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2023-03-17
ドラッグストア(薬局)の棚卸しの基本-目的・やり方・数が合わないときの対処方法など【チェックリスト付】
・Before
・After
ドラッグストアや薬局の棚卸しと聞くと、商品の在庫をひたすら数える大変な作業とイメージする方は多いでしょう。しかし、棚卸しには、利益の算出や商品管理といったお店の運営に関わる大切な目的があります。今回は、そのような棚卸しの目的や効率のよいやり方をミス防止のチェックリストとともにご紹介。ぜひ参考にしてください。
ドラッグストア(薬局)における棚卸し業務とは
まずは、ドラッグストアや薬局において棚卸し業務を行う目的や意味についてご紹介します。
棚卸しの基本を押さえましょう。
そもそも、棚卸しとは?
棚卸しとは、在庫がどれくらいあるか確認する業務
棚卸しは、期末時点での商品の価値「期末棚卸資産」の金額を導き出すために行う作業です。
売り場からバックヤードまでお店にあるすべての商品を数え、システム上の在庫数と照らし合わせて、その店舗の期末棚卸資産を確定します。
期末棚卸資産を算出することで、期末時点で持っている資産や期中の利益・損失などを導き出せます。
よって棚卸しは、その店舗の利益を把握するとても重要な業務です。
在庫数の把握だけでなく、商品の品質を評価して価値を算出する資産評価も目的とされています。
棚卸しを行う目的・意味
- 利益を確定するため
- 適切な在庫数を把握するため
- 商品の状態を確認するため
棚卸しを行う目的は、そのドラッグストアや薬局の正確な利益の算出です。
特定の商品の過剰所持や不足の状況を把握して、そのお店にとっての適切な在庫数を導き出す目的もあります。
適切な在庫数がわかれば、「売れ筋商品であるのに在庫不足で売り逃していた」といった事実を振り返り、今後の販売にも活かせるでしょう。
また、実際の数とシステム上の数に差異がある場合、販売ミスや万引きによる損失なども確認できます。
商品の使用期限や消費期限、破損など状態を見て売り物として適切であるかどうかもチェックできるため、普段の商品管理での足りない部分が見えてくるでしょう。
棚卸しを行う時期
一般的には、年度初めと年度終わり
棚卸しは一般的に、決算月に合わせた3月,9月,12月に行われることが多いです。
各ドラッグストア・薬局の規模や運営会社の方針により若干時期は異なります。
棚卸しのペースは、年に1度、半年に1度、3ヶ月に1度などさまざまです。
次の棚卸しまでに期間が空くと在庫数の差異が大きく生じやすく、修正するのにとても時間がかかります。
在庫カウント作業は手間がかかりますが、こまめに棚卸しをすることで在庫のずれが生じにくくなったり、差異の原因追及がしやすくなったり、といったメリットがあるでしょう。
棚卸し業務にかかる時間
一般的には、数日〜1週間
ドラッグストアや薬局での棚卸し業務は、概ね3日~1週間ほどかかります。
店舗の規模や扱う商品数によってかかる時間は異なりますが、在庫数のカウントに1日から2日ほど、実際のデータと帳簿在庫を比較する作業が長くて3日ほど必要です。
大幅に在庫数が合わないときは、一部カウントのやり直しも発生するため、さらに2、3日かかることもあるでしょう。
大型のドラッグストアであれば、開店前や営業終了後などの空いた時間を使い、従業員総出で一気に在庫を数えていきます。
規模の小さな薬局であれば、店舗の営業終了後に行うこともあるようです。
棚卸しをする人
棚卸し作業は、登録販売者を含む店舗の従業員が行います。
商品数をカウントする担当と、カウントした在庫数とデータ上の在庫数を照らし合わせる担当、2つの役割を分担して進めるケースが多いです。
なお、商品数のカウントは、パートやアルバイトを含めて従業員総出で行い、データとの照らし合わせ業務は一般社員や店舗管理者などが担当する場合が多く見られます。
ドラッグストア(薬局)の棚卸しで登録販売者が行う主な業務
ドラッグストアや薬局に勤める登録販売者は、主に一般用医薬品や生活用品、食品、化粧品などのチェックを行います。
棚卸しの準備段階から携わることがほとんどです。
数える棚の担当を振り分けて指示をした後は、他の従業員と同じように在庫を棚ごとに数えていきます。
すべてカウントし終えたら、在庫数をデータと照らし合わせて本部へ報告する、というのが一連の流れです。
なお薬剤師は、錠剤や粉薬の軽量といった医療用医薬品の棚卸しをメインで行います。
ドラッグストアにおける登録飯場者の主な仕事について詳細はこちら
ドラッグストア(薬局)における棚卸しのやり方
ドラッグストアや薬局における棚卸しの手順は、事前準備・在庫のカウント・検証の3ステップです。
具体的な棚卸しのやり方について、わかりやすく説明します。
