業界情報
2024-11-08
ドラッグストア業界に将来性はある?今後の展望と登録販売者への影響
・Before
・After
ドラッグストア業界は、高齢化社会や健康志向の高まりを背景に成長を続けてきました。しかし、競争激化や人口減少など、業界を取り巻く環境は変化しつつあります。そこで本記事では、ドラッグストア業界の最新動向やM&A事情、近年の課題について解説。業界の課題や展望を理解することで、キャリアプランニングに役立つ情報を提供します。ドラッグストア業界で働く登録販売者や、就職を考えている方々にとって、有益な情報となるでしょう。ぜひ、職場選びに役立ててください。【執筆者:薬剤師 馬場布由佳さん】
ドラッグストア業界とは?最新動向を解説
ドラッグストア業界は、医薬品や化粧品、日用品などを幅広く取り扱う小売業の一形態です。
近年、健康志向の高まりやセルフメディケーションの推進により、その役割が注目されています。
ここでは、ドラッグストア業界について以下の内容を解説します。
・定義
・変化・遷移
・市場規模
ドラッグストア業界の定義
ドラッグストア業界とは、医薬品や健康食品、化粧品、日用雑貨などを主に販売する小売業のことを指します。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)によると、下記のように定義されています。
▼参考サイトはコチラ
一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会『ドラッグストアの定義』
ドラッグストア業態の変化・変遷
ドラッグストア業界は、OTC医薬品販売の規制緩和やセルフメディケーションの推進などにより、大きく変化してきました。
その変化・変遷を理解するうえでのポイントは、以下の3つです。
・OTC医薬品販売の規制緩和
2009年の薬事法改正により、一般用医薬品の販売規制が緩和され、登録販売者制度が導入されました。
薬剤師不在でも一部の医薬品販売が可能となり、ドラッグストアの出店が加速しました。
・セルフメディケーションの推進
政府による健康寿命延伸政策の一環として、セルフメディケーションが推進されています。
ドラッグストアは単なる物販の場から、健康相談や情報提供の場へと役割を拡大しているのです。
・多角化と専門化
食品や日用品の品揃えを強化し、コンビニエンスストアやスーパーマーケットとの競合を強めている一方で、調剤薬局併設型の店舗や美容専門店など、専門性を高める動きも見られます。
時代の流れに伴い、ドラッグストアに求められる役割は変化しています。店舗では、その変化に対応できる体制作りが必要です。
ドラッグストアの市場規模
ドラッグストア業界の市場規模は着実に成長を続けています。
・市場規模の推移
経済産業省の商業動態統計調査によると、2023年のドラッグストア販売額は約8.3兆円に達しており、過去10年間で約1.5倍に拡大しました。
・売上構成比の変化
日本チェーンドラッグストア協会が公表した『第24回(2023年度)日本のドラッグストア実態調査』によると、2023年度の全体売上は9兆2,022億円(前年比105.6%)でした。
売上構成比は、調剤・ヘルスケアが約33%(3兆657億円)、ビューティーケアが約18%(1兆6,363億円)、ホームケアが約22%(1兆9,968億円)、フーズ・その他が約27%(2兆5,034億円)となっています。
以前と比較すると食品の割合が増加傾向にあり、生活必需品を中心とした品揃えの強化が進んでいる状況です。
・店舗数の推移
全国のドラッグストア店舗数は2023年時点で約2.3万店であり、依然として増加傾向にあります。
ドラッグストア業界は成長産業であり、将来性が高いと言えるでしょう。
しかし、競争激化や市場環境の変化により、業界内での淘汰や再編も進んでいます。
▼参考サイトはコチラ
経済産業省『商業動態統計 時系列データ』
2023年小売業販売を振り返る;3年連続の増加となった小売業販売
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ドラッグストア業界はM&Aが進んでいる
ドラッグストア業界では、市場競争の激化や経済規模を追求する動きから、M&A(合併・買収)が活発化しています。
これは業界の将来性を示す一方で、中小企業にとっては生き残りをかけた戦略的な判断が求められる状況だと言えるでしょう。
次に、登録販売者が知っておきたい、近年のM&A事例を3つ紹介します。
●マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合(2021年)
