著名人コラム
2022-07-01
【店舗運営のプロに聞く】ドラッグストアにおけるシフト管理とは?効率化と定着率アップの方法も解説<プロに学ぶ登録販売者のマネジメント論>
・Before
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営業時間が長かったり、定休日がなかったりすることも多いドラッグストアでは、交替制(シフト)勤務を行う職場がほとんどでしょう。「シフト管理」は、お店の業務効率に直結し、利益を左右する極めて重要な業務だと言えます。今回は、そんなシフト管理の方法をドラッグストアの特性や課題を踏まえておさらいします。そのうえで、作成したシフトを業務効率向上や人の定着、成長につなげるポイントを解説しているので、ぜひチェックして日々の業務に取り入れてみてください。
ドラッグストアのシフト管理における課題とは?
コンビニなどの小売店、飲食店、クリーニング店の受付といった、交替制勤務を行う多くの職場がシフト管理に悩みを抱えています。
なかでもドラッグストアには、他業種にはない難しさがあり、シフト管理に疲れ果てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、ドラッグストアのシフト管理で直面する具体的な課題をご紹介します。
シフト表の作成・管理に膨大な時間がかかる
シフト管理の第一歩は、シフト表の作成です。
しかしドラッグストアのシフト表の作成は、高度な専門性を必要とする「薬剤」分野と雑貨や食品などの「一般」分野が合わさった業態であるため複雑化しています。
シフト作成では、「その日・その時間帯に実施する業務ができる人」の配置が必要で、ただ頭数を揃えれば良いわけではありません。
ドラッグストアでは、さらに薬剤師や登録販売者など有資格者の勤務が常に必要であるため、シフト配置のパズルをなお一層難しくしています。
ときには薬剤師や登録販売者を専門家として勤務させつつ、たとえば「お菓子の品出し」などを担ってもらうこともあるでしょう。
給与計算が複雑になりがち
給与計算が複雑になりがちなのも、シフト勤務の特徴の一つです。
正社員の場合は残業時間や休日を、パート・アルバイトの場合は安定しない勤務日時を管理しつつ、締め日になれば速やかに給与計算しなければなりません。
公平なシフトを組みにくい
シフト調整が難しいのは、勤務日時における「お店側のニーズ」と「働く側のニーズ」が必ずしも合致しないからです。
正社員でも育児により短時間勤務中の人は、忙しくなる夕方以降の就業が難しい場合が多いでしょう。また、主婦のパートなら「できれば土日は休みたい」、学生なら「就活期間中は週1回勤務」など、状況に応じたシフトの調整が必要です。
こうしたニーズに応えるあまり、特定の人に無理な勤務が集中してしまい、その不公平感が退職につながる可能性も考えられます。
だからこそ、シフト管理をおろそかにしてはいけません。
シフト表の作成に問題がある場合、売上予算が達成できないだけでなく、スタッフの退職につながるケースがあることも認識しておきましょう。
効率的なシフト作成のコツや管理方法
では、どうすればシフト管理を円滑に行えるのでしょうか。
ここでは、シフト作成を効率的にする方法を簡単におさらいしておきましょう。
1.作業計画
まずは、お店で行う業務の洗い出しと実施計画の立案です。
たとえば土日の来店客が際立って多い場合や特別なセールの予定などがある場合、土日やセール中のレジ業務を多く計画し、その前段階で潤沢な品出し業務を計画しておく必要があります。
2.スタッフの希望の確認・調整
シフト計画を立てる前に、スタッフがどの日のどの時間帯に働きたいのか、働けるのかを確認しておく必要があります。
作業計画で出したお店側の業務ニーズと働く側の勤務希望が合わない場合、スタッフが希望していないことを承知のうえで「ここ、出勤してもらえないかなあ」と依頼するなどの調整が必要になります。
3.シフト計画
次に、「誰に」「どの日」「どの時間帯で」勤務してもらうかを具体的に割り当て、シフト表を作成する作業を行います。
このとき、「あの人はいつも希望のシフトで働いている」「それに比べて、私の希望は通らない」など、作成したシフトに対して働く人が不公平感を抱かないための工夫が必要です。
不公平感は、働く人の日々の不満を増大させます。これが続くと、スタッフの退職にもつながりかねません。
4.割当計画
シフト計画で同じ日時に働くことになった人に、作業計画で導き出した業務を割り振ります。
つまり、「誰に」「何を」「いつ」「どれだけ」行ってもらうかを計画するのが割当計画です。
割当計画をスムーズに行うためには、シフト計画の際に作業内容を具体的に考えながら進めることが必要です。
5.MH管理
MH管理の「MH(マン・アワー)」とは、仕事を一人で行った場合の作業時間を指します。
シフト計画は、作業計画に基づきMHを考慮しながら立てますが、大事なのはこのMHを「管理」することです。
予定に対して実際はどうだったのかを検証し、シフト管理のムリ・ムダ・ムラをなくしましょう。これらをExcelで管理している企業もまだあるでしょう。
しかし、複数の店舗がある場合、シフト管理システムの導入は業務効率化を進める手段の一つです。システムを導入することで、毎月の賃金計算や労働時間管理も行いやすくなるでしょう。

シフト管理で定着率をアップする方法
どんなにうまくシフトを組んでいても、突発的なお休みや退職者が出ることもあるでしょう。
こうしたときにスムーズに対応しつつ、スタッフの定着率も向上させたい場合、どのような工夫をすれば良いのでしょうか?
