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2024-10-18

【店舗の防災マニュアル】地震などの災害に備える!ドラッグストア店員が知っておくべき対策やお客さまへの対応

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【店舗の防災マニュアル】地震などの災害に備える!ドラッグストア店員が知っておくべき対策やお客さまへの対応

近年、地震や大雨、猛暑などの災害につながる現象が頻発しています。物理学者・寺田寅彦先生の「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉に反し、最近は忘れる暇もなく次々とやってきている状況です。言うまでもなく、大災害は「いつ」「どこに」やってくるかわかりませんが、大雨や台風などの気象現象に由来する災害は、予測可能で事前に備えられるものもあります。本記事では、防災士の目線から、ドラッグストアにおける災害前・災害時の効果的な対策について解説いただきます。【執筆者:日本防災士会防災教育推進委員会】

目次

  1. 災害時に店舗で想定される被害とは?
  2. ドラッグストアで行っておくべき災害対策
  3. ドラッグストアで災害が起きたときの対応
  4. 災害の備えは「知る」ことから

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災害時に店舗で想定される被害とは?

災害時に店舗で想定される被害とは?

店舗の立地などによって、想定される被害は異なります。

ドラッグストアなども含めた多くの店舗において、次の3点は共通して発生しうる災害だと言えるでしょう。

  • 地震
  • 台風・豪雨
  • 停電・断水

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

地震

地震による被害は、以下の2つに分けられます。

  • 揺れによる店舗そのものへの被害
  • 陳列している商品への被害

 

建物が損傷するなどの被害があった場合には、お客さま・従業員ともに速やかに避難する必要があります。

商品への被害として考えられるのは陳列棚からの落下、破損です。

とくにビンなどのガラス商品は、落下により割れてしまう恐れがあります。

店内に人がいれば、落下物や破損物によりケガをするかもしれません。

とくにドラッグストアでは、医薬品類の落下などにより二次被害が起こる恐れもあるため、注意が必要です。

店舗内で起こりうるリスク
  • 非常口が障害物でふさがれ、避難が妨げられる
  • ガラスが割れたり、照明器具が落ちてきたりする
  • ビンなどが落下により割れ、床に散乱する
  • お客さまや従業員が落下物などでけがをしてしまう
  • お客さまや従業員が倒れた什器などにはさまれて、身動きができなくなる
  • 非常口にお客さまが殺到して混乱が生じる
  • 店舗内や近隣の建物で火災が発生する

 

▼参考サイトはコチラ
地震時初動対応マニュアル(東京商工会議所)

 

台風・豪雨

近年、台風・豪雨などの「風水害」の発生頻度は高まっており、「都市型水害」と呼ばれる洪水も増加傾向にあると言われています。

地下および1階フロアの店舗は、浸水害の発生が懸念されるでしょう。

もし店舗が浸水すると、什器、冷蔵設備などへの被害に加えて、商品が濡れて販売できなくなります。

 

停電・断水

場所を問わず、自然災害や、人為的な火災、インフラの老朽化などによって起こる可能性があるのが、停電と断水です。

生活に密接に関わる電気と水、この2つがストップしてしまうと、照明器具や冷蔵設備、トイレなどが使えなくなる可能性があります。

上記3点のほか、店舗に直接的な被害がない場合でも、取引先や仕入れ先、店舗スタッフの被災などによって供給に影響を受ける可能性があります。

 

 

ドラッグストアで行っておくべき災害対策

ドラッグストアで行っておくべき災害対策

いずれの災害も、事前の備えによって被害を軽減できます。

次では、防災のための情報収集と具体策についてみていきましょう。

 

事前の対策1:防災のための情報収集

適切な対策をするためには、店舗の災害リスクを正しく知る必要があります。

その情報源の一つとして、「ハザードマップ」があります。

ハザードマップとは、被災が想定される区域や避難場所・避難経路といった防災関係施設の位置などを示した地図です。

自治体から配布される資料や下記サイトなどで事前に目を通し、緊急時の危険区域や避難する場所を確認しておきましょう。

ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院 )

 