1.棚卸しの準備をする
準備段階として棚卸しを開始する日の前日までに、全体的なスケジュールを立てます。
棚卸しを行うスタッフの確認や、在庫を数える棚の担当の振り分け、端末入力の場合はその端末の充電など、さまざまな準備を実施。
棚には棚番と呼ばれる番号があり、数え終わった棚番をチェックするリストの作成も事前準備として行います。
また、商品が数えやすいよう売り場やストック棚を整理して、作業に集中できる環境に整える準備も。
陳列棚が乱れていると数え間違いが発生しやすくなるため、事前に棚を整理することはとても重要です。
2.商品在庫を数える
棚卸し当日は、売り場からバックヤードのストック棚まで、店舗にある商品在庫を1点1点すべて数えます。
ドラッグストアによってはJANコードを読み取る端末があり、その端末を使って棚卸し行っている場合も。
手書きでの記入と比べるとミスが少なく、手間も省けるやり方です。
薬局の場合は、棚卸しの前日までに在庫数をある程度数えておき、当日は差異のみチェックするというやり方で行う場合もあります。
3.在庫数を検証する
商品在庫のカウントを終えたら、そのデータをまとめて在庫管理システムに反映し、差異がないかどうかの検証を行います。
検証を終えたら、最終的な棚卸資産の価値を金額で計算する「棚卸資産の評価」をしましょう。
評価する方法は、「原価法」と「低価法」の2種類がありそれぞれ次のような特徴があります。
原価法 | 低価法 |
商品の購入時の金額をもとに価値を評価する方法。 | 商品の購入時の金額と時価を比べ、低い方で評価する方法。 |
上記の方法を用いて商品の価値を評価した後は、以下の計算式に沿って利益を算出します。
売上原価=期首在庫+仕入在庫―期末在庫
利益=売上―売上原価
【棚卸資産の評価の例】
商品Aの仕入れ単価を10、販売単価を13、期末の時価を7とする
・期首在庫:20
・期中の仕入れ数:100
・期中に売れた数:70
・期末在庫:50
【原価法による利益の計算】
700(売上原価)=20×10+100×10―50×10
210(利益)=70×13―700
【低価法による利益の計算】
850(売上原価)=20×10+100×10―50×7
60(利益)=70×13―850
なお、棚卸しでは大量の商品を人間が数えるため、カウントミスはよく起こるものです。
検証の際に差異が大きく発生した場合、差異が大きい棚の在庫数を数え直すことも。
同時に、販売ミスや万引きによる損失ではないかなど、差異が出た原因の究明をします。
どうしても在庫がずれた原因がわからない場合は、「棚卸差異」として計上しましょう。
詳しい計上のやり方は、後述しています。
ドラッグストア(薬局)の棚卸しで在庫が合わないときの対処方法
ドラックストア(薬局)の棚卸しでよくあるミス【チェックリスト】
きちんと在庫数を数えているつもりでも、棚卸し時のヒューマンエラーは必ず起こるものです。
ここでは、ドラッグストアや薬局における棚卸しで起こりがちなミスの例をご紹介します。
ミスを防ぐためのチェックリストとして活用してみてください。
カウント漏れ
☑ 棚の奥などに在庫が残っていないか
☑ 別の場所に商品が点在していないか
☑ 別の店舗へ輸送中や、お客さまへの預け在庫などはないか
数え間違い
☑ 箱を開けて中身の個数を確認したか(外箱と内容物の個数が違うケースも)
記入ミス
☑ 商品番号や場所などを正しい場所に記入したか
商品間違い
☑ 商品を見た目で判断せず表示を確認したか
入力漏れ
☑ 入力し忘れがないか
☑ 誤った数量を入力していないか
数字や記号の読み間違い
☑ 似ている数字(0と6、1と7など)や記号を読み間違えてないか(※手書きはとくに注意)
ドラッグストア(薬局)の棚卸しで在庫が合わないときの対応方法
在庫数が合わないと、そのドラッグストアや薬局の正しい利益を算出できません。
正確な売上分析ができないため、期待した売上・利益を生み出せなくなる可能性も。
棚卸しで在庫が合わない場合は、以下でご紹介する対応をとりましょう。
原因を見つけて、差異を正す
棚卸しで差異が生じた場合、まずはなぜ在庫数が合わないのか原因を突き止めます。
レジの打ち間違いや入荷時のミス、賞味期限切れなどで廃棄した際の処理漏れや万引きなど、考えられる理由はさまざまです。
そもそも棚卸しの際に商品を数え間違えている、というケースも必ずといっていいほどあります。
あまりにも在庫数が大きく違うと、棚卸しがやり直しになることもあるため、できるかぎり原因洗い出し、突き止めて差異を正しましょう。
原因がわからない場合、棚卸差異を計上する
帳簿在庫と実際の在庫数が合わず、原因もわからない場合は、実際の在庫に帳簿の在庫数を合わせる対応をとります。
この場合は、「棚卸差異」として帳簿に計上しましょう。