業界トップの座を狙う大型統合。
規模の拡大による競争力強化と経営の効率化、デジタル投資の加速が期待されています。
●サンドラッグによるキリン堂ホールディングスの持分法適用会社化(2024年)
サンドラッグは、2024年2月に米投資ファンドのベインキャピタルが保有するキリン堂ホールディングスの株式33.4%を取得し、持分法適用会社化しました。
関西地域を中心に展開するキリン堂ホールディングスとの提携により、関西圏での店舗拡大を強化するとともに、キリン堂ホールディングスが推進しているプライベート商品の開発力向上を目指します。
●アインホールディングスによるFrancfrancの買収(2024年)
アインホールディングスは、20-30代女性をターゲットに国内外で161店舗を展開するインテリア・雑貨ブランド「Francfranc」の買収を発表しました。
Francfrancは商品の90%がSPA型※の自社企画商品である強みを持ち、アインホールディングスは自社のコスメ&ドラッグストア「アインズ&トルぺ」とのシナジーによって、トータルビューティ分野での差別化を図る方針です。
※SPA型…商品の企画から生産、販売までを統合して行うビジネスモデル
そのほかにも、マツモトキヨシグループがドラッグストアや調剤薬局を運営するケイポートを、スギホールディングスが調剤薬局を運営するI&Hを買収するなど、M&Aが進んでいます。
さらに近い動きとして、ツルハホールディングスとイオン、ウエルシアホールディングスの3社が、経営統合に関する協議開始に合意しました。
2027年末までに、資本業務提携契約の最終合意を目指すことが決まっています。
M&Aは、規模の拡大による競争力強化や地域戦略の強化、経営効率化などを目的としています。
登録販売者にとっては、所属する企業の将来性や安定性を判断するうえで、M&Aの動向を把握しておくことが重要です。
▼参考サイトはコチラ
株式会社マツキヨココカラ&カンパニー『株式会社マツモトキヨシホールディングスと株式会社ココカラファインとの経営統合に関する経営統合契約の締結のお知らせ』
株式会社キリン堂 ホールディングス『株式会社サンドラッグによる株式会社 BCJ-47 の株式取得に関するお知らせ』
株式会社アインホールディングス『第55期株主通信』
ウエルシアホールディングス株式会社『株式会社ツルハホールディングス、イオン株式会社及びウエルシアホールディングス株式会社との資本業務提携、並びに株式会社ツルハホールディングスにおける主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ』

ドラッグストア業界の課題と今後について
ドラッグストア業界は成長を続けていますが、同時にいくつかの課題に直面しています。
具体的には以下の3つです。
・競争の激化
・高齢化社会、人口減少による市場の縮小
・薬剤師不足
それぞれ解説していきます。
競争の激化
ドラッグストア業界における競争は年々激しさを増しています。
この状況は、消費者にとっては選択肢の拡大やサービスの向上につながる一方で、企業や従業員にとっては大きな課題となっています。
現状:
・大手チェーンによる出店競争が激化
・食品スーパーやコンビニエンスストアとの業態間競争の増加
・EC市場の拡大により、オンラインでの競争も激化
登録販売者への影響:
・専門知識を活かした接客や健康相談など、付加価値の高いサービス提供が求められる
・デジタル技術を活用した顧客対応スキルの習得が必要になる可能性がある
登録販売者には、単なる商品知識だけでなく、顧客一人ひとりのニーズに応えられる高度なカウンセリング能力が求められるでしょう。
また、オンラインでの顧客対応やデジタルツールの活用など、新たなスキルの習得も重要になってきています。
超高齢社会、人口減少による市場の縮小
人口動態の変化は、市場の性質を変えるとともに、新たな課題と機会を生み出しています。
現状:
・高齢化に伴い、医療費や介護費用の増大が見込まれる
・長期的には人口減少により、市場規模の縮小が予想される
登録販売者への影響:
・高齢者向けの商品知識や接客スキルの重要性が増す
・在宅医療や介護関連サービスへの知識拡大が求められる可能性がある
・人口減少地域では、地域に密着した健康支援の役割が期待される
登録販売者には高齢者特有の健康課題や生活ニーズへの深い理解が求められます。
また、地域の健康づくりの担い手として、より広範な知識とコミュニケーション能力が必要となるでしょう。
薬剤師不足
薬剤師不足の問題は、医療サービスの提供体制や登録販売者の役割にも大きな影響を及ぼしています。
現状:
・調剤薬局の増加や病院での需要増加により、薬剤師の確保が困難になっている
・一部の地域では深刻な薬剤師不足が発生している
登録販売者への影響:
・一般用医薬品の販売や健康相談など、登録販売者の役割がより重要になる
・薬剤師と連携しながら、店舗運営の中核を担う機会が増える可能性がある
・より高度な知識やスキルの習得が求められる可能性がある
登録販売者には医薬品に関するより深い知識と、顧客の健康相談に対応できる高度なスキルが求められるでしょう。
また、薬剤師との効果的な連携や、場合によっては一部の薬剤師業務の補助など、より幅広い役割を担う可能性もあります。
就業先のドラッグストアの選び方
登録販売者が就業先としてドラッグストアを選ぶ際には、次の3つの要素について理解し、一つの基準にしましょう。
・企業規模(大手企業・中小企業)
・立地(都心型店舗・郊外型店舗)
・店舗の特性
企業規模(大手企業・中小企業)
企業規模は、仕事の安定性や成長機会、企業文化など、多くの面で就業環境に影響を与えます。
大手企業と中小企業には、それぞれ特徴があり、自分の価値観やキャリアプランに合わせて選択することが重要です。
大手チェーン:
メリット:安定性が高く、教育制度の充実している企業が多い
デメリット:異動や転勤の可能性が高く、業務が標準化されている
中小企業:
メリット:地域密着型の経営で、裁量権が大きい場合がある
デメリット:経営状況によっては不安定な場合もある
企業の成長戦略や将来ビジョンが自身のキャリアプランと合致しているかをしっかり意識しましょう。
M&Aの動向や財務状況など、企業の安定性の確認も必要です。
立地(都心型店舗・郊外型店舗)
店舗の立地は、日々の業務内容や顧客層、キャリア形成の機会など、さまざまな面で影響を与えます。
都心型と郊外型では、それぞれ異なる特徴があり、自分の適性や希望する働き方に合わせて選択することが大切です。
都心型店舗:
特徴:商品回転率が高く、多様な顧客層に対応する必要がある
メリット:幅広い経験を積める、キャリアアップの機会が多い
郊外型店舗:
特徴:地域に密着した営業が求められる
メリット:顧客との長期的な関係構築やサービス提供が可能
勤務時間や休日、福利厚生などの労働条件に加え、自身の適性や希望する働き方が、店舗の特性と合致しているかを事前に確認しておきましょう。
店舗の特性
店舗の特性は、業務内容や習得できるスキル、キャリア形成の方向性に大きく影響します。
調剤併設型店舗:
特徴:医療機関との連携や高度な医薬品知識が求められる
メリット:専門性を高める機会が多い、薬剤師との協働スキルが身につく
美容・健康特化型店舗:
特徴:化粧品や健康食品など、特定分野に特化した品揃え
メリット:専門知識を深められる、カウンセリング技術が磨ける
自身のキャリアプランや価値観に合った職場を選択することは、長期的なキャリア形成を考えるうえで重要です。
社内研修制度や資格取得支援など、成長機会の有無もしっかり確認しましょう。

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ドラッグストア業界は、高齢化社会や健康志向の高まりを背景に成長を続けており、今後も一定の将来性が期待できます。
しかし、競争激化や人口減少、デジタル化の進展など、業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
本記事では以下の内容を解説しました。
・ドラッグストア業界の最新動向
・ドラッグストア業界のM&A
・ドラッグストア業界の課題
・就職先としてのドラッグストアの選び方
これらのポイントを総合的に判断し、自身のキャリアゴールや価値観に合った就業先を選ぶことが重要です。
また、業界の動向や企業の方針は常に変化するため、定期的に自身のキャリアプランを見直し、必要に応じて転職や新しいスキル習得を検討していきましょう。
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【執筆者プロフィール】
執筆者:馬場布由佳
現役の薬剤師として医療現場に携わる顔を持つ一方、医療情報を専門に扱うライターとして独立。執筆のほか、ディレクションや医療系メディア運用のサポートに従事。メディカルライターチームの運営を行なっており、医療,健康,介護,美容などのメディア記事執筆をはじめ、セミナーの記事化や資料制作なども提案から執筆、運用まで提供している。
ドラッグストアや調剤薬局での勤務経験があり、健康知識のほか、一般用医薬品についての執筆も得意とする。

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