日頃から店舗周辺の状況を観察しておくことも大事です。

大型店舗や駅内にあるのか、郊外型店舗なのかなど、条件により対策は異なります。

おすすめなのが、店内を防災の視点で見て歩く「防災店内歩き」です。

複数人で店内を歩きながら危険箇所を指摘し、改善方法の検討などに取り組みます。

複数人で取り組むことがポイントです。

多くの意見が出ることで、気づきが共有でき、一人ひとりの防災意識も向上します。

この際、避難経路や火災発生時に使用する消火器の位置も入念に確認しておきましょう。

非常口の点検なども定期的に行うのがおすすめです。

 

事前の対策2:災害時の役割分担

店舗で災害が起きた場合、すぐに対応して被害を最小限に食い止めることが重要です。

全体の指揮、お客さまの誘導、火災が起きたときの消火活動など、すぐ動けるように必要な行動と担当者を決めておきましょう。

災害時の役割分担リスト(一例)
  • 責任者
  • お客さまの避難誘導
  • 救護や応急手当て
  • 初期消火
  • 情報収集、発信
  • 通報

 

▼参考サイトはコチラ
地震時初動対応マニュアル(東京商工会議所)

 

事前の対策3:地震への備え

地震のリスクは、前述の通り次の2点です。

  • 揺れによる店舗そのものへの被害
  • 陳列している商品への被害

 

店舗の倒壊といった建造物被害は、耐震補強などが適切に行われていれば軽く済みます。

店舗管理者は耐震基準と建築年を確認しておく必要があります。

現在は「2000年(平成12年)」の耐震基準が目安となりますので、建築年が2000年より前の場合には、耐震補強などがなされているか、確認しておきましょう。

商品の対策に関しては、陳列棚の耐震化と陳列方法の工夫が考えられます。

什器の転倒対策は、お客さまや店舗スタッフの安全確保につながります。

陳列棚は、アジャスターなどの免震効果のある製品が市販されているので、導入を検討しましょう。

商品陳列の工夫として、ガラス製のビンなど割れやすい商品や重い商品は低い位置に置くことで、災害時の落下や破損・散乱を減らせます。

 

事前の対策4:台風・豪雨への備え

風水害でもっとも懸念されるのは浸水です。

店舗が浸水すると、設備・什器・商品にさまざまな被害が発生します。

そのため、まずは浸水を防ぐことが第一の対策です。

店舗の立地により、対策は異なります。

浸水対策として土嚢を使用するケースがありますが、営業中の店舗で土嚢を置いて対策するのは現実的ではありません。

最近では、水嚢止水板などの比較的短時間で設置できる製品も販売されています。

しかし、これらが効果を発揮するのは浸水の影響が小さい場合です。

浸水が予測される場合は無理をせず、営業を取りやめて避難することを第一に考えたいものです。

 

事前の対策5:停電・断水への備え

停電・断水時の備えとして、照明がつかない場合に使える非常用のライトや、トイレが使えない場合の簡易トイレを準備しておけると安心です。

もし可能であれば、ポータブル電源非常用電源キットなどを備えておけるとよいでしょう。

停電への備えとして、事例を一つ紹介します。

2018年9月の北海道胆振東部地震では、北海道全域が停電となり、最長で3日間続きました。

いまや生活に欠かせない電力が、長時間にわたって停まればあらゆる機能が影響を受けます。

医療機関などでは自家発電機を備えているところもありますが、一般的な店舗では難しいでしょう。

そんななか、この北海道ブラックアウトが起きた際に、道内店舗の95%にあたる1,050店舗が営業を継続したコンビニエンスストアがあるのをご存じでしょうか。

これらのコンビニエンスストアでは、停電時に自家用車のバッテリーを利用できる「非常用電源キット」を全店に配備していたため、緊急時でも営業ができたのです。

現在ではハイブリッドカーで電源供給できるモデルが販売されており、対策の一つとして考えられるほか、業務用のポータブル電源も販売されています。

備えの一つとして検討してみてはいかがでしょう。

 

