著名人コラム
2024-07-19
「中医学」と「日本漢方」の考え方の違いとは?【クラシエ薬品が解説!登録販売者向け漢方講座】
・Before
・After
市販の漢方薬の販売に関わる登録販売者の皆さんのお悩みに、漢方薬メーカーの「クラシエ薬品」の担当者がアドバイス!連載第2回となる今回は、「中医学」と「日本漢方」の考え方の違いをお聞きしました。メーカーによっても、採用している考え方は異なるそう。漢方を理解するための大前提の知識として、しっかり把握しておきましょう。
「中医学」とは?
「漢方」は、もともと古代中国の伝統医学を起源としたものです。
中国の伝統医学は2,000年以上も前から存在する学問であり、日本へは5~6世紀に渡来しました。
そして日本独自の進化を遂げたものが、現在「日本漢方」と呼ばれています。
一方、日本漢方の基礎となった中国の伝統医学も世界へ広がり、現在「中医学」として日本に伝わってきているのです。
中医学と日本漢方の違い
中医学と日本漢方はルーツが同じ中国の伝統医学であったことから、類似する理論や共通して用いられる薬方が数多く存在します。
また、用いられてきた国や地域によりそれぞれ独自の進化を遂げた考え方も同様に多くあります。
次では、中医学と日本漢方を理解する際につまづきやすい「考え方の違い」を3つご紹介します。
(1)病気の診方(みかた)
中医学と日本漢方では、病気の診断から治療薬を決定するまでの流れが異なります。
中医学で病気を診るときには、現在の病態の情報収集と分析を行い、病気の原因や成り立ち、症候を把握します。
これは「弁証(べんしょう)」と呼ばれ、病に適した手法が複数存在しているものです。
この弁証に基づき、適切な治療方法を定めて、体調をより良い状態へ制御する(整える)ことを「論治(ろんち)」と呼びます。
日本漢方も、古くはこの「弁証論治」に似た診方を用いて病気を診ていたと言われますが、現在は異なる診方が主流となっています。
この2つの学問の違いを作った1人とされるのが、江戸時代の医師・吉益東洞(よしますとうどう)です。
吉益東洞は中国の伝統医学を否定し、それぞれの方剤(漢方薬)には適する証(症状の集まり)があると考え、あえてその原因をあげずに治療を行ったとされています。
証に対して決められた方剤を使うことを「方証相対(ほうしょうそうたい)」と呼びます。
こうした病気の診方において、中医学の「弁証論治」と日本漢方の「方証相対」で異なることが両者の違いの一つです。
(2)人体の構成要素
人体の構成要素の考え方においても、次のように違いがあります。
人体の構成要素 | |
---|---|
中医学 | 気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)・精(せい) |
日本漢方 | 気(き)・血(けつ)・水(すい) |
中医学における構成要素は、それぞれの生成・代謝の方法から、人体の生命活動を維持する作用、病気の分析にも用いられる概念です。
一方、日本漢方で用いられる「気血水」は主として病の分類に使用されるものであり、中医学と共通する部分も、異なる捉え方もあります。
(3)虚実の捉え方
「虚実」においても大きく概念が異なります。
中医学では、虚証の「虚」は人体の構成要素の不足を指し、主に人体の虚弱を現す概念です。
実証の「実」は病を起こす原因(たとえば、ウイルスや細菌、腫瘍など)を指し、主に人体にとって不要なものを現す概念です。
一方、日本漢方では、体力や病気に対する反応性を指す尺度として用いられ、たくましい人・闘病時の反応が激しく現れている人を実、虚弱な人・闘病時の反応が弱々しい人を「虚」と捉えています。
虚 | 実 | |
---|---|---|
中医学 | ・人体の構成要素の不足 (=人体の虚弱) | ・主に人体にとって不要なもの (=病を起こす原因※ウイルスや細菌、腫瘍など) |
日本漢方 | ・虚弱な人 (=闘病時の反応が弱々しい人) | ・たくましい人 (=闘病時の反応が激しく現れている人) |

まとめ
同じ古代中国の伝統医学を起源とする学問であっても、どの学派で漢方薬の使い方を学ぶかによって内容が異なることもあります。
そのため、学び手にとっては混乱することもあるでしょう。
どちらが優れているということはなく、それぞれに良さがあります。
登録販売者の皆さんは、混乱を避けるためにも、まずはご自身がどの学派の理論を学ばれているかを明確にすることが大切です。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:矢嶋 浩平(やじま・こうへい)さん
クラシエ薬品株式会社 ヘルスケア事業部 学術部
クラシエ薬品株式会社では、OTC医薬品販売員の皆さまへ、病気の分析や漢方薬の選定など、中医学を基にした接客に活かせる情報の提供を行っています。中医学にご興味のある登録販売者の方向けにeラーニングのご用意もございますので、ぜひクラシエ薬品の営業担当までお声がけください。

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