棚卸差異として計上する方法には、「棚卸差損」と「棚卸差益」の2通りあります。
実際の在庫数が以下のどちらであるか、確認したうえで計上してください。
棚卸差損 | 棚卸差益 |
帳簿の在庫数よりも実際の数が少ない | 帳簿の在庫数よりも実際の数が多い |
例)帳簿上の在庫が50個に対して実際の在庫が40個であれば、「棚卸差損」
例)帳簿上の在庫が40個に対して実際の在庫が50個であれば、「棚卸差益」
ドラッグストア(薬局)の棚卸業務の注意点
棚卸しを行う際は、在庫数を正しく数える以外に忘れてはいけないことが2つあります。
棚卸しを終えた後に困らないよう、注意点を押さえておきましょう。
棚卸表は7年間以上保存する
国税庁により、企業は棚卸しの結果を「棚卸表」に記載し、棚卸しを行なった日から最低7年間保存する必要があると定められています。
棚卸表とは、棚卸し業務で数えた商品の名前や在庫数、金額などを一覧にまとめて記入する表です。
棚卸しを終えた後は「棚卸表」を作成し、店舗内での紛失や破棄などに注意して保管しましょう。
なお、帳簿の保存方法は紙と電子帳簿の2通りあります。
電子帳簿で保存する場合、保存の義務がある帳簿や書類は下記の要件を満たしていることが必要です。
・訂正や削除の履歴が残っていること
・帳簿間で相互関連性があること
・検索機能があること
・モニターやシステム関係書類、説明書等を備え付けること
品質の確認を忘れない
ドラッグストアや薬局における棚卸しでは、在庫の確認とともに商品の品質管理を忘れずに行いましょう。
商品1点1点に破損や状態不良がないか、一般用医薬品や食品であれば使用期限や消費期限が切れていないかなど細かなチェックが必要です。
商品管理を徹底することは、お店の利益だけでなくお客さまへの信用問題にもつながります。
ドラッグストアや薬局に勤務する従業員の中でも、登録販売者は人体に影響する市販薬を扱う重要な立場です。
徹底した品質管理を心がけましょう。
ドラッグストア(薬局)の棚卸しを効率よく行う方法
規模の大きなドラッグストアほど商品数は多く、棚卸しを行うのは大変です。
膨大な数の商品の棚卸しを効率よく進めるための方法を覚えておきましょう。
スケジュールや担当を明確にする
事前に綿密なスケジュールを立て、各スタッフの担当範囲を具体的に決めておくと、棚卸しを円滑に進められるでしょう。
登録販売者は、日頃の業務の特性上一般用医薬品を取り扱うことが多くあります。
普段から扱い慣れているこれらの商品棚のカウントをメインに担当することで、数え間違いを減らせる可能性があります。
在庫管理を店舗の責任者のみに任せていると、棚卸しは思うように進められません。
上の立場の人に頼りきりにせず、登録販売者を含めたスタッフ全員で意識を高めながら行うのがおすすめです。
また、長時間棚卸し作業をして疲れてくると、思わぬミスにつながる場合も。
こまめに休憩をとりながら行い、途中で休憩をとる際はどこまで数えたかわかるように目印を置くといった配慮も大切です。
棚卸し前は在庫を増やしすぎない
棚卸し前は過剰な発注に気をつけましょう。
在庫をたくさん持ちすぎると商品を数えるのに時間がかかり、ミスも出やすくなります。
バックヤードが在庫であふれないよう、適切な量にとどめておくことが重要です。
とはいえ在庫を絞りすぎると、お客さまの需要に応えられなくなってしまいます。
発注の際は人気商品は多めに、需要が少ない商品は少なめにするなど、バランスを見て慎重に絞り込みましょう。
陳列棚やストックスペースを整理整頓する
棚卸しに取りかかる前に売り場やストックスペースを整理しておくと、商品数を効率よく数えられます。
「5個」「1箱」などキリがよい数で並べ直しておくと、在庫数のチェックを進めやすくミスも減らせるでしょう。
規模の大きなドラッグストアの場合、扱う商品数も多いため似ているパッケージの商品が別の陳列棚に紛れ込んでしまうケースも。
売り場を整理する段階でそのような商品を見つけた場合は、正しい位置に戻したり付箋で印をつけたりすると、数え間違いを起こさずに済みます。
事前にしっかり準備することで、棚卸しは断然楽になります
棚卸しは、各ドラッグストアや薬局の正しい利益を算出し、適切な在庫数の確認や商品管理を行うための重要な業務です。
規模の大きい店舗ほど扱う商品数も多いため、棚卸し業務に時間がかかります。
しかし、事前にしっかりと計画を立て、売り場やストックスペースの整理をしたうえで進めれば、ミスを最小に減らし効率化を図れるでしょう。
棚卸しは、ドラッグストアや薬局で登録販売者として従事するうえで避けては通れない一大業務です。
ご紹介した内容を参考に、効率よく棚卸しを進めましょう。
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