現場で役立つ知識
2022-11-11
サプリメントの危険性とは?知っておきたい過剰摂取予防や飲み合わせの注意点<登録販売者向け>
・Before
・After
厚生労働省の資料によると、2019年時点で日本人(6歳以上)の男性21.7%、女性28.3%がサプリメントなどの健康食品を日常的に使用しています(※厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より)。手軽に健康を維持できるようなイメージのあるサプリメントですが、一方で危険が潜んでいる可能性も。サプリメントを飲むことでかえって健康を損なったり、薬との相互作用が出過ぎたりしてしまうケースがあるのです。今回は、サプリメントに潜む危険性やお客さまから相談を受ける際の注意点などについて解説します。
公開日:2022年11月11日
更新日:2025年2月6日
サプリメントの定義は?
サプリメントに厳密な定義はありません。
健康維持をサポートする成分が含まれており、錠剤やカプセルのような形をしているものをサプリメントと呼んでいます。
たとえば栄養素を補うことを目的としたマルチビタミン、健康促進をうたっているグルコサミンやノコギリヤシなどが代表的でしょう。
サプリメント(Supplement)にはもともと「補足」や「追加」といった意味があることから、栄養素を補うためのものだと言えます。
日本では錠剤やカプセルの形状で作られたものが多いですが、海外ではグミやスナック菓子、飲料などで販売されているものも多いようです。
サプリメントの問題点と被害例
サプリメントには、薬と比較して使用量や年齢、飲む期間などに大きな制限がありません。
一方で、サプリメントは薬の代わりにはなりません。
不適切な使用などにより健康被害が起こる可能性があることとあわせて、認識しておくべきでしょう。
科学的な根拠は必ずしも十分ではない
お客さまのなかには、「サプリメントを飲めば健康になれる」と考えている方もいるでしょう。
しかし、実際には科学的根拠が十分でないサプリメントも多いのです。
次で、3つの例をあげて見ていきましょう。
●ビタミンC
ビタミンCは、風邪の予防や美容のために飲まれることが多い成分です。
しかし、ビタミンCを摂っても風邪の発症リスクは変わらないことが研究結果によりわかっています。
一方で、効果が噂されている美容やがんの発症との関係については、現段階では明確になっていません。
※参考
厚生労働省eJIM | ビタミンC | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へ | 「統合医療」情報発信サイト
●グルコサミン
グルコサミンは、関節の健康が気になる方が飲まれることの多い成分です。
しかし、コンドロイチンが変形性膝関節症の痛みに効果があるというデータはありません。
一部の研究ではコンドロイチンの有用性が示されたものもあるようですが、症状が大きく改善するほどの効果はないとされています。
※参考
厚生労働省eJIM | グルコサミンとコンドロイチン | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 医療関係者の方へ | 「統合医療」情報発信サイト
●ブルーベリー(アントシアニン)
ブルーベリーは、疲れ目や視力回復を目的として摂取されることが多いサプリです。
目の健康をサポートするアントシアニンなどが含まれています。
一方、このサプリも目の機能を改善する効果などは確認されていません。
東京農業大学が実施した研究結果では、まばたきの回数や視野、涙の量などを調べたものの、とくに変化が見られなかったとされています。
※参考
ブルーベリーの眼機能改善効果 | CiNii Research
副作用による影響
摂取目安量を守ってサプリメントを使用しても、体質によっては副作用が起こる可能性があります。
とくに小さな子どもや妊娠中・授乳中の方、代謝機能が落ちている高齢者は副作用が出やすいため注意が必要です。
これまで実際に副作用が報告された例として、以下のものがあります。
サプリメントの素材 | 注意が必要な対象者 | 副作用例 |
---|---|---|
ウコン | 胆石などがある | 病状の悪化 |
アロエ | 妊婦・授乳婦 | 子宮収縮を促進 |
朝鮮人参 | 血栓症、高血圧症 | 病状の悪化 |
α-リポ酸 | インスリン自己免疫症候群 | 低血糖発作 |
