著名人コラム
2022-03-18
【ドラッグストア運営】店舗方針を浸透させるには? 組織への適切な伝え方<登録販売者のマネジメント入門>
・Before
・After
ドラッグストアの店舗方針について、現場での実践や浸透を求められるのは珍しいことではありません。しかし実際に現場で店舗方針が理解され、全スタッフが積極的に取り組んでいるかというと、残念ながらその存在すら知らないケースが多いのが実態のようです。本記事では、店長が店舗方針をどのようにスタッフに伝えれば浸透させられるのか、そのポイントを解説します。
店舗方針とは?なぜ必要か?
店舗方針とは、会社の経営理念・年度計画を店舗での実践レベルに落とし込んだものです。
どのように経営理念を実践するか、どのように年度計画を達成するか、そのプロセスにおいて今年最も意識すべきことを示しています。
一方、店舗が掲げる「予算110%達成!」などは、店舗方針ではなく「重要目標達成指標」です。
重要目標達成指標は売上高や営業利益を示すものなので、店舗方針とは異なります。
客数、客単価、買い上げ点数、カテゴリー別売上、会員獲得数などを示す「重要業績評価指標」も同様です。
店舗方針は、店長がスタッフの指導育成において効果を発揮し、結果的にお客さまの満足度の向上や生産性向上につながります。
たとえば店舗方針を「お客さま満足 グループNo.1!」と掲げている場合、具体的には以下のような取り組みを実施します。
・お客さまからのご相談については親身に対応する
・取り扱いがない商品、欠品商品については入荷予定・代替商品の提案を行う
成果指標として、NPS(ネット・プロモーター・スコア)や覆面調査によるスコアを設定することで、経営理念や店舗方針にリンクさせられます。
その結果、重要業績評価指標にプラスの影響がもたらされるのです。
「売上予算達成!」といった店舗目標を掲げたところで、スタッフから大して共感は得られないでしょう。
それより現場で目の前にいるお客さまに喜ばれたり、成果に直結したりする行動に落とし込むほうがよっぽど効果的なのです。
店舗方針の浸透が難しい理由
これまで多くのチェーン店に関わってきた経験上、店舗方針どころか、経営理念や年度計画、予算に対して興味を示さないスタッフが多いことは否めません。
では、なぜ彼らは興味を示さないのでしょうか。原因はスタッフの意識の低さではありません。
「店舗方針の示し方」「店舗方針に則った実践が評価されない」「前年度の店舗方針の振り返りや結果報告がない」など、様々です。
しかし、最大の原因は「店長の影響力」にあります。
平たく言うと、尊敬していない店長から店舗方針を伝えたところで美辞麗句を並べ立てているようにしか聞こえないのです。
店長自身の行動が店舗方針からかけ離れている、スタッフとの人間関係や信頼関係が築けていないといった状態では、店舗方針を浸透させるのは難しいでしょう。
浸透の鍵は、「(店舗方針として)何を掲げたか」より「誰が掲げたのか」なのです。
店舗方針を浸透させるポイント
次に、前述の店舗方針の浸透が難しい理由を踏まえて、その対策を見ていきましょう。
年度計画・店舗方針の共有
せっかく掲げた店舗方針でも、スタッフが知らない、理解していないような状況では実践のしようがありません。
まずは店舗方針を具体的に説明する場を設けましょう。
期初に店舗ミーティングを開催し、店長自ら全スタッフに説明するとともに、なぜこのような店舗方針になったのか、その経緯と想いを伝えます。
この際、前年度の店舗方針の取り組み結果についても触れ、とくに貢献度の高いスタッフについては称賛したり、表彰したりすると良いでしょう。
具体的な行動に落とし込む
店舗方針を達成するために具体的に取り組むべきことを伝えて、全スタッフに役割を与えましょう。
その後は、進捗や成果について共有する機会を定期的に設けます。
毎月の店舗ミーティングでも良いですし、個人面談や朝礼などの機会を活用しても良いでしょう。
店舗方針を掲げっぱなしにしないのが重要です。
同時にバックルームに店舗方針を掲示したり、各スタッフの名札の下に貼り付けたりすることで、普段から目に触れる機会を増やしましょう。
スタッフと信頼関係を作る
店長の影響力には、「権限の強さ」ではなく「尊敬」や「信頼」が最も作用します。
現代において仕事の選択肢は広く、同業他社で働くのも難しくないため、店長という肩書だけでは、影響力・求心力は得られません。
日頃からスタッフとの信頼関係を構築しておくことが重要です。
尊敬・信頼される店長の共通点
では、どうすればスタッフから尊敬され、信頼されるのでしょうか。
以下の尊敬・信頼される店長の共通点を参考に、自分自身の言動を振り返ってみてください。
スタッフに対して敬意を払っている
そもそも尊敬は「されるもの」ではなく「するもの」です。
