著名人コラム
2022-09-30
高血圧の薬を飲んでいる方への市販薬のすすめ方がわかりません。<鈴木伸悟先生のお悩み相談室!第9回>
・Before
・After
薬の成分や飲み合わせ、接客、同僚との人間関係など、たくさんの悩みや不安を抱えながらも、お客さまに最適な提案ができるよう奮闘する登録販売者。 そんな登録販売者のお悩みに、SNSや講演会、業界紙などを中心にOTC医薬品の情報発信を行う薬剤師の鈴木伸悟先生が答えます! 第9回は、高血圧の薬を服用されているお客さまへの対応についてです。日本高血圧学会の調査では、2014年の高血圧治療者数は2,400万人と判明。注意が必要なOTC医薬品もあわせて教えていただきました。
高血圧の薬を服用している方からの相談は受診勧奨を前提に
新型コロナウイルス感染症の拡大により、「発熱外来の予約がとれない」「感染を防ぐために受診を控えたい」など、これまでにない理由で市販薬によるセルフケアを希望されるお客さまの相談を受けた医薬品登録販売者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのお客さまのなかには、持病がある方もいらっしゃると思います。
たとえば、「高血圧なのですが、この市販薬を飲んでも大丈夫ですか?」などの相談を受けることもあるでしょう。
この場合、大前提として、高血圧など持病がある方には主治医への相談を優先するように促すべきだと考えます。
一口に「高血圧」と言っても、軽症の方から複数の医薬品を服用するような重症の方までさまざまです。
そうした方々へのOTC医薬品の販売は、慎重になるべきでしょう。
とくに体内に直接取り入れる内服薬は、注意が必要です。
また外用薬のなかにも、ボルタレンEXテープのように高血圧の診断を受けた人への使用が「相談すること」となっているものなどがあるため、注意しなくてはなりません。
薬剤師がいない店舗で管理者を務める医薬品登録販売者の方などは、自身での対応や判断が困難であれば、無理をせずに受診勧奨することも大切な役割です。
OTC医薬品の購入を強く希望される高血圧のお客さまへの対応は?
一方で、お客さまが購入を強く希望する場合には、次の受診までのつなぎとして比較的安全に短期服用できるOTC医薬品について慎重に情報提供できることも大切でしょう。
その際はまず、持病で服用中の医薬品とOTC医薬品の飲み合わせに関して添付文書などで確認します。
そのうえで、さらに薬剤師と連携するのがベターでしょう。
OTC医薬品の商品知識は、医薬品登録販売者の腕の見せ所です。
リスクがより少ない商品の提案は、連携する薬剤師にとって助かるケースが多いと思います。
高血圧の方に提案しやすい商品としては、高血圧に関しての注意事項がなく、さらに服用中の医薬品との併用が添付文書などで問題ないと判断できるものです。
高血圧の人が注意すべき医薬品の成分をチェック!
注意すべきカテゴリとしては、総合感冒薬、鼻炎薬、鎮咳去痰薬などでしょう。
これらに含まれることがある、鎮咳を目的とした「dl−メチルエフェドリン塩酸塩」は高血圧の診断を受けた人に対しては「相談すること」となっています。
また、鼻詰まりの解消を目的として配合される「塩酸プソイドエフェドリン」について、高血圧の診断を受けた人の服用は「してはいけないこと」なので注意しましょう。
エフェドリン類は交感神経刺激作用により、血圧を上昇させ、心拍数を増加させる作用があるため、高血圧を悪化させる恐れがあります。
こうした理由から、たとえばお客さまが総合感冒薬をお求めであっても症状が「熱だけ」「咳だけ」といった場合には、高血圧に関して注意がなく、配合成分がなるべくシンプルな解熱鎮痛薬(例:アセトアミノフェン錠「クニヒロ」など)や鎮咳薬(例:メジコンせき止め錠Proなど)を提案するのが望ましいでしょう。
不要な成分を服用することもなく、さらに飲み合わせの確認もしやすくなります。

高血圧の方に総合感冒薬をおすすめしても良い?
「風邪の症状が複数あり、総合感冒薬が良い」という場合には、エフェドリン類などが含まれておらず、高血圧に関して注意がない総合感冒薬(例:ストナファミリーやパブロン50錠など)を候補にあげると良いでしょう。
また総合感冒薬や解熱鎮痛薬に含まれるイブプロフェンにも注意が必要です。
たとえば、イブプロフェンの1日最大用量が450mgのイブA錠などは高血圧に関しての注意事項はなく、使用が検討できます。
一方、バファリンプレミアムDX(イブプロフェンの1日最大用量480mg)やリングルアイビーα200(イブプロフェンの1日最大用量600mg)などイブプロフェンの1日最大用量が高用量の商品の服用は、高血圧で治療中の方が「してはいけないこと」なので使用できません。
イブプロフェンは、プロスタグランジン合成阻害作用による水・ナトリウム貯留傾向があるため、血圧をさらに上昇させるおそれがあります。
このように同じ成分でも配合量によって注意が変わる場合があるので気をつけましょう。
【回答者プロフィール】
回答者:鈴木 伸悟(すずき・しんご)さん
有限会社ウインファーマ セルフメディケーション推進室室長。
薬剤師および登録販売者へ適切なOTC医薬品のすすめ方や売り場作りなどの教育に携わる。
SNSでは、大手ドラッグストアおよび調剤薬局での自身の勤務経験をもとにOTC医薬品の役立つ情報発信を行い、全国各地での講演会やコラムの連載など多方面に活躍している。
著書「薬局OTC販売マニュアル〜臨床知識から商品選びまで分かる〜 日経BP社」

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