著名人コラム
2022-10-21
【店舗運営のプロに聞く】ドラッグストア店長のキャリアプランを考える<プロに学ぶ登録販売者のマネジメント論>
・Before
・After
ドラッグストアの店長のなかには、漠然と今後のキャリアについて不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうした状況下で仕事をしていると、目の前の作業に集中できなくなったり、会社に対してネガティブな感情をもってモチベーションが下がったりと、良いことはありません。不安を払拭し、将来のありたい自分に向かってキャリアを積んでいくのが重要です。本記事では、ドラッグストアの店長の先にあるキャリアや必要な能力・準備、キャリアプランの作り方について解説します。
ドラッグストア店長からのキャリアアップとは?
ドラッグストアで働くと、まず一般社員から始まり、リーダーや副店長、店長と昇進するケースが多いでしょう。
その後のドラッグストア店長からのキャリアアップでは、主に次の5つのルートが考えられます。
(1)エリアマネージャーに昇進する
複数店舗を管理する業務です。
店長経験がダイレクトに活かせるため、キャリアアップとしては最も目指しやすいでしょう。
(2)本部職へ転向する
-人事・採用
現場出身のリクルーターは、説明に説得力が出やすいため活躍が期待できます。
-バイヤー
店舗で売れる商品を肌で感じてきた店長経験は、バイヤー職でも活かせます。
そのほか、店舗勤務のなかでできたメーカー担当者とのつながりなども役立つでしょう。
上記の2職種以外にも、自社商品(プライベートブランド)の開発に関わる部署や店舗運営のサポート、新規出店などの企画立案を行う部署などがあります。
(3)独立する
店舗のマネジメント経験を活かし、小規模な店舗ビジネスを始めるのも選択肢の一つとして検討できます。
起業はリスクが高いぶん、やりがいや見返りも大きいと言えるでしょう。
(4)同業種へ転職する
同業他社への転職では、店長経験が高く評価されます。そのため、職位や待遇面の向上が期待できるでしょう。
ただし、期待値が高いぶん、早い段階で成果を残すことが求められます。
店長時代にどんな成果を残してきたか、その達成までのスキームなどを整理して再現性を高めておくと良いでしょう。
(5)異業種へ転職する
異業種であっても、店舗マネジメントの経験は十分に活かせます。
小売業だけでなく、飲食業やサービス業などでの店舗展開を行う企業でも、異業種のマネジメント経験やスキルは高く評価されるでしょう。
転職先の業界特性を理解して、これまでの経験を実務にあてはめて考えるのがポイントになります。
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キャリアアップで求められる職種ごとの役割や能力とは?
では、転職以外で叶えられるキャリアアップついて、それぞれの職種や働き方別に仕事内容や求められる能力を見ていきましょう。
どんなスキルを習得しておくべきかについても解説します。
(1)エリアマネージャー
エリアマネージャーは複数店舗の管理監督が仕事です。
マネジメント領域も広く、予算や管理する人員は店長と比較して数倍になります。
当然、求められる成果やスキルも高まるでしょう。
●エリアマネージャーの業務
管理対象は、エリアの利益、売上、顧客満足、教育、人事、リスク管理などです。
企業によっても異なりますが、主なものとしては下記などがあげられます。
- 利益関連
各店舗の収支管理(異常値の発見と改善)、粗利コントロール(廃棄、マージンミックス)、人件費管理、広告宣伝費の調整、そのほか変動費の管理 - 売上関連
マーケティング戦略立案(顧客分析、商圏調査、競合店調査を踏まえた営業戦略)、VMD、売上分析(客数・客単価・買い上げ点数、ABC分析、バスケット分析、RFM分析、曜日別・時間帯売上...etc)、セールなどのイベント企画 - 顧客満足関連
店舗チェック(売り場、接客、店内環境)、お客さまの声を集める(アンケート、インタビューなど)、重大クレーム対応、上得意客対応など - 教育関連
社員の育成計画、次期店長候補のOJT、エリアミーティング、集合研修、新入社員のオリエンテーション、教育ツール(教材、マニュアル関連)の作成・整備、評価・面談など - 人事関連
各店舗の適正要員計画の作成、エリアの採用計画、充足率の算出と人員配置・異動、店頭募集、離職者に対する復職のサポート、紹介制度の推進、離職率の算出と離職理由の把握・改善、店内コミュニケーションの機会創造など - リスク管理系
- 店内事故:落下、転倒、衝突などの危険箇所の把握と改善。老朽設備の入れ替え提案
- 人災:ハラスメントの監視と未然防止、労基法・就業規則の遵守チェック、スタッフ間のトラブル防止(人間関係の不和、社内恋愛、金銭、勧誘など)
- 災害:発生時のフロー整備と周知・教育
- 資産:監査(お金、在庫、個人情報など)、在庫・備品の管理(実棚)など
エリアマネージャーとして多岐におよぶ業務を円滑に進めるためには、以下のようなさまざまな知識やスキルが求められるのでチェックしておきましょう。
- 基礎会計
- コーチング
- マーケティング
- 心理学
- コミュニケーション
(2)本部職(人事・採用担当)
人事のなかでも「採用」に関しては、店長経験者の言葉が若者に響いて入社につながるケースもあります。
若者の価値観を理解して共感できるよう、若いうちにチャレンジすべきキャリアだと言えます。
●人事・採用の業務
携わる業務としては、次のようなものがあげられます。
人事・採用では、以下のようなスキルが必要とされるでしょう。
- 情報収集
- ネットワーク作り
- コミュニケーション
- プレゼンテーション
(3)独立
ドラッグストアでの経験を生かして、店舗ビジネスなどで独立することも選択肢の一つです。
ただし独立には、相当な覚悟とリスクを想定した計画、そして十分な資金が必要です。
中途半端な気持ちでチャレンジすべきではありません。
長期的な目線で考えて、綿密な計画を立てたうえで独立することをおすすめします。
独立のためには次のような知識やスキルを習得しておくと良いでしょう。
- 事業計画
- 資金調達
- 会計
- 関連法令
- 労務管理
- MD(マーチャンダイジング)
- 人脈構築
- コミュニケーション
- ロジカルシンキング
- プレゼンテーション
- 心理学
- マーケティング
キャリアアップのための転職で知っておくべきポイントとは?