職位の高さ、年齢、経験などをもって偉そうな態度でスタッフに接することは、尊敬から最も遠いところにあります。
尊敬される店長は、自身もスタッフに対して敬意を払っています。
スタッフが働いてくれることに日々感謝し、その人がもつ能力を引き出して頼るという意識をもちましょう。
そうした心もちでいれば、自然と表情や態度、言葉遣いは丁寧になるものです。
まずは周囲の人に対して、丁寧に接するようにすることから始めましょう。
スタッフへの関心が高い
店舗には、色々な個性をもったスタッフが在籍しています。
すでに、性別や年齢、出身地や文化、思考についてギャップを感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、多様な人が居て、多様な習慣や思考があるのは当たり前。自分の考えを押し付けず、他人の価値観を理解する姿勢が大切です。
尊敬される店長は、スタッフが何に興味をもっているかを知り、関心を寄せています。
たとえばアニメが好きなスタッフがいれば、店長自らもアニメに興味をもち、アニメをフックにコミュニケーションを取るのです。
そこで話が盛り上がれば、心の距離が縮まります。
そうして少しずつ信頼関係を構築していくことが、協力的に行動してくれるスタッフを増やすことにつながるでしょう。
関心事についてコミュニケーションを取る際は、決して相手を否定しないように注意してください。
仕事ぶりが誠実かつ丁寧
目立つような特別な仕事ぶり、パフォーマンスを店長自身が出す必要はありません。
目の前の業務に誠実に取り組み、スタッフにその背中を見せてください。
店舗方針を率先して掲げている店長の仕事ぶりが雑で不誠実なものであれば、スタッフもその程度で良いと思うでしょう。
また、人は意外と他人の行動をしっかり見ているものです。
誰にも見られていないと思うときでも、丁寧かつ誠実に仕事に取り組むことが重要です。
適切な仕事の評価と支援を行っている
スタッフの仕事ぶりに目を配り、成長したことや誠実な対応などその人の良い点や能力についてしっかり褒めてあげてください。
まずは目安として、1日1回以上スタッフを褒める、もしくは励ましてみてください。
特別なことでなくとも良いのです。
日常の業務を丁寧にやってくれていること、上手にできなくても一生懸命取り組んでくれていること、時間通りに出勤してくれることなど、褒める理由はたくさんあります。
そして人事考課などで、その仕事ぶりを適切に評価するのも重要です。
またスタッフが困っているときは、相談にのったり、現場で指導したりしながら積極的に支援しましょう。
尊敬・信頼されるためには特別な能力は必要ありません。人と仕事に対して丁寧に接することが重要です。
店舗方針の浸透のためにはまず信頼関係の構築が必要
店舗方針の浸透は、店舗運営に欠かせない重要なことです。しかし、掲げるだけでは浸透はしません。
まずは全スタッフに共有し、理解を得るための機会を設けることが大切になります。
「全員が知っていて、理解している」状態をつくったうえで、行動を促しましょう。
店舗方針が浸透する最大のポイントは、店長の日々の仕事ぶり、スタッフとの関係づくりです。
改めて自分の言動を振り返り、課題を感じているのであれば言動を見直してみてはいかがでしょうか。
【執筆者プロフィール】
執筆者:鳥越恒一(とりごえ・こういち)さん
金融業、飲食業を経て2003年 、(株)ディー・アイ・コンサルタンツ入社。人財開発研究部の担当役員として部門を統括。2012年にDIC幹部育成コンサルティング(株)を設立し、社長に就任。上場企業からスタートアップ企業まで、飲食・小売・サービス業の店舗マネジメントの仕組みづくり、人財育成に特化したコンサルティングに従事。年間4000人もの現役店長から相談を受け、これまでに延べ5万人以上の店長の悩み、現場の課題に対して徹底的に取り組んでいる。
DIC幹部育成コンサルティング(株) 公式ホームページ
プライベートでは武道を通して「いじめに負けない、いじめない」をテーマに青少年の健全育成に尽力(空手道護心会 代表師範、AJTA埼玉県テコンドー協会副会長、テコンドー護心会 代表師範)公私ともに人材育成をテーマに日々精力的に活動している。
空手道護心会 公式ホームページ
著書に『できる店長は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『店長が必ずぶつかる「50の問題」を解決する本』(PHP研究所)、プロ店長 『最強の仕事術』(日本経済新聞出版社)、『ほめられたいときほど、誰かをほめよう(店長の心を励ます50の言葉)』(プレジデント社)、『実力店長に3ヶ月でなれる100STEPプログラム』 (同友館刊)など執筆。その他専門誌への連載多数。

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