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2024-07-26
殺虫剤(プロポクスル)が人体に及ぼす影響は?登録販売者が知っておきたい適切な使い方や接客のコツ
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夏が近づくにつれ、殺虫剤や虫除け製品の売上が伸びる傾向にあります。登録販売者として知っておきたいのが、殺虫剤の成分や人体影響についてです。今回は、殺虫成分「プロポクスル」の人体影響について解説します。プロポクスル以外の殺虫成分の特徴や、お客さま対応で使える接客フレーズも紹介しますので、ぜひ活用してください。
プロポクスルとは?
プロポクスルとは、殺虫剤に含まれる有効成分の一種で、「カーバメイト系」殺虫成分に分類されます。
虫の体内に取り込まれると「アセチルコリンエステラーゼ」と呼ばれる神経酵素の働きを阻害し、麻痺させることで殺虫効果を発揮する有効成分です。
プロポクスルに期待できる効果について
主に使われる製品 | スプレー剤、燻煙剤、蒸散剤、粉剤・粒剤 など |
---|---|
主に効果が期待できる対象 | ゴキブリ、トコジラミ、ノミ、イエダニ など |
プロポクスルは、家庭用や業務用の殺虫剤に使用されることが多いです。
プロポクスル単品で配合される場合や、他の殺虫成分と一緒に配合される場合があります。
製品によって若干異なりますが、ゴキブリ・トコジラミ・イエダニ・ノミといった「衛生害虫」が主な対象です。
そのほか、「ピレスロイド系」の殺虫成分に耐性がある害虫にも効果が期待できます。
プロポクスルの主な人体影響
「呼吸困難」「目・喉の痛み」「筋肉の麻痺」「頭痛・めまい」
「吐き気」「気分の不快感」などの人体影響があらわれる可能性がある
一般的にプロポクスルをはじめとする「カーバメイト系」の殺虫成分は、「有機リン酸系」の殺虫成分に比べて毒性が低いと考えられています。
ただし、プロポクスルの濃度が高い環境にいたり大量のプロポクスルに触れたりした場合は、呼吸困難や、目・のどの痛み、頭痛や気分の不快感などの人体影響があらわれる可能性があるため注意が必要です。
薬剤に過剰に反応してしまう体質の人の場合、アレルギー症状などを招く可能性も。
しかし、プロポクスルをはじめとする殺虫剤は、一般的に「定められた用法・用量」を守って正しく使用すれば、人体への影響は少ないと考えられています。
過剰に心配する必要はないと言えるでしょう。
【登録販売者向け】殺虫剤の販売や虫対策に関する接客のコツはこちら
プロポクスル以外もある!主な殺虫成分について
殺虫成分の分類 | 特徴 | 期待できる効果 |
---|---|---|
有機リン酸系 | やや遅効性だが残効性が高い。 | 神経伝達を阻害して殺虫効果を発揮する。 |
ピレスロイド系 | 毒性が低く、体内での分解・排泄が速い。 | 殺虫効果のほかに、忌避効果も発揮する。 |
オキサジアゾール系 | ピレスロイド系に抵抗がある害虫に使われる。 | 神経膜の機能を阻害し、筋肉を動かなくして殺虫効果を発揮する。 |
有機塩素系 | 殺虫力が高いが、現在日本では製造されていない。 | 神経伝達を阻害して殺虫効果を発揮する。 |
昆虫成長阻害成分 | 虫が幼虫から成虫へ成長するのを阻害する。 | 虫の成長そのものを阻害して殺虫作用に役立つ。 |
その他の成分 | 殺虫補助成分:殺虫成分と一緒に配合される。 忌避成分:虫除けとして使われる。 | 殺虫成分と一緒に使われることで殺虫効果を増強する。 |
プロポクスルのほかにも、殺虫剤に使用されている成分があります。
上記は、登録販売者試験の「第3章 主な医薬品とその作用:XV公衆衛生用薬」の出題範囲にも含まれているため、しっかり把握しておきましょう。