(1)同業種への転職
同業他社への転職によるキャリアアップは、比較的しやすい傾向にあると言えます。
ただし、転職前に店長として働いていても、転職後はまず店舗の一般スタッフとして勤務することになるので注意が必要です。
その後に店長やそれ以上のポストにつけるかは、入社後の店舗での実績によって決まってくるでしょう。
転職をキャリアアップのフックにするには、店長時代の成功事例や自分の強みをしっかりと転職後に再現できるようにしておくことが重要です。
(2)異業種への転職
異業種への転職でも、同業種と押さえるべきポイントは同じです。
面接時には、転職先の業界の特性を把握したうえで、ドラッグストアでの店長経験をどのように活かすか、イメージを具体的に伝える必要があります。
そのためには、事前に転職を希望する起業の店舗などを視察し、面接時や入社後に改善提案ができると良いでしょう。
また、業種にかかわらず次のようなスキルをアピールできると評価されやすいでしょう。
- 業界における利益改善、業務改善(効率化)
- 売上向上の具体的なスキーム
- プレゼンテーション
- コミュニケーション
- ロジカルシンキング

具体的なキャリアプランの立て方とポイント
続いて、キャリアプランの必要性と具体的な立て方について見ていきましょう。
「将来どんなキャリアを目指すのか?」「なぜ目指すのか?」「本当にやりたいことなのか?」など、改めて自分の心の声に耳を傾けてみてください。
●キャリアプランニングの必要性
前述の通り、ぼんやりとした将来への不安に対して、具体的な目標や計画があればそのストレスは軽減されます。
自分の目標に近づいているという実感が、モチベーションの源泉になるのです。
●キャリアプランの立て方
まずは、理想とする私生活や仕事で達成したいこと(お金をたくさん稼ぎたい、社会貢献をしたいなど)について考えてみましょう。
私生活では、「何歳でどんなことが必要になるか」「どんな人生を送りたいか」を1年後、3年後、5年後、10年後、20年後、30年後などと期間を分けて考えてみます。
同時期に、仕事では収入、職種、職位、働き方がどのようになっているべきでしょうか。
その理想の姿から、今後どんなスキルや知識を習得し、どのように活かせば良いかが見えてきます。
キャリアに悩んだら自分のありたい姿を再確認して
店長を務める方々が、日々のなかで漠然とした将来への不安に襲われるのは、「今どこに向かって何をすべきかが見えなくなっているから」だと思います。
目標を立て、少しずつでも着実に達成に向けて取り組んでいれば、不安は軽減されていくでしょう。
もっている時間はみな平等です。その時間で取り組んだ勉強や交流、運動など、すべてが糧になります。
店長業務をこなすなかで自身のキャリアへの不安が募ったら、今何に力を入れるべきかを改めて考え、行動してみましょう。
その際は、自分の可能性を否定せず、ポジティブにキャリアプランを考えることが重要です。
【執筆者プロフィール】
執筆者:鳥越恒一(とりごえ・こういち)さん
金融業、飲食業を経て2003年、(株)ディー・アイ・コンサルタンツ入社。人財開発研究部の担当役員として部門を統括。2012年にDIC幹部育成コンサルティング(株)を設立し、社長に就任。上場企業からスタートアップ企業まで、飲食・小売・サービス業の店舗マネジメントの仕組みづくり、人財育成に特化したコンサルティングに従事。年間4000人もの現役店長から相談を受け、これまでに延べ5万人以上の店長の悩み、現場の課題に対して徹底的に取り組んでいる。
プライベートでは武道を通して「いじめに負けない、いじめない」をテーマに青少年の健全育成に尽力(空手道護心会 代表師範、AJTA埼玉県テコンドー協会副会長、テコンドー護心会 代表師範)公私ともに人材育成をテーマに日々精力的に活動している。
著書に『できる店長は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『店長が必ずぶつかる「50の問題」を解決する本』(PHP研究所)、プロ店長 『最強の仕事術』(日本経済新聞出版社)、『ほめられたいときほど、誰かをほめよう(店長の心を励ます50の言葉)』(プレジデント社)、『実力店長に3ヶ月でなれる100STEPプログラム』 (同友館刊)など執筆。その他専門誌への連載多数。

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