現場で役立つ知識
2025-05-02
ドラッグストアで化粧品販売が上手い人の特徴とは?“売れる”セールストーク例も紹介
・Before
・After
化粧品販売では、お客さまの悩みに寄り添った接客がポイントです。たとえば「乾燥が気になる」というお客さまに、「どの部分がとくに気になりますか?」と具体的に聞き、肌状態を確認しながらアドバイスをすると、納得感が高まります。こうした化粧品販売の上手い人には、共通する特徴があります。本記事では、売れる販売員が実践している接客方法と、具体的なセールストークの例を紹介します。
ドラッグストアでの化粧品販売は伸びている
経済産業省の『商業動態統計調査』によると、2024年のドラッグストア販売額は約8兆9,200億円(前年比+6.9%)に到達しました。
なかでも「ビューティーケア(化粧品・小物)」カテゴリは、販売額が約1兆1,667億円(前年比+10.8%)となり、急成長を遂げています。
大手ドラッグストア各社の直近の決算情報を見ても、化粧品関連の売上高や売上構成比は増加傾向。
ニーズの高まりに伴い、今後も化粧品販売の知識向上や接客力の強化はますます重要になると言えるでしょう。
化粧品販売が上手い人の特徴
化粧品販売では、商品の説明をするだけでなく、お客さまの悩みに寄り添った提案をして信頼されることが重要です。
信頼される販売員がもつ共通点は、「共感力・分析力・説明力」の3つです。
それぞれの特徴を具体的にみていきましょう。
お客さまの悩みに寄り添う「共感力」
まずはお客さまの悩みに共感し、安心して相談できる雰囲気をつくることが大切です。
「わかります」などの表面的なリアクションだけでなく、お客さま自身も気づいていない原因を一緒に探す姿勢をもちましょう。
乾燥が気になる方には、「どの部分がとくに気になりますか?」と質問し、具体的な悩みを引き出します。
チェッカーなどで肌の水分量を計測できれば、お客さまの肌の状態を客観的に分析し、適切なアドバイスにつなげられます。
また、店舗で同じ相談が増えているのであれば、「今ほかのお客さまからも同じ相談が増えているんですよ」と一言伝えることで、「自分だけじゃないんだ」と安心感をもってもらえます。
悩みの原因を突き止める「分析力」
次は、お客さまのお悩みを論理的に整理しましょう。
悩みの原因を探ることで、本当に必要なアドバイスができるようになります。
たとえば「肌の乾燥」といっても、紫外線や洗顔時の湯温の高さによるものなどさまざまです。
そのため、場合によっては「保湿ケアよりも、洗顔方法を変えることで改善できますよ」と伝え、生活習慣の改善やスキンケア方法の見直しを提案しましょう。
こうすることで、「売り込まれている」とお客さまに感じさせず、相談するハードルを下げて、長期的な信頼関係を築くのです。
商品の魅力をお客さまに伝える「説明力」
商品を提案する際は、お客さまに合わせた言葉で説明することが重要です。
たとえば、メーカーの商品説明が専門的でわかりにくいこともあるでしょう。
「この商品はナイアシンアミドが入っています」を言い換えて、「シミやくすみにアプローチして、透明感を引き出します」と伝えると理解しやすくなります。
慣れないうちはカウンセリングシートを活用し、お客さまがどのような言葉で悩みを話しているかをメモすると良いでしょう。
大事なのはファン化!化粧品をお求めのお客さまに響くアプローチとは?