以下で各成分の特徴や期待できる効果などを解説していきます。
有機リン酸系
有機リン酸系として代表される殺虫成分は、ジクロルポスやフェンチオン、ダイアジノンなどです。
プロポクスルに該当する「カーバメイト系」の殺虫成分と同じく、神経酵素である「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害することで殺虫効果が期待できます。
日本では主に農薬として使用されることが多いです。
虫以外の鳥類やほ乳類は、成分を吸収したとしても体内で分解・排泄されるため毒性は低いと考えられています。
ただし、高濃度・大量に触れた場合は、呼吸困難などの人体影響があらわれる可能性があるため用法・用量は守りましょう。
【効果が期待できる対象】
ピレスロイド系
ピレスロイド系の中では、フェノトリンやフタルスリン、ペルメトリンなどが代表的な成分です。
ピレスロイド系の殺虫成分は即効性に優れており、人体に対する毒性も低いため幅広く使用されています。
さらに、残留・生物濃縮などの環境汚染のおそれが少なく、比較的環境に優しいのも特徴です。
ただし、プロポクスル同様、高濃度・大量に触れた場合は、呼吸困難などの人体影響があらわれる可能性があるため注意しましょう。
【効果が期待できる対象】
オキサジアゾール系
オキサジアゾール系の代表的な殺虫成分は、メトキサジアゾンです。
オキサジアゾール系もプロポクスルと同じく、神経酵素「アセチルコリンエステラーゼ」を阻害することで殺虫効果を発揮します。
ただし、アセチルコリンエステラーゼとの結合は、有機リン系が「不可逆的」であるのに対しオキサジアゾール系は「可逆的」です。
オキサジアゾール系の殺虫成分は、主にピレスロイド系に耐性を持つ害虫に対して使用されます。
毒性は低いですが、高濃度・大量に触れると人体影響があらわれることもあるため注意が必要です。
【効果が期待できる対象】
有機塩素系
有機塩素系で代表的な殺虫成分は、DDTやアルドリンやオルトジクロロベンゼンなどです。
高い殺虫力を持ち、比較的安価だったため世界的に幅広く使用されていました。
しかし、残留性の高さや人体への蓄積など将来的な影響を懸念されて、一部の用途への使用を除いて現在では製造・使用中止となっています。
とくに、脂肪組織や肝臓、腎臓に蓄積されやすいのが特徴です。
日本においては、オルトジクロロベンゼンがウジやボウフラの防除を目的としてのみ使用されています。
DDTは一部の国で蚊の防除に限って使用を認められていますが、日本や先進国では製造・使用はしていません。
【効果が期待できる対象】
昆虫成長阻害成分
昆虫成長阻害成分では、メトプレンやピリプロキシフェンなどが代表的です。
直接的な殺虫作用ではなく、虫の生理的機能を阻害し成長を妨げることで殺虫効果を発揮します。
たとえば蚊の場合、幼虫であるボウフラの成長を阻害して蚊の発生を未然に防ぐことが可能です。
ただし、すでに成虫へと成長している場合は効果が期待できないため、害虫の発生源に散布するようにしましょう。
また、人間やほ乳類への影響はほとんどありません。
【効果が期待できる対象】
その他の成分
殺虫剤には殺虫成分の効果を増強するために、殺虫補助成分が含まれている場合があります。
ピペニルブトキシドやピペロニルブトキサイド、チオシアノ酢酸イソボルニルなどが代表的な成分です。
これらの成分は補助的な役割を果たし、成分自体に殺虫効果はほとんどありません。
ほかにも忌避成分として、長時間の効果が期待できるディートや、子どもも大人も年齢を問わず使えるイカリジンが配合される場合もあります。
【効果が期待できる対象】
プロポクスル等を含む殺虫剤の人体影響を防ぐには?
