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2021-06-30
0402通知とは?業務範囲が拡大した調剤薬局事務の仕事とあわせて解説
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2019年4月2日、今まで薬剤師がほぼ独占して行ってきた業務の一部を、一定の条件下で非薬剤師でも可能とする内容の文書が、厚生労働省から通知されました。これを受け、調剤薬局事務の業務内容が拡大し、市場の雇用ニーズは今後も大きく変化することが予測されます。 そこで今回は、「0402通知」の内容と拡大された調剤薬局事務の業務内容、そして、今後調剤薬局事務への就職・転職を目指す方が取得しておくべき資格についてまとめます。
公開日:2020年4月17日
更新日:2021年6月30日
0402通知「調剤業務のあり方について」とはどのようなものか?
まず、「0402通知」と呼ばれる厚生労働省通知について解説します。
0402通知とは
「0402通知」とは、2019年4月2日に、厚生労働省から都道府県などに通知された「調剤業務のあり方について」という文書のことです。
調剤業務については、医師が直接かかわる場合を除き、薬剤師以外が調剤することは薬剤師法により禁止されています。しかし、「調剤業務」の範囲が明確でなく、議論になっていました。
0402通知ではこの範囲を明確にしており、それまでグレーゾーンとされていた「ピッキング※1」及び「一包化※2した薬剤の数量確認」などについて、一定の要件を満たせば非薬剤師の補助を認めるとしました(詳細な業務範囲は次章で解説)。
※1、ピッキング:包装されたままの医薬品を薬棚から取り出し、そろえる行為
※2、一包化:朝食後・夕食後など服用するタイミングが同じ薬剤を、1回分ずつパックすること
0402通知により期待されること
0402通知にもとづき、調剤薬局事務員などが補助業務を行うと、薬剤師の業務負担は軽減されます。
その結果、薬剤師は調剤業務や服薬指導に集中し、医師へのフィードバックへ時間を割くことが可能になるため、調剤薬局だけではなく、医療全体の質の向上につながると考えられています。
また同時に、薬剤師を補助する調剤薬局事務員や調剤補助員の需要が高くなることが予測されます。
0402通知により調剤薬局における薬の調剤やピッキング、一包化等の業務範囲はどうなる?
次は、0402通知によって変化する薬剤師・調剤薬局事務の業務範囲について詳しく解説します。
薬剤師の業務範囲
非薬剤師による業務の補助が認められても、薬剤師の調剤業務がゼロになるわけではありません。
調剤業務
医師が発行した処方せんをもとにピッキングを行い、一包化した薬剤の数量を確認することは非薬剤師でもできるようになりましたが、軟膏剤・水剤・散剤などを直接計量・混合する行為は薬剤師にしか認められていません。
また、非薬剤師の業務についても、最終的には薬剤師が監査し、責任を負います。
疑義照会
疑義照会とは、薬剤師が処方せんの内容について、医師に問い合わせをすることです。疑義照会は、薬剤師法で定められた薬剤師の義務の一つです。
疑義照会は、処方内容にミスと思われる点や疑問点などがある場合・患者様から一包化の希望がある場合・患者様から薬の変更や追加などの要望がある場合などに行われます。
薬学的な知識や経験がないと判断できない内容も多いため、疑義照会を非薬剤師に任すことはできません。
対人業務
患者様に対する服薬指導などです。効能効果や副作用、飲み合わせなどの説明・確認、残薬の管理などの他、医師へのフィードバック業務なども含まれます。
薬歴管理
患者様の体質や副作用歴・アレルギー歴、服薬指導内容、併用薬の有無、疑義照会の内容、医師へのフィードバックなどを記録する作業です。
調剤に関する記録(一包化の要否・ジェネリック医薬品希望か否か、など)も、同時に記録することが多いです。
0402通知によって許可された内容を含む、調剤薬局事務員などの業務範囲
次は、調剤薬局事務員などの業務範囲です。
ピッキング業務
薬剤師の指示・管理の下、包装に入った状態の薬剤を、処方せんにもとづき取りそろえる行為は0402通知によって認められました。
しかし、軟膏剤・水剤・散剤などを直接計量・混合する行為は、薬剤師による途中の確認行為があったとしても、認められません。
納品された医薬品を棚などに入れる行為
医薬品卸から納品された医薬品を、調剤室内の棚や引き出し、冷蔵庫などに納める行為が許されています。
一包化された薬剤の数量チェック
薬剤師の指示・管理の下、一包化された薬剤の個数のチェックです。チェックするタイミングは、薬剤師による監査前とされています。
非薬剤師が確認するのは個数のみで、パックされた薬剤にミスがないかどうかを調べるのは薬剤師です。
お薬カレンダーなどに調剤済みの薬を入れる
薬剤を薬袋に入れることはできませんが、調剤済みの薬剤を患者さんのお薬カレンダー※などに入れることはできます。
※お薬カレンダー:処方された薬剤を患者さんが正しく飲めるように考案された便利グッズ。カレンダーにポケットが付いており、そのポケットに薬剤を入れ、飲み忘れや飲み間違いを防ぐ。
医薬品の郵送など
薬局に在庫がなく取り寄せた薬剤を、調剤後に患者様宅などに郵送などする行為は、非薬剤師でも可能です。
しかし、事前に薬剤師による服薬指導などが行われていることが条件とされています。