化粧品販売では「売ること」に加えて「また来たい」と思ってもらうことが重要です。
再来店につなげるためには、お客さまと関係性を築いて自分のファンになってもらえるように意識して接客しましょう。
自分の肌悩みをあえて伝えて共感してもらう
相談しやすい販売員になるためには、「私も〇〇に悩んでいたんです」と自分の経験を共有することが効果的です。
販売員が完璧な美肌の持ち主である必要はありません。
むしろ、「同じような悩みを抱えていたけれど、こういう方法で対策した」という話をすることで、「この人のアドバイスなら信じられる」とお客さまに感じてもらいやすくなります。
たとえば、次で乾燥に悩むお客さまへのトーク例を紹介します。
このように共感を示せば自然な流れでメイクアイテムを紹介できますし、「売り込み」ではなく「一緒に解決策を探してくれている」と感じてもらえます。
さらに、「共感→体験談→解決策の提案」の流れができるので、お客さまから継続的に相談してもらいやすくなるのです。
「相談しやすい販売員」になる
お客さまが気軽に悩みを相談できるよう、売ることを優先せず「一緒に肌を育てていく」スタンスをもつことが大切です。
「最近こんなお悩みの方が増えているんですよ」とトレンド情報を提供したり、雑談を重ねたりして、相談しやすい距離感をつくりましょう。
ここでは、お客さまが話しやすい雰囲気をつくりつつ、悩みや好み、ライフスタイルを自然に引き出せる雑談の一例を紹介します。
・天気や季節の変化に絡める
・トレンド情報を交えて話す
・普段の生活習慣に絡める
再来店につながる「特別感」を提供する
お客さまが「またこの店で買いたい」と思うかどうかは、購入時の満足度だけでなく、「自分に合った特別な提案を受けられた」と感じるかで決まります。
そのため、再来店につなげるには「サンプリング」を活用しましょう。
お客さまの肌状態や理想に合わせたサンプルをお渡しし、使用方法や使用中のアイテムとの相性について説明します。
最後に「次回ご来店の際に、サンプルの使用感もぜひお聞かせください。」と付け加えることで、サンプルを「旅行用に保管」せず、すぐ試すように促し、次回の来店につなげやすくなります。
化粧品をお求めのお客さまへの接客の流れ
販売員は、お客さまがどのようなプロセスで化粧品を「ほしい!」と感じ、購入しているかを理解して適切な接客を行うことが大切です。
ここでは、お客さまが店舗に訪れた瞬間から購入に至るまでの流れを、効果的なアプローチとともに解説します。
声かけをするときはお客さまの「足の向きを見る」
最適なタイミングでの声かけは、接客の成功率を大きく左右します。
その判断基準として、お客さまの足の向きを観察しましょう。
足の向きは、お客さまの購買意欲を表す重要なサインだからです。
足が商品棚に向いているお客さまは、商品に興味をもって比較検討している可能性が高いため、次のように声をかけましょう。
- お手元で使用感をお試しください。
- 簡単な肌状態のチェックもできますので、気軽にお声がけください。
- よろしければ色を合わせてみてください。
- ぜひお試しくださいね。
- (タッチアップを嫌がる方)つけるだけならタダですよ。
お客さまを観察して適切なタイミングで声をかけることで、自然な会話のきっかけをつくれます。
ヒアリングは理想と現実を2人で共有する
ヒアリングの秘訣は、お客さまの理想と現実のギャップを数値化し、共有することです。
お客さま自身が感じている悩みと実際の肌の状態には、しばしば認識のズレが生じています。
このズレを放置すると的外れで納得感のない提案になる可能性があるため、以下の手順でギャップを明確にするのがおすすめです。
(1)肌の悩みを聞く
「乾燥が気になる」「くすみがある」など自由に話してもらう
(2)現状を数値化
「今の肌を10点満点で評価すると何点ですか?」と聞く
(3)理想を引き出す
「どんな肌になりたいですか?」と目標を確認
(4)目標との差を確認
「理想の肌を何点と考えますか?」と尋ね、改善の方向性を明確にする
数値化することで、お客さま自身も改善の方向性を具体的にイメージでき、提案する商品やケアへの納得感が高まります。
もしギャップが大きい場合は「一緒に改善していきましょう」と伝え、長期的な対策の必要性を理解してもらうことが大切です。
クロージングは使った未来を想像させる
クロージングは、お客さまが「使用後の理想の姿」を具体的にイメージできるかにかかっています。
未来の理想的な自分をイメージできると、その変化に期待し、行動を起こしやすくなるためです。
単なる商品説明だけでは「また今度でいいかな」と購入を先送りされがちなので、クロージングの際には次のような声かけしてみましょう。
- (スキンケア商品)この肌になれたらうれしくないですか?