プロポクスルをはじめ、家庭用の殺虫剤を使用する際は適切な使用法を守る必要があります。
お客さまに適切にご案内できるよう、人体や周りへの影響を防ぐ使い方を把握しましょう。
身体を保護して各商品の用法・用量を守って使う
プロポクスル等を含む殺虫剤を使用する際は、体内に入らないように目・鼻・口・肌などを保護するのが重要です。
ゴーグルをつけたりマスクや手袋をつけたりして、できる限り直接肌に触れないようにしましょう。
お客さまには、事前に各商品の取扱説明書をよく読み、正しい使い方を把握してから使うようご案内してくださいね。
妊婦・乳幼児・動物がいる環境では使わない
妊娠中の方や小さなお子さま、犬や猫などの動物は、殺虫剤の成分に過敏に反応してしまうケースがあるため注意が必要です。
このような人や動物がいる環境では使わず、違う部屋に移動させましょう。
また、部屋にある食器や棚、お子さまのおもちゃなどに付着しないよう、カバーをつけたり別の部屋に移動させたりしてから使うようご案内してください。
皮膚に付着した場合はすぐに石けんで洗い流す
万が一、殺虫剤の成分が肌に触れた場合は、すぐに石けん水でよく洗うよう促してください。
使用の際は、目や口に入らないよう十分に注意しましょう。
もし目に入ってしまった場合は、流水で少なくとも15分は洗い流したうえで、眼科への受診を促しましょう。
万が一異常が見られた場合は医療機関を受診する
万が一、目や口に侵入したり肌に触れたりして身体に異常があらわれたときは、すぐに医師に相談するようご案内しましょう。
登録販売者の方は、店舗にこのようなお客さまが来店された際は医療機関への受診を促してください。
【登録販売者向け】殺虫剤の販売や虫対策に関する接客のコツ
暖かい季節になるにつれ、殺虫剤や虫対策を考える方は増えていきます。
それに伴い、ドラッグストアにおいても殺虫剤の購入が増えることが多いです。
接客のコツを押さえて、登録販売者として適切なご案内をできるように心がけましょう。
殺虫剤の購入に悩むお客さまへの接客のポイント
- 対象となる害虫の種類
- 殺虫剤を使用するのは誰か
- どのような使用目的か
対象となる害虫の種類によって、効果が期待できる殺虫成分が異なります。
また、殺虫剤には人間用のほかにペット用もあるため、使用者についても確認しましょう。
そのほか、殺虫効果や忌避効果など使用目的に合わせた商品を提案できるとよりよいです。
【覚えておきたい】接客時に使えるフレーズ
- どのような害虫にお困りでしょうか?
- 殺虫剤を使用するのはどなたでしょうか?
- 使用する際は用法・用量をお守りくださいね。
お客さまから殺虫剤について質問があった際は、対象となる害虫と使用者についてお伺いしてください。
この2点のヒアリングによって、よりよい商品選択ができます。
さらに、「用法・用量を守っていただくこと」「使用前に取扱説明書を読んでいただくこと」を説明するのも、登録販売者の重要な役割です。
殺虫剤の販売以外でお客さまに提案できること
ゴキブリの対策 | 家具や家電の隙間をこまめに掃除し、ゴキブリが生息できる場所を減らす。 |
---|---|
トコジラミの対策 | トコジラミは熱に弱いため、衣類や寝具は熱湯で洗濯する。 |
シラミの対策 | 髪や体を清潔に保つ。 タオルや衣類などは家族間で共有しない。 |
ノミの対策 | 犬や猫を経由して屋内に侵入するため、ペットを清潔に保つ。掃除機でこまめに掃除する。 |
ハエの対策 | キッチンに生ゴミを放置しない。 |
蚊の対策 | 窓やドアの隙間をなくし、網戸が壊れていないか確認する。 |
それぞれの衛生害虫について、殺虫剤を使用する以外でも対策できる方法があります。
どの害虫でも、基本的には清潔に保つことが一番重要です。
日頃からこまめに掃除し、整理整頓を心がけましょう。
登録販売者として殺虫剤を提案するだけでなく、ご家庭で簡単にできる対策法もアドバイスできると非常に親切です。
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プロポクスルは正しく使えば人体影響は少ない
プロポクスルをはじめとする殺虫剤は、用法・用量を守って正しく使えば人体影響の心配はほとんどありません。
しかし、高濃度の環境にいたり大量に触れたりした場合は、呼吸困難などの人体影響があらわれる可能性があるため注意が必要です。
登録販売者の方は、適切な商品提案とアドバイスができるようにしっかり理解しておきましょう。
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