著名人コラム
2023-05-12
化粧品の陳列や季節商品、POP選びのコツ【ドラッグストアの売り場作り】
・Before
・After
ドラッグストアにおける化粧品の需要は、コロナ禍で落ち込んだ2020年から復活傾向にあります。経済産業省が発表した『商業動態統計』によると、2022年の「ビューティケア(化粧品・小物)」の販売額は、前年比106%となりました。また他社との差別化のため、化粧品のプライベートブランド(PB)商品の販売に注力している企業も増えています。今回の記事では、そんな需要の高まるドラッグストアの化粧品売り場の作り方、季節商品の選び方、POPの種類と活用の仕方などをご紹介します。ぜひお店の売り場作りに活かしてください。【執筆者:株式会社髙橋店舗経営コンサルティング 代表取締役/店舗経営 幹部育成コンサルタント/店舗体幹®トレーナー 髙橋靖信さん】
化粧品売り場作りの3つのポイント
お客さまにドラッグストアで化粧品を楽しく選んでもらうためには、売り場をわかりやすく、ワクワク感を演出しながら作ることが必要です。
まずは、化粧品売り場を作る際に、意識したい3つのポイントを解説します。
商品の分類と配置を意識する
商品を商品棚に陳列する際は、お客さまが探しやすく見やすいよう、下記を意識してみましょう。
- お客さまのニーズに沿って商品が分類されている
- 商品の分類ごとに商品棚に陳列されている
具体的には、下記のような手順で整理すると良いでしょう。
(1)くくり(グルーピング)
商品をお客さまのニーズに沿って分類する方法です。
以下のような分類が例としてあげられます。
- 基礎化粧品
- メイクアップ
- ヘアケア
- ボディケア
- フレグランス
- 日用品(歯磨き剤、紙おむつなど) など
来店したお客さまが、求めている商品が店内のどこに置かれているかがすぐに見つけられるようにするためです。
(2)リレーション
リレーションとは、商品同士の関連性を指します。
以下のように、商品のくくりごとに陳列してある商品の隣には、できる限り関連性の高い商品を置くわけです。
- 基礎化粧品の横にはメイクアップ商品を置く
- ヘアケア商品の横には入浴剤を置く など
こうしてお客さまの「ついで買い」を促すことで、売上アップが期待できます。
(3)テーマ設定
商品棚への陳列は原則として商品分類に従って行いますが、季節や行事、プロモーションなどにより特定の商品群をまとめて展開する方法もあります。
この場合には、以下のようなテーマの設定を行いましょう。
- 夏の日焼け止め商品や日焼けした肌のケア商品
- 冬に乾燥肌対策をする商品 など
詳しくは後述しますが、テーマを定めた商品展開により商品の訴求力を高められます。
マグネット売り場を作る
魅力的な売り場を作るには、商品展開にメリハリをつけることも大事です。
店内の各所に「マグネット売り場」を作ると効果的でしょう。
マグネット売り場とは、お客さまの視線が集まりやすい場所を指します。
お客さまが引き寄せられるという意味で、「マグネット(磁石)売り場」と呼んでいるのです。
その作り方には、主に次の3つがあります。
(1)「場所」で作る
お客さまの視線が最も集まるのは、「通路正面の突き当り」です。
歩いている人の視線は正面に向けられていることが多いためです。
そのほか、「ゴンドラ什器のエンド(什器の端の棚)」や通路にある「平台・ワゴン」なども視線が集まりやすい場所と言えます。
(2)「商品」で作る
商品のかたまりで訴求するのも効果的です。
たとえば、日焼け止め商品や涼感商品などの季節商品を、店頭や店内にコーナー展開をすることで、お客さまへの訴求が強まります。
(3)「プロモーション」で作る
サンプリングやおまけ付き商品の販売などのプロモーション戦略を行うことによって、お客さまに商品に目を留め、立ち止まってもらえる可能性がアップします。
フェイシングを戦略的に行う
フェイシングとは、陳列する商品と、その商品のフェイス(陳列時の最前面)の数を決めることです。
戦略的なフェイシングによって、次の2つの効果が期待できます。
- 「売れ筋商品」や「売り筋商品」を目立たせる
- 商品やパッケージの顔をきちんと見せられる
※売り筋商品…売りたい商品、販売強化商品(推奨品)
これらの具体的なポイントについて、次で詳しく見ていきましょう。
(1)「売れ筋商品」や「売り筋商品」を目立たせる
売れ筋商品と売り筋商品は、そのフェイス数(陳列する列)をほかの商品より多くとるようにします。
これによってお客さまの目に留まりやすくなり、手に取っていただける確率がアップします。
(2)商品やパッケージの顔をきちんと見せられる
商品やパッケージの表(おもて)面には、商品名に加え、商品の特徴やアピールポイントが書かれています。
これらは商品選びの参考になる重要な情報なので、商品の正面がきちんとお客さまから見えるように置いておくことが大事です。
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季節ごとに強化すべき化粧品の選び方
季節商品は季節感を演出しながら展開すると効果的なので、年中行事やそのイメージを連想させるカラーを意識して展開するのがポイントです。
春の強化商品とイメージカラー
3~5月にかけては、以下の商品を強化しましょう。
- 花粉症対策商品(花粉ガードスプレー、付着を防ぐ美容水など)
- 新社会人、新入学生向けのメイクアップ商品(マスカラ、アイライナーなど) など
イメージカラーは、暖色系のピンクや新緑のグリーンなどです。
夏の強化商品とイメージカラー
6~8月には、以下の商品の需要が増えます。