このほか、サプリメントに含まれている成分に問題があり、光線過敏症や肝障害が出たという報告もあるため、信頼できるメーカーから発売されているものを正しく使うことが大切です。
飲み合わせによる影響
サプリメントと医薬品が相互作用を起こし、副作用が出やすくなったり薬の効果に影響が出たりすることもあります。
以下のサプリメントに含まれる添加物は、薬と相互作用を引き起こす可能性がある代表的なものです。
サプリメントに添加 されている天然植物 | 服用している医薬品 | 影響 |
---|---|---|
イチョウ | 抗血小板薬、抗血液凝固薬 | 医薬品の効果が増強 |
ノコギリヤシ | ||
ニンニク | サキナビル、リトナビル、ワルファリン | 医薬品の効果が減弱 |
セントジョーンズワート | ジゴキシン、テオフィリン、ワルファリン、 経口避妊薬など | 医薬品の効果が減弱 |
ビタミンB6 | フェニトイン | 医薬品の効果が減弱 |
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止にむけて』
過剰摂取による影響
サプリメントは薬ではないものの、適切でない使用方法によって副作用が起こることがあります。
ビタミンCやグルコサミン、ブルーベリーを過剰摂取した場合の影響を例に見てみましょう。
・ビタミンC
過剰摂取により、下痢や吐き気、胃けいれんが起こる可能性があります。
成人の場合は1日2,000mgまでなら安全とされています。
人によってはそれ以下でも副作用が出ることがあるため、摂取目安量を超えての使用は避けましょう。
・グルコサミン
大きな副作用は報告されていません。
しかし、ラットを使った研究では、グルコサミンを高用量摂取によって腎臓が損傷する可能性があることがわかっています。
・ブルーベリー
とくに大きな副作用は報告されていません。
しかし、妊娠中や授乳中の方が大量に摂取した場合の安全性は確立されていないので注意しましょう。
人によっては、摂取によって便秘や吐き気を催すこともあります。
サプリメントについてお客さまから相談されたときの注意点
登録販売者として働くなかで、「どのサプリメントを選んだらいい?」「この症状におすすめなのはどれ?」などお客さまから質問されるケースは多々あるでしょう。
サプリメントの相談を受けた場合は、次の3つをお客さまに伝えるようにしてください。
〈1〉医薬品の代わりには使えない
サプリメントは「栄養素を補うもの」、医薬品は「疾患を治すもの」であり、それぞれ異なる役割をもっています。
明らかに疾患などの症状が出ている場合は、医療機関への受診を促しましょう。
〈2〉摂取目安量を守って使用する
サプリメントでも過剰摂取が原因で健康被害が起こる可能性があります。
「多く摂るほど健康になれる」と思い込んでいる方もなかにはいるため、摂取目安量を守るように伝えましょう。
〈3〉普段飲んでいる医薬品がないかを確認する
医薬品と一緒に飲むことで相互作用を起こすものがあります。
飲んでいる薬の効きが悪くなったり、効き過ぎて副作用が出やすくなったりすることがあるため、医師に相談してからの購入が安全だと伝えましょう。
お客さまがお薬手帳を使っている場合は、サプリメントの情報を記入しておくと医師や薬剤師が飲み合わせをチェックしやすくなります。
サプリメントの使用には危険も潜んでいる
サプリメントの使用においては、その安全性が軽視される傾向にあります。
しかし、過剰摂取による健康被害や医薬品との望ましくない相互作用、品質による問題が発生したケースもあるので注意しましょう。
また、登録販売者がお客さまに「サプリメントで病気が治せる」と勘違いさせてはいけません。
売り場のPOPに「〇〇に効果あり!」などと書くと、誤った情報を伝えてしまうだけでなく薬機法違反で罰則を受ける可能性もあります。
サプリメントについて適切なアドバイスができるように、日頃から正しい理解に努めましょう。
【執筆者プロフィール】
執筆者:岡本妃香里
薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアで4年間勤務。毎日2,000人近くが来局する店舗でOTC販売を経験。現在は薬の正しい使い方や選び方を広めるために、執筆業をメインに活動。

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