- (メイク商品)毎朝、この仕上がりなら楽しみですよね。
「そうですね!」という肯定的な返答を引き出せるようなクロージングを意識しましょう。
変化を具体的に想像させることでお客さまの「買う理由」を明確にし、購入につなげられます。
【お客さまの特性別】化粧品を気持ちよく購入してもらうコツ
お客さまの特性に合わせたアプローチをすることも大切なポイントです。
ここでは、お客さまのタイプ別に接客のコツを紹介します。
美意識の高い方はこだわりを引き出す
美意識の高いお客さまへの対応では、「こだわりを引き出し、共感する」ことが重要です。
美意識の高い方は、自身のこだわりや知識をもっており、それを理解してもらえる販売員を信頼する傾向があります。
新しい美容情報への関心も高いため、トレンド情報の共有が効果的です。
ここでは、実際の接客に活かせる会話の流れをご紹介します。
(1)褒めて興味を持たせる
お客さまのメイクや肌の仕上がりを観察し、気づいたことを具体的に褒めましょう。
「お肌がツヤツヤですね!普段、どんなスキンケアをされているんですか?」といった声かけをすることで、自然に会話が始まり、お客さまの悩みを聞き出しやすくなります。
(2)お客さまのこだわりポイントを探る
「普段どんなブランドをお使いですか?」など、お客さまのこだわりを引き出す質問を投げかけましょう。
普段のお手入れ方法や理想の仕上がりが見えてきます。
そこから悩みを聞き出し、最適な提案につなげることができます。
(3)トレンドや新商品を話題にする
美意識の高い方は、流行や新しいアイテムに敏感なことが多いです。
トレンドや新商品に関する会話をきっかけに、店舗で販売している商品の紹介につなげましょう。
タッチアップに誘導すると、商品の良さを体感してもらいやすくなります。
美容への知識の深さを認めながら新しい情報や商品を提案することで、お客さまとの信頼関係を築けます。
ご高齢の女性には「いつまでも魅力的である」ことを伝える
スキンケアやメイクは、年齢に関係なく、その人が本来もつ美しさを引き出すためのものです。
ご高齢のお客さまのなかには、「年だから(肌悩みも)仕方ない」「もう自分には必要ない」と考え、化粧品の購入をためらう方もいます。
そうした方々にも前向きに美容を楽しんでもらえるよう、「年齢を重ねる=魅力が増すこと」だと伝えましょう。
たとえば次のような声かけが効果的です。
- これまでのご経験が、お肌にも表れていますね。
- スキンケアやメイクは、今のご自身をさらに素敵にするためのものなんですよ。
接客を通してお客さまの自信を引き出し、美容を楽しんでもらいましょう。
男性には論理的に説明する
男性のお客さまには「なぜこの商品が必要なのか」を説明します。
感覚的な「使った後のワクワク感」よりも、「なぜ使うべきか」という合理的な理由を求める傾向があるためです。
以下のように「現状の問題 → 解決策(成分)→ 習慣化の大切さ」の流れで説明すると納得感を得やすくなります。
(1)現在の肌状態を伝える
たとえば「今のお肌は〇〇の影響で乾燥しやすくなっています」などと、現状を客観的に伝え、問題を認識してもらいましょう。
(2)なぜこの商品が良いのかを説明する
「この商品には〇〇成分が含まれており、〇〇の効果があります。」と、成分と効果を説明します。
(3)スキンケアは継続が大切だと伝える
男性のお客さまのなかには、即効性を求める方もいます。スキンケアは「毎日の積み重ねで肌状態が変わるもの」ということを伝えて継続を促しましょう。
信頼される販売員になるために大切なこと
化粧品販売で成功するためには、単なる商品の説明にとどまらず、お客さまの悩みに寄り添い、適切な提案をすることが重要です。
さらに特別感のある対応やアフターフォローを心がけ、信頼関係を構築することで、お客さまのファン化に努めましょう。
そのために、日々の学習と情報収集は欠かせません。
新商品の成分や特徴をメーカーの公式サイトや業界ニュース、研修から学ぶことに加えて、SNSや美容雑誌を活用してトレンドを把握することも効果的です。
また、ロールプレイングや接客の振り返りを通じて、スキルを磨き続けましょう。
継続的な学びと実践を重ねることで、お客さまにとって信頼できる販売員となり、ひいては店舗の売上アップにもつながるでしょう。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:福重舞(ふくしげ・まい)さん
2011年に地方のドラッグストアへ正社員として入社し、2012年に登録販売者資格を取得。2013年からは化粧品専門の販売スタッフとして従事し、自身の敏感肌の経験を活かした寄り添う接客が好評。「あなただから相談できる」との声を多くいただく。肌質に合わせた丁寧なカウンセリングと的確な提案により、個人の年間売上1,000万円以上、月間200万円を達成。
現在は、登録販売者としての専門知識と豊富な現場経験を活かし、化粧品やスキンケアに関する記事を執筆。美容と健康の正しい情報を、わかりやすく伝えることを大切にしている。

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