事前の対策6:防災マニュアルを作成する

それぞれの災害時の対応をまとめた防災マニュアルを店舗で整えておくのがおすすめです。

マニュアルには「誰が」「いつ」「どのような行動をとるか」が明確にわかることを意識し、下記のような内容を盛り込みましょう。

  • 災害時の役割分担
  • ハザードマップ
  • 避難ルート、避難場所
  • 災害時の初動対応の流れ
  • 緊急連絡先

 

スマートフォンやパソコンが使えない状況も想定し、紙でマニュアルを準備しておけると良いでしょう。

マニュアルで定めた内容を基に防災訓練(避難訓練、通報訓練、応急手当て・救命講習など)を実施し、スタッフ一人ひとりが実際に災害時の対応をイメージしておけると、いざというときに落ち着いて行動できます。

また、取引先や仕入れ先に影響があった場合の対応についても事前に検討し、対策を記入しておけると安心です。

会社ですでに防災マニュアルが用意されている場合は、そちらを事前に熟読し、災害時にそれに準じた行動をとれるようにしておきましょう。

 

事前の対策7:防災グッズを整えておく

いざというときのために、店舗でも下記のような防災グッズを備えておけるとよいでしょう。

  • ヘルメット、軍手
  • 医薬品(絆創膏や包帯を含む)、マスク、生理用品
  • 水、食料品
  • 毛布
  • 簡易トイレ(携帯トイレ、ポータブルトイレ)
  • ラジオ
  • 懐中電灯、ヘッドライト
  • 発電機や蓄電池、乾電池
  • 土嚢・水嚢袋
  • ブルーシート など

 

災害時は店舗スタッフやお客さまが帰宅できず、店舗に宿泊しなくてはならないケースも考えられます。

また、建物の倒壊でドアが開かなくなった場合や、ガレキの下敷きになった人の救助に使えるバールノコギリなども備えておけると良いでしょう。

これらの防災用品は年に一度は期間を決めて点検し、更新することが大切です。

▼関連記事はこちら
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ドラッグストアで災害が起きたときの対応

ドラッグストアで災害が起きたときの対応

では災害がまさに起こったとき、登録販売者をはじめとする店舗スタッフは、どのように対応し、行動するべきでしょうか。

災害ごとに見ていきましょう。

 

地震

営業中の店舗で突然発生する可能性がある災害は、地震です。

手元にスマートフォンや防災ラジオなどの設備がある場合には、緊急地震速報の通知が来る可能性が高いでしょう。

その際は店内放送で、「まもなく大きな地震がきます。」「近くの柱、壁ぎわで身の安全を守ってください。」「落ち着いて係員の指示に従ってください。」といった案内をします。

地震の揺れが発生したら、まずは自分とお客さまの命を守ることが最優先です。

揺れが起きたときに懸念されるのは、落下物や陳列棚などの転倒です。

転倒への対策と注意をしたうえで、丈夫な机の下に身を隠す、転倒物のない場所で頭部を保護してしゃがむ、などが考えられる行動です。

お客さまが動けない場合には、落ち着いた声で「大丈夫ですか?」「一緒に避難しましょう。」など声かけをして誘導します。

東京商工会議所が作成した店舗向けの『地震時初動対応マニュアル』では、初動対応のフローを下記のようにまとめています。

店舗で大地震が起きた際の初動対応(参考)
  1. 緊急地震速報が来たらお客さまを誘導して店内の安全な場所へ移動
  2. カバンや買い物かごなどで落下物から頭を守るよう声かけ
  3. 慌てて外に飛び出そうとする人がいれば危険なため制止する
  4. 店内放送ができれば指示や誘導を行う
  5. ドアを開けて出口を確保する
  6. 揺れが収まったら初期対応の3原則にのっとり行動
     ◎初期対応の3原則= 通報 → 消火 → 避難
  7. ラジオやスマートフォンなどで情報収集し、避難場所を判断する
  8. お客さま・店舗スタッフの安否確認
  9. けが人やドアに挟まれている人がいれば応急手当て・救出を行う
  10. 店舗や設備に問題ないか確認し、店内で待機するか避難するか判断のうえ、誘導を行う

 

