズの場合は目薬に含まれている防腐剤がレンズに吸収されやすいため、注意が必要です。
ハードコンタクトレンズの場合はコンタクトレンズ用と書かれていなくても使用できるものがあるので、パッケージの記載を確認しましょう。
●裸眼
裸眼の場合は、基本的にどの目薬を選んでも問題ありません。
使える成分の幅も広がるため、コンタクトレンズユーザーには症状に応じてレンズの使用を一時的に止めるよう伝える必要もあります。
<対応例>目薬を求めて来店されたお客さまへの対応例
◆人物データ
20代女性
職業 :医療事務
既往症 :なし
使用中の薬:市販の目薬
アレルギー:なし
症状 :目のかゆみ・充血
◆対応例
お客さま:
目のかゆみや充血におすすめの目薬はありますか?
登録販売者:
かゆみ止めのクロルフェニラミンマレイン酸塩と充血を抑えるナファゾリン塩酸塩が入っているこちらの目薬はどうでしょうか?
お客さま:
では、こちらでお願いします。今使っている目薬だとなかなか効かなくて…。
登録販売者:
今は何を使用されているんですか?
お客さま:
A社の市販の目薬です。
登録販売者:
こちらは炎症を止める成分のみが配合されたものなので、症状の原因によっては効果を実感しづらいと思います。それから、主成分のプラノプロフェンは妊娠している方は使えないので注意してくださいね。
お客さま:
そうだったんですね。
登録販売者:
目のかゆみや充血はいろいろな原因で起こります。場合によっては処方薬でないと治療ができないこともあるため、症状が長引いているようでしたら早めに医療機関を受診してくださいね。
接客のポイント
かゆみと充血が気になるとのことなので、クロルフェニラミンマレイン酸塩とナファゾリン塩酸塩が配合された目薬をおすすめしました。
すでに市販の目薬を使っているとのことだったので、症状が長引く場合は眼科を受診するよう伝えています。
また、プラノプロフェンは妊娠中の方には使えない成分です。
とくに妊娠の有無は確認していませんが、念のため使用できないことをお伝えしました。
目薬をおすすめするときの注意点
最後に、目薬を販売するときに注意すべき5つのポイントを紹介します。
目薬を差すときに気をつけること
用法用量は必ず守って使用してもらうように伝えましょう。
誤った使い方をすると、症状がひどくなったり思わぬ副作用が出たりすることがあります。
また、抗ヒスタミン薬が配合された目薬は緑内障を悪化させることがあるため注意してください。
閉塞隅角緑内障の方には抗ヒスタミン薬配合の目薬は避けましょう。
※閉塞隅角緑内障…緑内障の一種で、視神経の障害が発生しつつある状態
コンタクト装用中の使用の可否
コンタクトレンズを装用した状態で使える目薬は限られています。
使用の有無については必ず事前に確認してください。
使用回数
多く点眼すれば症状が改善するわけではありません。
使用回数を超えて点眼しなければならない状況が続いている場合は、市販薬での対処が難しいと考えられるため医療機関の受診を促しましょう。
目薬がしみるときの対応
目が乾燥していたり傷ついていたりすると、目薬に含まれている清涼成分の影響でしみることがあります。
気になる方には、メントールやカンフルが含まれていないものをおすすめしましょう。
使用期限
メーカーによって開封後の使用期限は異なり、2~3か月で使い切るのが一般的です。
防腐剤が含まれていない目薬は10日~30日で使い切る必要がある商品もあるのでよく確認しましょう。
症状に適した成分が配合された目薬を選ぼう
お客さまの症状に合う成分が配合されているものを選ぶことが重要です。
処方薬でなければ十分に効果が出なかったり、そもそも治療が難しかったりするものもあります。
点眼するときは手を清潔にしてまつげに当たらないようにさすなど、正しい使い方も簡単で良いので伝えるようにしましょう。
なお、目薬は特別な指示がない限り冷蔵庫で保管する必要はありません。
多くの目薬は室温(1~30℃)で直射日光が当たらない場所で保管しましょう。
市販薬で対処し続けることで、適切な治療が遅れるケースもあります。
市販の目薬を1週間ほど使っても改善が見られない場合は、眼科などへの受診を勧めてください。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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