以上が、0402通知で明確に「非薬剤師が行っても差し支えない業務」とされたものです。なお、調剤薬局事務員には、他にも大切な業務があります。
レセプト業務
「レセプト」とは、組合健保や協会けんぽ、市区町村などの健康保険の保険者に請求する診療報酬明細書のことです。
そしてレセプト業務とは、保険者に診療報酬を請求する業務のことです。
患者様が調剤薬局で支払う医療費は、全医療費の一部にすぎません。患者様が負担しない部分の医療費は、レセプトにもとづき保険者から支払われるため、レセプト業務は調剤薬局の収入を支える大切な業務といえます。
レセプト業務の流れは下記に挙げた工程を1ヶ月サイクルで繰り返します。
1.患者様来局時にレセコン(レセプトコンピューター)に診療情報を入力
処方せんの内容の他、調剤の技術料に関する項目、お薬手帳など情報提供等に関する項目、一包化など特別な調剤を行ったことに関する項目などを入力します。
2. レセプトの点検・チェック
入力したレセプトの内容を、日々点検・チェックします。
3.1ヶ月分のレセプトの作成
月に一度、支払機関へ提出するレセプトデータを作成します。電子レセプトの場合、毎月5~10日が提出期限としているところが多いので、これに合わせて月末・月初に提出用のレセプトデータを作成します。
4.支払機関に提出
作成したレセプトデータを、支払機関に提出します。現在は、オンライン作業がほとんどです。
その他の業務
レセプト業務の他、患者様が提出する処方せんやお薬手帳の受け取り・薬局内商品の販売・医薬品卸が納品した薬剤の受け取りや伝票のチェックなども、調剤薬局事務員に任せている薬局が多いです。
調剤薬局事務員になるにはどうしたらいい?
最後に、0402通知により需要拡大が見込まれる調剤薬局事務員になる方法、そして取得が望ましい資格について解説します。
調剤薬局事務は未経験でもなれるのか
調剤薬局事務員になるためには、特別な資格は必要ありません。医療や調剤の経験・知識がまったくなくても、調剤薬局事務の仕事に就くことはできます。
しかし、調剤薬局事務は病院などに勤務する医療事務と比べて求人数が少なく、就職倍率の高い職業といわれています。そのため、何らかの資格があるほうが就職に有利でしょう。
なお、調剤事務の仕事は、患者様の健康に直結するものです。特に0402通知で業務範囲が拡大されたことから、「医療にかかわる仕事をしている」という自覚と責任を持って働くことが、今まで以上に強く求められます。
調剤薬局事務に就くために取得すると望ましい資格
調剤薬局事務として働く際に、あると望ましい資格をいくつか紹介します。
調剤事務実務士
特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会が年2回実施している資格試験です。薬学や保険制度に関する知識だけではなく、接遇マナーなども試験内容に含まれます。
受験資格は特にありませんが、教育指定校及び団体受験での申し込みしかできないので、実質的には専門学校や予備校などで講義を受けた方を対象とした試験といえます。合格率は61%程度です。
調剤事務管理士
技能認定振興協会(JSMA)主催の資格試験で、年6回受験のチャンスがあります。
受験資格は特にありません。独学でも合格を目指すことができるとされています。合格率は60%程度です。
調剤報酬請求事務専門士
一般社団法人専門士検定協会が年に2回実施している資格試験です。1~3級まであり、2級・3級はFAXを使う通信受験も可能です。
受験資格は特にありません。合格率は1級:20%程度、2級:40%程度、通信2級:30~40%程度、通信3級:50~60%程度で、1級は調剤薬局事務でもっとも難しい資格といわれています。
登録販売者
上記の調剤薬局事務の資格に加え、登録販売者の資格を取得すると、医薬品販売の専門職として活躍の場が広がります。
特に0402通知の影響で、医薬品の知識を有する登録販売者は調剤薬局事務への就職が有利に働くと考えられます。
調剤薬局の中には第2類・第3類医薬品の販売を行っている店舗もあり、調剤事務業務をメインとしながらも、これらの医薬品を購入するお客様への情報提供・相談対応ができる存在として、登録販売者の有資格者を積極的に採用している企業もあります。
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パソコンに関する資格
調剤薬局事務員は、レセプト情報を入力する作業が必須なので、パソコンに関する資格があると企業に好印象を与えることができます。
特別な資格を持っていなくてもパソコン業務が得意、という人はたくさんいますが、就職時にそれを客観的に示すことは難しいものです。資格があれば、スキルをさりげなくアピールすることができます。
まとめ
0402通知とは、非薬剤師に薬剤師の業務補助を認めるという内容の通知です。これにより、調剤薬局事務員の業務範囲が拡大し、雇用ニーズが高まると予測されています。
特に医薬品の知識を有する登録販売者は、今後調剤薬局でも活躍が期待されます。
調剤薬局事務の仕事は、ドラッグストアなどの業務とは異なるものですが、非常にやりがいのあるものです。
就職を有利にする登録販売者資格を取得して、より良い職場探しを目指しましょう。
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