最近では外国からのお客さまも増えているので、いざというときに行動を促せるよう、英語でフレーズを覚えておくとよいでしょう。

もしくは、「やさしい日本語」を用いることが推奨されています。

やさしい日本語とは、相手に配慮したわかりやすい日本語のことです。

▼使用例

「危険」=「危ない」

「余震」=「後で 来る 地震」

「避難所」=「みんなが にげる ところ」

 

防災用語は日本語を母国語としない人たちには難しく、伝わりにくいため、平易な言葉に置き換えて伝える工夫が必要です。

揺れが落ち着いたら、店舗の状況把握、必要に応じてお客さまを避難するよう誘導します。

▼参考サイトはコチラ
東京商工会議所『「地震だ!地震時初動対応マニュアル」の発行について』
一般社団法人 日本ショッピングセンター協会『ショッピングセンターにおける緊急地震速報利活用のガイドライン』
出入国在留管理庁・文化庁『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン(2020年8月)』
弘前大学『「やさしい日本語」が外国人被災者の命を救います』

 

台風・豪雨

大規模な風水害は、通常、突然発生することはありません。

予報などから情報収集をして、適切に対応できるよう準備しましょう。

一方、局地的な大雨や急な天候の変化などもないわけではありません。

浸水の恐れがあるときの止水板など、日常的に対応できるよう練習に取り組みたいものです。

もし浸水や雨漏り、建物の破損などで営業の継続が困難な場合は、お客さまにその旨を伝え、避難していただくように誘導しましょう。

 

停電・断水

突然停電が発生した際は、早急にお客さまへの対応を行います。

急に電気が消えて店舗が暗くなると多くの方が不安を感じるため、「現在、停電によりご迷惑をおかけしています。」といった謝罪と、現在対策を進めていることを店舗内をまわってお客さまへ直接伝えましょう。

次に、停電の原因は災害とは限らないため状況把握が必要です。

スマートフォンや店舗備え付けの電話機も利用できなくなる場合があるので、停電時の連絡体制や情報伝達手段については事前にマニュアルなどで整備しておく必要があります。

前述の北海道ブラックアウト発生時のコンビニエンスストアの例では、各店舗の店長判断で対応できるようにしていたため、停電時の営業継続につながったそうです。

断水が起きた場合は、トイレや手洗い場に「使用禁止」と書いた張り紙をするなど、水が使えないことをお客さまがわかるようにしましょう。

災害発生後、飲食は一定時間我慢できても、トイレは我慢に限界があります。

備蓄した簡易トイレも使用訓練をしておかないと、いざというときに使い方がわからないということもあります。

ここまで、災害発生時の対応についてご説明しました。

災害時のお客さまのなかには、障がいをおもちの方がいらっしゃるかもしれません。

そうした方々へのお声がけは、下記サイトなども参考にされてください。

NHK『NHKアナウンサー 命を守る“防災の呼びかけ”』

 

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災害の備えは「知る」ことから

地震などの自然災害は、いつ起こるかわかりません。

事前に備えることで被害を最小限に抑え、命を守れる可能性が高まります。

正しく知って、正しく恐れる。

そのことが、正しい備えにつながっていくのです。

不安な気持ちをなくすため、まずは心の備えを進めましょう。

次に、できることから少しずつ具体的な対策を進めることが、災害に強い店舗づくりにつながります。

東京大学目黒公郎先生の言葉を借りると、「防災対策をコストからバリューへ」

災害に備えることをコスト(費用)ではなくバリュー(価値)だと意識を改めることが、今求められるスタンスだと思います。

 

 

【執筆者プロフィール】

執筆者:日本防災士会防災教育推進委員会

日本防災士会として会員のスキルアップを目指し設立した委員会。10名の委員で構成しており、会員向け研修会の実施のほか、防災士に向けた情報発信に取り組む。同時に全国の防災士が取り組む実践事例を収集し、情報共有を図ることで全国にいる防災士がより一層活躍できる環境づくりを目指している。一般の方に向けた情報発信にも様々な形で取り組んでいる。委員長・伊藤友彦防災士(北海道)。

 

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