- 紫外線対策商品(紫外線カット商品、日焼け後のスキンケア商品など)
- 制汗商品(汗わきパット、ムレ防止クリームなど) など
イメージカラーとして、夏に涼しさを感じられるような寒色系のブルーや水色を使うのが効果的です。
秋の強化商品とイメージカラー
9~11月にかけては、次の商品を揃えると良いでしょう。
- 秋の行楽・スポーツシーズンに備える商品(日焼け止め商品、化粧崩れ防止商品)
- 秋色カラー商品(メイクアップ商品、ネイル商品) など
イメージカラーは、紅葉や爽やかさを感じられるオレンジや黄色、茶色、赤などがおすすめです。
冬の強化商品とイメージカラー
寒さが厳しくなる12月~2月には、次のような商品を強化します。
- 乾燥肌対策商品(ボディローション、ボディクリームなど)
- 入浴剤 など
イメージカラーとしては暖かさを感じられる暖色系の赤やオレンジに加え、クリスマスツリーや門松を連想させるグリーンやゴールド、黄色なども効果的です。
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お客さまの目を引くPOPの活用術
POPを活用して商品の違いを訴求するのも有効な手段です。
POPにもさまざまな種類がありますので、その役割と使い方を正しく認識して使えるようにしましょう。
次では、POPの種類別に、その効果的な使い方を解説します。
店内を歩いている人に目を留めてもらう
●天吊りPOP(シーリングPOP)
天井から吊り下げて使うPOPで、通路の上に吊られることが多いものです。
比較的大きめのサイズで作られており、遠くからでも視認性が高く、置かれている商品と場所を明確に伝えられます。
●エアーPOP
バルーン状のPOPを指します。
空気を入れて売り場に吊るしたり、棚にくっつけたりするものが一般的です。なかにはヘリウムガスを入れて浮かぶように設置するものもあります。
バルーンに文字やデザインを入れ、視覚的な訴求力を高めることも可能なので、うまく活用すると良いでしょう。
注目商品(売れ筋/売り筋商品)だと認識してもらう
●モニターPOP(デジタルPOP)
商品の使い方や効果などを音声つき動画で流すものです。
陳列棚の対象商品の横に置かれるケースが多く、お客さまが商品を手に取りながら動画を見られます。
動画なので実際に使用した時の状況をイメージしやすいという利点があります。
●スイングPOP
細長く柔らかい柄のようなものの先端に小さなPOPがついたものです。
対象商品の陳列棚などに貼られることが多いでしょう。
このPOPの特徴は、柔らかい柄のようなもので陳列棚についているだけなので、空調やお客さまの動きなどによって起こる風などで揺れる構造になっています。
そのため、お客さまの視線や注意を集める効果があるのです。
商品の特徴を理解してもらう
●POPシール
商品に直接貼るシール状のPOPです。
書ける情報が少ないため、商品の一番のアピールポイントや、「新商品」「限定商品」といったポイントを訴求する役割を担います。
●手書きPOP
店舗スタッフが手書きしたPOPは、店舗のオリジナリティを出しやすいでしょう。
スタッフが実際に使った感想やおすすめポイントなどを書くことで、親近感を湧かせ、購入につなげやすくなります。
POP活用時の注意点
POPは商品販促の手段として効果的ですが、以下のような注意すべき点もあります。
(1)POPをつけ過ぎると逆効果になることも
POPをつけ過ぎると情報過多になり、かえって読まれなくなってしまいます。
(2)訴求ポイントの盛り込みすぎはNG
お客さまが商品を比較しやすいよう、POPに記載する内容はポイントを絞ってシンプルにしましょう。
(3)POPで商品が隠れてしまうことがある
POPで商品が隠れてしまっては本末転倒です。
商品の陳列に合わせて、POPの大きさや位置にも気を配る必要があります。
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お客さまが商品を楽しく選べるお店になるために
ドラッグストアで扱う商品は年々増えてきており、ますますお客さまの生活に密着してきていると言えます。
とくに化粧品は数ある消耗品のなかでも日常的に使われるものが多いことから、購入頻度も高くなっています。
店舗の売上アップのためには、化粧品売り場を探しやすく、わかりやすく、手に取りやすい状態にしておく必要があるのです。
お客さまのお買い物体験をより楽しいものにするためにも、ただ商品を棚に陳列するだけではなく、ワクワク感やタイミングを意識した売り場作りが重要でしょう。
今回の記事を参考にして、お客さまに楽しんでもらえる売り場作りにぜひトライしてみてください。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:髙橋 靖信(たかはし・やすのぶ)さん
株式会社髙橋店舗経営コンサルティング 代表取締役
店舗経営 幹部育成コンサルタント/店舗体幹®トレーナー
大学卒業後、東急百貨店を経てタワーレコード、ディズニーストアなどの店舗運営に従事し、責任者として実績を残す。2017年に株式会社髙橋店舗経営コンサルティングを設立し、小売業/飲食業/サービス業における店舗ビジネスのサポートを開始。
店舗経営の幹部育成と現場のレベルアップを目指し、毎月40~50名の幹部・店舗責任者と店舗経営の改善に取り組む。「1.店舗運営」「2.人材育成」「3.ブランディング」の3つの領域で、各社の企業文化に合わせた課題解決を心がけ、結果につなげている。
【現場のお役立ち情報はコチラ】
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