スタッフと積極的にコミュニケーションをとる
シフト管理が難しいのは、「人」が相手だからです。
一方、人が相手だからこそ、誰かの突発的な休みに対して、別のスタッフが快く代わりに勤務してくれるケースも起こり得ます。
多くの場合、人の行動は感情に左右されます。今も昔も、よくある退職理由の一つが「人間関係」です。「働き続けたい」と思うか否かも、職場の人間関係が大きく影響しています。
日頃から店長やマネージャーが一人ひとりのスタッフとしっかりコミュニケーションを取り、信頼関係や帰属意識の醸成に努めることが大切です。
そうすればスタッフも、シフト調整など職場の課題に対して、柔軟に対処してくれるようになるでしょう。
あいさつと声がけ、面談の実施
スタッフとのコミュニケーションを難しく考えることはありません。
職場で会ったら率先して「おはよう」「お疲れさま」と挨拶をするだけでも、相手が受ける印象は変わります。
また、一人ひとりと面談を実施するのも有効です。
面談の場が安心・安全なものになっていれば、辞める前に相談してもらえたり、「子どもが成長して土日も働ける状況になった」「実は扶養を外れて働くことも考えている」など稼働条件の変更も前向きに伝えてくれたりするでしょう。
スタッフ同士の人間関係に意識を向ける
人は人により動機づけられる生き物です。人と活発に交流できたり、人に認められたりしたら純粋にうれしいものです。
店長やマネージャーだけに限らず、職場の仲間たちと親しくなり言葉を交わすことが増えると、職場に行くのが楽しくなります。
職場での良好な関係性や帰属意識が醸成されることで、代理出勤を申し出てくれる人が増えたり、結果的に退職も減ってきたりするでしょう。
パートやアルバイトの方には仕事の意味や将来的な価値を伝える
シフト勤務をする職場では、スタッフが成長することでシフトの管理がしやすくなります。
一方、パートやアルバイトは、短時間・短期間・部分的な仕事の担い手であることから、時間の切り売り感覚で働いている人も一定数おり、成長意欲に欠けると感じられる場合もあるかもしれません。
そんなときは、店長やマネージャーが、彼らに仕事の意義を伝えましょう。
たとえば「パート・アルバイトの仕事が、どのように社会貢献につながっているのか?」「今の担当業務が将来的にキャリアの面でどう役立つ可能性があるのか?」などです。
仕事はお金を稼ぐ手段ですが、それ以外の大切なものが身につく側面もあることを伝え、自己成長を促しましょう。
円滑なシフト管理のカギは「人」にあり
ドラッグストアなどの交替制勤務を行う職場において、シフト管理は業務効率化の肝です。また、お店の利益を左右する大切な仕事です。
しかし、どんなに完璧な計画を立てていたとしても、思い通りに進まないことも多いでしょう。
そうしたときに力になってくれるのは、ほかでもない一緒に働くスタッフたちです。
日頃からの感謝を忘れず、上手にコミュニケーションをとって円滑なシフト管理ができるようにして行きましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:平田未緒(ひらた・みお)さん
株式会社働きかた研究所 代表取締役 1996年よりシンクタンクにて、企業の人事管理と働く人(正社員、パート・アルバイト)の就業意識を取材し続ける。同所所長を経て2013年に独立。大量の取材経験、自分自身のマネジメント経験から、好業績な組織の共通点は「1.目的が共有され、2.思い・考え・情報の伝え合いがあり、3.協力し合っていて、4.自己成長が感じられ、5.労働環境が良い」であることを確信。これら5つの観点から、企業に内在する課題を発見し、エンゲージメント向上につなげている。事業目的は「誰もが働くことで成長と貢献の喜びを感じ合える社会を創る」。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方』(PHP研究所)など9冊があるほか、中央大学大学院(MBA)客員教授、厚生労働省「社会保障審議会」委員など経験多数。新聞・専門誌等での記事掲載も多い。システム・コーチ(CRR Global認定ORSCC)。国家資格キャリアコンサルタント。

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